特集

縁の下の力持ち! クルマと半導体の深~い関係とは?

イチからわかる半導体Q&A【後編】

2022.11.05

監修・文=高根英幸/イラスト=北極まぐ

2022.11.05

監修・文=高根英幸/イラスト=北極まぐ

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一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会 グッドオアシスキャンペーン

いまや私たちの生活に欠かせない「半導体」。クルマをはじめ、炊飯器などの家電製品から、自分の分身ともいえるスマートフォンまで、とっても広く使われており、快適な生活を陰ながら支えてくれる存在です。でも陰に隠れすぎているのか「半導体ってよく聞くけど、どんなものか想像もつかない」なんて方も多いのでは? その理由はきっと「半導体の活躍の幅が広すぎる」から。あまりのバイプレーヤーっぷりに正体がつかみにくいのです。

最近は「半導体不足」という言葉を耳にすることも多いですが、「半導体とはいったい何なのか」「不足するとなぜ問題なのか」を知っておくと、現在の状況をより深く正確に理解できるようになるはず。

そこで半導体についてのアレコレを、JAF Mateらしくクルマという側面からご紹介します。

後編は「クルマと半導体」を深掘り! いかにも半導体が役立っていそうな先進技術から、「えっ! そんなことまで⁉」なアナログチックな機能まで、本当にクルマと半導体は深~い関係です。

半導体そのものについては【前編】「いまこそ知りたい! 現代社会の必需品「半導体」をやさし~く解説!」をご覧ください。

1.クルマと半導体の深~い関係

Q1 クルマにはどんな半導体が使われている?

A 耐久性・安全性を重視した半導体がいたるところに使われている

クルマに搭載されるCPUは、走行中の振動やエンジンルームの高熱で破損したりエラーを起こしてしまうと走行が不安定になり危険なので、パソコンやスマホ用よりも耐久性や信頼性を優先して選ばれます。そのためクルマに搭載される半導体は性能こそ飛び切りではないものの、ECU(エレクトリック・コントロール・ユニット)に搭載されるCPUだけでも数億個ものトランジスタが詰め込まれています。

たとえばオートエアコンには外気温、室内温度、日照度合いなどを検知するセンサーが使われています。その情報とエアコンの設定温度から、効率よく車内を冷暖房するために風の温度や風量、ダクト位置の選択などをコンピュータが判断して調整しています。

それにパワーウインドーは、スイッチ操作によってモーターが作動してサイドウインドーを上げ下げしているだけに思えますが、実際にはスイッチを操作するとモーターに電力を供給するだけでなく、窓が閉まり切れば電流の供給をストップしますし、腕や指を挟んでしまったらトルクリミッター(一定以上の力が必要な場合に停止する機構)によりやはり電流をカットします。

こうした動作を制御しているのがマイコン(マイクロコンピュータ)と呼ばれる半導体です。マイコンは、小さなチップ一つに制御のプログラムを書き込めるメモリと演算能力、通信機能を備え、乗員の操作による信号を受けて動作します。送られてきた信号によってさまざまな動きや機能を使い分けられるので、クルマの各部品をつなぐワイヤーハーネスが単純化でき、車体の軽量化と機能の充実を両立できる、というわけなのです。

ほかにも車体には、駐車時にバンパーと障害物との間隔を測る超音波センサー、車輪の回転速度を測るセンサー、ハンドルの角度を把握するセンサーなど、たくさんのセンサーが備わっています。

このように車体に張り巡らされたセンサーも半導体の一つなので、クルマにはマイコンに限らず、無数の半導体が使われているのです。

Q2 マイコン&センサーは走行にどうやって役立っている?

A 高度な技術からシンプルなものまで、
走行のほぼすべてで役立っている

最近のクルマにはマイコンが50~60個使われている、と言われています。たとえばパワーウインドーだけでも、4ドア車なら4個のマイコンを使用しているのです。

そんなマイコンとセンサーが、実際の走行にどのように役立っているのか見てみましょう。

ドライバビリティと環境・安全性能を両立

エンジンや変速機を制御するECUは、センサーによってさまざまな情報を集めて、ドライバーの操作に応えつつ環境性能や安全性も考慮して、加速や減速の内容(エンジンへの燃料供給や変速機のギアシフト、充電制御など)を組み立てています。

ドライバーを危険から守る

ADAS(先進運転支援システム)も高性能な半導体を駆使しながら、自車や周囲の動きを検知して、危険な状態と判断するとECUがブレーキをかけたり、ハンドルを操舵(そうだ)して乗員を交通事故から守っています。

クルマがコントロールを失ってしまうことを予防するESC(横滑り防止装置。自動車メーカーによってVSC、VDCなどの呼び名があります)も、カーブなどでタイヤが滑ったり曲がりきれないと判断したときに、4輪のブレーキを独立して制御するためにECUとたくさんのセンサーを利用しています。

一見シンプルな動作も半導体のお陰!

オートライト(ヘッドライトの消灯/点灯を自動で切り替える)やオートハイビーム(ハイビーム/ロービームを自動で切り替える)が実現したのも、半導体のお陰です。周囲の環境をセンサーで検知し、それを電気信号に変換してマイコンが受け取り、パワー半導体に指令を送って電気の流れを切り替えさせるなどして制御しています。ヘッドライトでこうしたことができるようになったのも、直接大電流が扱えるパワー半導体が普及したことと、省電力なLEDヘッドライトなどのお陰なのです。

2.半導体がなかったらクルマは1970年代に逆戻り!?

Q3 半導体がないとクルマはどうなる?

A  性能・燃費・快適性・・・。あらゆる面で弊害が発生

シンプルに重量増!

前でも書いた通り、マイコンを使うことで機能は充実させながらワイヤーハーネスを簡素化できるのがメリットなので、マイコンが使えないと、まずワイヤーハーネスの本数が増えて車体はかなり重くなってしまいます。

写っている配線のすべてがワイヤーハーネス。内装をはがすとワイヤーハーネスが驚くほど張り巡らされていることがわかる。

エンジンスタートだけでもコツが必要に

エンジンやATの制御は完全な機械式となるので、燃料の供給は機械式の燃料噴射装置、もしくはエンジンが空気を吸い込む力を利用して燃料を吸い込ませるキャブレター(気化器)を利用することになります。

燃費が悪化

スパークプラグへの点火を制御するのはコンピュータではなく回転式のディストリビュータになります。ディストリビュータはエンジン回転を利用して各シリンダーに電気を送り、エンジン回転が高まると遠心力を利用して点火するタイミングを変化させていました。

こうしたアナログで機械的な制御はキメ細かい制御ができないので、現代の排ガス規制をクリアすることはできませんし、燃費だって相当に悪化します。エンジン始動にコツが必要となったり、半年ごとのメンテナンスが欠かせなくなってしまうでしょう。

EVやクリーンディーゼルは・・・

EVは最近の発明のように思われるかもしれませんが、実はクルマが誕生した頃から存在していて、シンプルな構造で構成することが可能です。高い性能を追求しなければ鉛のバッテリーをアナログなコントローラーで制御するのは、技術的には実現できます。しかし1回の充電で巡航できる距離はそれほど長くはできませんし、急速充電にも対応することは難しいでしょう。

また高い環境性能と熱効率を実現しているクリーンディーゼルは、緻密(ちみつ)な燃焼制御が不可欠なので高性能な半導体が欠かせず、そもそも生産ができません。

快適装備は全部なし! エアコンも性能大幅ダウン!

メモリ機能付きの電動シートやオートエアコン、カーナビ、スマートキーといった便利な快適装備も、半導体を使わなければ実現できません。走行中の燃料消費量から燃費を計算してくれる燃費計も、半導体あっての機能です。

クーラーやヒーター(エアコンはこの2つを組み合わせています)は半導体がなくても搭載可能ですが、半導体がなければ走行中の快適性はかなり低下してしまいます。


このように半導体は、現代のクルマのような快適性能はもちろん、排ガスの削減や燃費改善などによる環境性能を実現するためにも、不可欠な部品なのです。

3.半導体の進化でクルマはどうなっていく?

Q4 半導体の進化がEVに与える影響は?

A  半導体の効率はEVの「電費」に直結

エンジンや変速機は(燃焼や伝達効率などの損失のほうが大きいので)半導体がより高効率で高性能になってもそれほど性能が向上することは望めませんが、EVやハイブリッド車は違います。

モーターは回転の制御や回生充電の効率から交流電流が用いられていますが、バッテリーは直流電流です。そのため直流と交流、電圧や周波数の変換に半導体が用いられているのですが、大電流を扱うだけに、わずかな効率の差でも変換時のエネルギー損失は非常に大きくなります。

電流を変換するパワー半導体の素材はシリコンが主流ですが、より効率の高いシリコンカーバイドや窒化ガリウムなどが開発され、変換損失を大幅に改善できることがわかっています。これが普及すれば、EVやハイブリッド車の充電や走行時の変換効率が高まり、燃費(EVは電費)や航続距離の伸長に貢献することでしょう。

Q5 半導体の進化が未来のクルマを実現する?

A  半導体の進化なくしてクルマの進歩はナシ!

クルマがどう進化していくかには、半導体の進化が影響している、と言っても言い過ぎではありません。

FCV(燃料電池車)や水素エンジン車など、水素をエネルギーとして利用する動力では、反応の速い水素を制御するために半導体の性能が重要な要素となります。

自動運転は、とにかく周囲の状況を把握するセンサーと解析するロジック半導体の高性能化が、実現性に大きく影響します。人工知能は人間の脳とは違い、情報の取捨選択が難しいので、たくさんの情報を取得してそれを処理する能力が問われるからです。

現在、研究開発が進められている「空飛ぶクルマ」も、周囲の空飛ぶクルマ同士との衝突を避けて安全に飛ぶためには、高性能な半導体と高度な制御ソフトで自動運転する必要があり、予測と制御の両方で飛躍的な技術の向上が求められます。

現在も半導体なくしてクルマは十分に機能することができませんが、これから安全性や環境性能を高めていくためにも、さらに高性能な半導体を利用していくことになるのです。

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