国宝通潤橋と日本一の石段、馬刺し、ヤマメを制覇! 緑豊かな熊本県山都町・美里町で魅惑のドライブ
文=宮田珠己 / 撮影=阿部吉泰 / イラスト=田中 斉

国宝通潤橋と日本一の石段、馬刺し、ヤマメを制覇! 緑豊かな熊本県山都町・美里町で魅惑のドライブ

熊本県山都町・美里町

九州のど真ん中、緑豊かな熊本県の山都(やまと)町と美里町を巡る今回のごきげんロードトリップは、火山噴火による溶岩の台地に生まれた奇跡の橋を訪ね、先人たちの壮大なチャレンジ精神に驚嘆。さらに日本一の石段や、伝統芸能の新しい風にも触れながら、熊本ならではの地元グルメを堪能します。

目次

通潤橋の謎を解くため、山都町を目指す

通潤橋を眺める男性

通潤橋は令和5(2023)年に国宝に指定されている ●通潤橋/上益城郡山都町長原 Tel 0967-72-4844 tsujunbridge.jp

誰にでも、テレビか何かで見て、ずっと気になっている風景があると思う。私にとってのそれは通潤橋(つうじゅんきょう)だ。熊本県の山都町に巨大な石の橋があり、その橋の中央から勢いよく水がほとばしり出る映像を見たのだった。それを見ながら、不思議に思った。いったいなぜ橋から水が出てくるのだろう、あの放水はいったい何のために行っているのだろう、と。
今回はその通潤橋を含む、山都町、美里町をクルマで訪ねる旅だ。見どころが多いにもかかわらず鉄道が走っていないこういう場所こそ、クルマの出番である。
まずは真っ先に通潤橋に向かった。ついに積年の謎を解くときがきたのだ。橋は緑あふれる谷間に思った以上に巨大な姿でそそりたっていた。よくこんなに石を積んで崩れないものだと驚く。
通潤橋は、周囲を谷に囲まれた白糸台地に水を送るために造られた水道橋で、白糸台地は昔から水に恵まれず、水を引くことは住民の悲願だったそうだ。そして江戸末期の嘉永7(1854)年、地元の惣庄屋(そうじょうや)だった布田保之助(ふた・やすのすけ)が中心となって、台地に水を引くための水道橋を建設した。深さ約30mの谷を渡らなければならなかったが、当時の土木技術では高さ20mの橋が限界であったため、石の管の中を通す方法が考案された。密閉された管の中を通せば、いったん高さ20mまで水を下ろしても、対岸でもとの高さまで水圧によって押し上げることができる。こうして近世土木の傑作と言われる通潤橋が完成した。
ただこの方式では、時間がたつと水に紛れた土砂が管の中に堆積してしまう。私が気になっていたあのダイナミックな放水は、その管にたまった土砂を吐き出すために行われていたのである。ようやく積年の謎が解けて、すっきりした。

通潤橋史料館のジオラマ

橋のそばにある通潤橋史料館でガイドの石山信次郎さんに話を伺う。通潤橋は白糸台地の最も高い位置にあり、約6㎞上流の笹原川から水を引いているそう ●通潤橋史料館/上益城郡山都町 郡山都町下市182-2 Tel 0967-72-3360

通潤橋建設の模型

橋の建設にはまず木で台枠を組み立て、輪石を積んでアーチをつくり、眼鏡橋完成後に通水管を並べてから台枠を取り除く。約1年9か月にわたる大工事だった。かつて放水は年1回だったが、今では定期的に観光放水が行われている

八朔祭の大造り物

八朔祭の主役となる大造(おおつく)り物。シュロの皮や、松ぼっくり、パンパスグラスなどの自然物で作る

通潤橋の後は、山都町で毎年9月に開かれる八朔祭(はっさくまつり)で町中を引きまわす「大造り物」を見物した。「大造り物」とは、藁(わら)や松ぼっくりなどを組んで造られた大きな人形で、過去の作品が町のあちこちに展示されている。力強いうえにどこかユーモラスで、これが町を練り歩く姿を想像すると、かなり愉快だろうと思われた。

