豪雨時の道路のイメージ

クルマが冠水したら車両保険は使える? 車両保険の疑問をFPが解説

どんなクルマに車両保険をかけるべきか 車両保険が使える場面・使えない場面
宇野源一

昨今の豪雨被害によって、多くのクルマが被災した。ニュース等で「車両保険」に関する話題を見聞きしたという人も少なくないだろう。車両保険と聞くと交通事故の際に使うイメージが強いと思うが、水害やひょう害など、それ以外のケースでも使える場合がある。

そこで本記事では、車両保険が使えるケース・使えないケースを紹介するとともに、車両保険にまつわる複数の疑問についてファイナンシャル・プランナーが解説する。あわせて昨今の自動車を取り巻く事情についても紹介する。

目次

車両保険の適用範囲をおさらい

単独事故(モノとの接触) クルマとの事故(相手がわかる事故) 当て逃げ(相手がわからない事故) 風・竜巻・洪水・高潮 落書・いたずら 地震 故障※3
一般条件 ○ ○ ○ ○ ○ 特約でカバー 特約でカバー
エコノミー型※1 × ○ ○※2 ○ ○ 特約でカバー 特約でカバー
  • ※ 1保険会社によって呼称が異なる
  • ※ 2保険会社によってカバーされない場合あり
  • ※ 3一部保険会社で取扱い

車両保険は、任意加入の自動車保険(いわゆる任意保険)に付加できるものだが、契約プランによって適用される範囲が異なる。上の表は、一般的な車両保険の適用範囲を記載したものだ。

長い間車両保険に入っているユーザーからすると、以前と比べたらエコノミー型の適用範囲が広くなったと感じるかもしれない。

2022年以降、自動車保険(自動車共済)の補償内容が改定され、車両保険の適用範囲が見直された。これにより多くの保険会社が提供する自動車保険において、エコノミー型でも「当て逃げ」や「野生動物との接触」についても車両保険が適用されることになった。

この改定によって、車両保険のプランの違いは主に「自損事故に対応するか、しないか」という点になる。ただし、加入する保険会社によって保証範囲が異なる場合があるので、加入前に確認しておくことをお勧めする。

ケーススタディ:車両保険が使えるor使えない場面

日常生活の中で様々なトラブルが起こる。ここでは、よくあるケースを5つ紹介し、車両保険が使える・使えない場面について解説する。

ケース1:クルマが冠水した
車両保険に入っていればどのプランでも保証される。ただし、冠水した原因が「地震」や「津波」に起因している場合については対象外となる。

地震・噴火・津波については「車両全損時定額払」特約を車両保険にセットしておくことで、クルマの全損時に最大50万円まで等が補償される。ただし、車両保険金額が50万円を下回る場合は、設定されている車両保険金額が上限となる点に注意だ。

ケース2:塀が倒れてクルマに当たった
事故の状況によって変わってくる。例えば「強風などで飛来中または落下中の他物と衝突した場合」は車両保険で補償される。ただしケース1と同様に「地震」に起因する事故の場合は車両保険では補償されない。

また、塀を倒したのが他人の行為による場合は、自分の車両保険ではなく塀を倒した相手に請求することになるが、自分の車両保険を利用できるかどうかは、事故状況や契約内容によって異なるため、まず保険会社や代理店に相談したい。

ケース3:走行中に鹿(動物)と衝突した
車両保険に加入していればカバーされる。ただし、エコノミー型の場合は保険会社によって補償対象外となる場合があるので、事前に確認しておこう。

ケース4:クルマが盗難にあった
車両保険に加入していれば、基本的にどのプランでも対象となるが、盗難を対象外にする特約がセットされている場合は対象外となる。盗難によって車両保険を使うとクルマの所有権は保険会社に移る。ただし、保険会社が約款で定めた期間内にクルマが見つかった場合、受け取った保険金を保険会社に返還することで、所有権を戻すこともできる。

ケース5:走行中に自転車と接触した
相手方へは「対人」「対物」で補償できるが、自分のクルマは一般条件の車両保険に加入していれば対象となる。エコノミー型の場合は保険会社によって対象外となる場合もあるので、確認しておきたい。

車両保険に関する疑問を解決!

疑問を示す男女のイラスト

ここからは車両保険に加入するにあたり、想定される疑問に答えていく。

Q1:どんなクルマに車両保険をかけるのがいい?
基本的に「新しいクルマ」は車両保険をかけた方がよい。新車・中古車関係なく「ローンで購入している」のであれば万一に備えて車両保険をかけよう。「車両新価特約」に加入できるなら追加料金がかかるが加入しておいた方が安心だ。

逆に初年度登録から長期間経過したクルマは時価額が低いケースが多いので、車両保険に加入するかどうかは要検討だ。

Q2:エコノミー型でも問題ない?
前段で触れたとおり、現在の車両保険は「自損事故に対応しているか」程度の違いしかない。だが一部保険会社の車両保険は自損事故以外でカバーされない事例があるのでよく調べることをお勧めする。

Q3:適切な車両保険の設定金額は?
クルマの購入時に加入する場合は「購入金額」で設定するのが基本だ。経年車の場合はかけられる最大の金額を設定しておくと良い。保険料を抑えるために最低金額で車両保険に加入するのも一つの方法ではあるが、最大と最低の保険料差をシミュレーションしてから決めよう。

Q4:車両保険を使って得するのはいくら以上の修理から?
加入している保険の条件(等級など)によって損益分岐点が異なる。

筆者が加入している自動車保険(18等級事故あり係数2)でシミュレーションすると、保険を使った場合の保険料の差額は
3等級ダウン:約173,540円
1等級ダウン:約51,550円
となった。

3等級ダウン事故(単独事故、クルマとの接触など)の場合は、クルマの修理費が17万円未満だと自己負担で修理をした方が実質的な負担額が少なくなる。

Q5:免責金額はいくらにすべき?
保険料を下げることを目的にするのなら、免責金額5万円や10万円に設定するのもいいだろう。ただ、事故発生時の負担金額を考えるのであれば、免責0万円のほうがいい。

補償と保険料のバランスを考慮するのであれば、「免責5万円+車対車免ゼロ特約をセット」あるいは「1回目0万円、2回目免責10万円」のようなプランにすると良い。

コラム:最近のクルマの修理費は想像以上に高い

クルマの性能向上に加え、昨今の物価上昇や人件費上昇の影響で修理費が高くなっている。10数年前であれば一般的なクルマのフロントガラスの交換は10万円程度で済んでいたが、最近はガラス交換に伴って自動ブレーキの調整といった作業が増えるため、概ね倍近い金額(17〜20万円)となっている。

車種によっては先進装備のセンサーなどに悪影響を与えてしまうという理由で、バンパーを擦ったら板金修理ではなく交換が必須となる場合もある。バンパー交換で10数万円という例もあるほどだ。

クルマの安全性が高まっていることはいいことだが、万一の時のコストも上がっているということも知っておくといいだろう。

宇野源一

うの・げんいち 大学卒業後、大手メーカー系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。2018年よりライターとしても活動。FP視点でのカーライフを提案することが得意。

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