50〜60代に突き刺さる! 若かりし頃憧れた4ドアハードトップ5選+25台
セダンにはない麗しさ! 20世紀の名作4ドアハードトップ【後編】1970年代〜80年代、日本国内では、Bピラーを持たない(ピラーレス)、もしくはBピラーをデザイン的に表に出さずに窓枠がない(ピラード)、4ドアハードトップが流行していた。若者はセダンよりもハードトップ。その理由は「カッコいいから」の一択。前後ウインドーを全開にしたときの爽快感に心躍らせた人は多いはずだ。特集後編では、そんな4ドアハードトップの中でも、ひとクセあった5台をピックアップし、モータージャーナリスト・高橋アキラさんが当時の思い出と共にじっくり解説。さらに、記事末には、「ん〜、懐かしい!」と思わず口に出してしまう25台もの4ドアハードトップをお届けします。
- 日産・セドリック(3代目/230型)1971〜1975年
若者が「目指せアメリカ」を感じたセドグロはカスタム人気も高かった - トヨタ・クラウン(6代目/110系)1979〜1983年
トヨタ初のターボエンジン搭載車は6代目クラウン - トヨタ・チェイサー(3代目/70系)1984〜1988年
ツインカム・ツインターボは日本初採用 - 三菱・ギャランΣ(5代目/E12系)1983〜1990年
今では軽・SUVメーカーだけど昔はセダン・クーペも強かった - マツダ・ルーチェ(5代目/HC系)1986〜1991年
2ローターターボを積んだ「広島のベンツ」 - シーマ、ローレル、ブルーバード、センティア… 全25台 歴代4ドアハードトップ車
- まだまだ続く4ドアハードトップ…スライドショー
日産・セドリック(3代目/230型)1971〜1975年
若者が「目指せアメリカ」を感じたセドグロはカスタム人気も高かった
1972年 日産・セドリック(230型)4ドアハードトップ 2600GX
日産セドリック・グロリアの230型は3代目(グロリアは4代目)として1971年にデビューしました。昭和を代表するカッコいい4ドアハードトップがデビューしたのですが、当時、小学生のタカハシくんにはそのカッコよさはわかりません……。が、数年もするとクルマに興味を持ちはじめ、次第にそのカッコ良さに惹(ひ)かれていくのです。
4ドアハードトップのデザインはアメ車をオマージュしたのか、クルマ好きにはアメリカが想起されました。ホイールだ、マフラーだ、車高だ……とカスタムの知恵をつけたタカハシくんは、クレーガーのホイールやマーク1のホイールを履かせたら、4ドアハードトップがもっとカッコよくなるとイメージを膨らませたものです。
当時のフラッグシップモデルには2ドアクーペが存在し、「スタイリッシュなことが大事なんだ」と言わんばかりにメーカー各社から発売されていました。無論、4ドアより2ドアのほうがカッコいい。だけど、知恵をつけたと同時に「4ドアのほうが便利じゃね?」的な、若輩のわりに現実を見ていたのかもしれません。
その感覚は若きタカハシくんだけでなく多くのクルマ好きも同様だったようで、瞬く間に4ドアハードトップが人気デザインに上り詰めるのです。三角窓のないフルオープンなサイドウインドー。流線形が美しいタルボ型フェンダーミラーを備え、多くの人の心をわしづかみにしました。
その後メーカー各社から4ドアハードトップがデビューし、さらに後世にまで受け継がれるスタンダードなデザインとなっていきます。
230型セド・グロのエンジンはデビュー当時2.0Lの6気筒でしたが、その後2.6LのL型エンジンを搭載します。
ルックスもパワーも備えた当時のセド・グロはライバルを寄せ付けない人気車種になったのです。
1972年 日産・セドリック(230型)4ドアハードトップ 2600GX
1972年 日産・セドリック(230型)4ドアハードトップ 2600GX
1972年 日産・セドリック(230型)4ドアハードトップ 2600GXの車内
1972年 日産・セドリック(230型)4ドアハードトップ 2600GXの車内
トヨタ・クラウン(6代目/110系)1979〜1983年
トヨタ初のターボエンジン搭載車は6代目クラウン
1979年 トヨタ・クラウン(110系) 4ドアハードトップ 2800ロイヤルサルーン
負けていられないのがトヨタのフラッグシップカー「クラウン」です。クラウンもちまたの4ドアハードトップ人気に影響されたのか1974年デビューの5代目から、「ピラードハードトップ」というモデルを出しました。
「あれ? ピラーがあるんじゃね?」
「いや、ないかもよ」
「え? どういうこと?」
実はピラーはあったんです。だから「ピラードハードトップ」。ただ窓を閉めていると、サッシュレスのサイドウインドーによってピラーがないように見えるデザインだったのです。なぜ、ピラーを残したのかは想像でしかありませんが、やはりボディ剛性上必要と判断したのではないかと。
クラウンはその4ドアピラードハードトップの人気より、2ドアクーペの人気が高かったのです。とりわけ3代目クラウンの2ドアクーペは人気が高く、67年の発売でしたが中古車となったクラウンも絶大な人気がありました。
「やっぱピラードハードトップは半端だよな」
「それよっか2ドアクーペは素でカッコいいじゃん」
「4代目はさぁ、なんであーなったん?」
「あ、クジラね」※4代目クラウンの通称「クジラクラウン」
「ひどくない?」
「大人には大人の事情があんだろ」
といった会話があったものです。
ちなみに、ルーフ後端をレザー仕上げにしたアメ車もどきもあったけど、排気量はセド・グロを上回る2.8Lを搭載。当時は排気量が大きいほうが偉かったのだ!