かつての農村芸能の文化を今に伝える
清和文楽館を見学

清和文楽資料館の内観

山都町は、通潤橋だけでなく人形浄瑠璃も有名と聞き、興味が湧いた。清和文楽は、かつて農村芸能で地元の人々を楽しませていた人形浄瑠璃である。道の駅に本格的な専用劇場があり、定期公演も行われている。人気の演目は清和文楽オリジナルの『雪おんな』や、新型コロナで名をはせた妖怪をモチーフにした『肥後アマビエ戀歌異聞(こいうたいぶん)』、さらに2024年の今年は、あの人気漫画『ONE PIECE』とコラボした『超馴鹿船出冬桜(ちょっぱあふなでのふゆざくら)』が好評だという。
太夫や三味線を務める岡本翔さんが劇場内に招き入れてくれ、人形に触らせてくれた。人形は重さ3〜10kgもあり、人形遣いの大変さを思う。
通常の舞台は45分程度だが、『超馴鹿船出冬桜』は1時間45分もの長丁場で、かつ漫画とのコラボということでチャレンジングな取り組みだったが、蓋を開けてみれば、漫画ファン以外にも大好評で、公演開始の3月は満席が続き、今では全国公演も検討中とのこと。「今は、従来の古典だけでは、年配のお客さんをつかまえるのも大変なんです」と岡本さん。それでも「こうした山の中の土地でありながら、専用劇場まで造られ、地元の人々の助けを借りながら今も続けられていること自体すごいことだと思います」と語る。
この機会に人形浄瑠璃デビューしたかったが、突然の訪問だったため、残念ながらこの日は公演がなかった。ぜひ次は公演のある日に訪れたい。

清和文楽館劇場の内部

道の駅清和文楽邑内に、清和文楽館の劇場と資料館が立つ。劇場は、通常200席の本格的なもの

清和文楽館の太夫の男性

地元の小学校で清和文楽を見て興味を持ち、この世界に入った岡本翔さん。淡路人形座で2年間の修業を経て、今は太夫・三味線を担当

人形の頭を操る男性

人形は3人で操作し、一人が頭と右手、一人が左手、もう一人が足を担当するのだそう。一度に多くの作業をこなす必要があり、かなり難しそうだった

清和文楽資料館外観

資料館では、円楼のようなユニークな建物の中で歴史に関する展示や人形の実物を見学することができる ●清和文楽館/上益城郡山都町大平152 Tel 0967-82-3001 https://seiwabunraku.com/

熊本といえば馬刺し。最上級の馬肉に舌鼓

馬刺し盛り合わせ

さしが入り脂の甘みがとろける馬刺し大トロ(3,750円/100g)

熊本のグルメといえば、真っ先に思い浮かぶのが馬刺しである。
「肉のみやべ」は馬見原商店街に100年前から店を構え、県外からも大勢のお客さんが買いに訪れる知る人ぞ知る有名店。スポーツ選手や大相撲の力士などにもファンが多いという。
馬肉は長年、安い肉として扱われることが多かったが、今では牛と同じように部位やランクが分けられ、一部は高級な食材としても知られるようになった。
直営の食事処で、馬刺しをいただく。
今回注文したのは、最高級の大トロと赤身。赤身は、つるんとして、歯ごたえがあった。今まで食べたことのある馬刺しもたしか同じような食感だった。
ただ、味は全然違って、食べやすい。一方の大トロは、見た目がまさに霜降りであり、なめらかな質感、霜降り特有の甘味とうま味、クセ・臭みもなく上品な味わいで、これはうまい、と思わず唸った。県外からのお客さんにも「これまで私が食べていた馬刺しは何だったんでしょう」と言われるほどだそう。わかる。こんな肉は食べたことがない。馬肉にこんなに深い味わいがあるとは不覚にも知らなかった。

馬刺しの説明を受ける人

4代目となる宮部弘一郎さんは、東京都内のホテルで10年間修業し、うち3年はソムリエを務めた。後に県内の大手商社で1年学び、店を継ぐため地元に戻ったそう

焼肉を焼く男性

みやべに併設する肉処 三拾弐番では、馬刺しや焼き肉が食べられる。完全予約制。希少部位である馬ヒモを炙って食べる。美味!

