ごきげんロードトリップ

北海道オロロンラインを北上し、うにえび丼、ジャンボ生ちらしと石狩鮭醤油ラーメンを食べ尽くす美食ドライブ

北海道・新篠津村、当別町、石狩市、増毛町

2023.08.14

文=村上菜つみ / 撮影=阿部吉泰 / イラスト=田中 斉

2023.08.14

文=村上菜つみ / 撮影=阿部吉泰 / イラスト=田中 斉

1年点検を受けると、だれにでもチャンス

ごきげんロードトリップ第3回目は夏の北海道が舞台。仕事で北海道を訪れた「わたし」は、延泊して北海道の北西部、オロロンラインをひたすら北上してみようと思いつきます。車に乗り込み、2泊3日のロングドライブへと出発します。梅雨のない、からりとした天気と広い海、高い空のもと、心も体も解放され、おいしいグルメに満たされた旅の思い出を綴ります。

旅の初日は解放感を求めて、朝一番でしんしのつ温泉へ

「たっぷの湯」の露天風呂は木々に囲まれ、とても気持ちのいい環境だ。

札幌市内のビジネスホテルで少し早めの朝食をとりながら、どこへ行こうかと考えた。
地方出張の醍醐味は、なんといっても仕事の後の「自由時間」。いやむしろ、それがしたいからわざわざ出張に出ると言っても過言ではない。帰りのフライトは3日後の夕方だから、それまで思いきり羽を伸ばそう。行ったことのない土地へ行き、ひとりで気ままに見てまわる。考えただけでわくわくする。

チェックアウト後すぐに、レンタカーを借りて走り出す。北海道を旅するのは久しぶりだ。昨夜、仕事の打ち合わせ後に皆で食べたジンギスカンの野性味がまだ、口の中に残っているような気がする。そういえば、取引先の男性が生ビールを飲みながらしきりにどこかの温泉を勧めていた。確かにここ数日、ビジネスホテルのユニットバスでシャワーを浴びるだけだったから、ゆっくりと湯に浸かりたい。あれはなんと言っていただろう……。なにか楽し気な語感の、珍しい名前の温泉だった。そう、確か「たっぷの湯」だ。私はカーナビにその名を入れ、北へ向かって走り出した。

札幌市内から石狩川に沿うように走り約30㎞。「たっぷの湯」は自然あふれる小さな村・新篠津(しんしのつ)村にある道の駅併設の宿泊温泉施設だ。車を降りると心地よく冷たく澄んだ空気が体を包み込み、ほのかに木々の香りがした。胸いっぱいに息を吸い込む。「北海道に来たのだ」。仕事を終えた解放感とともに、そんな感動がやっと沸き起こった。
たっぷたぷの湯に浸かり青空を見てほっとひと息。

朝早くに来たおかげで、大浴場はまだ人影もまばらだった。その名のとおりたっぷたぷに湯量豊富な源泉は、塩分強め、よう素を含む茶褐色の湯で、湯温も程よい。外気を感じながら露天風呂に入るには、長湯ができてちょうどいい。柔らかな泉質は肌あたりがよく、揉むとすべすべしていて嬉しくなる。気をよくし、何度も肌にすりこんだ。

北海道の空は広い。湯に浸かりながら見上げている青空は、びしゃびしゃに薄く溶いた青い水彩絵の具をたった一度、刷毛で塗ったような空だ。そこにぷかぷかと呑気な雲が浮かぶ。本州で見上げていたのはもっと色濃く、凝縮されているような青空だった。つながっているはずの空でさえ、こんなにも印象が違う。遠くに来たのだと思った。

「含よう素泉」に含まれる「よう素」は、うがい薬にも使われる殺菌効果の高い成分。
色は茶褐色で口に含むと少し塩気を感じ、やや苦みもある。

俗に「熱の湯」と呼ばれるナトリウム塩化物強塩温泉は保温効果が高く、湯上がりもぽかぽか。よう素を含むこちらの源泉は乾燥肌にもよく効き、湯上がり直後から肌がつるつるになる。

しのつ公園内には道の駅の他にキャンプ場(手ぶらキャンプもあり)や自転車のレンタル、展望台もあり、貸し竿で釣りもできる。しのつ湖を存分に堪能できる場所として人気だ。

●しんしのつ温泉たっぷの湯/石狩郡新篠津村第45線北2番地
☎︎0126-58-3166 入浴料大人700円 https://tappunoyuonsen.com/ JAF優待

たっぷの湯の売店で買える「新しのつのこめサイダー」(150円)。「子供にもおいしく飲んでもらいたい」と刺激弱めの微炭酸で、すっきりとしたやさしい甘さに仕上がっている。

