ベンガラの屋根が連なる高梁市吹屋地区の風景
文=宮田珠己 / 撮影=阿部吉泰 / イラスト=田中 斉

岡山県高梁市ドライブ旅。 吹屋の赤い町並みと備中松山城をめぐる

吹屋、備中松山城、教会堂へ。高梁の歴史をたどる

吉備(きび)高原の山あいに抱かれた岡山県高梁(たかはし)市には、全国でもここでしか出会えない風景がある。赤で彩られたベンガラの町・吹屋ふるさと村と、日本で唯一天守が現存する山城で雲海に浮かぶ備中(びっちゅう)松山城、さらには擬洋風な意匠が異彩を放つ基督教会堂など。なぜそうした多様でユニークなスポットが高梁市に集中しているのか。そこにはこの地ならではの理由がある。その歴史を探るべく、クルマを走らせた。

目次

まずは吹屋地区へ。“赤”で栄えた山あいの町を歩く

吹屋ふるさと村の町並み

吹屋ふるさと村のメインストリートを歩く

吹屋ふるさと村の町並み

壁や格子にもベンガラが塗られている。耐水性が高く、熱で変色もしないうえ、防虫・防腐効果があるので、木材を劣化させないという

ふるさと村村長の戸田さん

ここで生まれ育った、ふるさと村村長の戸田誠さんが案内してくださった

片山家住宅の隠し階段

吹屋ベンガラの製造・販売をしていた老舗の商家、旧片山家住宅の隠し階段

旧片山家住宅のすりガラスの電灯

商談に使われた主屋の座敷には、高価なすりガラスの電灯が使われている

ベンガラで染色する職人さん

ベンガラ染めの服やストールを作っている職人さん。ピンクのストールが一番人気だそう

ベンガラの染料

ベンガラでつくられた3種の染料。焼く温度を調整するなどして、いろいろな色が出せるとのこと

吹屋ふるさと村のメインストリートを歩く

壁や格子にもベンガラが塗られている。耐水性が高く、熱で変色もしないうえ、防虫・防腐効果があるので、木材を劣化させないという

ここで生まれ育った、ふるさと村村長の戸田誠さんが案内してくださった

吹屋ベンガラの製造・販売をしていた老舗の商家、旧片山家住宅の隠し階段

商談に使われた主屋の座敷には、高価なすりガラスの電灯が使われている

ベンガラ染めの服やストールを作っている職人さん。ピンクのストールが一番人気だそう

ベンガラでつくられた3種の染料。焼く温度を調整するなどして、いろいろな色が出せるとのこと

高梁市吹屋伝統的建造物群保存地区 /高梁市成羽町吹屋 Tel. 0866-29-2811

岡山桃太郎空港から1時間余り、森や畑のほかに目にするものも少ない、のどかな風景のなかを走っていくと、不意にその町は現れる。薄紅色の土壁を擁した家屋が見えてきたら、そこが吹屋ふるさと村だ。ジャパンレッド発祥の地と呼ばれる吹屋は、江戸から明治、大正、昭和にかけて、銅とベンガラ(酸化鉄を主成分とする赤色顔料)の産地として全国にその名が知られていた。なかでもベンガラは国内でも屈指の品質を誇り、最盛期には全国の約95%のシェアを占めていたほど。決して色落ちしない吹屋のベンガラは、伊万里や九谷の陶磁器の絵付けに使用され、日本陶磁器の「赤」すなわちジャパンレッドの人気を支えたのである。その歴史とストーリーが、令和2年に「ジャパンレッド」発祥の地-弁柄と銅の町・備中吹屋-として日本遺産に認定されている。

