日本で急増する外国人ドライバーは、どうやって運転免許を取得している?
外国人の運転免許取得方法と最新の制度改正について解説日本で急増する外国人ドライバーが運転免許を取得する「4つの方法(日本の免許取得、国際運転免許証、対象国免許+翻訳文、外国免許の切替)」について、自動車運転免許研究所の長信一氏が解説。2025年10月の道交法改正による新たな外免切替制度にも触れ、日本で運転する外国人ドライバーの安全運転への期待と課題を説明する。
65人に1人! 外国人ドライバー急増の背景
最近の道路状況を見ていると、外国人のドライバーがとても増えているように感じる。いったいどのように日本の交通ルールを学び、そして異国の地である日本で運転免許を取得しているのか疑問となり調べてみた。
まず観光や就労の目的で日本に入国する外国人が増えている。2024年の訪日外国客数は3,600万人を超え、国別にみると、韓国、中国、台湾、米国と続く。政府が現在進めている、国内の慢性的な人材不足への対策として外国人を積極的に迎え入れようとする外国人技能実習制度なども拍車をかけている。
2025年6月の時点で日本に在留する外国人住民数は約395万人で、日本の総人口に対して約3%を占めている。国別にみると、中国、ベトナム、韓国、フィリピンと続く。特に2020年からの増加率が顕著で、今後も増加傾向にあるという。
これらの外国人がすべて日本の運転免許証を取得するわけではないが、外国人の免許人口は相当数いることは間違いない。そこで、外国人が日本の運転免許を保有している人数を調べてみると、2024年末の時点で125万4522人。同年の運転免許保有者総数は約8186万人で、つまり単純計算で行き交うクルマ65台のうち1台は外国人ドライバーが運転していることになる。
外国の免許も使えるの? 外国人の運転免許取得方法
外国の国籍を持つ方々が、日本で自動車等の運転をするためには、次のいずれかの方法で運転免許証を取得または所持する必要がある。
1.日本の運転免許証を取得する
2.ジュネーブ条約に基づく国際運転免許証を取得する
3.対象6か国の運転免許証と日本語の翻訳文を所持する
4.外国免許の切替えをする
これらの方法について順を追って説明しよう。
1.日本の運転免許証を取得する
日本人と同じように、新たに日本の運転免許証を取得する方法である。すでに国外の免許証を所有しているか否かは問わない。取得の方法は、おもに指定自動車教習所などに通って、運転技能の練習と交通ルールを学び、居住地を管轄する運転免許試験場(免許センター)で普通免許などの交付を受ける。
しかし問題となるのが日本語の理解度。例えば、車内で実技教習を受ける際にも、教室で学科を学ぶ際にも、つねに日本語による会話のやり取りがあるので、それ相応の語学力が必要である。教習所によっては英語や中国語などが話せる指導員もいるが、そう多くはない。
2.ジュネーブ条約に基づく国際運転免許証を取得する
国際運転免許証は、居住地を管轄する都道府県警察の運転免許試験場(免許センター)で発行している
ジュネーブ条約では、加盟国間で自国の運転免許を一時的に有効とするための国際ルールを定めている。 約100か国以上がこの条約に署名しており、日本もその一員。この条約に基づいて発行される「国際運転免許証」を所持していれば、加盟国同士の間で一時的に(1年間)運転が可能である。
ただし、加盟国であっても「国際運転免許証」を発給していない国もある。発給しているおもな加盟国は、アメリカ、イタリア、インド、イギリス、オーストラリア、スペイン、タイ、韓国など。
3.対象国の運転免許証と日本語の翻訳文を所持する
日本と同等の水準である免許制度を有する国または政令で定められた地域が発行する外国の免許証を所持していても、日本での運転は可能だ。現在、スイス連邦、ドイツ連邦共和国、フランス共和国、ベルギー王国、モナコ公国、台湾の6か国が対象国であり、日本語による翻訳文が添付されていることが条件。
翻訳文の申請方法について、JAFでは下記の運転免許翻訳文申請サイトで行っており、オンラインで申請できる。