道の駅しんしのつの隣にある産直市場内「IL LAGO」のコーヒーゼリーソフト(500円)。挽きたての豆、淹れたてのコーヒーから作った香り高いコーヒーゼリーが特徴。
●IL LAGO(イルラーゴ)/石狩郡新篠津村第45線北2番地 ☎︎0126-57-2773
https://www.instagram.com/illago_stand/ JAF優待

湖畔の快走路にはサイクリストも目立つ。湯上がりの心地よい風を浴びつつ、再出発。

藤澤製菓に立ち寄り、お土産の「えぞわらび餅」を購入

気のいいご主人との菓子談議が盛り上がり、ついお土産をたくさん買った。えぞわらび餅の他にも、洋菓子やどら焼きなどたくさんの種類のお菓子がある。

わらび餅には思い出がある。子供の頃の夏休み、通っていた市民プールの出口の脇に、わらび餅の売店がよく出ていたのだ。発泡スチロールの器にビー玉くらいのぷるっと丸いわらび餅が20個ほど盛られ、たっぷりのきな粉と黒蜜をかけて手渡された。確か200円だったと思う。一日中プールで泳ぎ疲れた体にはその冷たさと黒蜜の甘みがありがたく、夏の間、プールに行くたびにそれを食べた。以来、わらび餅には好印象しかない。

藤澤製菓の「えぞわらび餅」はそんなものとはもちろん別物だ。なにしろ全国菓子博総裁賞受賞だ。売店の発泡スチロールわらび餅とは、ビキニと正絹の着物くらい格が違う。厳かな気持ちで、心していただくことにする。

小さなパッケージには四角いわらび餅が3つ、行儀よく並んでいる。きな粉がまぶしてあり、それをこぼさないようにそっと口に運ぶと上品な甘さが口の中に広がる。私の知るわらび餅とはずいぶん違い、食感がしっかりしているが、これもまた良し。噛めばクルミとゴマが香ばしく香り、こちらは秋の風を感じるような味わいだ。水気はないので食べている途中に水分を欲する。熱いほうじ茶が飲みたくなる。

全国菓子博総裁賞を受賞した藤澤製菓の看板商品「えぞわらび餅」(216円)。わらび粉とゆべしを使用し、たっぷりのクルミとゴマを入れて香ばしく仕上げてある。もっちりとした独特の食感が長く愛される所以だ。

●藤澤製菓/石狩郡当別町弥生51 ☎︎0133-23-2050
JAF優待

道の駅とうべつで名物の焼きリゾットを食べる

カフェ テルツィーナの焼きリゾット。スパイス香る道産牛スジ肉の煮込みソース+おまかせ前菜盛り合わせAセット(1,650円)

北海道の道は広く長く、しばしば「何もない」がある(ことがある)。ドライブをしていると、道の駅ごとに休憩というのもあるあるだ。そしてもちろん、おなかが空く。

大きな三角屋根がトレードマークの「北欧の風 道の駅とうべつ」は、その名のとおり北海道にいながら北欧を感じられる。当別町はスウェーデンのレクサンド市と姉妹都市であり、施設内では「IKEA」の家具が使用されるなど、全体的におしゃれな雰囲気が漂っている。

そんな道の駅とうべつの一番奥に、本格的なイタリアンが食べられるレストランがある。普段の私なら旅先でイタリアンなど小洒落たものは選ばず郷土料理一択だが、イタリアンレストラン「カフェ テルツィーナ」は「北海道イタリアン」を提唱した堀川秀樹シェフがプロデュースしているという。そして何より当別町の食材をふんだんに使用しているというから話は別だ。入ってみることにする。

店内は温かみのある木製の家具を使い、ぬくもりが感じられるしつらえだ。大きな窓からは光が差し込み、開放的な空間で気持ちよく食事を楽しめる。私は「焼きリゾット。スパイス香る道産牛スジ肉の煮込みソース」を前菜付きセットで注文し、未知なる「焼きリゾット」に思いを馳せた。リゾットといえば、私の中では洋風雑炊のことだ。米がなんらかの出汁と具とともに煮込まれ、食感はとろりとしていて、胃腸が悪いときにも食べられる体にやさしいメニューだと認識している。それが「焼き」とはいったいどういうことだろう。雑炊を焼いたりしたら「底が焦げついたドロドロの物体」になってしまわないのだろうか。さらにそれに「牛スジ肉の煮込みソース」をかけたりしたら……。好奇心と不安がないまぜになり、厨房をちらちらと見やる。

運ばれてきた焼きリゾットは、想像とはだいぶかけ離れたものだった。なんと米(しかも雑穀入り)が四角く固められ、表面を焼かれて、上からソースがかかっていた。戸惑いながらもスプーンを入れ、食べてみる。外はさっくり、中はもちもちとした食感の雑穀に、肉の旨味あふれるソースが絡んでなんとも深い味わいだ。しかしこれはリゾットと言えるのだろうか。なんというか「洋風焼きおにぎり」に近いような気がするが……。

