免許取りたてのtofubeatsの車で流れたあのアイドルの歌〈森高千里／ララ サンシャイン〉

音楽好きの著名人たちが、月替わりで自動車やドライブにまつわる音楽との思い出とともに至高のドライブミュージックを紹介します。

今月の選曲を担当するのは、6枚のアルバムリリースに加え、数多くの楽曲提供や、森高千里、KREVA、藤井隆ら人気アーティストとのコラボも行う、国内ポップミュージックシーンを代表する音楽プロデューサー / DJのtofubeats（トーフビーツ）さんです。

とにかく10代の頃はすぐに免許が取りたかった。それはなぜかと言えば一人で国道沿いのリサイクルショップを回り、中古のCDを買いたかったからである。

18歳になる頃には通学途中のターミナル駅にある店だけではすでに飽き足らなくなってきていたし、シンセサイザーは楽器も売っているような、国道沿いの大型のリサイクルショップに行かなければ売っていない。免許を取るまでは父の運転で連れていってもらっていたが、自分だけでもっとたくさんの店に行ってみたいと思っていた。


18歳の頃に入った自動車学校では、座学のときも路上教習のときも早く免許を取ってリサイクルショップに行きたいと思っていた。実際念願の免許を取ってからも、車に乗る機会と言えば、やはりリサイクルショップを巡るときぐらいなものだった。

中古は若者の味方だ。

限られた予算で最大限の音楽を聴くには中古が一番良い。免許を取ってからは、リサイクルショップに行くたびに、買ったCDの中から1枚だけ封を開けてそのまま帰り道にカーステで聴くのが習慣になっていた。1店舗にあるCDの枚数だけでも一生に聴くCDの量より多いかもしれない。よくよく考えたらこれらのCDの多くは、アーティスト名やタイトルをなんとなく聞いたことはあっても、ちゃんと音楽は聴いたことのないものばかりだ。

いつも良いCDに当たるとは限らない。でもそれが楽しかった。良いCDに当たったときは聴き終わるまでダラダラと遠回りして帰ったりした。

中古CDを買ったところでアーティストに売り上げは入らないのでこんなこと書くのは少々はばかられるが、メジャーデビューしてからお声がけし、ご一緒させていただいた数々の有名アーティストの皆様との最初の出会いもここであった。森高千里「ララ サンシャイン」、藤井隆「ナンダカンダ」、BONNIE PINK 「Last Kiss」、そして具島直子「Candy」などあげれば切りがない。リアルタイムで経験できなかった素晴らしい楽曲の数々には、リサイクルショップと自動車がなければ出会えなかったかもしれない。

tofubeats

トーフビーツ 神戸出身の音楽プロデューサー/DJ。学生時代からさまざまなアーティストのプロデュースや楽曲提供、楽曲のリミックスを行う。2013年4月に「水星 feat.オノマトペ大臣」を収録した自主制作アルバム『lost decade』を発売。同年11月には森高千里をゲストボーカルに迎えた「Don't Stop The Music」でワーナーミュージック・ジャパン内のレーベルunBORDEからメジャーデビュー。2014年10月にメジャー1stアルバム『First Album』をリリースし、以降もコンスタントに作品を発表している。2022年5月には約4年ぶりとなるニューアルバム『REFLECTION』と、初の書籍『トーフビーツの難聴日記』を同時に発表した。2022年11月3日に『REFLECTION』のLP盤及び『REFLECTION REMIXES』を配信リリース。2023年1月にはUKのDJ QとのコラボEP『A440』もリリースし、国内外でも注目を集めている。
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