馬肉コロッケ

馬肉がたっぷりと入った桜コロッケ(300円)。国産馬肉100%使用、馬肉コロッケの元祖で、ふんわりと軽い上品な味。ご主人の奥さんが発案したそう

肉のみやべの店主

3代目店主の宮部博文さんによると、馬肉は軍馬を食べたのが始まりと言われているそう。一時は薬膳として食べられていた時期もあるとのこと

肉屋のショーケース

熊本県馬刺し安全・安心推進協議会では、国の基準(-20℃で48時間以上の保存)を自主的に53時間に延長するなど、衛生面をとくに重視している

肉のみやべ外観

創業100年。県外からここを目指してくるお客さんも多い ●肉のみやべ/上益城郡山都町馬見原61-3 Tel 0967-83-0032 https://298-miyabe.com/

阿蘇連山の大パノラマを一望。贅沢なテラスのホテルWINDYに宿泊

ホテルWINDYのテラス席

阿蘇五岳から外輪山までが一望のもとに見渡せるテラス。この景色だけでも泊まる価値あり ●そよ風パーク・ホテルWINDY/上益城郡山都町今297 Tel 0967-83-0880 https://soyokaze-park.jp

宿泊施設の少ない山都町で泊まるなら、道の駅そよ風パーク内にある「そよ風パーク ホテルWINDY」はおすすめだ。山都町は「九州のへそ」と呼ばれているだけあって、九州のど真ん中に位置し、ここからは阿蘇だけでなく、高千穂や黒川温泉、熊本市街などへも足を延ばせる好立地。近場には国宝の通潤橋や、緑仙峡(りょくせんきょう)、蘇陽峡(そようきょう)などの見どころもあり、パーク内にはキャンプ場やサッカーグラウンド2面、多目的広場、地元のおみやげが豊富な物産館などの施設が充実している。山都町の観光基地としての魅力は十分だ。

日本で一番古いとも言い伝えられる幣立(へいたて)神宮を参拝

弊立神宮の石段

木立の中に鎮座する幣立神宮は、清々しい空間。パワースポットとしても有名

当初の予定にはなかったのだが、幣立神宮が有名なパワースポットだと教えられ訪ねてみた。下調べもなく、どんな由緒があるのかも知らないままに鳥居の前に立ったら、清々しい気持ちになったのは不思議といえば不思議な感覚だった。霊感とかスピリチュアルとかそういうものとはほとんど縁のない私でも、そこから杉木立の中の階段を上って、日の丸が掲げられた明るいお社(やしろ)が見えてきたときには、敬虔(けいけん)な気持ちになった。
境内は清涼感があって明るく気持ちのいい雰囲気で、なるほどここをパワースポットと言いたくなる気持ちが理解できる。聞けば、神武天皇の孫である健磐龍命(たけいわたつのみこと)が、この地で幣を立て多くの神さまを祭ったのが始まりとのこと。龍神だろうか小さな鳥居に龍の彫り物が掲げられていたのが素朴でかわいかった。奥には神聖な水が湧き出る泉もあるそうだ。

弊立神宮にお参りする男性

信仰心の薄い身ではあるが、ご利益がありそうだったので、静かに手を合わせ、旅の無事を祈った

弊立神宮の鳥居

境内には檜(ひのき)のご神木や、五百枝杉(いおえすぎ)などの巨木がそびえ、独特な雰囲気 ●幣立神宮/上益城郡山都町大野712 Tel 0967-83-0159

熊本ご当地メシの伝統を受け継ぎつつ、独自に作り上げた火の国ラーメン

ふじラーメンの火の国ラーメン

チャーシュー、メンマ、ニンニクチップ、キムチ、きくらげ、高菜、卵などトッピングが豊富な火の国ラーメン(750円)

熊本のグルメといえば、ラーメンもそのひとつ。豚骨ベースだが、博多との違いは揚げたにんにくやマー油が入っているところだそう。
そんな熊本ラーメンの老舗、山都町で人気の「ふじラーメン」でお昼にした。ご主人の豊里さんは各地のラーメンを食べ歩き、これだと思った熊本市内の富士ラーメンで修業を重ねた後、昭和57(1982)年に独立。山都町に「ふじラーメン」を開業したという。
私が注文したのは「火の国ラーメン」。実はこれまでに訪ねた各所で「ふじラーメン」に行くならチャンポンがうまいぞと教えられ、さらに奥さんからは「モヤシネギラーメン」をすすめられたりして、迷いに迷ったのだが、やはりまずは定番でいこうと決断した。
奥さんにも再現できないというご主人お手製のスープに、45年も継ぎ足しながら使っているタレで味付けしたチャーシューが秀逸な一品。
もともと筆者は豚骨好きでもあり、おいしいのはひと目見ればわかったが、これほど具だくさんだとさらにうれしい。せっかくだから餃子や白ごはんも追加して堪能した。近所でとれたという米を炊いた白ごはんがまたおいしくて、この店にして大正解だった。

ふじラーメンのチャンポン

火の国ラーメンと人気を二分するチャンポン(750円)。地元の人にやたらすすめられた。ソースをかけ、味変させて食べると、なおうまいのだとか

ラーメンを食べる男性

スープはこってりしているが胃に重くなく、チャーシューは柔らかく、期待以上のうまさ。開店と同時にあっという間にカウンター席が埋まったのもうなずける

ふじラーメンの店主と奥様

友明さんは言葉少なだが終始にこやかで、快活な奥さんの千代美さんとのタッグが店を明るい雰囲気で包み込んでいる ●ふじラーメン/上益城郡山都町野尻1028-1 Tel 0967-72-3993

日本一の石段、3,333段踏破にチャレンジ!!

釈迦院御坂遊歩道の石段

いったいどこまで続いているのか、見上げるだけで絶望的な気分になる。果たして上れるのか

美里町には「釈迦院御坂遊歩道」という長い石段があって、3,333段は日本一の長さだそうである。以前から噂は耳にしていて、一度てっぺんまで上れるかチャレンジしてみたい気持ちと、絶対きついからやめておこうという気持ちの両方を抱えながら、現場にやってきた。
3,333段の石段など上ったことはないから、半日ぐらいかかりそうな気がしたが、石段の下で汗だくになっている若者に聞いてみたところ、まさに今上って来たばかりで上りに40分かかったと話してくれた。
驚いた。そんなに速いの? 
スポーツ選手かなと思ったらラグビーをやっているという。どうりでスタミナがあるわけだ。だが、84歳で4往復してきたという人に会ったというから、腰が抜けそうになった。それ、仙人か何かでは?
最後まで上るかどうか決心がつかないまま上り始めると、山門に番付表が掲げてあり、78歳の男性が8,054回上ったと記載されていた。ここは仙人ばっかり住んでいる国なのか。
さらに途中に石碑があり、そこには過去の石段上りイベントにおける男女の優勝者の名前とタイムが刻まれていて、トップの人は25分ぐらいで上っているようだ。
3,333段を25分だって? なんだか一般人が来てはいけない場所に来てしまった気がする。
私は日々散歩しているので、それなりに歩ける自信はあったけれど、ただ歩くのと石段を上るのとではまったく違って、みるみる太ももが痛くなった。1,000段までなんとか上ったところでギブアップ。いや、時間をかければまだ上れるのだ、まだ上れると思うんだけどその後歩けなくなる気がする。これを25分で上ったとか、8,054回上ったとか、みんなどうかしてるんじゃないだろうか。
なんだか負けたみたいで悔しいから、いつか絶対上まで上るぞと心に誓いながらも、でもそれは今日じゃないと思ったのだった。

石段を登る男性

1,000段の碑の前で余裕を見せる私。本当は、太ももがガクガクしてしまい下まで戻れるかどうか不安だった ●釈迦院御坂遊歩道/下益城郡美里町坂本 Tel 0964-47-1111 http://misato.town/spot.html?id=68

やわらかな泉質の佐俣の湯で、足腰の疲れを癒やす

佐俣の湯につかる男性

緑に囲まれた佐俣の湯の露天風呂。お湯はアルカリ単純泉の源泉かけ流し。約36℃の源泉を41℃に加熱している

石段で汗だくになったので、こういうときは温泉に入るしかないと、道の駅美里「佐俣の湯」に立ち寄る。
宿泊施設やレストランも併設した温泉施設で、自然に囲まれた露天風呂につかると、緑が目にまぶしく、石段の疲れもとけていくようだった。「ふわあ~」と声が出る。みるみる肌もすべすべになって、若返った気分だ。のぼせやすい体質なので、あまり熱いと長く入れないのだが、ここは湯の温度もちょうどよく、いつまでもゆっくり入っていられそうだった。
それにしても石段の近くに温泉があって助かった。今ふりかえると、3,333段ぐらい上ってしまえばよかったのではないか、と考えなくもないが、それは湯につかっている今だからそう思えるのであって、調子に乗ってはいけない。あれ以上上ったら、足が動かなくなって運転に支障が出たかもしれない。そもそも1,000段でも十分大きな達成と言えるではないか。そうだ、そうだ。私は達成したのだ、と温泉でふやけた頭で自分を納得させた。今日はもうこのまま動きたくない。