リゾットの語源には諸説あるが、一説によるとリゾット(risotto)の「riso」は「rice(ライス)」の語源でもある「米」を意味するイタリア語で、「otto」の部分は「最高」を意味するイタリア語の「ottimo」からきていると言われている。リゾットは「riso ottimo(リーゾ・オッティモ)」を組み合わせて「最高の米料理」という意味の略だそうだ。なるほど、それなら納得できる。食感がとろりとしていなくても、最高の米料理であればそれはすべて「リゾット」なのだ。

広々とした店内は吹き抜けの天井に加え採光に優れ、開放感抜群。

●北欧の風 道の駅とうべつ/石狩郡当別町当別太774番地11 ☎︎0133-27-5260
https://tobest.co.jp/michinoeki/ JAF優待

グランドオープンしたばかりの「ロイズカカオ&チョコレートタウン」を見学

チョコがけポテチで有名なロイズチョコレート。施設の中にはこんなフォトスポットも。

北海道といえばロイズ、ロイズといえば北海道というくらい、北のイメージの強いチョコレートメーカー・ロイズ。当別町の工場に併設する「ロイズカカオ&チョコレートタウン」は、カカオの栽培からチョコレート作りまでの「ファームトゥーバー」の旅を、工場見学やさまざまな体験を通して楽しめる施設だ。ふるさと納税で「人気スイーツ詰め合わせ」を毎年いただくロイズファンの私としては、立ち寄らないわけにいかない。

チョコレートタウンは、ヒグマ頻出エリアとしても有名な国道337号沿いに建っている。白い巨大な建物に青字のロゴがよく目立ち、遠くから見てもひと目でそれとわかる。脳がチョコレートを期待しているので、白亜の建物までもなんとなく、ブロック状のホワイトチョコレートを連想させる。

バラの花が咲き誇るロマンチックなガーデンを通り、エントランスに入ると中はもうチョコレートの世界だ。200種類以上のチョコレートや焼き菓子が揃う工場直売店を横目に、事前に予約購入したチケットを提示して中に入る。(※取材は6月中旬。バラの見頃は7月上旬頃まで)

見学は3階の「カカオファームゾーン」から始まる。「ビーントゥバー(カカオ豆からチョコレートバーになるまで一貫して製造を行うこと)」という言葉は今までに何度か聞いたことがあるが、ロイズはなんとコロンビアに自社農園を持ち、カカオの生産から手がけている。ここではロイズ独自の「ファームトゥーバー」の取り組みを学び、体験することができるのだ。

それにしても秀逸な展示だ。基本的にはチョコレートの製造工程の解説展示なのだが、ひとつひとつが日本の企業らしく忠実かつ丁寧に再現され、しかもデザインや色合いや配置の工夫で楽しく演出されている。最後まで飽きさせることがない。チョコレートの製造工程は想像以上に複雑で、ここではそのすべてが几帳面に説明されている。とてつもないロングジャーニーだが、わかりやすい造りのおかげでひとつひとつに興味を引かれ、時間が経つのがあっという間である。

●ロイズカカオ&チョコレートタウン/石狩郡当別町ビトエ640-15 ☎︎0570-055-612(公式サイトより要予約・チケット購入)
https://www.royce.com/cct/

カカオがチョコレートになってゆく過程をわかりやすく見られるマルチビジョン映像は、迫力満点だ。

コロンビアの農園を再現した「カカオファームゾーン」ではロイズが取り組むカカオ栽培を体感しながら学び、カカオについての豆知識を得ることができる。

オリジナルのチョコレート作りにチャレンジ!

1.型に液状のチョコレートを入れてもらう。チョコレートはミルク・ホワイトの2種類から選べる(ダブルも可)。

2.ナッツ類やクランチ、フリーズドライのフルーツなどでトッピングする。

3.トレーごとベルトコンベアに乗せ「まわるクーラー」で冷やし固める。

4.箱と紐を選んで組み立て、出来たてのオリジナルチョコレートを入れたら完成。

2階の工房ではワークショップが開催されており、自分だけのオリジナル板チョコレートを作ることができる。実際の工員さんさながらにエプロンとヘアキャップを着け、手洗いと消毒を済ませたらいよいよチョコレート作りだ。トレーを持ってチョコレート充填エリアに行き、液状のチョコレートを型に入れてもらう。そしてトッピングエリアへ。

ここからが腕の見せどころであり、個々のセンスが問われるところだが、もたもたしているとチョコレートが固まってトッピングが固定されなくなってしまう。さらにナッツやフルーツが使い放題だからといって欲張りすぎると、やはりそれらがチョコレートに固定されず、あとからばらけて台無しになる。お楽しみ時間と思って気軽に参加したが、なかなかどうして奥が深い。最後まで真剣そのもの、全集中でチョコレート作りを終えた。

