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キャンバストップ特集のKV
構成=ダズ/文=高橋陽介

WiLL Vi、デミオ、ミラ、フェスティバ…大衆車こそキャンバストップ仕様が似合う

今ではあまり見なくなったかわいく開放的なクルマたち【後編】

懐かしいキャンバストップ車を振り返る特集の後編は、キャンバストップを広めた代表的車種から、こんなクルマにもあったの?と思わせるマニアックな車種まで登場。キャンバストップは、決して特別なクルマではなく、多くの大衆車にラインアップされていました。それらモデルをじっくりと振り返りましょう。

目次

逆方向に切れ込んだリアウインドーの造形が強烈! 異業種合同プロジェクトから生まれたトヨタの意欲作
トヨタ・WiLL Vi

トヨタ・WiLL Viのフロント

初代ヴィッツがベースとは想像できないほどの変貌ぶり。キャンバストップは標準ルーフに対し15万円高のプライスが付けられていた

トヨタ・WiLL Viのサイド

ここまで明確なクリフカットデザインは1962年の初代マツダ・キャロル以来。メーカーの資料には「馬車がモチーフ」との記述が。タイヤサイズはヴィッツよりひと回り大きい15インチ

初代ヴィッツがベースとは想像できないほどの変貌ぶり。キャンバストップは標準ルーフに対し15万円高のプライスが付けられていた

ここまで明確なクリフカットデザインは1962年の初代マツダ・キャロル以来。メーカーの資料には「馬車がモチーフ」との記述が。タイヤサイズはヴィッツよりひと回り大きい15インチ

アサヒビール、花王、近畿日本ツーリスト、トヨタ自動車、松下電器産業の5社による異業種合同プロジェクトとして1999年8月に発足したWiLLプロジェクト。その一環として翌年1月に発売されたのがWiLL Vi。

標準車とキャンバストップ仕様の、いずれも1.3リッター2NZ-FEエンジンとコラム4速ATを採用。キャンバストップは手動で開閉するタイプで、スライド式ではなく、後方に向けて折りたたむ構造となっていた。WiLLブランドの製品ということで、車体周りにはトヨタのロゴやエンブレムは見当たらず、オレンジ色のWiLLブランド共通のエンブレムが装着されていた。

光の透過性を持たせた新素材を採用した、ホワイトキャンバストップ仕様車を設定
マツダ・デミオ キャンバストップ

マツダ・デミオ キャンバストップのフロント

コージーグレードの専用オプションだった電動ホワイトキャンバストップ。オープン時の開放感だけでなく、クローズド時の快適性にもこだわった設計が特徴

マツダ・デミオ キャンバストップのリア

ミニワゴンとしてのユーティリティを備えていた初代の美点を継承。新設計のサスペンションにより、タイヤハウスの張り出しを抑えたフラットな荷室空間を実現していた

コージーグレードの専用オプションだった電動ホワイトキャンバストップ。オープン時の開放感だけでなく、クローズド時の快適性にもこだわった設計が特徴

ミニワゴンとしてのユーティリティを備えていた初代の美点を継承。新設計のサスペンションにより、タイヤハウスの張り出しを抑えたフラットな荷室空間を実現していた

コンパクトクラスにおいて屈指の実用性の高さを誇った初代の持ち味を生かしつつ、質感に磨きがかけられた2代目デミオ。グレードはカジュアル、コージー、スポルトの3種類で、このうちコージーにメーカーオプション設定されていたのが電動ホワイトキャンバストップ。

トップの素材はフッ素系樹脂をラミネートした光透過性のポリエステル織布の表面層とシーリング層を組み合わせたもので、車内にやわらかな光を取り入れつつ紫外線をカット。炎天下の駐車時における車内温度の上昇も、ノーマルルーフと同等に抑えられていた。

ディフレクター付きキャンバストップを採用。当時の軽自動車の水準を超える豪華装備も話題に
ダイハツ・ミラ パルコ キャンバストップ

ダイハツ・ミラ パルコ キャンバストップのフロント

ボディ同色のホイールカバーも特徴的だったミラ・パルコ キャンバストップ。ボディカラーは他にブラック、レッドなど5色が設定されていた

1991年11月のマイナーチェンジ時に上位グレードSiと特別仕様車「パルコ」に追加されたキャンバストップ。トップの開閉操作は電動で、前方には走行中の風の巻き込みを抑えるディフレクターも装着。パルコにはエアコン、4スピーカーハイファイステレオ、大型カラードドアミラー、ブロンズガラスなど数々の豪華装備も盛り込まれていた。