1979年 トヨタ・クラウン(110系) 4ドアハードトップ 2800ロイヤルサルーン
1979年 トヨタ・クラウン(110系) 4ドアハードトップ 2800ロイヤルサルーンの車内
1979年 トヨタ・クラウン(110系) 4ドアハードトップ 2800ロイヤルサルーンの車内
1979年 トヨタ・クラウン(110系) 2ドアハードトップ 2800ロイヤルサルーン
1979年 トヨタ・クラウン(110系) セダン 2800ロイヤルサルーン
トヨタ・チェイサー(3代目/70系)1984〜1988年
ツインカム・ツインターボは日本初採用
1984年 トヨタ・チェイサー(70系)アバンテ
4ドアハードトップは当初フラッグシップモデルからはじまったけど、見た目がカッコよく人気もあったので、誰が言ったかどうかしらんが、もう少し小さい車にも4ドアハードトップが登場した。
当時は日産のスカイラインが人気を博していた。トヨタにはスカイラインに対抗するような若い世代にウケそうなモデルがなかった。マークⅡは正統派セダンだったが、こいつの見た目を良くすればスカイラインのライバルになるんじゃね? と考えられたのではないだろうか。
そんな簡単な話じゃないだろうけど、マークⅡの兄弟車としてチェイサーがデビュー。その後、販売店の関係もありクレスタというのも加わった。
が、やっぱり正統派セダン。それでも4ドアハードトップのデザインはすっきりしていて、当初の若者相手というターゲットとは違ったかもしれないが、チェイサーはヒットした。
デビュー当時は「どうしちゃった?」というデザインも3代目の70系になるとガッチリとファンをつかんだのだ。本来、若い世代へのアプローチだったはずが、いつのまにかラグジュアリー系にシフトしていて、大人好みのミニクラウンになっちゃったと思われた。
ところが、ターボを搭載していたり、マニュアルミッションがあったりとスポーティな走りの装備があることから、中古車はシャコタン族やドリフト族の琴線に触れたのだ。さらに、ドアミラーが合法化されたのも大きい。
フェンダーミラーはどうみても教習車。アメ車、欧州車、どこを見てもフェンダーミラーのクルマはないのに、日本だけドアミラーは違法改造だった。それが1983年にドアミラーがOKとなったのだから、喜びもひとしおだ。
以降100系あたりまで人気を博し、FRレイアウトのチェイサーは長く人気を保ち続けたのだ。
1984年 トヨタ・チェイサー(70系)アバンテツインカム24
1984年 トヨタ・チェイサー(70系)アバンテツインカム24
1984年 トヨタ・チェイサー(70系)アバンテツインカム24の車内
1984年 トヨタ・チェイサー(70系)アバンテツインカム24の車内
三菱・ギャランΣ(5代目/E12系)1983〜1990年
今では軽・SUVメーカーだけど昔はセダン・クーペも強かった
1984年 三菱・ギャランΣ(E12系) ハードトップ 2000VR
「え? 三菱がセダンを作ってた?」
「今でこそSUVメーカーになったけど、クーペもセダンも作ってた」
「へ〜」
ヒットしたのがギャランΣ(シグマ)で、やっぱり4ドアハードトップ。このクルマの開発テーマが「光と風と空間」という、なんだか壮大なテーマ。詩でも吟じるのか? と個人的に突っ込みたくなった(笑)。
コイツがヒットしたもう一つの要因に、フラッシュサーフェスがあった。
この頃になっても4ドアハードトップの息吹は残りつつ、時代のデザイントレンドはフラッシュサーフェスに進化。ウインドーや灯火類の取り付け部に凸凹のないフラットでツライチな表面仕上げがカッコよかった。
「空力」という言葉がレース用語から市販車にも用いられるようになって、空気抵抗を減らしたデザインは「宇宙船か?」と思わせるほどのスッキリ感があった。
タイヤに覆いかぶさるフェンダーデザインなど、いかにも空気抵抗が少なそうに見え、インパクト十分で人気のセダンだった。
インテリアもフラッシュサーフェスで特徴的。三菱って度胸がいいのか? シトロエンの1本バーステアリングを想起させるハンドルデザインを取り入れていたのだ。当時は、いいものは真似しろ!の精神だったようで、進化の過程では誰もが通る道だったのかもしれない。
1984年 三菱・ギャランΣ(E12系) ハードトップ 2000VR
1984年 三菱・ギャランΣ(E12系) ハードトップ 2000VRの車内
1984年 三菱・ギャランΣ(E12系) ハードトップ 2000CXの車内