壁一面にこれまでのロイズチョコレートのパッケージが展示された通路。

1階に下りて直売店でお土産のチョコレートを買いこみ、外に出て気が付いた。結局、施設の中ではピュアチョコレートを1枚試食しただけだった。それにもかかわらず、チョコレートで満たされた、この感覚はなんだろう。まるで冷やし固める前のチョコレート液に長時間、漬けこまれていたような充足感があった。不思議な心持ちでバラの花咲く小道を通り、車へと戻る。ひんやりとした風の吹く中、まだ鼻先にほのかなカカオの香りが残っていた。

石狩鍋発祥の地で石狩鮭醤油ラーメンを食す

石狩鮭醤油ラーメンとバッテラ寿司のセット(960円)

旅の楽しみは食だからといって、北海道に来るといつも食べてばかりだ。あれもこれもと欲張って、一日6食くらい食べてしまう。それでもぜひ食べたいものがあり、二度目のランチに立ち寄ったのが、ここ「鮨爽醇鳥(すしそうじゅんちょう)ひだか」。石狩市にある小さな寿司店ながら創作料理も充実しており、オリジナルのラーメンも出している。その鮭ののったラーメンを、どうしても食べてみたくてやって来た。

石狩鍋を想像していたので味は濃いかと思いきや、意外とあっさりめの醤油味。麵の上にたっぷりと盛られたレタスは火が通りきっていないのがいい。甘く、それでいてシャキシャキとした歯ごたえが気持ちよく、上にのった鮭の燻製との相性も抜群だ。それらのエキスが溶け込んだ醤油ベースのスープが太めのちぢれ麵によく絡み、絶妙なバランスで味わいをつくり出している。ラーメン店を名乗っても構わないくらいのハイクオリティのラーメンである。

セットで付いてきた鮭の押し寿司も、絶妙に旨い。燻製にされているおかげで生臭さは少しもなく、ほんのり塩気がついていて醤油もいらない。加えて酢飯にみじん切りの紫蘇が混ぜてあり、中には山芋の短冊が仕込まれていて、とてもさっぱりと食べられる。それを伝えるとご主人は「気づいた?」というような顔をしてにやりと笑った。

ラーメンといい寿司といい、どちらも小憎らしい細工が施されていて店主のお人柄が垣間見えるような料理だった。きっと心底、料理が好きで、人を喜ばせたり驚かせたりするのが大好きな人なのだろう。「鮨爽醇鳥ひだか」、彼の握る寿司はいったいどんなだろう。今度は夜、ゆっくりと寿司をつまみに立ち寄ってみよう。

一見ボリューミーに見えるがラーメンも押し寿司もあっさりとしているので、セットでも意外にぺろりと食べられる。

●鮨爽醇鳥ひだか/石狩市花川南9条3丁目92-6 イースヴィレッヂ1階 ☎︎0133-73- 2266

はまなすの丘公園で石狩灯台と夕暮れを眺める

●石狩灯台/石狩市浜町先 ☎︎0133-72-3167(石狩市商工労働観光課)

日は音もなく、水平線の彼方へただ静かに暮れてゆく。空は鴇(とき)色からすみれ色に、美しいグラデーションを描いている。「はまなすの丘公園」は不思議な場所だ。自然が美しすぎて、自分以外この地球上に誰もいないような錯覚に陥る。

広い草原があり、その向こうにかわいい灯台があり、さらに向こうに海が見える。相変わらず人けはなく、ただ風だけが静かに、さわさわと通り過ぎてゆく。

ハマナスの花には思い出がある。遠い昔、今と同じように北海道を一人旅していたときのことだ。途中で出会って一緒の時間を過ごした人が、逆方向に別れる際に「旅のはなむけに」と言ってハマナスの花を手渡してくれたのだ。父親くらいに年の離れた男性だ。お互いに名乗りもせず連絡先も交換しなかったので、二度と会うことのない人だ。けれどもそのひと言だけが、ずっと心に残っている。花は押し花になり、本棚で眠っている。

日は水平線に沈み、残照だけが波をほのかに照らしている。そろそろ宿に帰ろうと思う。

「あいろーど厚田」で休憩、ジェラートで涼む

3階の展望台からは日本海が一望できる。

GELATO LicoLicoの「厚田ブルー×小豆ミルクジェラート」(ダブル・550円)

道の駅 石狩「あいろーど厚田」周辺にはサイクリストが多く見られる。
●道の駅 石狩「あいろーど厚田」/★プレゼントあり/石狩市厚田区厚田98番地2 ☎︎0133-78-2300
http://aikaze.co.jp/ JAF優待

