北海道道東の羊牧場、厚岸町のカキ、ラーメン、レイクロブスターの料理写真
文=宮田珠己 / 撮影=阿部吉泰 / イラスト=田中 斉

カキ、ラム肉、レイクロブスター、北のグルメが勢ぞろい…避暑と美食の北海道・釧路市、厚岸町、白糠町ドライブ

北海道随一の涼しさと至高のグルメが魅力の道東エリア

都会の猛暑に耐えかね、旅立った道東。阿寒湖を皮切りに、厚岸(あっけし)の原生花園、釧路(くしろ)湿原と、絶景のなかをドライブしながら、そこで出会ったこだわりのグルメに舌鼓。最後は森のサウナですべての疲れをデトックスして、最高の夏になりました。

目次

阿寒湖の主レイクロブスターを豪快に食す

レイクロブスターのボイル

レイクロブスターボイル1,100円。盛り付け時点ですでに圧巻

レイクロブスターを眺める男性

繁殖力が強く、取っても取っても取りきれないほどだそう

レイクロブスターの食べ方

すでに味は付いているので、何もつけずにいただく

レイクロブスター天丼

レイクロブスター天丼1,200円。こちらは甘辛い味付けで、美味

レイクロブスターボイル1,100円。盛り付け時点ですでに圧巻

繁殖力が強く、取っても取っても取りきれないほどだそう

すでに味は付いているので、何もつけずにいただく

レイクロブスター天丼1,200円。こちらは甘辛い味付けで、美味

道東には数えきれないほどの絶景スポットがあるけれど、まず訪ねたのは阿寒湖。この日、本州は35℃超え、札幌あたりでも30℃近い気温だったようだが、釧路地方は24℃前後ととても爽やか。しかも釧路から阿寒湖までのドライブルートは、ほとんどが森の中で、エアコンなしでも窓から涼しい風が吹き抜ける。この地に来たのは正解だった。
阿寒湖に到着すると、広大な風景に圧倒された。対岸を眺めると、どこも濃い緑が湖畔まで迫り、人工物が何も見当たらない。原始の姿をそのままとどめたような圧巻の景色は、北海道ならではだ。
湖畔に建つ食事処「海兵(うみへい)」で、ロブスターがたらふく食べられるというので寄ってみた。阿寒湖のレイクロブスターは北アメリカ原産の外来種で、昭和初期に食用として摩周湖に放流され、その後阿寒湖にも持ち込まれて爆発的に増殖したそう。その後、生態系への影響が問題視されるようになり、今ではそれを逆手にとって、食材として地元のレストランでフランス料理やパスタ料理などに活用されている。

「海兵」では、取れたてのロブスターをそのまま豪快にボイルして提供している。いったいどんな味なのだろう。さっそく注文してみると、まず驚いたのはハサミのデカさだった。割って食べれば、エビよりもカニに近い味。胴体の中はエビほどは身が詰まっておらず、ミソの味が濃厚で、こっちもカニ風味。もっと泥臭いのかと思ったら、臭みもなく食べやすい。殻を切ったりほじくったり手間がかかるところもカニに似ていて、食べながら無口になった。
こんなおいしい生き物が勝手に繁殖していて、取っても取っても取りきれないのだから、生態系問題は別にして、打ち出の小槌(こづち)みたいな阿寒湖なのであった。

阿寒湖畔でポーズをとる男性

湖上の島に「マリモ展示観察センター」があり見学したかったが、時間の都合で割愛。残念な気持ちをマドロスポーズで表現してみた。いつか行きたい

海兵外観

レイクロブスターをいただいた食事処「海兵」
●海兵/釧路市阿寒町阿寒湖温泉4-5-10 Tel. 0154-67-2057

阿寒湖を見渡せる阿寒湖畔展望台へ

阿寒湖畔展望台

スキー場の斜面を歩いて登って到着

阿寒湖畔展望台

雄阿寒岳の迫力ある雄姿が目の前に

阿寒湖畔のアイヌコタンの町並み

阿寒湖のほとりにあるアイヌコタンを散策。お土産屋が軒をつらね、アイヌの古式舞踊が見学できるシアターもある

スキー場の斜面を歩いて登って到着

雄阿寒岳の迫力ある雄姿が目の前に

阿寒湖のほとりにあるアイヌコタンを散策。お土産屋が軒をつらね、アイヌの古式舞踊が見学できるシアターもある

阿寒湖畔展望台 / 釧路市阿寒町阿寒湖温泉 Tel. 0154-65-7121(阿寒アドベンチャーツーリズム)

阿寒湖の全景を眺められる展望台があるというので、行ってみたら、そこはなんと、スキー場の中腹だった。ということは、これ、冬に来たら、スキーをしながら絶景が眺められるということでは? 湖畔からではなく、高いところから眺めると、湖がどこまでも自然に囲まれていることがよくわかる。あの森の向こうには何があるんだろう。そんな想像が自然に膨らむ北海道の風景が好きだ。

食の殿堂くしろたんちょう市場ぐるめ館で
ネタが選べる“お得な海鮮丼”を食べる!

海鮮丼

お得な海鮮丼(カニ汁付き)1,520円 (※選ぶネタにより値段が変わることがあります)。おいしくないわけがない

海鮮丼のネタが並ぶショーケース

ケースの中に並んだ、新鮮なネタの数々。ここから自由に選んで丼へ

海鮮丼のネタを選ぶ男性

お店の人と相談しながらネタを選ぶのは楽しい。おすすめはやっぱりサーモン

海鮮丼を食べる男性

館内はゆったり座れるスペースがあって、くつろげる

時知らずの定食

幻の鮭「時知らず」定食1,500円。期間限定で提供されているので、見つけたら食べるべし!

お得な海鮮丼(カニ汁付き)1,520円 (※選ぶネタにより値段が変わることがあります)。おいしくないわけがない

ケースの中に並んだ、新鮮なネタの数々。ここから自由に選んで丼へ

お店の人と相談しながらネタを選ぶのは楽しい。おすすめはやっぱりサーモン

館内はゆったり座れるスペースがあって、くつろげる

幻の鮭「時知らず」定食1,500円。期間限定で提供されているので、見つけたら食べるべし!

●橋本商店 / 釧路市幸町13-1-1 くしろたんちょう市場ぐるめ館内 Tel. 0154-22-6563 【JAF優待】

阿寒湖から釧路へ戻り、くしろたんちょう市場ぐるめ館へやってきた。有名な和商市場に隣接し、落ち着いて釧路の味が楽しめるスポットとして人気上昇中だそう。40~50人は一度に食事ができる広くモダンな館内には、4店舗が入っており、そのひとつ橋本商店で、海鮮丼をいただいた。

丼に好きな海の食材を選んでのせるスタイルで、それに味噌汁かカニ汁が付く。自分で選べるのが楽しくて、ついのせ過ぎてしまいそうになった。私が選んだのは、やはり北海道ということでキングサーモンとサクラマス、それにホタテも外せない。さらにタラバの足、甘エビ、たらこ、出汁巻き卵に、黒ゾイと呼ばれるカサゴなど。一気に豪勢な丼が完成。こんなもんおいしくないはずがないでしょ。どれも新鮮だから、説明不要のおいしさ。しかもいっしょについてくるカニ汁は、カニの出汁がめちゃめちゃ利いていて絶品だった。

北海道有名格付け誌で高評価
魚一魚醤ラーメンに感動

魚一の魚醤ラーメン

魚醤ラーメン(あっさり)990円。JAF会員優待でチャーシュー2枚か温泉玉子1個いずれかのトッピングサービスが受けられる

ラーメンを食べる男性

日本でもここでしか食べられない魚醤ラーメン。あっさりしたスープに重層的な旨みがある

魚一の牡蛎ラーメン(こってり)

大ぶりのカキがごろごろ入った、カキ魚醤ラーメン(こってり)1,950円

くしろたんちょうグルメ館外観

くしろたんちょう市場ぐるめ館は、和商市場の向かい側にある

魚醤ラーメン(あっさり)990円。JAF会員優待でチャーシュー2枚か温泉玉子1個いずれかのトッピングサービスが受けられる

日本でもここでしか食べられない魚醤ラーメン。あっさりしたスープに重層的な旨みがある

大ぶりのカキがごろごろ入った、カキ魚醤ラーメン(こってり)1,950円

くしろたんちょう市場ぐるめ館は、和商市場の向かい側にある

魚一(うおっち)らーめん工房 / 釧路市幸町13-1-1 くしろたんちょう市場ぐるめ館内 Tel. 0154-23-4541 【JAF優待】

そしてもう一店、橋本商店の隣に店を構える魚一らーめん工房。ここは魚醤ラーメンが有名というので頼んでみた。魚醤というと、癖の強い臭いを敬遠する人も多いが、それは偏見というもの。店主の吉泉さんは、水産加工会社に勤めていた頃からこの魚醤を使った商品開発を考えていたそうで、一般の魚醤は魚の残滓(ざんし)を利用してつくるが、3枚におろして身の部分だけを使ってつくれば臭みのない魚醤ができるとひらめき、サンマとニシンの身からつくった魚醤を開発、鶏ガラスープにそれを加えた斬新なラーメンを考案した。

当初は魚醤という言葉のイメージからあまり食べてもらえず3年間赤字続きだったが、観光客のSNSなどで徐々に火がつき、今では有名格付け誌でも高評価を獲得し、遠方から魚一の魚醤ラーメンを目当てに多くの人が食べにくるほどに。あっさり味とこってり味があり、あっさり味を注文したが、たしかにいわゆる魚醤の臭みはまったくなし。むしろ見事な出汁となって、他にはない深みのある味を醸し出していた。柔らかいチャーシューをのせて食べると、これが唯一無二の激うまラーメンに変貌。いや、これかなり旨い。

ただ残念なことに、店主の吉泉さんはそろそろ引退を考えているそうで、そうなるとこの奇跡のラーメンが一代で途絶えてしまう。なので、目下、事業継承者を募集中だそうだ。

夕日に染まる釧路港を眺め幣舞橋で黄昏時を満喫

幣舞橋の夕日

幣舞橋の上から、釧路フィッシャーマンズワーフMOOと、出航していく豪華客船を眺める

幣舞橋で海を眺める男性

どう見てもデートに最適なスポット。ひとりで眺めるのは悔しい

日中の幣舞橋

日中の幣舞橋。橋の先はロータリー交差点があり複数の道路が交わる六差路になっている

幣舞橋の上から、釧路フィッシャーマンズワーフMOOと、出航していく豪華客船を眺める

どう見てもデートに最適なスポット。ひとりで眺めるのは悔しい

日中の幣舞橋。橋の先はロータリー交差点があり複数の道路が交わる六差路になっている

幣舞橋(ぬさまいばし) / 釧路市北大通1丁目〜南大通1丁目

釧路川河口近くにかかる幣舞橋は、釧路市の夕景スポットとして知られている。地図を見ると、河口が西に向いており、夕日が海に沈むところを見るのにちょうどいいロケーションだ。この日は曇りがちの空模様で残念ながら夕日を望むことはできなかったが、それでもオレンジ色に照り映えた雲とライトアップされた橋が、見事に融合して、恋人と来たら絶対いい雰囲気になれそうな景色が展開していた。川べりに建つガラス張りの温室と、釧路フィッシャーマンズワーフMOOの幾何学的でモダンな建物もいい背景になっていて、正直、私はちょっと後悔した。つまりこれは、まちがってデートスポットに来てしまったということではないのか。ひとりでこれを見るのは無念過ぎるのではないか。何十年か時間を巻き戻してハネムーンか何かで来るべき場所ではないのか。そんなことをブツブツ言いながらも、雰囲気はたしかに最高だった。

緑広がるゆったりとした風景に、
自然と心が緩む原生花園あやめヶ原。これぞ北海道

原生花園あやめケ原

展望台から霧多布方面を眺めると、いかにも北海道らしい台地が見えた

原生花園あやめケ原

ずっとこの風景に憧れていた

あやめを見る男性

アヤメの季節は6月下旬から7月上旬だが、年々早まっているという話も

展望台から霧多布方面を眺めると、いかにも北海道らしい台地が見えた

ずっとこの風景に憧れていた

アヤメの季節は6月下旬から7月上旬だが、年々早まっているという話も

原生花園あやめヶ原 / 厚岸町末広 Tel. 0153-52-3131(厚岸町役場観光商工課)

私が釧路に来るのは、実は学生時代以来で、計算すると、ン十年ぶりである。当時、見どころの多い北海道を積極的に旅したつもりだったが、後に重要な場所を見逃していたことに気が付いた。それがこの、厚岸から霧多布(きりたっぷ)にかけての一帯。湿原と原生花園が続くこの地域は、広大でみずみずしい風景が広がり、本州では見ることのできない大自然を堪能できる。今回釧路に降り立ったときから、ここは絶対に見に行かねばと思っていた。
釧路から海沿いの道を東へクルマを走らせると、原生花園あやめヶ原の入り口は森の中にあった。「ヒグマに注意」の看板に、やや腰が引けつつ、遊歩道を歩く。

原生花園あやめヶ原は、その名の通りあやめが群生している。6月ならば美しい紫の花が咲き乱れる光景を見ることができるそう。この時、すでにシーズンは終わっていたが、それでもいくつかの花が咲き残っていた。さらにその先の展望台に立つと、海にせり出した緑の台地のような景色が眺められ、北海道ならではの雄大さを感じた。ああ、これだ、これ、これが見たかったのだと長年の夢をついに果たした気分。
私に言わせると、北海道の風景の魅力のひとつは、このテレッとした緑の台地である。その緩やかさ。やさしくて涼しげな眺め。草原が波打つ光景を見ていると、巨人になってそこで寝そべりたい気分になるのだ。

道の駅 厚岸グルメパークで1年分のカキを食べ尽くす

厚岸町のカキ、2種

カキ2種(マルえもん、カキえもん)の食べ比べ800円

カキのルイベ

金のカキルイベ900円。シャリっとした食感からのチーズのような濃厚さが癖になる

カキとウイスキーのセット

厚岸ウイスキー生ガキ3点セット1,700円
※飲酒運転および20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。飲酒される方はハンドルキーパーの確保や、運転代行を利用してください。

カキ寄りカット

旨みの凝縮された厚岸のカキを、おなかいっぱい食べて大満足

オイスターピザ

オイスターピッツァ1,700円。ピザ生地もおいしくて、いくらでも食べられる

カキ2種(マルえもん、カキえもん)の食べ比べ800円

金のカキルイベ900円。シャリっとした食感からのチーズのような濃厚さが癖になる

厚岸ウイスキー生ガキ3点セット1,700円
※飲酒運転および20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。飲酒される方はハンドルキーパーの確保や、運転代行を利用してください。

旨みの凝縮された厚岸のカキを、おなかいっぱい食べて大満足

オイスターピッツァ1,700円。ピザ生地もおいしくて、いくらでも食べられる

道の駅 厚岸(あっけし)グルメパーク(厚岸味覚ターミナル・コンキリエ) / 厚岸町住の江2-2 Tel. 0153-52-4139 【JAF優待】

原生花園あやめヶ原から少し釧路方面に戻った道沿いに、不思議な形をした建物がそびえている。そこが「道の駅 厚岸グルメパーク」だ。昨今、道の駅の施設はどんどん進化しているが、この厚岸グルメパークも、他にはない充実度で多くの観光客を惹きつけている。建物の中に入ると4軒の飲食店に魚介市場、お土産店のほか、小さな水族館や展望室まであって、大勢の人でにぎわっていた。なかでもここの名物は、カキ。厚岸はカキの名産地なのだそう。実は不思議な形の建物は、カキの貝殻の形を模したものらしい。
さっそく「オイスターバール ピトレスク」でフレッシュな生ガキをいただく。出てきたのは「マルえもん」という身がたっぷり詰まったカキ。レモンを搾って口に運ぶと、最初から塩味が利いており、やさしいおいしさが染みた。実は厚岸には「カキえもん」という種類もあって、季節が合えば、これらを食べ比べることもできる。「カキえもん」は小ぶりだが、甘みが凝縮されており、生で食べてみるとその違いがよくわかる。印象的だったのは、どちらもエグみがなくて、食べやすかったこと。常に冷たい海流にさらされて育っているからで、ここに来て初めて苦手だったカキが食べられたというお客さんも少なくないそうだ。

「炭焼 炙屋」には、バケツいっぱいに蒸したカキをいただく名物「バケツ牡蠣」というメニューがある。見るからに豪快で、食欲をそそる。醤油をかけて食べようとしたら、そのまま食べてくださいと言われて口に含むと、これも最初から塩味が利いて香ばしかった。厚岸のカキは、カキそのものの旨みだけでいくらでも食べられる。
それにしても、一度にこれほどのカキを食べたのは、生まれて初めてかもしれない。ものすごく贅沢な気分になって、厚岸を後にした。

バケツ牡蛎

バケツ牡蠣(Lサイズ)2,800円。バケツごと火にかけて蒸す

バケツかき

蒸したカキもまたおいしい。軍手をしないと熱い

道の駅 厚岸グルメパーク 厚岸味覚ターミナル・コンキリエ外観

観光客が引きも切らない。展望台や水族館などもあり、ここ一か所で半日は楽しめる

バケツ牡蠣(Lサイズ)2,800円。バケツごと火にかけて蒸す

蒸したカキもまたおいしい。軍手をしないと熱い

観光客が引きも切らない。展望台や水族館などもあり、ここ一か所で半日は楽しめる

釧路の静かな喫茶店で
こだわりの珈琲と手作りプリンを味わう

博珈琲とプリン

オリジナルブレンド きわみ 830円、珈琲屋のかためのプリン600円

珈琲を飲む男性

生まれて初めて味わう濃厚な珈琲。私はここで珈琲を"発見"した。今まで飲んできた珈琲はなんだったのか

博珈琲の店主と男性

本田さんは珈琲の魅力に目覚め、研究者気質をいかんなく発揮して、珈琲を極めた。その試行錯誤話を聞くのも楽しい

コーヒーを淹れる手元

珈琲は1杯ずつネルドリップで抽出するため、時間がかかる。ゆっくり待って、珈琲を嗜む。至福の時間

博珈琲の外観

外観と内装はまるで異なり、扉をあけるとシックな異空間が広がっている

オリジナルブレンド きわみ 830円、珈琲屋のかためのプリン600円

生まれて初めて味わう濃厚な珈琲。私はここで珈琲を"発見"した。今まで飲んできた珈琲はなんだったのか

本田さんは珈琲の魅力に目覚め、研究者気質をいかんなく発揮して、珈琲を極めた。その試行錯誤話を聞くのも楽しい

珈琲は1杯ずつネルドリップで抽出するため、時間がかかる。ゆっくり待って、珈琲を嗜む。至福の時間

外観と内装はまるで異なり、扉をあけるとシックな異空間が広がっている

博珈琲(はくコーヒー) / 釧路市昭和中央1-23-1 Tel. 0154-35-3995 【JAF優待】

釧路の中心地から少し離れた新釧路川の堤防沿いに、「博珈琲」はある。外見は、何の変哲もない建物だが、中に入ると、落ち着きのある贅沢な空間に驚かされた。IT技術者だった本田博士さんが、珈琲の魅力にとりつかれ、脱サラして修業の末に開業した珈琲専門の喫茶店である。オリジナルブレンドのほか、月毎のブレンドや、7種のストレート珈琲が味わえる。本田さんはネルドリップにこだわっていて、それぞれ濃さを選べるようになっていた。濃さは「ふつう」「こいめ」「とくのう」「きわみ」「エキス」と5段階あり、迷った末、オリジナルブレンドの「きわみ」を注文した。
子供の頃は珈琲のおいしさがわからなかった。大人になって飲み始めたものの、なんとなく飲んでいるだけで、正直私は珈琲の魅力がわかっているとは言い難かった。この「きわみ」を口にした瞬間も、はじめはその苦さに動揺したぐらいだ。だが、なかにほのかな甘みが隠れていることに気が付くと、私の中で何かがストンと腑に落ちた。珈琲本来の味わいとはこういうことだったのか。自分が今まで飲んできたすべての珈琲は水で薄められていたんじゃないかと思うような濃密さ。それは発見だった。私は今、生まれて初めて珈琲を飲んでいる、そう思ったのである。
本田さんはカップにもこだわり、各地で集めてきたユニークなカップで提供してくれる。私に出してくれたのは、フィンランドのアラビア社のカップだった。骨董市で見つけた200年前のイギリス製のカップもあるそう。そして珈琲と一緒に味わう自家製プリンがまたおいしい。珈琲の味に合わせて濃いめに作ってあるそうだ。店では、雰囲気を大切にするため、4人以上での来店は断っているという。静かな環境でじっくり珈琲を味わいたい、ここは、そんな大人のための喫茶店なのだ。

RVパーク完備の
道の駅 しらぬか恋問館で海を眺めながら涼む

道の駅しらぬか恋問館

新しいしらぬか恋問館の建物

道の駅しらぬか恋問館のRVパーク

12台が宿泊できるRVパーク。すぐ目の前は海だ。目覚めの海は、きっと最高にちがいない

鍛高のソーダを手に取る男性

白糠の名産品が並ぶ恋問市場。鍛高(たんたか)のしそを使った鍛高ラムネが大々的に売り出されていた

道の駅しらぬか恋問館のテラスに立つ男性

2階のテラスから太平洋を眺める。涼しい風が気持ちよい

新しいしらぬか恋問館の建物

12台が宿泊できるRVパーク。すぐ目の前は海だ。目覚めの海は、きっと最高にちがいない

白糠の名産品が並ぶ恋問市場。鍛高(たんたか)のしそを使った鍛高ラムネが大々的に売り出されていた

2階のテラスから太平洋を眺める。涼しい風が気持ちよい

道の駅 しらぬか恋問館 / 白糠町恋問3-2-1 Tel. 01547-5-3317

最近、車中泊をしながら旅をする人が増えているが、そうした利用者のために電源などを完備したRVパークを併設する道の駅が各地で見られるようになってきた。「道の駅 しらぬか恋問館」にも、2025年4月、12台が泊まれるRVパークがオープンした。そこには電源やWi-Fiのほか、海の見えるサウナや24時館利用できるシャワー、トイレ、コインランドリー、さらにはドッグランや、ゴミを出せるスペース、ダンプステーションも擁し、高圧洗浄機の貸し出しまで行っている。施設内には飲食店や特産品市場、子供が遊べるスペースなどもあり、活動拠点に最適だ。
今回は立ち寄っただけだったが、屋上のテラスに上って海を眺め、涼しい風を浴びながら、この日も35℃を超えたという東京のニュースを聞いて優越感に浸ったのである。地元育ちのスタッフ小松さんによれば、これまでこの地に暮らしてエアコンが欲しいと思ったことはないという。そのぐらい段違いに涼しい。しかし近年は徐々に気温が上がり、エアコンを導入する家も増え始めたという。温暖化が収まってほしいと願うばかりだ。

丹頂鶴自然公園でタンチョウの生態を聞いて驚く

鳴くツル

タンチョウはその鳴き方で雌雄が判別できるそう。クワーと長く鳴くのが雄、クワックワッと短く鳴くのが雌

水辺を歩くツル

優雅な立ち姿はつい見惚れてしまう。タンチョウはみな渡り鳥かと思っていたが、ここで暮らしているのは、渡らないタンチョウだそう

飼育員の男性と話を聞く男性

スタッフの高島さんは、平成元年からタンチョウの世話をしてきたそう。それぞれに性格が違ってみんなかわいいと語る

釧路市丹頂鶴自然公園

年間約8万人の来場者がある。インバウンドの観光客も多い

タンチョウはその鳴き方で雌雄が判別できるそう。クワーと長く鳴くのが雄、クワックワッと短く鳴くのが雌

優雅な立ち姿はつい見惚れてしまう。タンチョウはみな渡り鳥かと思っていたが、ここで暮らしているのは、渡らないタンチョウだそう

スタッフの高島さんは、平成元年からタンチョウの世話をしてきたそう。それぞれに性格が違ってみんなかわいいと語る

年間約8万人の来場者がある。インバウンドの観光客も多い

釧路市丹頂鶴自然公園 / 釧路市鶴丘112 Tel. 0154-56-2219 入園料480円

国の特別天然記念物であるタンチョウに会いに、釧路市丹頂鶴自然公園を訪ねた。タンチョウは北海道内で約1,900羽が確認されているが、ここではけがや障害があり保護された個体や、園内で繁殖した個体、さらに勝手に飛び込んできて住みついた個体が飼育され、そのうち11羽が公開されている。縄張り意識が強いそうで、個体ごともしくはペアごとに檻を分けてあるものの、人間を警戒して威嚇してくる個体もいる。

タンチョウは頭のてっぺんが赤いのが特徴だが、興奮するとその赤い部分が大きくなるそうで、われわれが檻に近づくと後頭部近くまで真っ赤にして、迫ってきた個体がいた。赤い頭を見せつけるようにしてのっしのっしと歩く姿は、この紋所(赤い頭)が目に入らぬか! という示威行為なのだ。しかし本人は怒っているのかもしれないが、真っ赤になった頭は、かえってかわいいぐらいだった。なんでも赤い部分は皮膚が露出しているのだそうで、その毛のないハゲた部分が怒ると真っ赤になるというのは、つまり人間と似たようなものかもしれない。

それでもタンチョウは立ち姿が美しく、人間とちがって優雅に歩く姿は見ていて飽きなかった。

釧路湿原を一望できる
釧路市湿原展望台のサテライト展望台へ

釧路湿原展望台

1時間程度で1周できる遊歩道があり、その先の展望台からは広大な釧路湿原が眼下に眺められる

釧路湿原を眺める男性

釧路湿原は約2万9000haの面積を誇る日本最大級の湿原。学生時代、ここをカヌーで下るのを夢見ていた

北斗展望台園地サテライトを歩く男性

遊歩道には「ヒグマ注意」の看板も。なるべくみんなでわいわい話しながら歩きたい

北斗展望台園地の建物

湿原展望台の3階から眺めることもできるが、サテライト展望台まで歩けば湿原は目の前

1時間程度で1周できる遊歩道があり、その先の展望台からは広大な釧路湿原が眼下に眺められる

釧路湿原は約2万9000haの面積を誇る日本最大級の湿原。学生時代、ここをカヌーで下るのを夢見ていた

遊歩道には「ヒグマ注意」の看板も。なるべくみんなでわいわい話しながら歩きたい

湿原展望台の3階から眺めることもできるが、サテライト展望台まで歩けば湿原は目の前

●釧路市湿原展望台 / 釧路市北斗6-11 Tel. 0154-56-2424(釧路市湿原展望台)

そしてやはり釧路に来たからには、釧路湿原を眺めたい。湿原展望台の屋上から眺めることもできるが、そこから遊歩道があり、1㎞ほど歩くと、さらに湿原に肉薄したサテライト展望台があるというので、森の中の木道を歩いていく。多少アップダウンがあったのはまあ我慢するとして、ここにも「ヒグマに注意」の警告看板があって、やや腰が引ける。しかし北海道である以上はしょうがない、と覚悟を決めて歩いた。サテライト展望台にたどりつくと、広大な釧路湿原が一望のもとに見下ろせ、その雄大さに恍惚(こうこつ)となる。日本でこれほどの湿原が見られるのは、きっとここだけだ。絶景が見られて満足だが、同時に、この景色の中にいったいどれほどのクマがいるのだろう……と考えてしまっている自分がいた。素晴らしい眺めを脳裏に焼き付けると、帰りは足早に戻ったのである。

美食の町、白糠町のチーズ工房を訪ねる

酪恵舎のチーズ4種

白糠酪恵舎のチーズ。上から時計回りに、モンヴィーゾ、ロビオーラ、トーマ・シラヌカ、スカモルツァ。味はどれも濃くて上品

胡椒のまぶされたチーズ

熟成庫で見て一目惚れしたサルーテ。コショウが利いておいしそう。思わずお土産に買って帰った

チーズの冷蔵庫の中で

各地の高級レストランなどにも出荷しているが、井ノ口和良さんは「まずは地元の人たちに親しまれる工房にしたい。地元を元気にすることも大事な役目」と語る

チーズソフトクリーム

これを目当てにやってくる人も多いというチーズソフトクリーム400円。そのほかミルクジャムなども販売している

白糠酪恵舎の店舗外観

こじんまりしたかわいい建物が目印

白糠酪恵舎のチーズ。上から時計回りに、モンヴィーゾ、ロビオーラ、トーマ・シラヌカ、スカモルツァ。味はどれも濃くて上品

熟成庫で見て一目惚れしたサルーテ。コショウが利いておいしそう。思わずお土産に買って帰った

各地の高級レストランなどにも出荷しているが、井ノ口和良さんは「まずは地元の人たちに親しまれる工房にしたい。地元を元気にすることも大事な役目」と語る

これを目当てにやってくる人も多いというチーズソフトクリーム400円。そのほかミルクジャムなども販売している

こじんまりしたかわいい建物が目印

チーズ工房 白糠酪恵舎 / 白糠町茶路東1線116-11 Tel. 01547-2-5818 見学コースは要予約

森の中を南北に走る国道沿い、白糠町にあるチーズ工房「白糠酪恵舎」は、工房の見学が可能というので訪ねた。案内してくれたのは、代表の井ノ口和良さん。井ノ口さんは、イタリアでチーズの製法を学んだが、酪農王国と言われながら北海道に乳製品を食べる文化が根付いていないことに気づいてから、郷土料理に生かせるチーズづくりを目指している。
「白糠酪恵舎」のモットーは、知名度のためにインパクトのある製品をつくるのではなく、あくまで安全で栄養価があっておいしくて買いやすいチーズをつくること。その誠実なスタンスは、次の言葉に如実に表れている。「ミルクの本質はお母さんの愛なので、個性的である必要がないんです。つまり、すっと飲めてまた飲みたいって思ってくれないと子供がたくさん飲めない。だからミルクは癖がなくてまた飲みたいって思えることが大事なんです」。どんなチーズをつくるかは、ミルクに従う。地域の酪農家から運んできたミルクには、撹拌(かくはん)したり冷却したりといった物理的な刺激をなるべく与えず、脂肪の膜を壊さないよう、かつ酸素も入れないようにして、ミルクのもつ優しさを生かす。そうして五感をフル活用し、研鑽(けんさん)を積み重ねながら、さまざまなチーズを作り続けているのだ。
白衣に着替え、予備熟成庫と熟成庫を順次案内してもらった。チーズによって熟成方法が違うので、いくつもの庫があり、庫ごとにいろいろなチーズが棚に並んでいた。香りも形もさまざまで、豊かなチーズの香りに食欲がそそられる。
井ノ口さんは「できるだけ多くの人に国産のチーズを食べてもらって応援団になってもらいたいんです」と切実に訴える。というのも酪農家は毎年8%ずつ減っているのだそう。ということは10年もすれば半分以下になるわけで、危機感を持たざるを得ない状況なのだ。日本の食料自給を考えても、このままでいいとはとても思えない。実は最近、2009年以来上げていなかった値段を少し上げたのだそう。それは、売上の一部を酪農家の継続支援金のような形でバックするためだという。「そういうことを政治のせいにするのではなく、自分たちでできることはやっていきたい」と決意をにじませた。
見学の最後は試食の時間。一口にチーズと言っても、多様な味わいがある。そのすべてに共通するのは優しさだ。奇をてらわず、ミルクの声に耳を澄ませて出来上がったチーズはどれも、口に含むと深い味わいがにじみ出るようだった。

白糠出身の若きシェフが作る
趣向を凝らした羊肉料理に感激

レストランクオーレの料理4種

手前から仔羊もも肉のア・ロースト100g 2,970円、左奥アスパラガスのグリル 白糠産ホッキのXO醤とイカ墨ソース 1,980円、パッパルデッレ(羊と白糠産ごぼうのボロネーゼ) 2,200円、羊の自家製生ハムとサラミ 2,200円

ラム肉の生ハムとサラミ

羊のハムとサラミ。塩味が利いて、癖になるおいしさ

仔羊のアロースト

羊の肉は臭いが気になると言われるが、新鮮な羊肉は嫌な臭いがない。ふんわりとやさしい味で食べやすい。羊尽くしのコースもあるというので、いつかまた来てチャレンジしてみたい

漆崎シェフと男性

シェフの漆崎雄哉さんが、この店を立ち上げてから今に至るまでの経緯を楽しげに話してくれた。漆崎さんの明るい人柄に、会話しているだけで元気をもらえる気がした

レストランクオーレ外観

古民家を自ら改造したという「Cuore」の建物。街から遠く離れたこの場所に、漆崎さんの羊料理を目当てに、遠くからお客さんがやってくる

手前から仔羊もも肉のア・ロースト100g 2,970円、左奥アスパラガスのグリル 白糠産ホッキのXO醤とイカ墨ソース 1,980円、パッパルデッレ(羊と白糠産ごぼうのボロネーゼ) 2,200円、羊の自家製生ハムとサラミ 2,200円

羊のハムとサラミ。塩味が利いて、癖になるおいしさ

羊の肉は臭いが気になると言われるが、新鮮な羊肉は嫌な臭いがない。ふんわりとやさしい味で食べやすい。羊尽くしのコースもあるというので、いつかまた来てチャレンジしてみたい

シェフの漆崎雄哉さんが、この店を立ち上げてから今に至るまでの経緯を楽しげに話してくれた。漆崎さんの明るい人柄に、会話しているだけで元気をもらえる気がした

古民家を自ら改造したという「Cuore」の建物。街から遠く離れたこの場所に、漆崎さんの羊料理を目当てに、遠くからお客さんがやってくる

ファームレストランCuore(クオーレ) / 白糠町茶路川西 Tel. 01547-2-5030

広大な牧草地や畑の広がる白糠町の一角に、茶路(ちゃろ)めん羊牧場直営のレストラン「Cuore」がある。周囲には建物がほとんどなく、ポツンと一軒たたずむ光景は、ここがレストランだと知らなければ、気づかずに通り過ぎてしまいそうだ。しかし実は「The Japam Times」(日本の英字新聞)の「Destination Restaurants 2025」に選ばれた羊料理の名店である。これは東京23区と全国の政令指定都市以外に立地する、わざわざ訪ねて行くに値するレストランに与えられる称号だ。シェフの漆崎雄哉さんは、弱冠24歳でこの店を開き、今年10年目。3歳のときから包丁を握っていたという生まれついての料理好きで、作るだけでなく、山に入って山菜を採ったり、魚を釣ったり、羊料理を彩る食材まで自前で調達し、さらにパンやパスタまで自家製というから相当だ。それらすべてをワンオペでこなし、「料理に関するすべてのことが好きなので、全然苦にならない」と語る姿は、もはや超人のようだった。もともと白糠町の出身で、おいしい食材にあふれているのに、誰も白糠を知らないことに納得がいかず、だったら自分で地元の食材を使ったお店を出そうと決心したそう。
いただいた仔羊モモ肉の料理は、羊と聞いて想像するような臭みもまったくなく、どこまでも柔らかく優しい味わい。漆崎さんは自分で食べるより、誰かに食べて喜んでもらうのが好きというだけあって、料理のみならず、店の雰囲気から接客まで、食事が楽しくなる配慮がすみずみまで行き届いたレストランだった。わざわざ訪ねていくに値すると評されるのも納得である。

