ALT 澄み切った渓流のせせらぎが聞こえる静かな森の中を、かつて木材を運んだ木曽森林鉄道の小さな機関車が、客車を引いてのんびりと走り抜けていく
澄み切った渓流のせせらぎが聞こえる静かな森の中を、かつて木材を運んだ木曽森林鉄道の小さな機関車が、客車を引いてのんびりと走り抜けていく
写真=徳永 茂/構成・文=高橋祐介

日本遺産で森林鉄道に乗れる! 木曽ヒノキの森を走る「赤沢森林鉄道」と鉄道遺構巡り

渓流のせせらぎと森林鉄道、歴史ある保存車両を満喫する木曽ドライブ

木曽ヒノキの香りに包まれた深い森を、小さな森林鉄道がゆっくりと走り抜けていきます。日本遺産にも認定された長野県・赤沢(あかさわ)自然休養林は、実際に森林鉄道に乗車できる全国でも貴重なスポットです。

往復約2.2kmの乗車体験では渓流のせせらぎや木漏れ日を楽しみながら、かつて木曽の林業を支えた鉄路の歴史を体感できます。さらに園内にはボールドウィン号をはじめとする貴重な保存車両や森林鉄道の遺構も点在。鉄道を愛するプロカメラマン・徳永茂さんが、乗車体験の見どころから周辺の鉄道遺構、立ち寄りスポットまで詳しく紹介します。

目次

五感で巡る歴史の面影! 木曽谷を支えた森林鉄道の遺構たち

赤沢森林鉄道1

赤沢森林鉄道2

赤沢森林鉄道3

赤沢森林鉄道4

赤沢森林鉄道5

木漏れ日が降り注ぐ深緑の森を走る列車に、澄み切った清流、木製の遊歩道、歴史を感じさせる石碑や草木に包まれたレールなど、静寂と美しさに満ちている

中山道(なかせんどう)の宿場町として知られる長野県木曽地域には、かつて「日本の林業を支えた鉄路」として全国にその名をはせた木曽森林鉄道の面影がいまも色濃く残っている。木曽谷の険しい山々から切り出された木曽ヒノキを運ぶため、網の目のように張り巡らされていた路線群の総延長距離は約500kmにもおよぶという。広大な木曽の自然と人の営みが紡いできた文化は、赤沢森林鉄道を含め、木曽のあちこちにたたずむ鉄道遺構として訪れる人々を楽しませている。

歴史の教科書だけでは味わえない遺構を、五感で巡ることができる場所だ。

赤沢自然休養林1

赤沢自然休養林2

赤沢自然休養林3

赤沢自然休養林4

赤沢自然休養林5

かつて木材運搬に活躍した森林鉄道が、今もなお園内を走る。澄んだ渓流のせせらぎや、苔むした岩肌に、自然の力強さと美しさを感じられ、森林浴を楽しんだり自然を満喫できるスポットだ

木曽の上松(あげまつ)町に位置する「赤沢自然休養林」。ここは昭和45(1970)年に日本初の「自然休養林」として指定された、樹齢約300年以上の木曽ヒノキが自生する美林だ。「森林浴発祥の地」として多くの観光客が訪れる。さらに、伊勢神宮の御神木として切り出されるヒノキもあるなど大切にされてきた土地だ。貴重な自然観察もできるとあって、複数の散策コースも用意されている。

鉄道がなかった時代には、川を使って丸太を流す方法を取っていた。その際には木で簡易的な堰を造り貯め場にしたりしていたようだ

鉄道がなかった時代には、川を使って丸太を流す方法を取っていた。その際には木で簡易な堰(せき)を造りため場にしたりしていたようだ

緑とせせらぎの中をディーゼル機関車で走る! 赤沢森林鉄道で楽しむ癒やし体験

赤沢森林鉄道1

赤沢森林鉄道2

赤沢森林鉄道3

赤沢森林鉄道4

赤沢森林鉄道5

木曽の豊かな森を縫うように走る赤沢森林鉄道。今も現役で、訪れる人を歴史と自然が織り成す癒やしの旅へと誘う

その深緑の森を縫うように走るのが動態保存されている赤沢森林鉄道。見どころは何といっても、実際に客車に乗って森の空気を感じる体験ができること。トコトコと可憐(かれん)なエンジン音を響かせるディーゼル機関車に揺られ、森林鉄道記念館前から丸山渡(まるやまど)停車場までの渓流沿いの往復約2.2kmを、25分ほどかけてのんびりと進む。

森林浴1

森林浴2

森林浴3

森林浴4

森林浴5

途中には、かつて活躍した鉄道客車を模したユニークなトイレも! 自然と調和した公園で、のんびりと休日を過ごすのもいいだろう

車窓からは、すがすがしい木の香りと木漏れ日が降り注ぎ、線路沿いには平坦で歩きやすい散策コース「ふれあいの道」などの遊歩道が並行して整備されている。行きは列車に乗って車窓を楽しみ、帰りは廃線軌道や美しい沢のせせらぎを眺めながらハイキングを楽しむといった贅沢な散策スタイルもオススメだ。