北海道の道の駅は、もはや道の駅以上である。ドライブを始めて3つ目の道の駅に到着し、テラスでジェラートを食べながらそんなことを考えた。こちらに来てからというもの、道の駅はどこも広くて新しく、おしゃれな雰囲気で驚くばかりだ。私の知っている道の駅といえば平屋造りで基本設備はトイレと農産物の直売所、良くて蕎麦とうどんの店があり、小さな売店で土産物を売っている……。とそんな感じだったのに、ここはおしゃれなガラス張りのソファ席やカウンター席から水平線が見えて、まるで都会のデートスポットのようだ。

丘を登ると、ステンドグラスが美しい石造りの建物、恋人の聖地/厚田展望台がある。まるで外国に来たかのような雰囲気。

丘を登ると展望台があり、さらに素敵だ。まるで外国のような石造りの建物にはステンドグラスが施され、展望台に上がると美しい海の煌(きら)めきが見える。石狩のカップルの9割はここでプロポーズするのではないかと思えるほどのロマンチックスポットである。よく見ると「恋人の聖地」と書いてあり、定番の「愛の鐘」や「愛の鍵」が用意されていた。

はまますピリカ・ビーチを散歩。爽やかな風が気持ちいい!

広々とした砂浜で思いきり潮風を吸い込む。遠くには積丹(しゃこたん)半島の影が見える。●川下(かわしも)海水浴場(はまますピリカ・ビーチ)/石狩市浜益区川下 ☎︎0133-62-4611(一般社団法人石狩観光協会)

ちょっと砂浜を散歩したくなって、「はまますピリカ・ビーチ」で車を降りてみた。波は穏やかで、潮風が心地よい。こちらは7月上旬になると、海水浴場として海開きするという。試しに海水を触ってみるとまだ6月なので冷たい。こんなので、泳げるのだろうか。

そういえば北海道出身の友人に聞いた話だが、道民も夏になると海水浴をするらしい。本格的には泳がず軽く水遊びをするくらいらしいのだが、言われてみれば関東の海に比べて砂浜が奇麗だ。ほとんどゴミらしきものも落ちていない。北海道の人々にとって海は、眺めたり少し夏らしさを楽しんだり、そういったものなのかもしれない。

増毛(ましけ)町を目指して231号をひた走る
白銀(しらがね)の滝、雄冬(おふゆ)岬展望台へ

国道231号は、札幌市北区から留萌市に至る海岸線の快走路。国道232号と合わせ、通称「オロロンライン」とも呼ばれる。

オロロンラインを走るのは久しぶりだ。まだ車を運転する習慣のなかった頃、何度かオートバイでツーリングに来たことがあった。その頃は北海道への一人旅にただただ興奮し、給油も忘れて走り続け、ガス欠して途方に暮れたりしたものだ。

今はもうデキる大人のオンナであるから、そんなダサいことはしない。ちゃんと給油し、体力と相談しながら計画的に走り、時には気ままに車を降りて、“映え”るスポットで写真を撮ったりする。

そういえばそろそろお昼時。風光明媚な穴場スポット「雄冬岬展望台」で、さっき道の駅 石狩 あいろーど厚田で買ってきたニシンのバッテラを食べよう。その土地の風景を眺めながら、地のものを食べる。これこそエクセレントなホリデーを満喫できる大人のオンナの一人旅だろう。

口の中で酢飯の間に挟まれた数の子がプチプチはじける。ニシンとのバランスが絶妙な逸品。

「白銀の滝」の前で雄大な景色を撮影。マイナスイオンを浴びる。
●白銀の滝/石狩市浜益区雄冬 ☎︎0133-79-2029(石狩市役所浜益支所地域振興課)

雄冬岬展望台で二三一(ふみいち)のバッテラ寿司(1,300円)をほおばる。
●雄冬岬展望台/増毛郡増毛町雄冬 ☎︎0164-53-3332(増毛町商工観光課)

石狩北部・増毛サイクルルートを走るサイクリストたち

新篠津村、当別町、石狩市、増毛町の4市町村をぐるっと巡るサイクリングコースがサイクリストたちに人気となっている。中でも海に沿って国道231号を走る快走路は滝や巨岩、トンネルが連なり絶景が望めるイチ押しのコースだ。

黄金山が背後に見える国道451号もサイクリングロードとしておすすめ。山々に囲まれ、木の香りに包まれながら田んぼの中を走る長閑(のどか)なコース。

歴史的建造物や旧増毛駅など、趣を感じられる街並みが今も残る素敵なエリア。甘エビやタコなど名物グルメが多数あり、立ち寄って食べ歩くのも楽しい。

日本海を眺められる快走路にはサイクリストがいっぱい。勾配のある坂道が続く難所だが、広々とした自然の景観に癒やされる。

旧増毛駅に到着。廃線の線路を歩き、熱々のタコザンギにかぶりつく

「んダーリン、ダーリン、ステーン、バイミー♪」。ハンドルを握って熱唱するのはおなじみのあの曲。そう「Stand by me」である。目指すはJR旧増毛駅。廃線した鉄道の線路が残っているから、ふだんはなかなかできない「スタンドバイミーごっこ」ができる。