吹屋には、ベンガラで財を成した豪商たちの邸宅が今も残る。石州瓦や窓格子まで赤く彩られた町並みは、日本離れした趣がある。

国の重要文化財にも指定されている旧片山家住宅に足を踏み入れると、その繁栄ぶりが実感できた。出格子やなまこ壁が美しい外観に、銘木を用いた座敷や船底天井など、意匠を凝らしたつくりが見事だ。なかでも印象に残ったのは、押し入れの中の隠し階段。2階建てと思っていた建物に、秘密のような3階の部屋があった。「江戸時代後半は治安も悪く、自分の身は自分で守らないといけなかったのでは」と村長の戸田さん。盗賊を警戒するほど裕福だったのだろう。不謹慎かもしれないが、忍者屋敷のようでワクワクした。

かつての栄華をしのぶ擬洋風建築、旧吹屋小学校

旧吹屋小学校校舎

堂々たる風格の旧吹屋小学校校舎

旧吹屋小学校校舎の教室

東校舎には明治時代の教室も再現されている

校舎内に展示された九谷焼の鉢

吹屋ベンガラで色付けされた九谷焼の焼き物。朱色の発色がひときわ美しく、色落ちもしないため高額で取引された

三菱の紋が彫られた銅の釣鐘

当地で銅山を手掛けた三菱財閥の創始者、岩崎弥太郎によって寺社に寄進された銅の釣り鐘。三菱の紋が彫られている

堂々たる風格の旧吹屋小学校校舎

東校舎には明治時代の教室も再現されている

吹屋ベンガラで色付けされた九谷焼の焼き物。朱色の発色がひときわ美しく、色落ちもしないため高額で取引された

当地で銅山を手掛けた三菱財閥の創始者、岩崎弥太郎によって寺社に寄進された銅の釣り鐘。三菱の紋が彫られている

旧吹屋小学校校舎 /高梁市成羽町吹屋1290-1 Tel. 0866-29-2811

ふるさと村のメインストリートから少し歩くと、旧吹屋小学校が見えてくる。西洋の雰囲気をまとった堂々たる木造校舎で、屋根には赤褐色の石州瓦がふんだんに使われている。これほど立派な小学校が山中の町にあることに驚かされる。明治後期に建てられ、県の重要文化財に指定されている。平成24(2012)年の閉校後、現在は保存修理工事を経て、観光施設として活用されている。

なかでも印象的なのが、三間廊下と呼ばれる幅広い廊下だ。卒業生でもある戸田さんによると、雨の日には体操場代わりにも使っていたという。明治時代の復元教室や講堂も残り、産業で栄えた町の豊かさが伝わってくる。

吹屋名物「スープカレーの店 つくし」で、ハートフルランチ

スープカレーつくしのとと道スープカレー

海老、ホタテ、イカ、あさりとたっぷり野菜が入った、とと道スープカレー(1,600円)

スープカレーを食べる人

辛さは4種類から選べる。中辛を選んだ。やさしいスープがおいしい

チキンカツカレー

大きなチキンカツとたっぷり野菜が入ったチキンカツスープカレー(1,500円)も人気

スープカレーつくしの吉川さん一家

スープカレーの店 つくしは、吹屋地区で生まれ育った吉川さん一家が切り盛りしている

スープカレーの店 つくしの外観

ベンガラ染めののれんがかかるスープカレーの店 つくしの外観。休日には行列ができ、午後1時に売り切れることもあるそう

ベンガラで色付けしたコーヒーカップとソーサー

ベンガラで染めた地元陶芸作家によるコーヒーカップ。カップの底とソーサーに、町並みが描かれていておしゃれ

海老、ホタテ、イカ、あさりとたっぷり野菜が入った、とと道スープカレー(1,600円)

辛さは4種類から選べる。中辛を選んだ。やさしいスープがおいしい

大きなチキンカツとたっぷり野菜が入ったチキンカツスープカレー(1,500円)も人気

スープカレーの店 つくしは、吹屋地区で生まれ育った吉川さん一家が切り盛りしている

ベンガラ染めののれんがかかるスープカレーの店 つくしの外観。休日には行列ができ、午後1時に売り切れることもあるそう

ベンガラで染めた地元陶芸作家によるコーヒーカップ。カップの底とソーサーに、町並みが描かれていておしゃれ

スープカレーの店 つくし /高梁市成羽町吹屋721 Tel. 080-2940-9540 ※Facebook公式ページをご覧になるには、アカウントが必要になります