このキャンバストップは、翌年8月に登場したオフロードルックのミラ・ターボRV4にも採用されている。

ダイハツ・ミラ パルコ キャンバストップのオープン時

当時の軽自動車クラスではオートマチックといえば3速が主流とされていたなか、4速ATを採用。リアゲートには誇らしげに「4AT」のステッカーが貼られていた

キャンバストップの普及に大きく貢献。日米のハーフ的なルックスも人気の要因に
フォード・フェスティバ キャンバストップ

フォード・フェスティバ キャンバストップのフロント

3.5mあまりの全長ながら、車内スペースは広々。優れたパッケージングは、当時のジャーナリストからも高い評価を得ていた

フォード・フェスティバは1980年代にマツダが展開していたディーラー、オートラマで販売されていたコンパクトカー。エンブレムはアメリカ、フォード社のものが与えられているが、車両開発自体はマツダが主導。同店には他にもファミリアの兄弟車レーザーや、カペラの兄弟車テルスターが存在するが、フェスティバは唯一独立した車種として扱われた。

その人気を大きく後押ししたのがキャンバストップの設定。ワンタッチで開閉できる電動キャンバストップは、簡単に開放感を味わえるとあって、女子の人気が高かった。「さぁ、街はフェスティバ」のコピーのもと展開されたTV-CFも、車両のスペックうんぬんを抜きにキャンバストップの楽しさを前面に押し出したもので、街角で見かける同車の姿はノーマルルーフ車のほうが少数派と思えるほどのヒット作となった。

専用の2トーンボディカラーを採用した電動キャンバストップモデル
スズキ・アルトラパン キャンバストップ

スズキ・アルトラパン キャンバストップのフロント

キャンバストップの採用により、独特のスクエアなフォルムから醸し出されるかわいらしさが倍増! ルーフ部分のダークグレイメタリックもキャンバストップ車の専用カラーだった

スズキ・アルトラパン キャンバストップのリア

ボディカラーは写真のブライトレッドとパールホワイトの2色。細かいところでは、フロントグリル内のウサギ(ラパンとはフランス語でウサギの意味)のエンブレムが黒から赤に変わっていた

キャンバストップの採用により、独特のスクエアなフォルムから醸し出されるかわいらしさが倍増! ルーフ部分のダークグレイメタリックもキャンバストップ車の専用カラーだった

ボディカラーは写真のブライトレッドとパールホワイトの2色。細かいところでは、フロントグリル内のウサギ(ラパンとはフランス語でウサギの意味)のエンブレムが黒から赤に変わっていた

5代目アルトをベースに、2002年に発売されたアルトラパン。その翌年に特装車として追加投入されたのが、ラパン キャンバストップ。トップはサンバイザーの手前部分に取り付けられたスイッチで電動開閉が可能。ブラックのキャンバス地に合わせてルーフパネルのカラーをダークグレイメタリックとしたほか、B・Cピラーもブラック塗装でコーディネイト。

インテリアも白いパイピングがあしらわれた赤色のシート生地や、部分的にパールホワイト塗装を取り入れたインパネなど、キャンバストップ車の専用仕様となっていた。

激レア! 5ドアハッチバックのキャンバストップ
マツダ・カペラCG キャンバストップ

ターセル/コルサ/カローラIIの3兄弟、マーチ、ミニカなど、1980年代後半にはコンパクトクラスを中心にキャンバストップが流行。そんななか、異色の個性を放っていたのがマツダの5代目カペラの5ドアハッチバックモデル、CGに100台限定で設定されたキャンバストップ。

メーカー自ら「おおらかに、のびのびと、大きなボディのキャンバストップ」と謳っているように、ミディアムサイズの車体とキャンバストップとの組み合わせは、なかなかのインパクト。生地色をブルーとするなど、あえてその存在を際立たせる演出もなされていた。

その他、4ドアセダンベースのキャンバストップ車としては、2代目のいすゞ・ジェミニの後期型にもユーロルーフという名称でキャンバス生地の開閉式ルーフを備えたグレードが設定されていた。

マツダ・カペラキャンバストップのカタログ

プレッシャーウェーブスーパーチャージャー、電子制御車速感応式4WSなど、メカニズム的なトピックスも多かった5代目カペラ。残念ながらキャンバストップ車に関する資料はほとんど残されていない

1980〜1990年代初頭にかけてはコンパクトカークラスを中心に、複数のモデルが存在していたこともあるキャンバストップ車ですが、近年では2002年に登場した2代目マツダ・デミオ以降、同様の機能を備えた国産新型車は現れていません。

環境性能やさまざまな運転支援技術の進化が時代の要請であることに異論はありませんが、クルマを楽しむ上において、走っているだけでもサンルーフ以上の開放感が満喫できるキャンバストップの魅力が再び見直される日が来ても、不思議ではないように思えます。皆さんはいかがでしょうか?

高橋陽介

たかはし・ようすけ 幼少期からのクルマ好きが高じ、九州ローカルの自動車雑誌出版社の編集を経てフリーランスに。雑誌やウェブを中心に、4輪・2輪関連の記事を執筆中。クルマにまつわる映画にも目がない。自身の愛車遍歴はもっぱらマニュアルのスポーツカーだが、後輪駆動とアナログメーターが必須条件のため、購入候補車が年々減って行くのが悩みとなっている様子。

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