ごきげんロードトリップ

道後温泉、豪華鯛めし、みかんを満喫! ゆったり愛媛・松山欲張りドライブ

愛媛県・松山市。温泉、歴史と瀬戸内海グルメをいいとこ取り

2024.05.13

文=宮田珠己 / 撮影=阿部吉泰 / イラスト=田中 斉

2024.05.13

文=宮田珠己 / 撮影=阿部吉泰 / イラスト=田中 斉

1年点検を受けると、だれにでもチャンス

松山と言えば、四国でも有数の観光都市。見どころにあふれ、行き先もよりどりみどり。国宝級のお城から、お遍路で有名な古刹(こさつ)、日本最古の温泉、そして知られざる離島に、ユニークなグルメまで。自分の好きな松山を探しながらの欲張りドライブは、歴史と今が交錯する楽しい旅に。

松山の中心、はるか山頂にそびえる松山城天守閣を訪問

松山城の天守閣

松山城本丸広場から見る天守閣。天守、小天守、櫓(やぐら)を渡櫓(わたりやぐら)でつないだ連立式天守になっている
●松山城/松山市丸之内1 ☎︎089-921-4873(天守観覧料金520円)https://www.matsuyamajo.jp/

松山市の真ん中に忽然(こつぜん)とそびえたつ松山城は、市街地にある城としては、ずいぶんと高いのではないだろうか。路面電車の走る街なかから見上げると、天守閣がはるか遠くに見えた。登城道もあるが、楽をしてロープウェイで長者ヶ平(ちょうじゃがなる)まで上がることにした。

松山城は、江戸時代までに建てられた天守が現存する城のひとつで、国の重要文化財である。長者ヶ平から歩き出すと、さっそく高さ17mもある巨大な石垣が迎えてくれた。そそりたつ石の壁に圧倒される。上部へ行くにつれ反り返る形状が美しい。

城の面白さは、攻めてくる敵をいかに惑わせ撃退するか、その工夫とカラクリにあると私は思っている。松山城には、そこここに敵を欺く仕掛けが施されていた。相手を誘い込む戸無門(となしもん)や、奇襲用の隠門(かくれもん)のほか、天守に近づけば、折れ曲がった進入路に四方から攻撃できる枡形(ますがた)が設けられていたり、丸太で突かれても破壊されない強固な三ノ門の存在、さらに天守、小天守、櫓を渡櫓でつなぐことで、どこからでも敵を狙える連立式天守など、幾重にも防御態勢が整えられていて、見応え十分。歩いているだけでワクワクした。城はこうでなくちゃね。

天守の地下にある穴蔵には、約2,000俵の米が貯蔵可能で、800人の兵士が1年間籠城(ろうじょう)できたそうだ。水はどうしたのかといえば、当時の技術では掘れない44m以上の深さの井戸が本丸広場にあって、かつて谷だったところを埋め、谷底にあった泉を井戸にしたのではないかと考えられている。なんとも大掛かりな発想である。

戦に備え、さまざまな工夫を凝らした松山城だが、結局ここで戦が起こることはなく、こうした仕掛けが役立つことはなかったそう。

ちなみに、驚いたのは、天守にトイレがなかったこと。生活空間ではないからトイレは必要なかったというのだが、戦の途中であっても尿意をもよおすことはあるはず。武士たちも大変なのだった。

松山城ロープウェイのゴンドラに乗る男性

松山城へはロープウェイかリフトで登れる(往復520円)。ロープウェイのゴンドラは、2024年2月にリニューアルされたばかりで、ピカピカだった。隣にはリフトもあり、松山城にはそのほか、歩いて昇れる道が4か所ある
●松山城総合事務所/松山市大街道3-2-46 ☎︎089-921-4873

松山城をガイドする女性

ボランティアガイドの大塚美和さん。埼玉の出身だそうだが、松山に住んでみると、美しい海や山が近いうえに、街もコンパクトで過ごしやすく、今ではすっかり気に入っていると語る
●松山観光ボランティアガイドの会/松山市大街道3-2-46 ☎︎089-935-5711 https://www.matsuyama-guide.jp/

松山城、初代当主加藤嘉明の甲冑

天守の内部には、初代当主加藤嘉明の甲冑や、人間国宝である刀工高橋貞次の手による刀剣、藩主松平家に伝わる茶器、火縄銃など、多くの展示があり充実している

本丸広場のみかんジュースの蛇口

本丸広場の売店で見つけたみかんジュースの出てくる蛇口。カップ一杯400円。どういう仕掛けなのかのぞこうとしたら、店員の方に「夢を壊しますから」と笑いながら隠された