お昼は、吹屋ふるさと村の中心に店を構えるスープカレーの店「つくし」へ。なぜ吹屋にスープカレーなのかと思ったが、オーナーの吉川昭さんが、かつて岡山市内にあった人気店の味に惚れ込み、その味を受け継いだのが始まりだという。人気の「とと道スープカレー」の名は、かつて笠岡で水揚げされた魚を吹屋まで運んだ道にちなむもの。魚介や野菜がたっぷり入った一皿は、20種類のスパイスを使いながらも、やさしい味わいだった。店は吉川さん夫婦と息子夫婦が切り盛りしており、家族経営ならではの穏やかな空気も印象に残った。

吹屋の繁栄は地下から始まった。笹畝坑道で知る鉱山の記憶

笹畝坑道の入り口

笹畝坑道の入り口

笹畝坑道の内部

坑道は、約250m。30分ほどで見学できる

笹畝坑道の入り口

坑道は、約250m。30分ほどで見学できる

笹畝(ささうね)坑道 /高梁市成羽町中野1987 Tel. 0866-29-2811 ※見学の際は3日前までに事前予約が必要

吹屋の繁栄を支えたのが、銅の産出とベンガラの原料となる硫化鉄鉱石だった。吹屋産のベンガラは発色がよく色落ちしにくく、高級品として珍重されたという。

その採掘の現場を今に伝えるのが笹畝坑道だ。坑道はほぼ一本道で歩きやすいが、途中に広い空間や行き止まりの穴が残り、鉱脈を追って掘り進めた痕跡がうかがえる。地中300mにも及んだ採掘の現場を思うと、吹屋の繁栄が地下の過酷な労働に支えられていたことが実感される。

産業遺構ベンガラ館で、厳しかったベンガラ製造の舞台裏を知る

ベンガラ館の石臼

水力で石臼を回し、時間をかけてベンガラを細かい粉にする装置

ベンガラの元になる緑礬の展示

緑礬を焼成し、硫黄分を飛ばすことで、ベンガラができる

緑礬を焼く窯

緑礬を焼く窯

ベンガラを沈殿させる水槽

焼成してできたベンガラを水槽で沈殿させ、これを繰り返すことで不純物を取り除く

水力で石臼を回し、時間をかけてベンガラを細かい粉にする装置

緑礬を焼成し、硫黄分を飛ばすことで、ベンガラができる

緑礬を焼く窯

焼成してできたベンガラを水槽で沈殿させ、これを繰り返すことで不純物を取り除く

ベンガラ館 /高梁市成羽町吹屋86 Tel. 0866-29-2136

ふるさと村からクルマですぐの場所に、往時の製造工場を復元したベンガラ館がある。ここでは吹屋のベンガラが高い品質を維持できた理由を知ることができる。ベンガラ製造は、硫化鉄鉱石から取り出した緑礬(ろうは)を焼き、沈殿槽で何度も不純物を取り除き、さらに石臼で細かく砕いて乾燥させるという、気の遠くなるような手作業の積み重ねだった。数か月かけて丁寧に仕上げることで、きめ細かく発色のよい高品質なベンガラが生まれたという。現場は亜硫酸ガスが発生する過酷な環境で、戸田さんは子供の頃、ガスが立ち込めはげ山となった大地に恐ろしい印象を抱いたという。それでも数年で家が建つほど稼げたため、働き手は短期間で入れ替わっていったそうだ。華やかな赤い町並みの裏には、そうした労働の厳しさがあった。やがて1960年代に公害防止条例が制定され、近代化によって安価な製造法が登場すると、吹屋はベンガラ産地としての歴史に幕を閉じた。こうした背景を知ってみると、吹屋の赤い町が、そんな歴史の蓄積の上に花開いた、奇跡的な一瞬の花火であるかのように感じられた。