茶路めん牧場の羊たち

「Cuore」の隣は羊牧場。たくさんの羊が草を食んでいた

ドライブの終わりはサウナで締める
サウナと森林浴で整う「KIELO SAUNA」へ

キエロサウナ

KIELO SAUNAのテラスから建物をふり返る。施設はこれでほぼ全部。こじんまりしたプライベートな空間が疲れを癒やしてくれる

サウナに入る男性

開放感のあるサウナ室。時間を気にせず入れるよう砂時計も置いていない

サウナで外気浴をする男性

テラスのチェアーでリラックス。サウナ→水風呂→外気浴→サウナ→水風呂→外気浴、というルーチンすらどうでもよくなって、撃沈

キエロサウナ外観

受付とカフェレストランを兼ねた別棟。森に隠れた秘密のリラクゼーションスポット。まわりに何もないから癒やされる

KIELO SAUNAのテラスから建物をふり返る。施設はこれでほぼ全部。こじんまりしたプライベートな空間が疲れを癒やしてくれる

開放感のあるサウナ室。時間を気にせず入れるよう砂時計も置いていない

テラスのチェアーでリラックス。サウナ→水風呂→外気浴→サウナ→水風呂→外気浴、というルーチンすらどうでもよくなって、撃沈

受付とカフェレストランを兼ねた別棟。森に隠れた秘密のリラクゼーションスポット。まわりに何もないから癒やされる

KIELO SAUNA(キエロサウナ) / 釧路市阿寒町15線40-2 Tel. 0154-66-3422

旅の最後に、フィンランド式のサウナ「KIELO SAUNA」を訪ねた。昨今はサウナブームで、私も何度かスーパー銭湯のサウナにチャレンジしたことがあるが、魅力がよくわからなかった。熱くてのぼせそうだし、水風呂は心臓が止まりそうなほど冷たいし、これはいったい何の試練であろうかと思っていたのである。そんなわけで少々戸惑いながら訪れた「KIELO SAUNA」だったが、ゆるやかなスキーゲレンデの麓にたたずむ小さな建物は、自然に囲まれた静かな環境にあって、まるで秘密の別荘に来たようでもあり、貸し切りで利用できるので、ゆったりと温まることができた。もちろん熱いのはいまだ苦手だけど、サウナ室内からは広い窓の外に原生林が眺められ、なおかつ、扉の基部にすき間があって換気口も多く設置され、空気の循環が促されているために開放感があり、のんびりした気分になれた。私がこれまでサウナでくつろぐことができなかったのは、あの閉塞感が苦手だったのだと気づく。
サウナの外に出れば、原生林を前にして、小さな池に張り出したテラスでのんびりくつろぐことができ、サウナの魅力はこれだったのか、と目からウロコが落ちた。つまり熱波と冷水で体を痛めつけるのではなく、自然のなかで体をくつろがせるためのものだったのだ。邪道かもしれないが、私は次のように考えた。サウナとは、自然のなかで裸で長くリラックスするため、寒くなったらサウナ室に入り、体が熱いときは水風呂に浸かることで、体感温度を調整する施設だと。少なくとも私はそういう心づもりで、思う存分くつろぐことができた。
スタッフの熊谷省吾さんによれば、ここは少人数で貸し切ることも、見知らぬ者同士で利用することもできるとのこと。こじんまりしているうえ、静かな環境のせいか、利用者もマナーのしっかりされている人ばかりだそう。そしてさらに居心地がいい理由は、清潔さである。「掃除はめっちゃくちゃしています」と熊谷さんが強調するように、すみずみまでそれが徹底されているのが伝わってきた。ここなら何時間でものんびりできる。サウナの魅力がわからなかった私が、ついに完落ちしたのであった。

避暑地、道東で出会った
ものづくりへの情熱

暑い都会から逃げる。それが今回の旅の目的だった。
実際、どこも涼しくて快適ではあったけれども、旅を終えてみると、心の中はむしろ火をつけられたような熱い気分だ。
釧路、厚岸、白糠。道東の3つの町を旅して感じたのは、そこに住む人々の、いいものを作ることへのこだわりだった。カキ、魚醤ラーメン、珈琲、チーズ、羊料理……。誰もが、求道者のように素材と味に強いこだわりを持って、自分のやるべき道に取り組んでいた。おかげで、自分もこうしてはいられない、そんな気持ちにさせられた。

北海道という土地には、開拓者精神をくすぐる何かがあるのだろうか。
もしこの先、酷暑の都会で生きる気力を吸い取られてしまったら、またここに情熱を取り戻しに来たい。そう思わせる旅だった。

厚岸町の海岸沿いを走る車

道東は海沿いの道が心地いい

厚岸町の展望台

ン十年前に1か月かけて北海道を旅したときのことを思い出す

厚岸町にある鉄道の踏切

海沿いを走るJR根室本線の線路を発見。踏切を越えた先に海が広がる

道東は海沿いの道が心地いい

ン十年前に1か月かけて北海道を旅したときのことを思い出す

海沿いを走るJR根室本線の線路を発見。踏切を越えた先に海が広がる

今回のごきげんロードマップ

釧路市、厚岸町、白糠町のイラストマップ

A. 海兵 B. 阿寒湖畔展望台 C. 橋本商店 D. らーめん工房魚一 E. 幣舞橋 F. 原生花園あやめヶ原 G. 道の駅 厚岸グルメパーク(厚岸味覚ターミナル・コンキリエ) H. 博珈琲 I. 道の駅 しらぬか恋問館 J. 釧路市丹頂鶴自然公園 K. 釧路市湿原展望台 L. チーズ工房白糠酪恵舎 M. ファームレストランCuore N. KIELO SAUNA

「ごきげんロードトリップ」掲載自治体のご紹介

※JAF優待の内容や利用方法などの詳細は、記事内の各施設「JAF優待はこちら」をクリックしてください。JAFナビ からも検索可能です。
※記載のデータは2025年7月現在のもので、料金は大人1名分(税込)です。変わる場合もありますので、お出かけ前にご確認ください。
取材協力=北海道・釧路市、厚岸町、白糠町

北海道・釧路市、厚岸町、白糠町の魅力たっぷり! ご当地名産品プレゼントに必要なキーワードはこれ!

ごきげんロードトリップで登場した北海道・釧路市、厚岸町、白糠町より、とっておきの名産品をプレゼント。応募にあたっては応募フォームにログインし、キーワードの入力が必要です。名産品プレゼントの詳細は、別公開となっている下記リンクにてチェックしてください。

プレゼント応募用キーワード

カキ

北海道・釧路市、厚岸町、白糠町ドライブガイド

1.阿寒湖遊覧船

阿寒湖を遊覧船で周遊する約85分の湖上クルーズ。途中、チュウルイ島に上陸し「マリモ展示観察センター」へ。湖底を再現した巨大水槽で特別天然記念物であるマリモが生息する様子を観察するなど阿寒湖の魅力を満喫できる。

釧路市阿寒町阿寒湖温泉1-5-20
Tel.0154-67-2511

阿寒観光汽船

2.道の駅 阿寒丹頂の里 クレインズテラス

特産品が豊富に揃う販売所では、お土産にタンチョウをかたどった最中や釧路産パプリカのかりんとうなどが人気。エゾシカバーガーや阿寒ポークをはじめ地元グルメの軽食メニューも充実。敷地内にはタンチョウの観察ができる施設やキャンプ場、温泉も。

釧路市阿寒町上阿寒23線36-1
Tel.0154-66-2969

道の駅 阿寒丹頂の里 クレインズテラス

3.道の駅 阿寒丹頂の里 美肌の湯 赤いベレー

道の駅 阿寒丹頂の里内にある天然温泉宿泊施設。源泉100%掛け流しの温泉は天然保湿成分が豊富な美肌の湯として親しまれている。併設のレストラン「鶴」では阿寒モルト牛をはじめ地元食材を生かした料理の数々が味わえる。

釧路市阿寒町上阿寒23線36-1
Tel.0154-66-2330

道の駅 阿寒丹頂の里 美肌の湯 赤いベレー

4.釧路市ふれあいホースパーク

釧路湿原の西に広がる東京ドーム120個分の敷地を誇る山花公園には動物園、遊園地、そしてホースパークも! 引き馬や初級者乗馬指導といった初心者向けの体験メニューがあり、見学だけでもOK。人懐っこい馬たちと触れ合って自然を体感しよう。

