|JAFロードサービスカー図鑑 File No.5 EV充電対応サービスカー
構成=ダズ/レポート&動画=吉川賢一/写真=渡部竜征

約20分で急速充電が可能! 増加するBEVの電欠トラブルに対応するロードサービスカー

File No.5 EV充電対応サービスカー

どんな救援要請にも迅速かつ的確に対応できるよう、JAFにはさまざまなタイプのロードサービスカーが存在する。近年ではBEV(バッテリー式電気自動車)の増加により、電欠(電池切れ)トラブルも増えている。今回は、そんなBEVの電欠トラブルに対応した「EV充電対応サービスカー」について、詳しく紹介しよう。

目次

2023年度の電欠による救援要請は全国で975件!

「EV充電対応サービスカー」は、BEVに急速充電をすることができる専用の装置を搭載したサービスカーだ。電欠によって走行不能となったBEVに急速充電をして、充電スポットまでの移動を可能とすることが主な目的だ。

2023年度のJAFの救援出動件数は、全国で年間226万件以上あるが、そのうちBEVに関わる出動件数は全国で8,625件。このうち電欠に関する救援要請は975件あった。今回説明していただいた髙山真樹隊員が所属するJAF東京支部 東東京ロードサービス隊港基地でも、月に1~2件、電欠による救援要請があるという。ただ東京都全体でみると、電欠による救援要請はもっと多く、しかも年々増えてきている。なかには、夜間に充電スポットまでたどり着いたが、充電設備が故障していたため、その場で電欠してしまった、といった事例もあったそうだ。

昨今は低価格のBEVも登場したことで、BEVが珍しい乗り物ではなくなってきた。こうした状況の中、電欠を救援するためのEV充電対応サービスカーは、今後はさらに欠かせない存在となってくるはずだ。

EV充電対応サービスカーのフロント外観写真

EV充電対応サービスカーの外観。JAFのロードサービスカーの中では小型サイズ。大きなバックドアやスライドドアを採用した車種なので、救援に必要な荷物の取り出しが容易

EV充電対応サービスカーの正面外観写真

EV充電対応サービスカーの真後外観写真

EV充電対応サービスカーの真横外観写真

EV充電対応サービスカーのリア外観写真

JAFのロードサービスカーの中では小型サイズ。大きなバックドアやスライドドアを採用した車種なので、救援に必要な荷物の取り出しが容易

充電時間はおよそ20分で、約20kmの走行が可能に

急速充電器の差し込み口形状写真

急速充電の給電ケーブルは一般的なCHAdeMO規格だが、さまざまな車種に対応できるようにアタッチメントを用意している

EV充電対応サービスカーの荷台には、急速充電器の他に、パイロンやエアータンク、ジャッキ、一般工具などの資機材が積載されている。四角い大きな白いボックスが急速充電器で、下の箱は電力を蓄えるバッテリー、上の箱は充電システムで、2つの箱を重ねて1セットになっている。なお充電装置は重量があるため、荷台から楽に搬出できるよう、レールの上に設置されている。

給電ケーブルの先端の形状は、一般的なCHAdeMO(チャデモ)規格だ。差し込み口形状が合わない一部の車種の場合はアタッチメントを介して接続することも可能だ。
急速充電にかかる時間はおよそ20分間。約20kmの走行ができる充電量を想定している。電欠したBEVが動けるようになったら、最寄りの充電ポイントへ向かってもらい、そこで十分に充電をしてもらう。EV充電対応サービスカーに搭載している救援用のバッテリーは、一度の給電で電力を使い切ってしまうため、電欠救援後は基地に戻り、24時間以内にフル充電する必要がある。

荷物を取り出しやすいよう、大きな開口部のリアハッチを持つ商用バンがベース

荷物を取り出しやすいよう、大きな開口部のリアハッチを持つ商用バンがベース

荷台にはパイロンのほか、エアータンクやジャッキ類、一般工具などの資機材を積んでいる

荷台にはパイロンのほか、エアータンクやジャッキ類、一般工具などの資機材を積んでいる

交換用の新品バッテリーやスペアタイヤ、消火器なども積載している

交換用の新品バッテリーやスペアタイヤ、消火器なども積載している

クルマの荷台から楽に搬出できるよう、急速充電器はレールの上に設置されている

クルマの荷台から楽に搬出できるよう、急速充電器はレールの上に設置されている

下の箱が電力を蓄えているバッテリー、上の箱が充電システム。上下に重ねることで接続完了

下の箱が電力を蓄えているバッテリー、上の箱が充電システム。上下に重ねることで接続完了

急速充電器は2段組みで1セット。約20分の給電で20km程度の走行が可能

急速充電器は2段組みで1セット。給電したら24時間以内に基地でフル充電する

EVの救援作業には、専用の耐電装備を使用することも

こうした電欠だけでなく、EVの救援要請には事故によるものもある。そのとき注意しなければならないのが、感電の危険性や有害なバッテリー液などが漏れ出している可能性があることだ。そうした際も安全に救援作業を行えるように、耐電グローブのほか、高電圧に耐えられる膝当て、目を保護するためのゴーグル(事故車のバッテリー液が目に入らないよう防御するため)、耐電マットなどの装備や資機材を用意している。また、JAFロードサービス隊員が履いている靴は、すべて耐電仕様となっている。

万が一の漏電に備え耐電グローブと作業グローブを装着する

万が一の漏電に備え耐電グローブと作業グローブを装着する

JAF隊員が履いている靴は耐電仕様となっている

JAF隊員が履いている靴は耐電仕様となっている

耐電グローブ、耐電膝当てなどを装着した作業姿

ゴーグル、耐電グローブ、耐電膝当てなどを装着した作業姿

EV充電対応サービスカーの詳細は、こちらの動画をチェック!

JAFが到着するまでは安全な場所に退避を!

JAF東京支部 東東京ロードサービス隊 港基地の髙山真樹隊員

JAF東京支部 東東京ロードサービス隊 港基地の髙山真樹隊員

「BEVで電欠してしまった際は、できる限りクルマを路肩に止め、停止表示板などで安全対策を行ってください」と髙山隊員。また、高速道路や自動車専用道路上でトラブルが発生した場合は、大変危険なため、「すぐにJAFへ救援要請をしていただき、サービスカーが到着するまで、必ずガードレールの外など、安全な場所へ避難をお願いします」とのこと。事故に遭った際はもちろんだが、電欠で動けなくなってしまったことが、新たな事故につながらないよう冷静に対応したい。

<次回予告>
次回は9月9日公開予定。
レッカー車でもバイクのけん引ができる「二輪アタッチメント」を紹介します!

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