あか牛のステーキ丼

併設のレストランのおすすめは馬刺しと並ぶ熊本の名物、あか牛のステーキ丼(1,900円)。丼にびっしりと敷き詰められたあか牛を特製の醤油ベースのタレで味わう

佐俣の湯物産館外観

温泉のほかに物産館、レストラン、宿泊施設も完備 ●道の駅美里 佐俣の湯/下益城郡美里町佐俣705 Tel 0964-46-4111 https://samatanoyu-misato.jp/ 【JAF優待】

異世界への入り口? 八角トンネルでここではないどこかへ

八角トンネル

かつてこの地を走っていた熊延(ゆうえん)鉄道の遺構。正確にはトンネルではなく、落石を防ぐために造られた構造物だそう ●八角トンネル/下益城郡美里町小筵 Tel 0964-47-1111(美しい里創生課)

そもそも旅好きはみんな、一度異世界に足を踏み入れてみたいと思っているのではないか。そんな願いを叶えてくれそうなスポットがあったので、行ってみた。案内板にも「まるでどこか別の世界へつながる入口のよう」と書かれている。遊歩道を歩いていくと、まさにそんな雰囲気のトンネルが姿を現した。なぜこんな印象的な形にしたのかは記録がなく、町のホームページでも謎とされていた。通り抜けると広い展望が開け、ほんとに別の世界に来たよう。好きだなあ、こういうスポット。
今はたいていの場所には行ける時代ではあるけれど、できることなら非現実的な世界へ行ってみたいと思うのは、現実に疲れているからだろうか。自分でもわからない。そして八角トンネルをくぐって帰って来たこの場所は、本当にもといた世界なのだろうか。それもわからない。

渓流のほとりにあるやまめ茶屋で、新鮮な塩焼きにかぶりつく

焼いているヤマメ

いけすで育てた新鮮なヤマメの塩焼きや甘露煮、南蛮漬などを提供している ●やまめ茶屋/下益城郡美里町早楠1951 Tel 0964-47-1239

ドライブの最後に立ち寄ったのは、やまめ茶屋。津留(つる)川の渓流をまたぐようにして建つ野趣あふれる食事処で、店内には先代の主人が釣ったアラの巨大な魚拓が掛けられていた。
そういえば、アユやイワナは食べたことがあってもヤマメは食べたことがない。2代目主人の赤星宇宙さんに尋ねると、ヤマメは川魚特有の生臭さがなく、繊細な味が特徴だそう。
「とくに塩焼きがおいしい。頭から尻尾の先まで残すところがなく全部食べられます」
実は、私は川魚が少々苦手なくちなのだが、2代目の言葉通り、食べてみると臭みがまったくないことに驚いた。海の魚と言われたら、信じてしまいそうなぐらいうまい。
「お客さんにも、ここのヤマメは他と違うねとよく言われます」
なにがそうさせるのでしょうか。そう聞いてみると、
「さあ。焼く直前まで生きてるからかな」
飄々(ひょうひょう)とそう答える2代目。いけすでは年間3~4万匹のヤマメを育てているそう。きっと水もいいのだろう。
「ヤマメは頭をバリバリにしっかり焼くのがコツ」とのことで、たしかに塩焼きの頭はバリバリの硬さだった。味だけでなく食感もいいのだ。
周囲には他に店もないような山奥だが、多いときには1日40~50人もお客さんがくるという。それだけ愛されている店なのである。これからのことを尋ねると、
「できる限り店を続けて、この味を守っていきたい」と静かに抱負を語ってくれた。

ヤマメの塩焼き定食

炭火でじっくりと焼かれたヤマメの塩焼きと南蛮漬け、小鉢やだご汁がセットになったヤマメ塩焼き定食(1,540円)

やまめ茶屋のそばの川

やまめ茶屋のそばを流れる津留川の様子。九州の秘境と言われる五家荘(ごかのしょう)へ続く山道の途中にお店がある

山都町と美里町、九州のへそにあるふたつの町のドライブは、まるで走る森林浴のようだった。
緑美しい森が続いたかと思うと、突然森が開け、広大な風景が現れたりする。まさに異世界の旅だ。だが風景もさることながら、今回の旅を通じて最も印象に残ったのは、人々のチャレンジ精神だった。
高さ30mの渓谷にユニークな仕組みの橋をかけ、伝統芸能に新たな風を吹き込み、新しい味を開拓する。八朔祭の山車(だし)や日本一の階段を造ってしまうのも、なんかでっかいことやってやろうという気持ちの表れなんじゃないか。そんなふうに勘ぐってしまうほどに、未来に向かっていこうという思いが感じられる土地だった。
次は文楽の公演があるときにまた来よう。八朔祭も見てみたいし、何より3,333段にリベンジしに来なければなるまい。