みかん王国愛媛の秘蔵グルメ、みかん寿司を食べる

伊予みかん寿司

伊予のみかん寿司(480円)。ほんのりとみかんの甘い香りが漂う

松山には、みかんを使った面白いグルメがある。その筆頭と言ってもいいのが「伊予のみかん寿司」だ。せっかくなら挑戦してみようと、松山きっての繁華街、三番町にある郷土料理店・五志喜(ごしき)を訪ねた。

みかん寿司と聞いて、最初に私がイメージしたのは、シャリにみかんがのっているにぎり寿司だった。正直、みかんと米の味がすんなりまとまるとは思えず、別々に食べたほうがおいしいのでは? と困惑していたのである。ところが実際に出てきたのは、みかんジュースで炊いたお米で作るちらし寿司だった。

これには意表を突かれた。どんな奇抜な味かと思えば、ほんのりとみかんの風味が香る柔らかな味わい。これもまた意外。ふつうに食べられる。細かなみかんの皮が散らされてあり、それを含んだときだけキュッと強くみかんが香る。おいしい。

ここは、最初にみかんジュースで米を炊いてみようと思ったチャレンジ精神に、敬意を表しておきたい。

みかん寿司の説明をする店員

松山市では、小学校の給食でもみかんのご飯が出ると教えられる。そっちはもっとみかんの味が濃いとのことで、どんな味か食べてみたいような、なんだか怖いような

郷土料理 五志喜外観

「みかん寿司」や、同じくみかんジュースで炊いた寿司めしで作る「みかんいなり」を目当てに来るお客さんも多いという五志喜。「みかんいなり」は、1日に100個以上も出る人気商品だそうだ
●郷土料理 五志喜/松山市三番町3-5-4 ☎︎089-933-3838 https://s422500.gorp.jp/

四国八十八カ所霊場第51番石手寺(いしてじ)は、不思議なオーラを放つ名刹

石手寺の三重塔

重要文化財の三重塔 ●石手寺/松山市石手2-9-21 ☎︎089-977-0870

次に訪ねたのが、四国遍路の第51番札所石手寺だ。ここには国宝の二王門ほか、国の重要文化財である三重塔や本堂、鐘楼などがあって、名刹(めいさつ)と呼ぶにふさわしい。

石手寺という珍しい名前は、かつてこの地で、赤ん坊が手に石を握って生まれてきたという言い伝えからきている。

この言い伝えが真実かどうか私にはわからないが、宝物館にその石が展示されていた。ゆで卵のような大きさと形で、何か文字が書かれている。面白い。伝説というのは、不思議であればあるほどいいので、黙って信じることにしよう。

石手寺がユニークなのは伝説だけではない。境内そのものも、一種独特のオーラを放っている。私はかつて四国遍路をしたことがあるのだが、88ある札所のなかでも、ここは最も印象に残っている場所のひとつだ。たくさんの木彫りの仏像が置かれていたり、背後の山に巨大な弘法大師像が立っていたり、長い洞窟があったりと、次々と面白いものが出てくる遊園地のようなお寺なのである。

この不思議な味わいはちょっとクセになる。境内を巡るうちに、自分がだんだんハイになっていくのがわかる。次の予定がなければ、抜け出せなくなるところだった。

石手寺の名の由来となった石

宝物館に展示されている石手寺の名の由来となった石。昔、伊予の国の長者が、四国巡拝中に病に倒れ、死出の枕元に現れた弘法大師が、長者の手に石を授けた。その後、この地に、石を握った男子が生まれてきたという

木彫りの仏像が並ぶ境内

境内にはたくさんの木彫りの神仏が並んでいる。なかには南太平洋の仮面のようなものもあったりして、楽しい。祈りの形は、さまざまあっていいのかもしれない

石手寺の洞窟

本堂の裏手には洞窟があって、裏山を突き抜けるまで続く。洞内には仏像や絵画などが飾られ、ちょっと怖い雰囲気。洞窟を抜けた先には、金色の香炉のような丸い建物が建つ奥の院がある

石手寺の参道にあるやきもちの店

石手寺の入り口にある食堂で売っていたやきもち(2個320円)を食べてみたら、ちょっと焦げ目のついた餅の中にあんこが入って、まさに古刹にふさわしい素朴な味だった

道後温泉のVIPルーム⁉ 湯帳を着て湯船に浸かり、和菓子を食す

道後温泉 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)にある特別浴室

道後温泉 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)にある特別浴室。古来の湯帳を着て入浴する

松山と言えば、道後温泉。この日、本館は保存修理工事中(一部営業中)だったが、すぐそばにある別館 飛鳥乃湯泉で疲れを癒やすことにした。2017年にオープンした施設で、本館と同じ源泉を使い、特別浴室では皇室専用浴室の又新殿(ゆうしんでん)を再現した浴室が楽しめる。

この特別浴室の特徴は、「湯帳(ゆちょう)」と呼ばれる昔の浴衣を着て入浴することだ。裸で入らないのである。「湯帳」は一定の身分以上の人が、湯に入るとき身に着けていたそうで、高貴な気分に浸ることができる。というか、服を着たまま湯船に浸かる禁断の喜びみたいなものを感じてしまった。

大浴場とちがって、体を洗うせっけんなどはなく、湯に浸かるだけというのも独特だ。かつて温泉好きの友人に「温泉で体を洗うなんて邪道。温泉はお湯を体にまとうためのものだ」と力説されたことがあるのだが、まさにその通りの体験だ。

そもそも私はお湯が強いとすぐにのぼせてしまう体質なのだが、道後温泉の硫黄臭が少なく、なめらかなお湯は、ゆったりくつろぐことができた。こんな温泉なら何度でも入りたい。

松山の路面電車

ホテルに車を置いて、道後温泉には路面電車で行ってみた。路面電車を見れば、誰だって乗りたくなるもの。路面電車のある街は、いい街ばかりだ

道後温泉のアーケード入口

終点の道後温泉駅で降りるとすぐに道後ハイカラ通りのアーケード街がはじまる。近くには「坊っちゃん列車」の乗り場のほか、カラクリ時計があり、定時になると音楽とともに、人形たちが踊りだした

道後温泉本館

道後温泉本館の建屋は、7月まで改修中だが、1階で入浴は可能。屋根の上には道後温泉のシンボルである白鷺(しらさぎ)の像が立っていて、別館の飛鳥乃湯泉でも、そのスタイルは踏襲されている

道後温泉 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)の外観

別館 飛鳥乃湯泉は、夜にはライトアップされ、幻想的な雰囲気に変わる。湯は、本館と同じ源泉かけ流し。外国人観光客も多く利用していた
●道後温泉別館 飛鳥乃湯泉/松山市道後湯之町19-22 ☎︎089-932-1126(特別浴室大人1名利用料3,730円、要予約) https://dogo.jp/onsen/asuka

特別浴室の休憩室

特別浴室には、すぐ隣に畳敷きの休憩室が付いており、湯上がりにお茶菓子をいただく。自分はお風呂に入ったというより、何か別の体験をしていたのだという気がする

道後温泉 飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)の休憩個室

5つある休憩用の個室(大人利用料1,690円)には、伝統工芸をテーマにした内装が施され、西条だんじり彫刻の伝統工芸士・石水信至氏による見事な彫刻や、伊予水引細工、筒描染(つつがきぞめ)などの装飾を見ることができる

ごごしまフェリーに乗って興居島(ごごしま)ドライブへ

ごごしまフェリーに乗る男性

興居島へのプチ船旅。短時間でも海に出るとワクワクする
●ごごしまフェリー高浜港発着場所/松山市高浜町2丁目 ☎︎089-961-2034(片道料金250円、車両1,530円~) http://gogoshima-ferry.com/

興居島は、松山市のすぐ沖に浮かぶ瀬戸内海の島。伊予鉄道高浜線の終点高浜駅近くから出ているフェリーで渡る。車十数台が載るだけの小さなフェリーで、所要時間は10分あまり。それでも船旅となると、自然にテンションが上がってくる。

興居島に何があるかというと、観光名所と呼べるほどのものはない。しかし島に流れる穏やかな時間は、松山観光のいいアクセントになる。周回できる道路があったので、車でぐるっと回ってみた。交通量はほとんどないから、ゆったり走れて気持ちがいい。