ボールドウィン製の蒸気機関車から珍しい客車まで! 森林鉄道記念館で巡る歴史的車両

森林鉄道記念館に大切に保存されているアメリカ・ボールドウィン社製の蒸気機関車「ボールドウィン号」。かつて木曽の山々で木材輸送の主役として活躍した貴重な車両だ。大きな煙突が目を引くクラシカルで武骨な造形美は、当時の林業の歴史と機械の魅力を今に伝えている

森林鉄道記念館に大切に保存されているアメリカ・ボールドウィン社製の蒸気機関車「ボールドウィン号」。かつて木曽の山々で木材輸送の主役として活躍した貴重な車両だ。大きな煙突が目を引くクラシカルで武骨な造形美は、当時の林業の歴史と機械の魅力を今に伝えている

森林鉄道記念館1

森林鉄道記念館2

森林鉄道記念館3

森林鉄道記念館4

森林鉄道記念館5

赤沢自然休養林内にある森林鉄道記念館。館内や車庫には当時の保存車両をはじめ、歴史を伝える写真や資料がずらりと展示され、木曽の林業と鉄道の記憶を今に伝えている

森林鉄道記念館6

森林鉄道記念館7

森林鉄道記念館8

森林鉄道記念館9

森林鉄道記念館10

森林鉄道記念館には個性豊かな保存車両が目白押しだ。皇太子殿下の乗車にも使われた格式高い特製展望客車をはじめ、山奥で働く人々の髪を整えた全国的にも珍しい理髪車や運材車など、独自の歴史と文化を伝える貴重な車両を間近で見学できる

園内や周辺施設に大切に管理されている数々の保存車両や資料は、赤沢自然休養林内にある森林鉄道記念館で見ることができる。かつて木曽の山々で木材輸送の主役として活躍したアメリカ・ボールドウィン社製の貴重な蒸気機関車(ボールドウィン号)をはじめ、小型のディーゼル機関車や運材車(木材を載せる貨車)、皇太子殿下の乗車にも使われた珍しい特製C型展望客車などが展示されている。

ナローゲージ(762mm幅の狭い線路)ならではの小ぶりで武骨な造形美や、過酷な山道での運搬に耐え抜いた機械としての迫力を間近でじっくりと観察できるのは、この場所ならではの魅力だ。

赤沢自然休養林の園内施設1

赤沢自然休養林の園内施設2

赤沢自然休養林の園内施設3

赤沢自然休養林の園内施設4

赤沢自然休養林の園内施設5

赤沢自然休養林の園内施設は、温もりある木造の建物や、木工品や地元のお土産が並ぶ売店など、訪れる人を温かく迎えてくれる。美しい緑に囲まれた心地よい空間で、散策の合間に立ち寄って休むのにもちょうどいいだろう

赤沢自然休養林

長野県木曽郡上松町小川 小川入国有林
営業時間:9:00〜16:00(営業期間はウェブサイトを確認)
駐車場料金:普通車700円、自動二輪車150円
赤沢森林鉄道往復乗車券:1,000円(中学生以上)、600円(4歳〜小学生)
※運行時間はシーズンによって変更になるためウェブサイトを確認してください
赤沢自然休養林ウェブサイト

宿場町巡りだけじゃない! 木曽の歴史と鉄道遺構を訪ねる

木曽の深い山々に、かつて森林鉄道を支えた小野田橋梁(きょうりょう)が静かにたたずんでいる。緑豊かな自然と、時の流れを感じさせる武骨な鉄のコントラストが美しい

木曽の深い山々に、かつて森林鉄道を支えた小野田橋梁が静かに佇んでいる。緑豊かな自然と、時の流れを感じさせる武骨な鉄のコントラストが美しい

この木曽地域は、かつて多くの旅人が行き交った「奈良井(ならい)宿」や「妻籠(つまご)宿」といった歴史ある宿場町巡りのイメージが強いが、実は点在する森林鉄道の跡や保存車両を巡るドライブコースとしても非常に魅力的なエリアでもある。

鉄道遺構1

鉄道遺構2

鉄道遺構3

鉄道遺構4

道中に点在する鉄道遺構。緑に溶け込む石積みの橋脚跡や昔の架線を支えたポールなどが、かつてこの地に鉄路が張り巡らされていた歴史を静かに物語っている

国道19号から緑豊かな赤沢自然休養林へ向かう道中には、かつての橋脚跡や廃線跡のトンネルといった遺構が景色の中に溶け込んでいる。歴史情緒あふれる宿場町の散策と、時を止めたかのようなノスタルジックな鉄道遺構めぐりを組み合わせたドライブ旅で、豊かな自然と産業遺産が交差する木曽の新しい魅力を発見してみるのもいいだろう。

木曽森林鉄道遺構1

木曽森林鉄道遺構2

木曽森林鉄道遺構3

木曽森林鉄道遺構4

上松電子に保存された木曽森林鉄道の車両をはじめ、鬼淵鉄橋、十王沢橋梁など、JR上松駅の近くに地域に息づく鉄道遺構。かつて木材輸送でにぎわった記憶を、静かに今へと伝えている

SL1

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JR木曽福島駅前に静かにたたずむ「D51 775号機」。かつて中央本線の急勾配を力強く駆け抜け、木曽の物流や人々の足を支えた蒸気機関車だ。車体は再塗装されており、当時の迫力を間近でじっくりと感じられる

マップデータ

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