1983年三菱・ギャランΣ(E12系) 2000 GSR-Xターボ ※セダン
マツダ・ルーチェ(5代目/HC系)1986〜1991年
2ローターターボを積んだ「広島のベンツ」
1986年 マツダ・ルーチェ(HC系)
「広島にさ、マツダってあるじゃん」
「おー知ってる。サバンナとかカペラだろ?」
「いやいや、広島のベンツつうのがあんだよ」
「広島のベンツ? 六本木のカローラは聞いたことあるけど」
「これ、かっちょいいんだよ」
マツダはデザインにこだわりが強いのかもしれん。このルーチェ以外にも323ファミリアがその後爆発的に売れたし、コスモ/コスモLも売れた。いずれもデザインがよかった。
ルーチェは3代目からピラード4ドアハードトップを設定し、都度個性的だったが、この5代目はコンサバティブで欧州車のようなスタイルだった。横長のフロントグリルや、リヤのオーバーハングの長さ、そのあたりから「広島のベンツ」って言われてたのかもしれない。
そしてマツダといえばロータリーエンジン(RE)だが、「何それ?」という人も多くなったことでしょう。普通のエンジンとは構造がまるで違うエンジンを量産した世界初のメーカーなんです。
そのREをルーチェにも搭載。モーターのように滑らかに回転し続けるエンジンは天井知らずで、どこまででも回り続けます。ちょっとアホっぽく聞こえるかもしらんが、これが速さの秘訣でもあったのだ。
高級車の行きつくところの目標に静粛性の高さがあるけど、当時は「モーターのように静かだ」という表現が高級車の褒め言葉として使われていて、そうしたことからもマツダのルーチェは「広島のベンツ」だったのだ。
1986年 マツダ・ルーチェ(HC系)
- 高橋アキラ
たかはし・あきら モータージャーナリスト、公益社団法人自動車技術会 モータースポーツ部門委員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、日本モータースポーツ記者会会員。やんちゃなチューニング全盛期の自動車専門誌編集者時代を経て、技術解説、試乗レポートなどに長けた真面目なジャーナリストに。Y30グロリアワゴン、マスタングなど愛車遍歴にはマニアックな車も多い。
シーマ、ローレル、ブルーバード、センティア… 全25台 歴代4ドアハードトップ車
上述した5台以外にも“あの頃”を思い出させる4ドアハードトップはたくさんある。ぜひじっくりと見ながら懐かしんでみてください!
1983〜1987年 トヨタ・クラウン(7代目/120系)
4ドアハードトップ2800 ロイヤルサルーンG(1983年)
1987〜1991年 トヨタ・クラウン(8代目/130系)
4ドアハードトップ3000 ロイヤルサルーンG(1987年)
1975〜1979年 日産・セドリック(4代目/330型)
4ドアハードトップ 2000SGL(1975年)
1977〜1980年 日産・ローレル(3代目/C230型)
4ドアハードトップ 2000SGL-E(1977年)
1979〜1983年 日産・セドリック(5代目/430型)
4ドアハードトップ 280Eブロアム(1981年)
1979〜1983年 日産・グロリア(6代目/430型)
4ドアハードトップ ターボSGLエクストラ(1979年)
1979〜1983年 日産・ブルーバード(6代目/910型)
4ドアハードトップ 1800SSS-E(1982年)
1980〜1984年 日産・ローレル(4代目/C31型)
4ドアハードトップ ターボ メダリスト(1982年)
1983〜1987年 日産・セドリック(6代目/Y30型)
4ドアハードトップ V30E ブロアム(1983年)
1983〜1987年 日産・グロリア(7代目/Y30型)
4ドアハードトップ V30ターボ ブロアムVIP(1985年)
1983〜1987年 日産・ブルーバード(7代目/U11型)
4ドアハードトップ 1800ツインカムターボ SSS-S(1985年)
1987〜1991年 日産・セドリック(7代目/Y31型)
4ドアハードトップ V30ターボ ブロアムVIP(1987年)
1987〜1991年 日産・グロリア(8代目/Y31型)
4ドアハードトップ V20ツインカムターボ グランツーリスモSV(1989年)
1987〜1991年 日産・ブルーバード(8代目/U12型)
4ドアハードトップ SSS アテーサリミテッド(1989年)
1988〜1991年 日産・シーマ(初代/Y31)
タイプⅡ-S(1988年)