交通事故に直結! 運転中、歩行中の「ながらスマホ」は絶対にやめましょう!
運転中や歩行中の「ながらスマホ」はなぜ危険なのでしょうか? 過去の事故事例から学び、類似事故を繰り返さぬよう、交通ルールは必ず守りましょう。
「ながらスマホ」が厳罰化。一発免停も!
近年、運転中や歩行中に携帯電話(スマートフォン)を操作する、いわゆる「ながらスマホ」に起因する交通事故が増加しています。
「ちらっと画面を見るくらいなら大丈夫」と思うかもしれませんが、その一瞬の油断が悲惨な交通事故を招きます。こうした中、道路交通法が改正され2019年(令和元年)12月に運転中の「ながらスマホ」などに対する罰則が以下のように強化されました。改めておさらいしましょう。
- ■携帯電話を保持して通話したり画像注視したりした場合
- ・罰則は、新たに「6月以下の懲役」が設けられ、罰金は「5万円以下」から「10万円以下」に引上げ
- ・反則金が普通車ならこれまでの3倍に(6,000円→18,000円)
- ・違反点数がこれまでの3倍に引上げ(1点→3点)
- ■携帯電話の使用により事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合
- ・罰則は、「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」から「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」に引上げ
- ・非反則行為となり、刑事罰(懲役刑または罰金刑)の対象に
- ・違反点数が「2点」から「6点」となり、免許停止処分の対象に
携帯電話やカーナビを使い「ながら」の運転は、道路交通法違反です!
資料提供:政府広報オンライン
死亡事故率は約1.9倍!
警察庁の最新の発表によれば、携帯電話使用等に係る交通事故件数は、今回の法改正をきっかけに啓発活動や交通指導取締り等を推進した結果、令和3年は1,394件と大幅に削減。2017年(平成29年)の2,832件をピークに、その数を半分以下にまで減らすことに成功しました。
1,394件の気になるその内訳ですが、カーナビ等を注視したことに起因する交通事故が666件ともっとも多く約5割を占めており、次いで携帯電話の画像目的使用が651件で約4割でした。
いっぽうで、とても残念な数字も発表されていました。携帯電話使用の場合と、使用なしとで比較すると死亡事故率(※注)が約1.9倍も違うというのです。
(※注)「死亡事故率」は死傷事故に占める死亡事故の割合をいう。
図1 携帯電話使用等に係る使用状況別交通事故件数の推移(図左)、
死亡事故率比較(令和3年 図右)
資料提供:警察庁
自動車が2秒間に進む距離は33m!
脇見運転はいったいどれほど危険なのでしょうか。公益財団法人交通事故総合分析センターによる「携帯電話等の使用が要因となる事故の分析」を参考に解説します。
各種の研究報告によれば、ドライバーがカーナビや携帯電話の画像に目を移したことにより危険を感じる時間は2秒! 運転環境によって多少誤差はありますが、2秒以上見続けるとドライバーは危険を感じるのだそうです。では2秒の間で、自動車はどれほど進むのでしょうか。
図2 自動車が2秒間に進む距離
資料提供:警察庁
例えば時速40kmで走行する自動車は、1秒間に約11m、2秒間では約22m進みます。時速60kmで走行する自動車は1秒間に約17m、2秒間では約33m進みます。
もし、その間に歩行者が道路を横断したり、前の車が渋滞などで停止していたら、避けることはほぼ不可能でしょう。「直線道路だから」あるいは「ほんの一瞬だから」などという自分勝手な考えが、重大事故を起こしてしまうのです。
歩きながら、自転車に乗りながらの事故も多発
「ながらスマホ」による事故は、自動車の運転時だけに限った話ではありません。「歩きながら」や「自転車に乗りながら」による事故も、ここ数年増加傾向にあります。
東京消防庁は過去5年間における「歩きながら」「自転車に乗りながら」などの歩きスマホ等に係るレポートを発表しています。その資料をもとに事故内容を詳しく見ていきましょう。
図3 年別救急搬送人員 資料提供:東京消防庁
東京消防庁が発表した過去5年間における「歩きながら」「自転車に乗りながら」などの歩きスマホ等に係る年別の救急搬送人員。
東京消防庁管内(東京都のうち稲城市、島しょ地区を除く地域)では、平成29年から令和3年までの過去5年間で、165人が救急搬送。令和3年は27人が救急搬送されました(図3)。
図4 年齢区分別救急搬送人員 資料提供:東京消防庁
年齢区分別で表した救急搬送人員(図4)では、20歳代が33人ともっとも多く、全体的に見ると20歳代から50歳代の救急搬送が多くなっています。また「ながらスマホ」に係る事故種別ごとの救急搬送人員(図5)では、「ころぶ」事故が58人ともっとも多く、全体の約4割を占めています。次いで「ぶつかる」事故が55人、「落ちる」事故が50人となっています。
図5 事故種別ごとの救急搬送人員
資料提供:東京消防庁
命を落とす危険性も
事故事例をいくつかご紹介しましょう。もっとも件数の多かったころぶ事故ですが、「スマートフォンを見ながら歩道を歩行中、縁石に気づかずに躓き転倒し、腰を受傷した(30代 中等症)」といったものから、「スマートフォンを使用しながら自転車で走行中に転倒し、自転車のハンドルに顔面をぶつけて受傷した(10代 軽症)」というものまで、内容はさまざま。事故にはならずとも、ヒヤッとした覚えのある方も多いのではないでしょうか。
また、ぶつかる事例には「スマートフォンを使用しながら歩いていたところ、電柱に気づかずに前額部をぶつけて受傷した(40代 軽症)」と、想像するだけで痛々しいものも……
転落の事例にいたっては「スマートフォンを見ながら駅のホーム上を歩行していたところ、踏み外して軌道敷に転落し、腰部を受傷した(10代 中等症)」と、一歩間違えれば死に直結する事故も発生していました。
「操作しながら」「画面を見ながら」が事故の原因に
軽症:入院を要しないもの
中等症:生命に危険はないが入院を要するもの
重症:生命の危険が強いと認められたもの
図6 初診時程度別救急搬送人員
資料提供:東京消防庁
初診時の状態を程度別に表したグラフ(図6)を見ると、全体の8割以上が軽症でしたが、23人が入院の必要があるとされる中等症以上と診断されており、「ながらスマホ」による事故が大変危険であることを証明しています。
また、事故発生の場所を示したグラフ(図7)では、「道路・交通施設」が119人ともっとも多く全体の7割以上を占めており、歩道や駅などで多く発生していることがうかがえます。
発生時にどんな動きをしていたかを動作別にまとめたグラフ(図8)を見ても、やはり「画面を見ながら」が70人ともっとも多く全体の4割以上を占めており、次いで「操作しながら」が57人となっています。その内訳をみると、「歩きながら」且つ「画面を見ながら」「操作しながら」の組み合わせの事故が全体の約7割を占めていることがわかります。
図7 場所別救急搬送人員
資料提供:東京消防庁
図8 発生時動作別救急搬送人員
資料提供:東京消防庁
表 発生時動作別救急搬送人員の内訳 資料提供:東京消防庁
ながらスマホはNO!
自動車や自転車を運転しながら、また歩きながらスマートフォンを操作する「ながらスマホ」は非常に危険です。画面に意識が集中してしまい、周囲の危険を発見することができず、思わぬ事故につながります。絶対にやめましょう。運転中にスマホ等を使用しなければならないときは、必ず安全な場所に停車してからにしましょう。
参考: