電動キックボードの事故は被害が大きい! 乗るなら必ずヘルメット着用を
JAFユーザーテストで衝突テストの結果を公開改正道路交通法の一部施行により、2023年7月1日から特定小型原動機付自転車(以下、特定小型原付)という電動キックボードの規格が新設された。特定小型原付は、最高時速20km(歩道は時速6km)でヘルメットの着用は努力義務、16歳以上であれば運転免許なしでも運転可能と、自転車並みに気軽な交通手段となっている。 それを受けて、JAFでは電動キックボード運転中の事故を想定したテストを実施。特定小型原付の電動キックボードは、最高速度が低いので安全かと思いきや、衝突事故になると死亡事故に至る恐れもあることがわかった。
テスト方法 ダミー人形を電動キックボードに乗せ、傷害の大きさを調べる
テストは電動キックボードにダミー人形を載せ、一定の速度で衝突。その際頭部の傷害を示す値(HIC)を計測した。なお、HICとはHead Injury Criterion=頭部傷害基準の略で、1000を超すと頭部傷害の可能性が出始め、3000を超すと非常に高い確率で重篤な傷害が発生する。なお、ダミー人形は受け身や手をついて身をかばったりはできないので、とっさの反応ができない状態と仮定してのテストとなる。
テスト1 縁石に衝突した時、ヘルメットの効果は?
歩道と車道の間にある縁石や駐車場の車止めで転倒した時の危険性を検証するため、高さ10cmの縁石に電動キックボードを時速20kmで衝突させ、ヘルメット着用と非着用とでHICを調べた。結果は下表のとおりで、ヘルメット非着用では打ち所が悪い場合、非常に高い確率で頭部に重篤な傷害を負う可能性があることがわかった。
HIC | ヘルメット着用 | ヘルメット非着用 |
時速20km | 1232 | 7766 |
- ※HIC値は小数点以下四捨五入(以下同)
テスト2 歩行者に衝突した場合の危険性は?
電動キックボードを時速6kmと20kmの2パターンで歩行者のダミー人形と衝突させたところ、時速6kmの衝突であっても、歩行者は頭部に大きなダメージを負った。時速20kmのテストでは、傷害値はさらに高まることがわかった。
電動キックボードと歩行者のダミーがぶつかる様子。歩行者は路面に頭を打ち付けたこともあり、HICが高くなった。
HIC | ライダー | 歩行者 |
時速6km | 784 | 4352 |
時速20km | 81 | 6958 |
テスト3 車と出会い頭に衝突したら?
時速20kmの電動キックボードをいろいろな角度で自動車に衝突させ、ヘルメット非着用の状態でのダミーの頭部傷害を調べた。出会い頭を想定した車両前輪へ衝突させたところ、いったんフロントガラスに乗り上げた後、後頭部を路面に打ち付けた。HICは6347を記録、倒れ方次第で頭部や胸部、腹部にもダメージがあることがわかった。
自動車に衝突する電動キックボード。この後路面に頭を打ち付ける場合、HICが非常に高まる。
結論 ヘルメットは必ず着用すること。電動キックボードは車両であることを忘れずルールを守り、周囲にも注意しよう
前述したように、特定小型原付の電動キックボードはヘルメット着用が努力義務となっている。路上で見かける電動キックボードも、ヘルメットを着用している人は少ないようだ。たとえ速度が低い乗り物であっても、事故や転倒でヘルメットを着用せず路面に頭を打ち付けるような場合は、頭部への衝撃が重篤な頭部傷害や死亡事故につながる。自分の身を守るためにも、必ずヘルメットを着用しよう。周囲の環境や状況に応じて、速度を落としたり、一時停止するなど配慮することも大切だ。