知られざる山中に、高梁市随一の絶景が突然現れた

夫婦岩からの眺め

夫婦岩越しに成羽川を見下ろす。ずいぶんと秘境に来た印象だ

夫婦岩 /高梁市成羽町布寄2787 Tel. 0866-42-3211(高橋市役所成羽地域局)

吹屋ふるさと村の近くに、絶景が見られる場所があると聞き、寄ってみた。クルマで20分ほどだというので、軽い気持ちで訪ねたのだが、展望所に立った瞬間「おおっ!」と思わず声が出た。夫婦岩という2つの岩が屹立するその先に、折り重なる山々と、きらめきながら谷底を流れる成羽(なりわ)川。なんというダイナミックな景観だろう。一瞬、どこの秘境に来たのかと思ってしまった。少し足を延ばすだけで、さまざまな風景に出会える。高梁の観光は移動すればするほど吉、と言えるかもしれない。

吹屋観光の後は、吉備高原の一軒宿で静かな夜を

ヴァンベール外観

写真はカフェと宿泊棟を兼ねた建物。中にサウナもある。今後他にも施設を充実させていく予定だそう

ヴァンベール内観

リビング兼カフェスペース。靴を脱いであがるので、とてもリラックスできる。大きな窓からは人工物はほとんど見えず、大自然に包まれる開放感がある

備中牛のバーベキュー

夕食はバーベキュー。地元野菜のほか、カレーもついてくる。肉厚の椎茸は近隣のしいたけハウスで栽培。分厚く弾力があっておいしい

バレルサウナと休憩する男性

宿泊者はバレルサウナが使い放題。露天のバスタブはお湯でも水でも好きな温度で入ることが可能

吹屋の紅だるま

吹屋のお土産なら柚子胡椒がおすすめ。「吹屋の紅だるま」は、地域の伝統を引き継いだ人気の調味料として吹屋地区などで販売されている   

写真はカフェと宿泊棟を兼ねた建物。中にサウナもある。今後他にも施設を充実させていく予定だそう

リビング兼カフェスペース。靴を脱いであがるので、とてもリラックスできる。大きな窓からは人工物はほとんど見えず、大自然に包まれる開放感がある

夕食はバーベキュー。地元野菜のほか、カレーもついてくる。肉厚の椎茸は近隣のしいたけハウスで栽培。分厚く弾力があっておいしい

宿泊者はバレルサウナが使い放題。露天のバスタブはお湯でも水でも好きな温度で入ることが可能

吹屋のお土産なら柚子胡椒がおすすめ。「吹屋の紅だるま」は、地域の伝統を引き継いだ人気の調味料として吹屋地区などで販売されている

ヴァンベール /高梁市宇治町穴田3487-3 Tel. 050-1793-1128

この日の宿は、吉備高原の自然のなかにたたずむ一軒宿ヴァンベール。カフェやサウナを備えた宿泊施設で、大きな窓の向こうに自然が広がる静かな環境が魅力だ。吹屋の赤い町並みや鉱山の歴史に触れたあと、山あいでゆっくり一泊し、翌日は高梁市街と備中松山城へ向かった。

