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いまこそ知りたい! 現代社会の必需品「半導体」をやさし~く解説!

イチからわかる半導体Q&A【前編】

2022.11.04

監修・文=高根英幸/イラスト=北極まぐ

2022.11.04

監修・文=高根英幸/イラスト=北極まぐ

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いまや私たちの生活に欠かせない「半導体」。クルマをはじめ、炊飯器などの家電製品から、自分の分身ともいえるスマートフォンまで、とっても広く使われており、快適な生活を陰ながら支えてくれる存在です。でも陰に隠れすぎているのか「半導体ってよく聞くけど、どんなものか想像もつかない」なんて方も多いのでは? その理由はきっと「半導体の活躍の幅が広すぎる」から。あまりのバイプレーヤーっぷりに正体がつかみにくいのです。

最近は「半導体不足」という言葉を耳にすることも多いですが、「半導体とはいったい何なのか」「不足するとなぜ問題なのか」を知っておくと、現在の状況をより深く正確に理解できるようになるはず。

そこで半導体についてのアレコレを、JAF Mateらしくクルマという側面からご紹介します。

今回は「半導体とはそもそも何なのか?」を深掘り!
クルマと半導体の関係については【後編】「縁の下の力持ち! クルマと半導体の深~い関係とは?」(11月5日公開予定)をご覧ください。

1.そもそも半導体って何だ?

Q1 半導体とはどんなモノ?

A  電気の流れを制御することで、幅広い活躍をするモノ

物質は金属のように電気を通す性質のものと、ゴムやプラスチックのように電気を通さない性質のものに分けられます。電気を通す物質を導体、通さない物質を不導体(絶縁体)と呼びますが、その両方の性質を併せ持つのが半導体、というわけです。

実際の半導体の多くは、不導体である単結晶化したシリコンに金属を薄く貼り付けて、そこに電子回路を形成することで作られています。どういう回路にするかによって特性も変化しますが、共通しているのはさまざまな条件を与えることで、電子の流れを制御できるようになること。この特性を生かして、半導体はあらゆる製品に使われるようになりました。

「半導体」とひと口に言いますがこれはとても大きなくくりで、その性質によって役割や目的はまったくと言っていいほど異なります。「鉄」や「チタン」「アルミニウム」など性質が違うものを「金属」とひとくくりに呼んでいるようなものですね。

Q2 半導体の種類と役割は?

A  特性によって違うが大きく分けると5つ

さまざまな種類のある半導体ですが、その役割を大きく分けると、「演算処理をする」「電流を変換する」「データを記憶する」「光を作ったり光を感じ取る」「温度や圧力の強さを計測する」といったものがあります。

大部分の種類の半導体は、トランジスタとダイオードの性質を利用しています。トランジスタは電気信号の増幅やスイッチング(電流を流したり切ったりする)ができるもので、演算処理を行うプロセッサーや、データを記憶するメモリもトランジスタの性質を利用しています。

ダイオードは電気の流れを一方通行にして回路を安定させたり、光を電子に変えたりその逆も行える特性を発展させることで、直流電流と交流電流を変換するインバーターやカメラの眼となるイメージセンサー、太陽の光で発電するソーラーパネルなどといったさまざまな用途に利用されています。

Q3 実際にどのような形で組み込まれているの?

A 同じ性能の半導体を何個も使ったり、違う性能の半導体をまとめて使ったり、製品によってさまざま

さまざまな種類のある半導体ですが、単独で使われるとは限りません。たとえばコンピュータの頭脳であるCPUや映像処理に特化した半導体チップであるGPUは、同じ機能の半導体をいくつも並列で連結させ、同時に演算処理させることで高速化を実現しています。

また異なる機能を持つ半導体をまとめることで、複数の機能を併せ持った半導体も存在します。たとえばマイコン(マイクロコンピュータ/マイクロコントローラ)は豆粒ほどの小さなチップにプロセッサーとメモリ、信号を入出力するICの機能がまとめられています。これによって、小さなチップ一つで簡単な制御を実行できるのです。

また最近は、半導体を利用した光源も普及しているのをご存じでしょうか? それはLED(発光ダイオード)です。LEDは半導体に電流を流したときに生じるエネルギーを光に変えたもので、電球のようにフィラメントを加熱して発光させるのではなく、直接エネルギーを光に変換するので、電力消費の効率が良いのが特徴です。今やクルマのヘッドライトや信号機、街灯、家庭の明かりなどさまざまなところで使われ、消費電力を抑えながら明るく照らし出すことで、夜間の安全性を高めています。

2.クルマと半導体不足について

Q4 半導体不足はなぜ起こった?

A  コロナ禍で需給バランスが崩れたことが原因

半導体は別名「産業の米」とも呼ばれている、今やあらゆる産業に欠かせない部品です。スマートフォンやパソコンだけでなく、電気製品のほとんどに組み込まれており、仕事や生活をするうえで欠かすことのできない部品なのです。

しかし、コロナ禍によるロックダウンで海外の半導体工場が生産を停止してしまったことや、同時期に販売が落ち込んだ自動車メーカーが半導体の発注を減らしてしまったことが重なり、半導体メーカーはより利益が見込める家庭用ゲーム機などに使われる半導体に生産を割り振ってしまったのです。

その後コロナ禍が長期化したことでクルマの需要は高まったのですが、半導体メーカーもすぐには増産などに対応できません。しかも家庭用ゲーム機もコロナ禍でさらに需要が増えたため、クルマに必要な半導体が不足する事態になってしまったのでした。

Q5 半導体が足りないだけでクルマの生産がストップ?

A  現代のクルマは複雑なので、一つでも部品が足りないと完成しない

半導体が足りないと、なぜクルマが生産できなくなるのでしょうか? それは、近年のクルマは部品のモジュール化(各部の構成部品を一つにまとめてクルマに組み付ける)が進んでおり、その中核となるのが、先ほど説明したマイコンと呼ばれる半導体だからです。

ちなみにクルマの部品で供給不足になっているのは、半導体だけではありません。車体の各部に組み込まれるマイコンをつなぎ合わせるワイヤーハーネスも新興国などで生産されており、やはりロックダウンにより工場の稼働がストップしたりしています。

半導体は代替品の利用が可能な場合もありますが、ワイヤーハーネスは車種ごとの専用部品なので、代用が利かないのです。

クルマは部品が一つでも足りなければ完成しない複雑な工業製品なので、自動車メーカーは半導体の搭載量を減らした仕様を設定するなど、さまざまな工夫で生産できるように努力しています。

Q6 半導体不足はこれからどうなる?

A  いったん落ち着く予想だが、半導体需要はこれからも続く

新型コロナウイルスが流行して以降、世界に大きな影響を与えてきた半導体不足ですが、同じ半導体でもメモリなど一部はすでに供給不足が解消されて、むしろ値崩れが起こるほど在庫が過剰な状態のようです。しかし、別の半導体生産に振り替えるにも半年程度の時間がかかります。

それに日本国内での半導体の生産体制も整備されていますので、2、3年後には国内での半導体生産量が大幅に増加することが見込まれます。

世界中でも半導体の生産量は伸びており、現在も可能な限りのハイペースで生産されているので、いずれは国内自動車産業での半導体不足は完全に解消されると予測されています。しかし、半導体はさまざまな電気製品に用いられているので、世界中で需要が逼迫(ひっぱく)する状況はこれからも起こり得るでしょう。

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