木立を走る車

今回のごきげんロードマップ

イラストマップ

A.通潤橋/B.清和文楽館/C.肉のみやべ/D.そよ風パーク・ホテルWINDY/E.幣立神宮/F.ふじラーメン/G.釈迦院御坂遊歩道/H.道の駅美里 佐俣の湯/I.八角トンネル/J.やまめ茶屋

「ごきげんロードトリップ」掲載自治体のご紹介

JAF Mate Onlineに掲載していないドライブコースやおすすめスポットなども掲載!

現地へ足を運ぶといいことあるかも!?
JAF会員対象特別プレゼント!

2024年8月13日(火)~9月30日(月)まで服掛松(ふくかけまつ)キャンプ場を予約した上で来場時にJAF会員証を提示し「JAF Mate Onlineを見た」とお伝えいただいた先着100名様に、粗品を差し上げます。

  • 会員含む1グループに1点プレゼント
  • なくなり次第終了
  • 通年優待のご利用には事前予約が必要となります。

※JAF優待の内容や利用方法などの詳細は、記事内の各施設「JAF優待はこちら」をクリックしてください。JAFナビ からも検索可能です。
※記載のデータは2024年7月現在のもので、料金は大人1名分(税込)です。変わる場合もありますので、お出かけ前にご確認ください。
取材協力=熊本県山都町、美里町

熊本県山都町・美里町の魅力たっぷり! ご当地名産品プレゼントに必要なキーワードはこれ!

ごきげんロードトリップで登場した熊本県山都町・美里町より、とっておきの名産品をプレゼント。応募にあたっては応募フォームにログインし、キーワードの入力が必要です。名産品プレゼントの詳細は、別公開となっている下記リンクにてチェックしてください。

プレゼント応募用キーワード

ヤマメ

熊本県山都町・美里町ドライブガイド

1.蘇陽峡(そようきょう)

阿蘇外輪山の伏流水を集めた五ヶ瀬川の清流が悠久の年月をかけて浸食した県内有数の峡谷。高さ200mにもおよぶ切り立った絶壁が10km以上も続き、「長崎鼻展望台」からの絶景は「九州のグランドキャニオン」とも呼ばれる。

上益城郡山都町長崎
Tel 0967-72-1115 (山都町商工観光課)

2.服掛松(ふくかけまつ)キャンプ場

阿蘇五岳や九重連山のパノラマが広がる、西日本最大級のキャンプ場。芝生のフリーテントサイトやオートサイト、ログハウスもあり、大型遊具も完備。ファミリーからソロキャンプまで思い思いにアウトドアライフを満喫できる。

上益城郡山都町長崎361
Tel 0967-83-0249
服掛松キャンプ場

★プレゼントあり

3.通潤用水 小笹円形分水

円形分水は、笹原川の水を野尻・笹原地区と白糸台地に送る分水装置。送る水の割合を両地区の水田面積に応じて配分し水路に流れるよう工夫された、不思議な仕組みの施設。大人の遠足気分で楽しめるスポットだ。

上益城郡山都町小笹
Tel 0967-72-1115(山都町商工観光課)

4.道の駅 通潤橋

九州中央道・山都通潤橋ICからすぐのアクセス抜群の立地に2024年1月に移転オープンした道の駅。物産館には地元の有機野菜や米、加工品がいっぱい。レストランでは旬の食材を生かした滋味あふれるメニューを味わうことができる。

上益城郡山都町城平660
Tel 0967-72-9900
道の駅 通潤橋

5.山都町観光文化交流館(やまと文化の森)

山都町の観光文化の情報発信拠点。町が誇る文楽や神楽などの伝統芸能を紹介するコーナーがあり、文化財や史料も展示。毎年9月に行われる「八朔祭(はっさくまつり)」で町内を巡る迫力の「大造り物」が展示された大造り物小屋も併設。

上益城郡山都町下市16
Tel 0967-72-9400
山都町観光文化交流館

6.通潤橋ミエルテラス

矢部周辺県立自然公園内に位置し、国宝の通潤橋がすぐ目の前に見える好ロケーション。通潤橋の歴史が学べる史料館やレストランがあり、物産館では有機米をはじめ農産物、矢部茶、清酒、干し柿の加工品など地元の特産品が勢揃い。