現存天守をいただく山城へ。備中松山城で知る高梁の地形

備中松山城天守と猫のさんじゅーろー

備中松山城の猫城主のさんじゅーろー。散歩中かと思いきや「散歩ではありません。殿の見回りです」とのこと

中太鼓の丸跡からの眺め

中太鼓の丸跡からは高梁市の町と高梁川が一望できる。昔から高梁は交通の要衝であった

大手門跡の石垣

天然の岩盤の上に石垣を築いている見事な構造。山城の魅力がよくわかる大手門跡の景観

備中松山城の説明をする男性

高梁市観光協会の南さんによると、備中松山城では、天守のほかに二重櫓と、三の平櫓東土塀が国の重要文化財に指定されている

備中松山城の本丸と天守

二の丸からみた本丸と天守。江戸時代から残る天守は、昭和15(1940)年に解体修理が行われた

備中松山城の二十櫓

天守の裏手を守る二重櫓も国指定重要文化財。岩盤の土台の上に石垣を積んであり壮観

高梁市観光協会

JR備中高梁駅のそばにある高梁市観光協会。観光を始める前に立ち寄るのがおすすめ

備中松山城の猫城主のさんじゅーろー。散歩中かと思いきや「散歩ではありません。殿の見回りです」とのこと

中太鼓の丸跡からは高梁市の町と高梁川が一望できる。昔から高梁は交通の要衝であった

天然の岩盤の上に石垣を築いている見事な構造。山城の魅力がよくわかる大手門跡の景観

高梁市観光協会の南さんによると、備中松山城では、天守のほかに二重櫓と、三の平櫓東土塀が国の重要文化財に指定されている

二の丸からみた本丸と天守。江戸時代から残る天守は、昭和15(1940)年に解体修理が行われた

天守の裏手を守る二重櫓も国指定重要文化財。岩盤の土台の上に石垣を積んであり壮観

JR備中高梁駅のそばにある高梁市観光協会。観光を始める前に立ち寄るのがおすすめ

備中(びっちゅう)松山城 /高梁市内山下1 Tel. 0866-21-0461(高梁市観光協会)

高梁市観光協会 /高梁市旭町1335-7 Tel. 0866-21-0461

翌日向かったのは備中松山城だ。吉備高原の鉱山の町から、高梁川沿いの城下町へ。同じ市内でもまったく違う顔を見せてくれるのが高梁市の面白さである。備中松山城は、雲海に浮かぶ“天空の城”として知られる現存天守の山城だ。

高梁市観光協会を訪ね、事務局長の南さんと合流し、さっそく城へ案内してもらった。高梁の市街地から武家屋敷の建ち並ぶ通りを抜け、山道を登る。天守の標高は430m、市街地からは370mほどの標高差がある。天守下の駐車場にクルマを止め歩いて登る途中、中太鼓の丸跡から高梁川に沿って広がる市街地を見下ろしたら、ここに城を築いた理由が直感として理解できた。この地は山陽と山陰を結ぶ交通の要衝にあたり、市街地も街道も川筋も、すべてが一望のもとに見渡せるのだ。

城下の盆地は、高梁川流域では珍しく広く開けており、兵站(へいたん)や産業、農地の確保の面でも重要な土地だったという。「ベンガラや鉄製品のほか、さまざまな産物がここから高梁川の舟運で瀬戸内海へ運ばれました」と南さん。実際、周辺にはこれほど開けた平地が少なく、この城を押さえることが地域支配の要だったことがよくわかる。

大手門が近づくと、そそりたつ石垣が目に飛び込んできた。花崗岩(かこうがん)の岩盤上に石垣をパズルのように組み合わせ、その上に土塀を築いた巧みなつくりは、圧倒的な迫力だ。天守に上ると、武士の世のリアリティーが胸に迫ってくる。通常は火気厳禁の城に囲炉裏があるのも、この山城の厳しい寒さゆえだろう。

天守の裏には二重櫓(やぐら)があり、大手門の石垣もそうだったが、ここでも岩盤と石垣が一体となった構造が見られた。その造形がかっこよすぎて、しびれる。雲海が見られるのは9月から12月上旬で、出現率は約50%だという。次はその季節に訪れてみたくなった。