レトロな駅舎のまわりにはドライバーやライダー、サイクリストがちらほらいて、みんな写真を撮っている。第何次かのレトロブームと聞いてはいたが、結構な人気である。

ひととおり「ごっこ」を楽しみ、写真が撮れたら、次の目当ては「タコザンギ」。そう、ミズダコの唐揚げである。駅舎内の売店で注文し、待つこと5分。スタッフの方が熱々のタコザンギを手渡してくれた。一味を少しかけて、おもむろにかぶりつく。外はサクサク、中はプリプリで、とてもおいしい。よく知る鶏肉の唐揚げとは別物で、やはり海産物特有の風味がある。そしてこれが、キンキンに冷えた辛口のジンジャーエールと実によく合うのだ。

タコザンギ(500円)、ジンジャーエール(150円)

まるで映画のワンシーンに出てきそうな趣のある旧増毛駅のホーム。

●旧増毛駅/増毛郡増毛町弁天町1丁目 ☎︎0164-53-1112(増毛町役場町民課)
●旧増毛駅孝子屋/増毛郡増毛町弁天町1-12-1 JR旧増毛駅舎 ☎︎0164-53-1213

日本最北端の酒造、国稀酒造を訪ねて

日本酒の蔵元は日本各地に数あれど、こんなに居心地よく、ホスピタリティーにあふれた蔵元はあまり見かけない。その名も日本最北の造り酒屋「国稀(くにまれ)酒造」。入口の暖簾(のれん)をくぐると前掛けをした男性が「いらっしゃいませ」とにこやかに案内してくれた。

蔵の内部は見学ができるようになっており、酒造りの道具の展示室や利き酒コーナー、品揃え豊富な売店など見どころいっぱい。建物自体に歴史があり、老舗の趣たっぷりなので下戸でも楽しく見学できそうだ。

昔、酒造りに使われていた古い道具がたくさん展示してあった。

ベテランスタッフが丁寧に酒の種類の説明をしてくれた。試飲もできるが、ドライブ中はちょっと我慢。

酒関連の食品・飲料の他にも衣料品やグッズなどお土産品も豊富に揃う。

●国稀酒造/増毛郡増毛町稲葉町1-17 ☎︎0164-53-1050
https://www.kunimare.co.jp/

増毛名物甘えび、うに、海鮮づくしの寿司を味わう

寿司のまつくらのジャンボ生ちらし(4,200円)と季節限定のうにえび丼(4,500円)

でっかい土地の旅のクライマックスはやはり、でっかい丼で締めよう。見てびっくり、こちらの「ジャンボ生ちらし」は、日本海に面した増毛町の店「寿司のまつくら」ならではのとっておきだ。その迫力はまるで魚介のタワーのよう。うずたかく盛られたネタが圧巻である。

正直に言うと、そもそもメガ盛り系は得意ではない。なんというか、大味のイメージが強いのだ。もちろん中にはおいしいものもたくさんあるが、ついつい食べる前から食わず嫌いをしてしまう。

ところが、そんな先入観を瞬時にひっくり返すほどに「ジャンボ生ちらし」は美味だった。盛られた刺身のひとつひとつがとにかく新鮮で、味が濃く、歯ごたえも舌ざわりも秀逸だ。うにや甘えびのとろりととろける食感、いくらやとびっこのプチプチはじける舌ざわり、旨みが凝縮されたホタテの貝柱に、海から直接飛び込んできたようなマグロの身。それらが渾然一体となって、酢飯とマリアージュする。

お腹いっぱい海鮮を食べ、幸福、至福。これだけのために東京から飛行機でやってくる人々が多くいるのも納得だ。ちなみにこちらを完食できたら「スーパージャンボ生ちらし」への挑戦権がもらえるそう。我こそはとおなかに自信のある方は、ぜひ。

ジャンボ生ちらしを完食できた強者には、次回も使える金券が贈呈される。

人の顔より大きなジャンボ生ちらし。贅沢にのせられた海の宝物に、思わず喉が鳴る。

●寿司のまつくら/増毛郡増毛町弁天町1-22 ☎︎0164-53-2446

旅の終焉はいつも、後ろ髪を引かれる

良い旅だった。出張後にちょっぴり無理してつくった自由時間だったが、ドライブに来てよかった。北海道は寛容だ。どこを走っても受け止めてくれる。おいしいものを食べ、ゆっくりと湯に浸かり、少しのんびりして、空を見上げ、海を眺めた。それで充分なのではないか。