途中、ちょっとしたビュースポットがたくさんあった。青い海と幾重にも重なって見える島々。そして静かに波が寄せる穏やかなビーチ。瀬戸内海の風景は本当に優しい。

お茶でもしようと、海べりにあるCAFEナワナワに立ち寄る。

JICA海外協力隊でアフリカ大陸南西部のナミビアを訪れ、そこで出会って結ばれたという石川夫妻が営むカフェだ。ナワナワとは、ナミビアの言語であるオシヘレロ語で「こんにちは」の意味。奥さんの真里さんに、なぜこの島に移住されたんですか、と尋ねると、「ナミビアと空気が似ていたから」と意外な答えが返ってきた。ナミビアと瀬戸内海の島、頭のなかで結びつかない。

真里さんによると「不便さというか、街にあるものがなかったり、街にないものがあったり、ちょうどいいんです」とのこと。

不便さがちょうどいいとは、子育て世代には響く言葉である。子供はちょっと不便でも自然のなかで育てたい、それは実は贅沢なことだと思う。石川夫妻にも小さなお子さんが2人おられるそうで、こんな島で子育てできるのがうらやましかった。

自宅の庭先に設えたような簡素なテーブルで、木の実のタルトとみかんジュースをいただく。ナッツがぎっしり詰まったタルトが、香ばしくておいしい。

「ナミビアで食べたいものが食べられなくて、自分であれこれ工夫して作ってるうちに覚えました」

都会のオシャレなカフェとは違うけれど、のどかな空間で過ごす島のティータイムは、最高に心地よかった。

ごごしまフェリー

興居島に渡る小さなフェリー。車十数台でいっぱいになるため、行きも帰りも満杯だった。1日13便あり、松山市街から伊予鉄道に乗れば、港も近く、気軽に島に遊びに行ける

ごごしまフェリー

フェリーから興居島を眺める。島はいくつかの小山が合体したような形で、もっとも高い山は伊予小富士と呼ばれる。標高282m

ドライブ中、島の南で立ち寄った相子ヶ浜(あいこがはま)海水浴場。海は透明度が高く、波も穏やかで、小さな子供を連れて遊びに行くのに、ちょうどよさそうだった

興居島内と走行する車

島には車が少なく、快適に走れる。一周のんびりドライブするのもいい

カフェナワナワ

CAFEナワナワの手作り感あふれる外観。店内では、ドリンクのほか、ケーキや焼き菓子、ジャムや古本なども販売している。古本を売っているカフェは、絶対いいカフェだ(筆者調べ)
●CAFEナワナワ/松山市泊町1370-2 ☎︎080-3100-8553 https://gogonyan.com/

ケーキとみかんジュース

ごごしまみかんジュース(450円)と木の実のタルト(420円)。そのほかにも自家製すだちネードや、季節限定自家製金柑ネード、オーガニックティーなどドリンクの種類が豊富

レモンを持つ女性

レモン畑で収穫したレモンを持つ、CAFEナワナワオーナーの石川真里さん。ご夫婦でCAFEナワナワのほか、みかん農園「ごごにゃんファーム」も営んでいる

三津浜エリアを散歩してローカルグルメ三津浜焼きを堪能

三津浜焼き

三津浜焼きシングル(700円)。メニューはそばかうどんの、シングルとダブルのみ
●お好み焼きみよし 三津店/松山市住吉2-4-3 ☎︎089-952-3359

三津浜は古くからある港町。路地裏などに昔の風情が残っており、ご当地グルメ三津浜焼きでも有名だ。三津浜焼きは、一見、広島風お好み焼きに似ているが、牛脂やちくわが入っていたり、作り方もちょっと違う。
港を散策した後、「お好み焼きみよし」で三津浜焼きを注文。ベテランの江藤文子さんに、作るところを見せてもらった。
まずは生地を鉄板上で薄くのばして台を作り、そこにすでにソースをからめたそば(もしくはうどん)をのせる。この時点でそばに味がついている点が三津浜焼きの特徴だそうだ。そこにキャベツや三枚肉、トレードマークでもある紅白のちくわ、サバ粉、そして牛脂をそのまま入れて焼く。

何度かひっくり返したあと卵を割って、特製ソースや青のり、ゴマ、一味唐辛子、マヨネーズなどをお好みでトッピング。
21年間作り続けてきたというだけあって、さすが手際がいい。時には、ひとりで10人のお客さんに対応しながら電話にも出るというから驚きである。
できたてのアツアツを口に入れると、たっぷり入ったキャベツの甘みが広がってうまい。お好み焼きのようにべったりしていないので、いくらでも食べられそうだ。

江藤さんに、この仕事をするようになったきっかけを尋ねると、「ハローワークで紹介された」とのこと。はじまりは偶然だったのだ。最初はうまく作れるか不安だったが、困ったときはお客さんが助けてくれたそう。
「お客さんにうまいと言われるとスイッチが入ります」。終始パワフルで明るい江藤さんに、元気をもらって店を出た。

三津浜焼きを焼く女性

江藤さんは、とにかくチャキチャキと手際よく動く。55歳のときにこの仕事をはじめ、一時は、ひとりで3店を掛け持ちしていたこともあるそう

三津浜焼きを食べる男性

「松山いいところでしょ。ほんと好き。今は子育ても孫育ても終わったので、ひとりで映画行ったり買い物行ったり、楽しいですよ」と語る江藤さん

三津の渡し舟

●三津の渡し/松山市三津1-11 利用料無料 ☎︎089-951-2149(松山港務所)

入江の対岸に渡る公営の渡し舟があり、乗せてもらった。今も渡しが残っていることに驚いたが、橋を架けるよりこのほうが安あがりらしい。気さくな船頭さんの話を聞いているうちに、泳いでも渡れそうな距離だから一瞬で着いてしまった。

梅津寺駅の夕景

●梅津寺(ばいしんじ)駅/松山市梅津寺町1374-1 ☎︎089-948-3222(伊予鉄道 庶務課)

トレンディードラマの名作『東京ラブストーリー』のロケ地として知られる梅津寺駅。瀬戸内海は、海が太平洋や日本海のビビッドな青ではなく、緑がかった淡くて優しい色をしている。夕日はその向こうの島影に線香花火の最後のようにうるうると沈んでいった。

松山の歴史を感じさせる萬翠荘(ばんすいそう)、子規記念博物館を訪問

萬翠荘内観

階段踊り場にあるステンドグラスは、海をゆく帆船。世界へ乗り出していく当時の日本を象徴するかのよう

萬翠荘は大正11(1922)年に旧松山藩主の子孫・久松定謨(ひさまつ・さだこと)によって建てられた純フランス風建築で、国の重要文化財に指定されている。左右対称につくられることが多い西洋建築と違い、左右非対称になっているところが日本ならではの美意識と言われており、なるほどそう見ると面白い。さらに萬翠荘を有名にしているのが、ステンドグラスだ。各部屋の入り口上には、アールヌーボー調のステンドグラスが施され、館内を淡い光で染めている。

萬翠荘の一室

瀟洒(しょうしゃ)な晩餐の間は、水晶のシャンデリアが印象的。なんでもシャンデリアの下は、パワースポットと言われているとか。せっかくなので30秒ほど浴びておいた

萬翠荘外観

左右非対称の萬翠荘は、本場の西洋建築よりも美しいと称賛された。設計者は宮大工の家系に生まれた建築家木子七郎(きご・しちろう)。つまり和の素養があってこそ生まれた西洋建築と言える ●萬翠荘/松山市一番町3-3-7 ☎︎089-921-3711(入館料300円) http://www.bansuisou.org/

子規記念博物館の展示

子規の晩年を再現する展示が胸を打つ

上品な気分になったところで、次に訪ねたのは子規記念博物館。

正岡子規と言えば、20代の頃に読んだ『病牀六尺』が強く印象に残っている。結核に冒されただけでなく、それが脊椎カリエスを誘発し、みるみる蝕まれていく体。だが子規はやがて寝たきりになっても、文学の研究に没頭し、俳句を詠んだ。相当な痛みと不自由があっただろうに、そんな自分を客観視して冷静に文章を綴るその強靭さに感銘を受けた。

館内には膨大な資料が展示されており、子規の人生を幼少時代からたどることができるが、やはり興味深いのは、晩年だ。痛みだけでなく、自分の命の限界が見える境遇は、どれだけ苦しかったことか。想像するだけで辛くなる。

子規が晩年を過ごした部屋から見える風景がスクリーンに再現されていた。家族や友人たちが病床の子規のために植えたという、たくさんの植物が庭を埋め尽くしている。それはまるで、ミニマムな世界であってもそこには芳醇な宇宙が秘められていることを、教えてくれているようだった。

