テーマトーク：成長しました【1】

育てやすい果樹だと友人から聞き、８年前に140cmほどの線の細いレモンの木を、庭に植えました。その後、夏の暑さや台風の猛威、冬の寒さにも耐え、ぐんぐんと伸び、幹も太く立派な木に成長しました。

植えてから５～６年ほどたった初夏に、初めてレモンの花が開花しました。その翌年には３個ですがやっと実をつけました。その時の喜びは今でも忘れられません。

そして今年は30個以上のレモンを収穫するほどに。秋から冬にかけて、青い実が黄色く色づく頃には、庭がレモンのいい香りでうっとりとなります。レモンを使った料理も研究中です。庭で採れたレモンは、無農薬で皮ごと食べられるので、近所におすそ分けすると喜んでもらえます。　

レモンの木は、すくすくと育ってくれ、我が家になくてはならない自慢の木になってくれました。来年も収穫が楽しみです。

私には、小学校から剣道を始めた息子が5人います。竹刀が当たると場所によっては痛いですし、防具は実に重いこともあり、剣道は大変だなと思いながら息子たちを見守ってきました。

良い先生と友達に恵まれたこともあってか、5人とも大人になった今でも、剣道を続けています。剣道で培った強靭な気力・体力・精神力を存分に発揮して、それぞれ消防士、刑務官、自衛官、教員、報道など人の役に立つと思われる仕事に就いたことは、親として誇りに思っています。

息子たちは忙しい日々を送っていますが、たまに集まって竹刀（しない）を握ると、あっという間に子供の頃に戻ったようににぎやかに稽古をしています。今振り返ってみると、毎回の送り迎えや寒稽古など、大変なことが多く思い出されますが、息子たちの成長した頼もしい姿を見ると自分も報われた気持ちになり、応援し続けてきて本当に良かったなと実感しています。

私の孫は小学生の頃に書道を習っていて、昇級するたびにうれしそうに賞状を見せてくれました。孫に影響を受け、私も60歳から書道を習い始めました。墨の香りはどこか懐かしく、また、心静かに筆を進める静寂な時間の流れが、心を落ち着かせてくれます。

私の雅号は「花風」です。ある友人からは「花鳥風月からいただいたのね」と言われましたが、実は孫の名前「風花」を逆さにしてつけたものです。そして、孫の応援もあり私は書道の師範昇段試験に挑戦することに。２回落ちて悔しい思いをしましたが、３度目の正直でやっと念願の師範免許を取得することができました。

最近は、メールでのやり取りが主流で、私のまわりでもスマートフォンでのLINE交換が多くなっています。機械にめっぽう弱いアナログ人間の私には、手書きだからこそ伝わる手紙が合っています。とはいえ、時代に合わせてスマホも勉強して、また成長していきたいなと思っています。

家庭のことはすべて妻任せだった私ですが、80歳を過ぎて心臓病が悪化し、2回の手術と入院が必要となってしまいました。

入院中ずっと病院のベッドで過ごしていると、これからの日々をどう過ごしたら良いのだろうかと考えることが多くなりました。

この歳になるまで私に欠けていたのは、家庭のことを考えることや、家族への協力だったことに気が付きました。普段、何気なく行われている家事を当たり前と思い、妻への文句ばかりで、「ありがとう」と感謝の言葉をかけることもありませんでした。

そこで、できることから始めてみようと一大決心をして、家族と一緒に買い物に出かけたり、掃除や食事作りを手伝ってみたりすることにしました。まだまだ自分なりに成長していきたいです。

ついこの間まで、私が娘の送迎役でした。遠方の高校と大学に通っていた娘を、最寄り駅まで毎日送迎。帰りが遅い日には「迎えに来て」と、不安そうな声で私に電話をしてくることもありました。

それが今では、立場が逆転。「お父さん、乗っていく？」と声をかけてくれる娘。出かけたいところがあるなら、車で送り迎えするよと言ってくれます。コロナ禍のため、高齢の私は外出をずっと控えています。車のハンドルを握らない日が続き、車の運転に自信がなくなってしまいました。自信がないから、出かけたいけれど出かけなくなる……といった悪循環にも。

そんな私を気遣ってくれる娘。頼もしく成長したなと親としてはうれしく思っています。