日本海に沈む夕陽が海面に光の道をつくり、きらきらと煌めく。波は穏やかに寄せては返し、スローな音を響かせる。もう明日は車を返し、飛行機に乗って東京へ帰らなければいけない。楽しい時間はあっという間だ。

「また来よう」。誰にともなくそう呟いて、潮の香りを思いきり吸い込む。海鳥の群れのシルエットが、オレンジ色の空を横切っていった。

今回のごきげんロードマップ

A.しんしのつ温泉たっぷの湯 B.道の駅しんしのつ C.IL LAGO D.藤澤製菓 E.北欧の風 道の駅とうべつ
F.カフェ テルツィーナ G.ロイズカカオ&チョコレートタウン H.鮨爽醇鳥ひだか I.石狩灯台
J.道の駅 石狩「あいろーど厚田」 K.川下海水浴場(はまますピリカ・ビーチ)
L.白銀の滝 M.雄冬岬展望台 N.旧増毛駅 O.旧増毛駅孝子屋 P.国稀酒造 Q.寿司のまつくら

現地へ足を運ぶといいことあるかも!? 
JAF会員対象特別キャンペーン

【石狩市】
2023年8月14日(月)~9月30日(土)、道の駅 石狩「あいろーど厚田」の売店にて商品購入時、会計時にJAF会員証を提示し「JAF Mate Onlineを見た」とお伝えいただいた先着100名様に、オリジナルピンバッヂ(種類はお選びいただけません)を1個差し上げます。
※会員様本人のみ
※なくなり次第終了

※JAF優待の内容や利用方法などの詳細は、記事内の各施設「JAF優待」をクリックしてください。JAFナビ からも検索可能です。
※記載のデータは2023年7月現在のもので、料金は大人1名分です。変わる場合もありますので、お出かけ前にご確認ください。
※新型コロナウイルスの影響により、掲載の内容が変更・中止となる場合がございます。事前にご確認のうえ、ご利用ください。
取材協力=新篠津村、当別町、石狩市、増毛町

新篠津村、当別町、石狩市、増毛町の名物詰め合わせセット! ご当地名産品プレゼント応募に必要なキーワードはこれ!

ごきげんロードトリップで登場した、新篠津村、当別町、石狩市、増毛町よりとっておきの名産品をプレゼント。応募にあたっては応募フォームにログインしてキーワードの入力が必要です。名産品プレゼントの詳細は、別公開となっている下記リンクにてチェックしてください。

プレゼント応募用キーワード

オロロンライン

オロロンラインの絶品グルメを詰め合わせでプレゼント!

新篠津村、当別町、石狩市、増毛町ドライブガイド

1.道民の森 神居尻(かむいしり)地区林間キャンプ場

神居尻地区にある林間のキャンプ場。小川が流れる場内には土床のサイトが並び、炊事棟や営火場も完備されている。また森の散策や登山、草木を観察する体験プログラムなど、季節に合わせたイベントも盛りだくさん。
石狩郡当別町青山奥三番川 ☎0133-22-3911(道民の森管理事務所)
道民の森 神居尻地区林間キャンプ場

2.道民の森 一番川地区オートキャンプ場

森に囲まれた広大な敷地に、オートキャンプと五右衛門風呂(予約制)に入れるフリーサイトの自然体験キャンプ場を備える。敷地内では渓流釣りや川遊びも楽しめ、土の中に土管を埋めた迷路など、ユニークな施設もある。
石狩郡当別町青山奥一番川 ☎0133-22-3911(道民の森管理事務所)
道民の森 一番川地区オートキャンプ場

3.しんしのつ天文台

新篠津村のふれあい公園に2023年秋、大型望遠鏡を備えた「しんしのつ天文台」がオープン予定。建屋全体が移動し、望遠鏡が露出する構造で、開放感抜群の環境で天体観測が楽しめる。
石狩郡新篠津村第48線北13
☎0126-57-2111(新篠津村総務課商工観光係)

4.ふれあい公園星座観測場

2021年8月に完成した新篠津村の新たな観光スポット。畑に囲まれ、高い建物も街灯もない環境で満天の夜空を観測できる。観測場のベンチに座り、設置された星座早見盤を模した看板を見ながら、星座を探してみよう。
石狩郡新篠津村第48線北13 ☎0126-57-2111(新篠津村総務課商工観光係)

5.手作り工房ぱん家

黄色い建物が目印の手作りパン店。就労支援施設の方々が丁寧に作っているパンは、おいしいうえにリーズナブル。オススメは新篠津産小豆の自家製餡をたっぷりと包み込んだ「つぶあんぱん」。どこか懐かしさを感じさせる一品です。ぜひご賞味ください。
石狩郡新篠津村第46線北11 ☎0126-57-2272