雲海に包まれた備中松山城

雲海のシーズンに雲海展望台から撮影した備中松山城

なぜこの町に教会が? 高梁教会堂が語るもう一つの歴史

高梁基督教会堂

瀟洒(しょうしゃ)な外観の日本基督教団 高梁教会。青い外観と車寄せ上のバルコニーがトレードマーク

高梁基督教会堂内観

2階から会堂内を見下ろす。プロテスタント教会のため、キリスト像やステンドグラスはない

教会堂で座る男性

キリスト教徒でなくても、この空間に座っていると落ち着いた気持ちになる

瀟洒(しょうしゃ)な外観の日本基督教団 高梁教会。青い外観と車寄せ上のバルコニーがトレードマーク

2階から会堂内を見下ろす。プロテスタント教会のため、キリスト像やステンドグラスはない

キリスト教徒でなくても、この空間に座っていると落ち着いた気持ちになる

日本基督(キリスト)教団 高梁教会 /高梁市柿木町26 Tel. 0866-22-3311 開館時間 毎日午前9時~午後17時(日曜午前は礼拝への出席) 入館料 任意献金 ※来館記念絵葉書が準備されています

備中松山城から山を下りて高梁市街へ戻り、次は紺屋川のほとりにある日本基督教団 高梁教会を訪ねた。ライトブルーの外壁と、玄関上に張り出したバルコニーが印象的な建物だ。山本真司牧師によると、明治22(1889)年に建てられた西日本最古級のプロテスタント教会だという。堂内は飾り気のない高い窓と平たい天井が印象的で、静かな空気に満ちていた。

なぜこの町に、これほど趣ある教会ができたのだろう。実はここにもまたユニークな歴史が隠されている。山本牧師の話では、明治の初め頃、新島襄(同志社大学の創設者)が伝道に訪れたのが、キリスト教発展の大きなきっかけとなったそうだ。新島襄の来訪をきっかけに布教が進み、明治15(1882)年には高梁に教会が正式に発足した。当初は反対運動もあったが、やがて受け入れられていった背景には、新しい文化を受け入れる知識人の存在や、キリスト教婦人会による女子教育への貢献があったという。高梁の進取の気質が、この教会堂にも表れているように思えた。

シンプルで涼やかな堂内は、たとえキリスト教徒でなくても、ここで祈りを捧げれば、心にからりとした空気をもたらしてくれるような気がした。
ひとつの町に、いくつもの歴史が重なっていた。

高梁市は、ひとつの顔だけでは語れない町だった。鉱山とベンガラで栄えた吹屋、地形を生かして築かれた備中松山城、そして新しい文化を受け入れてきた高梁教会。異なる歴史の層が、ひとつの市の中に重なっているからこそ、この旅は発見と意外性に満ちたものになったのだろう。訪れるたびに、また違う顔を見せてくれそうだ。そんな予感を抱きながら、この地を後にした。

武家屋敷跡を走る車

今回のごきげんロードマップ

岡山県高梁市のイラストマップ

A. 高梁市吹屋伝統的建造物群保存地区 B. 旧吹屋小学校校舎 C. スープカレーの店 つくし D. 笹畝坑道 E. ベンガラ館 F. 夫婦岩 G. ヴァンベール H. 高梁市観光協会 I. 備中松山城 J. 高梁基督教会堂

「ごきげんロードトリップ」掲載自治体のご紹介

※JAF優待の内容や利用方法などの詳細は、記事内の各施設「JAF優待はこちら」をクリックしてください。JAFナビ  からも検索可能です。
※記載のデータは2026年4月現在のもので、料金は大人1名分(税込)です。変わる場合もありますので、お出かけ前にご確認ください。
取材協力=岡山県高梁市

岡山県が登場する日本遺産はこちらをチェック

日本遺産ロゴ

画像クリックで、日本遺産・岡山県のストーリー一覧へ

日本遺産とは、文化庁が地域の歴史的魅力や特色を通して、我が国の文化・伝統を語るストーリーを「日本遺産(Japan Heritage)」として認定する制度です。
今回訪れた岡山県にも日本遺産があります。旅の続きで訪れてみてはいかがでしょうか?