釧路市山花10-1
Tel.0154-56-2566

釧路市ふれあいホースパーク

5.山花温泉 リフレ

広大な山花公園内にある温泉宿。地産地消にこだわったおいしくヘルシーな「釧路型薬膳料理」と天然温泉で身も心も癒やされる。2つの大浴場と露天風呂、日替わりで楽しめる6種の薬湯や7種のアロマのスチームサウナ、ジャグジーなど種類豊富な設備も魅力。

釧路市山花14-131
Tel.0154-56-2233

山花温泉 リフレ

6.環境省釧路湿原野生生物保護センター

釧路湿原野生生物保護センターは、傷ついた希少鳥類の保護、治療、リハビリを行う施設。展示に加え、土日祝日は猛禽類医学研究所スタッフによるバックヤードツアーを開催。研究所のオリジナルグッズも要チェック。

釧路市北斗2-2101
Tel.0154-56-2565

環境省釧路湿原野生生物保護センター

7.釧路マーシュ&リバー

釧路湿原国立公園内を流れる釧路川をカヌーで下り、自然との一体感を味わおう。釧路マーシュ&リバーのカヌーツーリングはさまざまなプランから選べて、経験豊富なガイドが同乗するから安心。雄大な景色の中、野生動物の姿も見られるかも!?

釧路町トリトウシ88-5
Tel.0154-23-7116

釧路マーシュ&リバー

8.サラデジャンタル・ノボ

鶏ガラや昆布、カツオなど20種以上の食材をじっくり煮込んだスープが自慢のスープカレー専門店。人気の「チキン&野菜スープカレー」をはじめ、どのメニューも具がたっぷりで食べ応えあり。辛さは5段階から選べてトッピングも豊富。

釧路市文苑4-65-2 東陽ビル2F
Tel.0154-38-7890

サラデジャンタル・ノボ

9.お茶のふじえだ園

お茶の専門店の一角にある喫茶コーナーでは宇治抹茶を使用した抹茶ソフトクリームや抹茶ソフトクリームラテが人気! お茶屋さんならではの濃厚な風味と程よい甘さのひんやりスイーツはドライブや観光中のリフレッシュにぴったり。

釧路町桂木1-1 イオン釧路店1F
Tel.0154-36-1192

お茶のふじえだ園

10.昆布・珍味専門店 カネヨ高橋商店

北海道三大市場のひとつに数えられる釧路和商市場にある、乾燥昆布と海産珍味の専門店。羅臼昆布をはじめ、釧路昆布、鮭とば、こまいなどが所狭しと並ぶ。お酒のつまみやごはんのお供など、お土産に喜ばれる逸品が見つかるはず。

釧路市黒金町13-25 釧路和商市場内
Tel.0154-22-0877

昆布・珍味専門店 カネヨ高橋商店

11.いちい青果

くしろたんちょう市場ぐるめ館にある青果店は、味も鮮度も抜群の旬のフルーツや野菜が豊富に揃い、お買い得品もいっぱい! 全国発送もOK。ぐるめ館中央にはイートインスペースがあり、買い物の合間に館内各店の人気メニューも楽しめる。

釧路市幸町13-1-1 くしろたんちょう市場ぐるめ館内
Tel.0154-22-5948

いちい青果

12.フタミバリスタカフェ

イタリア製エスプレッソマシンで抽出した香り高いコーヒーやラテ、イタリア製マシンを使用したなめらかな口あたりのソフトクリーム、パフェやアフォガード(エスプレッソ)などスイーツ系メニューも魅力。ラテやソフトクリームにはべつかい牛乳を使用しています。また生地から手づくりしている本格ピザも楽しめます。

釧路市幸町13-1-1 くしろたんちょう市場ぐるめ館内
Tel.0154-24-5674

フタミバリスタカフェ

13.北海道立釧路芸術館

釧路・根室圏の芸術文化拠点として絵画や写真など自然をテーマとする作品を中心に収集、展示。美術展に加えてユニークなコンサートや映画会も開催。外観はかつてレンガ倉庫街だった釧路の港湾中心部をイメージしてデザインされている。

釧路市幸町4-1-5
Tel.0154-23-2381

北海道立釧路芸術館

写真提供: 北海道立釧路芸術館

14.驚きの森Labo

白糠町青少年旅行村の豊かな森のなか、ブルーベリーを中心に自然とのつながりを体験できる場を提供。夏季はブルーベリー狩り体験(要予約)も。コンテナハウスのカフェでは大自然に育まれた素材を生かしたスイーツが味わえる。

白糠町上茶路72-3
Tel.01547-2-7122

驚きの森Labo

15.レストランはまなす

国道38号線沿いで大きな看板が目立つ、洋食をメインに豊富なメニューが楽しめるレストラン。白糠町産のエゾ鹿肉のハンバーグ、ラム肉のハンバーグとチーズを重ねた「しらぬか ミルフィーユ・セット」が人気だ。

白糠町東2条南2-1-31
Tel.01547-2-2188

レストランはまなす

16.Erable(エラブル)

カジュアルなフレンチ&イタリアンが楽しめるレストラン。鹿肉の冷製ローストを火山に見立てた丼「エゾシカ肉のボルケーノ」やパスタが人気。ペットと一緒に食事できるスペース(要予約)、ワンちゃん用メニューがあり、ドッグランも完備。

厚岸町太田5の通り18-11
Tel.0153-52-0070

Erable

17.厚岸漁業協同組合直売店エーウロコ

厚岸漁協の直売店だけあり、特産のカキやカニなど海産物や加工品が手頃な値段で勢揃い。イートインスペースでは水槽から選んだカキを蒸しガキでいただけるほか、好みの魚介を刺身にしてくれるサービスも嬉しい。

厚岸町港町5-3
Tel.0153-52-0117

厚岸漁業協同組合直売店エーウロコ

18.愛冠(あいかっぷ)岬

厚岸湾に突き出した小高い断崖上にある岬は、筑紫恋海岸や、海鳥の繁殖地として知られる大黒島を見渡す絶景スポット。岬の突端にはモニュメント「愛の鐘ベルアーチ」があり、鐘を鳴らすと想いが叶うと伝えられている。

厚岸町愛冠5-1
Tel.0153-52-3131(厚岸町観光商工課観光係)

愛冠岬

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