走れ! ニッサン180型消防ポンプ自動車
東京消防庁と日産が戦禍を駆けた消防車を再生「ニッサン180型消防ポンプ自動車」をご存知だろうか? 本格的な国産消防ポンプ車第1号と言われ、1941年に東京・大田区の蒲田消防署に配置された車両だ。その後、1945年に高輪消防署(二本榎出張所の前身)に配置され、東京オリンピックが開催された1964年まで使用された。退役後は、高輪消防署二本榎出張所で、広報車両の1台として展示され、地域の住民や消防車好きの人々の間で親しまれてきた。
東京消防庁と日産が戦禍を駆けた消防車を再生
再生されたニッサン180型消防ポンプ自動車。画像=日産
往年の名車を走らせたい
東京消防庁が、長く不動となっていた同車を「再び走らせることはできないか?」と日産に相談した。日産からは「往年の車をきちんと動く形にしたい。そして、当時の最高レベルの技術を学びたい」との思いから、社内の有志メンバー4名がボランティアでレストアを担当することになった。
日産社内に残されていた整備要領書を手がかりに再生作業は進められた。画像=日産
レストアの目標は、当初走る、曲がる、止まるという車の基本性能の再生だった。作業の難航が予想されたが、社内に残っていた整備要領書をメンバーが発見し、「何とかなる」と自信を深めたという。結局、基本性能だけでなく、動かなくなっていた方向指示器やワイパー、赤色灯など車両全体の電気系統までも再生させた。再生の取り組みリーダーは「戦前の日産車に触れる機会が少ない中で、戦火の中で活躍し、戦後も地域の安全を守ってきた歴史的な車両の再生を行う今回の取り組みは大変貴重な体験だった」と語った。走行の実現までにおよそ2年かかった。この言葉にあるように、同車は戦時中の空襲火災の消火活動にも奔走した。
インパネやメーター類もきれいに再生されている。画像=日産
イベントに広報車両として展示予定
くしくも、今年は関東大震災から100年目を迎える。東京消防庁企画調整部広報課は「そうした節目の年に、歴史ある車両が再び走り出せるようになったことを嬉しく思う」とコメントした。
なお、同車は6月15日に開催される「東京国際消防防災展 2023」で展示された後、東京消防庁の広報車両として保管されイベント等で活用される予定だ。
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