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プレゼント応募用キーワード

ベンガラ

岡山県高梁市ドライブガイド

1.西江家住宅

ベンガラ文化の礎を築いた豪農商・西江家の邸宅。登録有形文化財でもある建物は約320年前の創建以来、現在に至るまで代々西江家の個人邸宅として受け継がれ、豪奢な姿が維持されている。事前予約制で見学やベンガラ染めなど貴重な体験も。

高梁市成羽町坂本1604
Tel. 0866-29-2805

西江家住宅

2.カフェ燈(あかり)

築約130年の古民家一棟貸しの宿「町家ステイ吹屋 千枚」に併設されたカフェで、地元食材をふんだんに使った滋味あふれる創作料理やスイーツが味わえる。品数豊富な日替わりメニュー「地元野菜たっぷりランチ」が特におすすめ。

高梁市成羽町吹屋398
Tel. 0866-29-3050
※土日月のみ営業

カフェ燈

3.吹屋ふるさと村

重要伝統的建造物群保存地区に選定された吹屋の歴史的な町並み。近世ベンガラ商家の典型として評価が高い国指定重要文化財「旧片山家住宅」や「郷土館」を見学して繁栄の歴史に思いを馳せ、ベンガラ色の町の散策を楽しもう。

高梁市成羽町吹屋(下町観光駐車場)
Tel. 0866-29-2811(高梁市観光協会吹屋支部)

吹屋ふるさと村

4.広兼(ひろかね)邸

江戸末期、銅山とベンガラの原料ローハ(硫酸鉄)の製造で財を成した豪商の邸宅。城郭のような堂々たる石垣、母屋、土蔵が現存し、内部を見学することができる。『八つ墓村』など映画のロケ地としても有名。

高梁市成羽町中野2972-9(見学者用駐車場)
Tel. 0866-29-3182

広兼邸

5.羽山渓(羽山第2トンネル)

島木川の上流約2kmにわたり奇岩と断崖が続く石灰岩渓谷。ワイルドな渓谷沿いの県道を進むと現れる「羽山第2トンネル」は巨岩をくり抜いてできた全国でも珍しいトンネル。道幅が狭い部分もあるので注意しながら絶景ドライブを満喫したい。

高梁市成羽町羽山

羽山渓(羽山第2トンネル)

6.弥高山(やたかやま)公園

標高654mの弥高山中腹に広がる公園。春は10万本のツツジ、初夏はアジサイ、秋には紅葉が見頃に。キャンプ場や貸別荘など宿泊施設も充実。山頂からは吉備高原の山並み、瀬戸内海、四国山脈、大山まで大パノラマが一望のもと。

高梁市川上町高山4301-1
Tel. 0866-48-2830(川上町観光協会 弥高山公園管理事務所)

弥高山公園

7.高梁市成羽(なりわ)美術館

成羽町出身の洋画家・児島虎次郎の作品を主要コレクションとして昭和28(1953)年に開館。現在の建物は建築家・安藤忠雄氏の設計によるもので、コンクリートの壁と水盤、周囲の自然が調和し、空間そのものもアートとして楽しめる。

高梁市成羽町下原1068-3
Tel. 0866-42-4455

高梁市成羽美術館

8.三宅製菓本店

明治38(1905)年の創業以来、伝統の製法を守り、無添加にこだわる和菓子の名店。自家製白あんを使った銘菓「金平(きんべい)饅頭」、国の重要無形民俗文化財「備中神楽」に登場する神々の顔をかたどった縁起の良い「備中神楽面最中」(写真)がお土産におすすめ。

高梁市成羽町下原326-1(かぐら店)
Tel. 0866-42-3105(三宅製菓本店)