子規記念博物館の展示を見る男性

書くことによってたとえ一時的であっても、生の苦しみを忘れることができたのかもしれないと思うと、子規の生きざまはわれわれに希望を与えてくれる

子規記念博物館外観

子規記念博物館は、道後温泉のすぐ近くにある。現在、外壁を改装中だが、展示は見ることができる ●松山市立子規記念博物館/松山市道後公園1-30 ☎︎089-931-5566(常設展観覧料400円)https://shiki-museum.com

ご当地グルメ究極の北条鯛めしを味わう

北条鯛めし

天然鯛一匹をまるごと炊き込んだ北条鯛めし(6,600円)

松山の市街地から瀬戸内海に沿って北上し、伊予北条にある旅館兼食事処「太田屋」を訪ねる。ここの鯛めしが絶品だった。

鯛めしは松山の郷土料理として知られるが、店主の岩渕さんによると、「太田屋」の鯛めしの特徴は、鯛以外の具材を使わないことだそう。鯛は淡白なので、他の具材を入れると味が隠れてしまう。そのため鯛以外は、昆布と、特別に開発した香りのない醤油しか使わない。醤油の香りも鯛の風味を飛ばしてしまうからだ。もちろん使う鯛は天然物のみ。養殖では脂が多く、淡白さが生かせない。

運ばれてきた釜の蓋をあけると、ごはんの上に鯛が一尾どーんとのっていた。なんとも豪快。これをほぐしてもらって、お茶碗によそうと、鯛の白身と白いごはんだけなので真っ白。
あまりに見た目がシンプルだから物足りないかと思いきや、口に運んだ途端、ほどよい塩味と鯛の風味が口いっぱいに広がって、完璧、と思ってしまった。何の飾り気もない分、素材の鯛の味が立っている。

私がうまいうまいと騒いでいると、「出身は関西ですか」と岩渕さんに聞かれ、「そうです」と答えると、「関西は薄味なので、関西の方にとくに評判がいいんです」とのこと。なるほど。
「この味が忘れられないと言って、30年ぶりに来てくれたお客さんもおられて、味が変わってなくてよかったと言われたときはうれしかったですね」

きっとシンプルなおいしさほど忘れられないのだ。気がつけば3杯もおかわりしていた。

身をほぐした北条鯛めし

食べるときは、身をほぐして提供してくれる。刺身をのっけたり、いろんな具材を混ぜた鯛めしに慣れた人は、白ごはんと間違えることもあるそう。いやいや、これで正解なんです

鯛めしを食べる男性

おにぎりは結局シンプルな塩むすびが一番おいしいように、飲み物は澄んだ湧き水が一番おいしいように、しっかり味わうことでわかる絶妙なうまさ

太田屋店主

「太田屋」の7代目店主岩渕貴之さん。「太田屋」は嘉永6(1853)年、ペリーが来航した年に旅館として開業した。今年で創業171年。かつては行商人が往来する街道に面し、当時から鯛めしを提供していたという

太田屋鹿島店外観

伊予北条の沖の鹿島は、夏になると海水浴の家族連れなどでにぎわう無人島。「太田屋」は、その鹿島にシーズン中だけ店をオープンさせる ●太田屋旅館鹿島店/松山市北条辻1596-3 ☎︎089-993-0012(5月からは鹿島店で鯛めしを提供、要予約)

松山は何度訪れても足りない街

興居島での車の走行シーン

結局欲張りすぎて駆け足で巡ってしまったが、見どころがたくさんあるのだから、しょうがない。城があり、寺があり、温泉があり、島があり、歴史もある。そしておいしいものから、ちょっと奇妙なものまで、何でもあるのが松山の特徴だ。
私が松山に来るのは、5度目ぐらいになるはずだが、それでも、もう十分とは全然思えないのだった。

そして来るたびに思うのは、街のおだやかさである。気候のせいなのか、人々のやさしさがそう感じさせるのか、きっとその両方だと思うけれど、おかげで何度も来たくなる。
できればもう少し長居して、さらにディープな松山を探ってみたかったが、今回は時間切れ。まだまだ行きたい場所はあるけれど、楽しみは次にとっておくことにしよう。

今回のごきげんロードマップ

A.松山城/B.郷土料理 五志喜/C.石手寺/D.道後温泉 飛鳥乃湯泉/E.ごごしまフェリー高浜港発着場所/F.CAFEナワナワ/G.お好み焼きみよし三津店/H.三津の渡し/I.梅津寺駅/J.萬翠荘/K.松山市立子規記念博物館/L.太田屋旅館北条店

