ロードサービスカーの中で最大サイズとなる車積載車! 故障車を荷台に積んで搬送
File No.4 車積載車パンクや落輪、バッテリー上がりなど、クルマに関するトラブルからドライバーを救援するJAFには、さまざまなタイプのロードサービスカーがあり、救援内容や状況によって最適なロードサービスカーを使い分けている。今回は、トラブルが発生した車両を荷台に積載して搬送することができる「車積載車」について、詳しく紹介しよう。
JAFのロードサービスカーの中では最大級のサイズとなる車積載車
荷台部分は無線リモコンによって昇降操作が可能となっている
走行できなくなった車両を荷台に積んで速やかに搬送
「車積載車」は、主に動けなくなった四輪車の搬送で使われる大型のロードサービスカーだ。エンジンを始動できなかったり、事故などで自走ができないといった救援要請の際に、車両をそのまま荷台に載せて搬送することができるため、速やかな移動が可能となる。荷台の長さは約5.7mあり、全長5m程度の乗用車であれば積載が可能だ。
積み込み作業には、油圧ウインチを使う。この油圧ウインチは最大2トン程度の力で引っ張ることができるが、1トン程度あればほとんどの車両を引っ張ることが可能とのこと。ウインチの操作は無線リモコンで行うが、トラブルが発生した際に故障車両が逸走しないように、JAF隊員は故障車に乗り、いつでもブレーキが踏めるような状態で操作を行う。ウインチの奥に見える黒い丸レバーは、ウインチ用のクラッチをオンオフするためのクラッチレバーだ。クラッチを切るとフリーにワイヤーを伸ばすことができ、クラッチを入れると引っ張ることができる仕組みだ。
荷台の長さは約5.7m。ほぼすべての乗用車を積載可能
車積載車の荷台は、無線リモコン操作で後方へ降ろすことが可能
油圧ウインチは最大2トン程度の力で引っ張ることが可能
基本的なトラブルに対応した資機材も搭載している
乗車席後方には、救援作業用の工具や空気を充填するためのエアータンクなどの救援資機材が積載されており、ボディサイドの荷台下には、ジャッキ類、パイロン、停止表示板、携帯バッテリー、燃料の入った携行缶なども備えられている。白い台車は、故障でギヤが抜けなかったりパーキングブレーキを解除できないなどの場合に、タイヤ下に敷いて転がしながら車積載車へ積み込むために用いる資機材だ。
荷台の前方(キャビン後部)には救援資機材を収納しているボックスが並ぶ
ボックス内には通常の工具や空気を充填するためのエアータンクなどがある
荷台の床面には車両固定用のベルトなどを固定するため複数の穴が開いている
荷台下には、ジャッキ類、パイロン、停止表示板などを備える
燃料の入った携行缶も搭載。右からレギュラー、ハイオク、軽油で色分けされている
事故による破損やトラブルで救援車両のタイヤが動かない場合などの際に使用するローラー
車両を積載する前に、まずは作業スペースを確保
車両を安全に積載するためには、作業スペースを確保することが重要になる。車積載車自体の長さに加えて、5.7mの荷台を降ろすため、積載車の長さも含めて乗用車3~4台分ほどのスペースが必要となる。速やかに積み込み場所を確保したら、パイロンを立てて周囲を走る車へ周知し、人が入り込まないように安全確保を行う。
積載作業でまず行うのが、故障車へのけん引フックの取り付けだ。フロントバンパーにはけん引フックを取り付けるためのネジ穴が装備されているが、傷防止のためネジ穴の周囲を養生テープなどで囲い、丁寧にけん引フックを取り付けていく。次に、フロントタイヤからフロントバンパー前までの長さ(オーバーハング)をメジャーで測定し、荷台に固定する輪止めの位置を調整する。近すぎると前側に衝突してしまうし、遠すぎると車両後方がはみ出てしまうことがあるため、位置の調節が重要。
その後、ウインチについているワイヤーを伸ばしていくのだが、このとき、真っすぐに引っ張れるよう、滑車の左右位置を、けん引フックの取付け位置に合わせて調節する。
積載作業の流れ-その1-
けん引フックを取り付けるためのネジ穴の周囲をマスキングしてフックを取り付ける
積載作業は荷台を降ろして作業するため、車両の後方に乗用車3~4台分ほどのスペースが必要
フロントタイヤからフロントバンパー前までの長さをメジャーで測定し、荷台の輪止め位置を調整
積載作業は常に安全を確認しながら、かつ確実に
けん引フックとワイヤーをつないだら、隊員が故障車へ乗り込み、無線リモコンで救援車をゆっくりと引っ張っていく。故障車はエンジン停止でギヤをニュートラル状態にして、ウインチだけの力で引っ張り上げていく。このとき、フロントバンパー下部が車積載車の荷台に擦らないように、車から降りて下まわりを何度も確認しながら慎重に行う。また、車幅に合わせて輪止めの位置も調整する。
ウインチを使う作業の際には、ワイヤーは絶対にまたいではいけないルールがある。ワイヤーには強いテンションがかかっているため、隊員だけではなく、待機中のユーザーが隊員のまねをしてまたぎ、転倒してけがをするなどの事故を防止するためだ。救援現場では、徹底した安全確保を行っている。
車両を荷台に積載したら、タイヤを固定する作業を行う。搬送中は大きく揺れることがあるため、故障車がずれないよう、4輪すべてにベルトなどの資機材を使って固定していく。タイヤが外れてしまっている車を搬送する場合は、サスペンションやボディの頑丈な部分にベルトをかける。
固定が完了したら車積載車の荷台を元の位置へと戻していく。操作は無線リモコンで行うが、荷台の引き上げ完了までにかかる時間はわずか30秒ほど。あっという間に車載位置までスライドし、積み込みが完了となる。
積載作業の流れ-その2-
電動ウインチのワイヤーを引き出し、故障車のけん引フックにワイヤーをしっかりつなぐ
故障車に乗り込みブレーキを踏める状態で、無線リモコンでゆっくりと引っ張っていく
故障車を所定の位置に引き上げたら、固定ベルトを使ってタイヤをしっかり固定
パンクなどでタイヤでの固定ができない場合は、故障車についている固定用のフックなどを使用して固定を行う
車積載車の荷台の引き上げ操作は、無線リモコンで行う
わずか30秒ほどで荷台が前方へとスライドして、積み込み作業完了となる
車両の積載作業の詳細は、こちらの動画をチェック!
走行できなくなった場合は、無理せずJAFに救援要請を!
JAF本部ロードサービス部技術課の中野司さん
JAFロードサービス部技術課の中野さんによると、「万が一走行できない場合は、安全確保をしながら、車両を安全に搬送しますので、安心してJAFへ救助要請をお願いいたします」とのこと。路上での作業は危険が多いため、1分1秒でも早く、安全な場所へ移動する必要がある。そのため常に自己研鑽を重ね、一連の積み込み作業を身体に染み込ませているという。ドライバーの責任として、JAFに救援要請をしなければならない状況はできる限り避けたいが、万が一の際に、安心して頼ることができるのは心強い。無理せずJAFに救援要請を!
<次回予告>
次回は8月9日公開予定。
増加している電気自動車の電欠トラブルに対応した「EV充電対応サービスカー」を紹介します!
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