三宅製菓本店

9.シャグリ

大正時代の古民家を改修した趣あるカフェ。見た目もかわいらしく丁寧に手作りされたスイーツや焼き菓子が揃い、ドリンクメニューも充実。プリンなど定番メニューのほか、季節のフルーツをアレンジした限定スイーツが登場するのも楽しみ。

高梁市成羽町下原467-2

シャグリ ※リンクをご覧になるには、公式アカウントが必要になります

10.トマト&オニオン 高梁店

看板メニューの牛肉100%弾丸ハンバーグをはじめ、種類豊富でボリューミーな肉料理メニューが気軽に楽しめるファミリーレストラン。セットメニューで選べるカレー、ドリンク、スープの食べ放題や、華やかなデザートも人気。

高梁市落合町阿部1700 ゆめタウン高梁1F
Tel. 0866-22-8677

トマト&オニオン 高梁店

11.トヨタレンタカー 備中高梁駅前店

JR備中高梁駅から約100m、駅前通りに面した便利なロケーション。小型車からワゴン車、ハイブリッド車まで幅広い車種の豊富なラインアップ、トヨタグループの安心ネットワークで快適なドライブ旅をサポートしてくれる。

高梁市旭町1335-7
Tel. 0866-22-5566

トヨタレンタカー 備中高梁駅前店

12.じゅうじゅう亭

高梁市の中心部・備中高梁駅から約150mの好立地にあり、地元で愛されるお好み焼・鉄板焼の店。ご当地グルメ「インディアントマト焼そば」を味わうならココ! 「マウンテン焼」「焼肉エッグライス」などオリジナルメニューも豊富。

高梁市正宗町1967
Tel. 0866-23-1211

じゅうじゅう亭 ※リンクをご覧になるには、公式アカウントが必要になります

13.山田方谷(ほうこく)記念館

幕末の藩政改革を成し遂げた山田方谷の偉業を紹介する資料館。「儒学者への道」「備中松山藩の藩政改革」「教育への情熱」の3つのテーマに分けて歴史資料や解説パネル約40点を展示しその足跡を辿る、歴史好きにはたまらないスポット。

高梁市向町21
Tel. 0866-22-1479

山田方谷記念館

14.高梁市郷土資料館

明治37(1904)年に旧高梁尋常高等小学校本館として建てられた擬洋風木造建築を、現在は資料館として活用。タイムスリップしたかのような館内で、生活道具や農具など展示品の数々に高梁市の歴史と当時の人々の暮らしを感じることができる。

高梁市向町21
Tel. 0866-22-1479

高梁市郷土資料館

15.頼久寺(らいきゅうじ)庭園

頼久寺は足利尊氏が再興し、小堀遠州作と伝わる蓬莱式枯山水庭園の美しさでも名高い古刹。愛宕山を借景として、白砂と石組み、大海の波を表現したサツキの大刈込みが見事に配置された庭園は季節とともに移り変わる表情も見どころ。

高梁市頼久寺町18
Tel. 0866-22-3516

頼久寺庭園

16.高梁市武家屋敷・旧折井家

石火矢町の武家屋敷通りに佇む、江戸時代後期の中級武士の屋敷。ほぼ昔のままの姿で残された母屋や長屋門、中庭など内部を見学し、当時の武家の暮らしぶりを体感できる。敷地内の資料館には備中松山藩ゆかりの品々を展示。

高梁市石火矢町23-2
Tel. 0866-22-1480(高梁市観光協会)

高梁市武家屋敷・旧折井家

17.備中松山城雲海展望台

雲海に浮かぶ幻想的な備中松山城を眺めることができるビュースポット。ただし雲海が発生するのは昼夜の寒暖差が大きいことや無風といったさまざまな気象条件が揃ったときのみ。秋から春にかけての早朝は雲海が発生しやすく絶景に出会えるチャンスあり。

高梁市奥万田町
Tel. 0866-21-0461(高梁市観光協会)

備中松山城雲海展望台

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