4.外国免許の切替えをする
この方法は1と同様、最終的に日本の運転免許証を取得することになるが、あえて別の方法として取り上げる。
外国人の方が日本以外の国の免許を既に取得していて、これを日本の免許証に切り替える方法がある。これを「外国免許の切替え(外免切替)」といい、第4の免許取得方法と言ってもよい。ある審査の基準に達すれば合法的に日本の免許証へ切り替えることができる制度だ。
この外免切替は、居住地を管轄する都道府県警察の運転免許試験場(免許センター)で行っている。
〇×クイズでOKだった? 外免切替制度の改正と今後の課題
そもそも、この「外免切替」という方法は、1933年に導入された。当初は、海外で運転免許を取得した日本人が帰国後、スムーズに日本でクルマを運転できるようにするのが目的であった。ところが、1990年以降は外国人の制度利用が高まり、来日客や海外からの労働者の増加も起因して、最近は多くの外国人がこの制度を利用している。
海外では右側通行の国も多くあり、日本の交通ルールと環境は大きく異なる。にもかかわらず、これまで審査の基準はとても緩く「簡単過ぎる!」といった指摘が多かった。例えば、現住所の確認は、ホテルや知人宅の一時滞在先も認められ滞在期間の基準もない。知識を確認する問題は、イラストを使った〇×形式で10問中7問以上の正解で通過。知識確認の合格率は90%以上だった。国別にみると、ベトナムが最も多く、中国、韓国と続く。
ところがこの制度、利用する外国人があまりに多く、日本国内の交通事故への懸念が増えていた。さらに、中国などジュネーブ条約非加盟国のドライバーが日本で簡単に運転免許を取得すれば、先に説明したジュネーブ条約加盟国で「国際運転免許証」の申請が可能となり、ジュネーブ条約に加盟する他の国々でもクルマの運転が簡単にできてしまう。
警察庁は、これらの対策として2025年の10月、新たな外国免許の切替えの制度の見直しを施行した。現住所の確認は住民票の写しで確認し、滞在期間3か月以上に基準を引き上げた。また、知識を確認する問題は、イラストなしの問題を50問に増やして、90%以上の正解が必要などハードルを上げた格好だ。合格率など、今後の動向を見守りたい。
【外国免許の切替え制度の主な変更点】
| 住所の確認 | 変更前 | 「住民票の写し」または「パスポートとホテルなどの一時滞在証明」 |
| 変更後 | 「住民票の写し」※外交官などは除く | |
| 知識の審査 | 変更前 | イラスト問題10問。70%以上の正解で通過 |
| 変更後 | イラストなしの問題50問。90%以上の正解で通過 | |
| 技能の審査 | 変更前 | 試験場内で実車による審査。70%以上で通過 |
| 変更後 | 審査項目に「横断歩道の通過」の課題の追加など |
- ※資料=警察庁(2025年10月1日施行)
安全・安心な日本の道路環境を目指して
このように、多数の外国人ドライバーが日本の道路を運転している昨今の道路環境。いずれの方法で免許を取得したにせよ、外国人の方々には日本で安全に運転できる知識とマナーを身につけてもらわなければならない。
立場を代えて外国人の側から見れば、異国の地である日本は交通ルールや標識の表記など、道路環境が大きく異なることは想像しやすい。だからといってルール違反は容認できず、日本の交通ルールとマナーをいち早く身につけてもらうのが外国人ドライバーへの願いでもある。
ぜひ慎重に運転していただいて、安全で安心できる日本の道路環境に慣れ親しんでもらいたい。
長 信一
ちょう・しんいち 1962年生まれ。1983年、都内の自動車教習所に入社し、学科や実技の指導員に。24歳のとき、全種類の運転免許証を完全取得。教習生への親身な指導をモットーに普通免許、自動二輪免許、第二種免許など数多くの合格者を送り出した。現在は自動車運転免許研究所の所長として運転免許関連の書籍を執筆。その数、実に200冊以上。
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