6.焼き肉太門(たもん)

アメリカンな内装が自慢の焼き肉店。店内にはポップな雑貨がたくさん置かれ、まるでハリウッド映画のよう。味にも定評があり、人気の付けダレはあっさりとしていて飽きがこない、シンプルな醤油ベース。
石狩郡新篠津村第46線北13 ☎0126-57-2773
焼き肉太門

7.ジビエ工房Deer Shop

当別町にあるジビエ料理のテイクアウト専門店。自社でエゾ鹿の捕獲を行い、下処理・食肉加工・販売までを一貫して行っているため、新鮮なエゾ鹿肉をリーズナブルな価格で食べられる。
石狩郡当別町弥生52−19 ☎0133-23-2900
ジビエ工房Deer Shop

8.レストランAri

スウェーデンヒルズビレッジにある北欧風の外観が印象的なイタリアンレストラン。地元の朝採り野菜や当別町産の小麦粉を100%使ったメニューが人気。イタリアやスペインで経験を積んだシェフの料理は、遠方から通うファンも多い。
石狩郡当別町スウェーデンヒルズビレッジ2-3-2 ☎0133-26-2425
レストランAri

9.ふとみ銘泉 万葉の湯

日帰り入浴もできる当別町の宿泊温泉施設。露天風呂からの眺めは素晴らしく、石狩平野を一望できる。お湯は「炭酸水素ナトリウム」を豊富に含み、体が清潔になることから「美肌の湯」ともいわれている。
石狩郡当別町太美町1695 ☎0133-26-2130
ふとみ銘泉 万葉の湯

10.麺家まるたけ

石狩手稲通沿いの花川南に2021年にオープンしたラーメン店。こっさりした味の味噌ラーメンが老若男女に喜ばれている。朝6時~8時限定で通常よりさらにあっさりとした「朝らーめん」も提供している。
石狩市花川南5条1-14 ☎0133-62-8855
麺家まるたけ

11.はまなすの丘公園ヴィジターセンター

はまなすの丘公園の遊歩道の起点となる駐車場横に建つヴィジターセンター。はまなすの丘公園の管理棟で、1階が売店・軽食コーナー、2階が展望施設になっている。名物のハマナスソフトクリームが人気。
石狩市浜町29-1 ☎0133-62-3450

12.石狩市浜益保養センター(浜益温泉)

石狩市浜益にある日帰り温泉施設。自然に囲まれた環境で緑を眺めながらのびのびと過ごすことができる。泉質は刺激が比較的少ないとされる「単純温泉」。隣接の公園では「パークゴルフ」も楽しむことができる。
石狩市浜益区実田254-4 ☎0133-79-3617

13.黄金山(こがねやま)

浜益の象徴ともいえる秀峰・黄金山は標高739.1m。その姿から「黄金富士」「浜益富士」と呼ばれている。頂上からは暑寒別連峰はもとより遠くは積丹半島まで一望でき、初心者でも好適の登山コースだ。
石狩市浜益区実田 ☎0133-79-2213(こがね山岳会事務局)

14.森のくだもの屋さん きむら果樹園

石狩市浜益にある観光果樹園。7月末までのさくらんぼ狩りが人気で、10種類以上のさくらんぼが時間の制限なしで食べ放題。他にも夏から冬にかけてさまざまな果物を直売しており、バーベキューや渓流釣りも楽しめる。
石狩市浜益区幌379-2 ☎0133-79-5033
森のくだもの屋さんきむら果樹園

15.岩尾温泉あったま~る

増毛町の海岸沿い、小高い丘の上にひっそりと佇む小さな温泉施設。高台にあるため露天風呂からは日本海が一望できる。雄大な景色と肌に心地よい単純酸性泉は地元の人々にも愛される人気の温泉だ。
増毛郡増毛町岩老109-1 ☎0164-55-2024

16.旧商家丸一本間家

約120年前の明治時代の姿を現代に伝えている旧商家。屋根瓦の一枚一枚に家紋が彫り込まれ、壁面や門柱には洋風の装飾が施されている。現在は国指定重要文化財に指定され、店舗や居宅部を含む広大な建物の内部を見学できるようになっている。
増毛郡増毛町弁天町1-27 ☎0164-53-1511 
旧商家丸一本間家

17.喫茶ポルク

国道231号沿いにある、軽食もある喫茶店。ログハウス風の店内は落ち着いた雰囲気で広いテラスもある。手間のかかった料理は見た目も美しく、自然の風景に包まれながらのんびりと食事が楽しめる。
増毛郡増毛町見晴町1058-11 ☎0164-53-3485

この記事はいかがでしたか?

関連する記事Related Articles