上益城郡山都町下市184-1
Tel 0967-72-4844

7.通潤山荘

四季折々の自然と木の温もりあふれる空間に癒やされる温泉宿。露天風呂やサウナを備え日帰り入浴もOK。国宝通潤橋まで徒歩約5分に位置し、館内のレストランで食べられる地元の無農薬玄米を使用したランチもおすすめ。

上益城郡山都町長原192-1
Tel 0967-72-9999
通潤山荘

8.五老ケ滝

通潤橋のすぐ上流にある五老ヶ滝。落差50mの瀑布は大迫力。滝の展望所までは遊歩道が整備され、途中にある吊り橋も滝の全景を一望する絶景ポイント。天気の良い日に虹がかかる滝が見られたらラッキー!

上益城郡山都町長原
Tel 0967-72-1115(山都町商工観光課)
五老ヶ滝

9.鮎の瀬大橋

日本の棚田百選に選ばれた菅地区と白藤地区を結ぶ鮎の瀬大橋。高さ約140m、長さ約390mのY字橋脚と斜張橋の複合型の珍しい橋。数々のデザイン賞を受賞している橋の建築美はもちろん、橋上から見渡す緑川の渓谷も見応えあり。

上益城郡山都町菅488-1
Tel 0967-72-1115(山都町商工観光課) 
鮎の瀬大橋

10.フォレストアドベンチャー・美里

自然の地形と森林を丸ごと生かしたアウトドアパーク。樹上で多彩なアクティビティに挑むアドベンチャーコースと、緑川ダム湖の上を横断する日本最大級のジップトリップコースがあり、スリル満点の冒険気分を体験できる。

下益城郡美里町畝野3083-1
Tel 080-8387-3310
フォレストアドベンチャー・美里

11.霊台橋(れいだいきょう)

緑川をまたぐ霊台橋は約170年前に建設された石橋で全長約90m。江戸・明治時代の石造単一アーチ橋として日本一の大きさを誇る。当時の匠の技による美しくも堅固な石組みの橋は今も堂々たる佇まいで国指定重要文化財となっている。

下益城郡美里町清水
Tel 0964-47-1111(美里町美しい里創生課)

12.レストラン木香里(きこり)

旨みとボリューム満点の洋食メニューに魅せられて遠方から通うファンも多いレストラン。阿蘇の大自然に育まれた「あか牛」を100%使用、肉汁を閉じ込めたハンバーグが一番人気。自慢のデザート「美里ぷりん」は手土産にもおすすめ。

下益城郡美里町二和田1166-1
Tel 0964-47-2211

13.森のぱんや

ハード系からスイーツ系、総菜パンまで、焼きたてパンが種類豊富に並ぶベーカリー。ふわふわのパン生地でクリームを包んだ「赤ちゃんのおしりパン」はリピーター続出。かわいいロッジ風の店内とテラスでイートインもOK。

下益城郡美里町佐俣1090
Tel 0964-46-2037

14.二俣橋(ふたまたばし)

釈迦院川と津留川が交わる合流点に直角に架けられた2つの橋からなる二俣橋。10月から2月にかけて限られた時間帯に橋のアーチに差し込んだ太陽の光と影がハートの形を映し出すことから「恋人の聖地」として人気となっている。

下益城郡美里町小筵
Tel 0964-47-1111(美里町美しい里創生課)

15.コムシロン★カフェ

地元の食材を生かしたイタリアンと自家製デザートが人気のカフェ。美里町特産「豆腐のもろみ漬け」をソースにアレンジした「コムシロンパスタ」や食いしん坊も満足の「トルコライス」など何度も通いたくなる名物メニューをご賞味あれ。

下益城郡美里町小筵927
Tel 0964-46-3665
コムシロン★カフェ

16.喫茶去(きっさこ)たかしま園

農薬・化学肥料不使用栽培にこだわるお茶の専門店の喫茶スペース。緑茶をはじめ、柚子や干し柿など美里町の季節の素材を使ったアイス&ジェラートが絶品。田園風景を眺めながらいれたてのお茶と手作りスイーツでほっとするひと時を。

下益城郡美里町払川155-1
Tel 0964-46-3284
喫茶去たかしま園

この記事はいかがでしたか?
この記事のキーワード
あなたのSNSでこの記事をシェア!