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愛媛県・松山市ドライブガイド

1.奥道後 壱湯の守(いちゆのもり)

石手川の渓谷を望み四季折々の自然に癒やされる温泉宿。源泉かけ流しの豊富な湯量、「美人の湯」と名高い泉質を誇り、男女各7種の湯船からなる大露天風呂は西日本最大級。趣向の異なる5つの貸切露天風呂や足湯、冷泉プール(夏期のみ)も楽しめる。

松山市末町267-1
☎︎089-977-1111
https://www.okudogo.co.jp/

2.伊佐爾波(いさにわ)神社

心願成就や縁結びのご利益があるとして人気の伊佐爾波神社。135段の石段を上った先に現れる壮麗な社殿は全国に3例しかない整った八幡造りで国の重要文化財に指定されている。石段の上から見渡す街の風景も一見の価値あり。

松山市桜谷町173
☎︎089-947-7447
https://isaniwa.official.jp/

3.茶玻瑠(ちゃはる)

最上階の展望露天風呂や多彩なルームプランが人気のホテル。レストランにも定評があり、和洋創作アレンジ会席「茶寮 花小路」、ブッフェスタイルの「メインダイニング 玻璃(はり)」での美食を目的に訪れるのもおすすめ。

松山市道後湯月町4-4
☎︎089-945-1321
https://www.chaharu.com/

4.茶楽(山田屋まんじゅう道後温泉店)

山田屋まんじゅう道後温泉店内にある日本茶専門カフェ。小説『草枕』に登場するお茶をイメージした「しずく茶」の他、5代目当主がこだわりを注ぎ込んだ究極の冷やししるこ「きら」、山田屋のあんこを使用したパフェなど和スイーツも魅力。

松山市道後鷺谷町5-13
☎︎089-921-5388
https://yamadayamanju.jp/charaku

5.大和屋本店

慶応4年創業の由緒ある老舗旅館。温泉でリフレッシュした後は、湯上がり休憩処で無料の日本酒BAR、駄菓子BARも楽しめる。宿のシンボルである能舞台での記念撮影や瀬戸内の山海の幸が満喫できる朝食ブッフェもおすすめ。

松山市道後湯之町20-8
☎︎089-935-8880
https://www.yamatoyahonten.com/

6.道後温泉 ホテル古湧園 遥(こわくえん はるか)

温泉街中心地の高台に建ち、展望大浴場からは市街から松山城まで一望のもと。浴衣で温泉街の散策、道後温泉本館はじめ外湯巡りも楽しめる抜群の立地。クリーンエネルギーを活用する最先端の環境対応型ホテルでもある。

松山市道後鷺谷町1-1
☎︎089-945-5911
https://www.kowakuen.com/

7.道後ぎやまんガラスミュージアム

江戸時代の希少な「ぎやまん」「びいどろ」や、明治・大正時代の和ガラス作品を約300点展示。道後温泉本館から徒歩約3分の山の手ガーデン内にあり、夜は敷地内がライトアップされ幻想的な雰囲気に。

松山市道後鷺谷町459-1
☎︎089-933-3637
https://www.dogo-yamanote.com/garden/museum/

8.秋山兄弟生誕地

松山の偉人、秋山好古・真之兄弟の生誕地に生家を復元。建物内は当時の生活様式を再現し、兄弟の写真や書簡、年譜などを展示する資料館としてその功績を偲ぶ。庭には兄弟の銅像が見つめ合うように配置されている。

松山市歩行町2-3-6
☎︎089-943-2747
https://akiyama-kyodai.gr.jp/

9.フルーツパーラーみしま

老舗の果物店に併設されたフルーツパーラー。愛媛名産の柑橘類をはじめ、季節によりイチゴやメロンなど、専門店ならではの目利きで選んだ旬のフルーツを贅沢に使ったパフェは絶品! スムージーやランチメニューの軽食も人気。

松山市大街道2-5-5
☎︎089-921-8598
http://f-mishima.com

10.坂の上の雲ミュージアム

司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』をテーマに、秋山好古・真之兄弟と正岡子規の足跡や明治時代に関する展示を行い、まちづくりの情報を発信するミュージアム。安藤忠雄氏設計による、周辺環境に配慮した外観、建築美も見どころのひとつ。

松山市一番町3-20
☎︎089-915-2600
https://www.sakanouenokumomuseum.jp/

11.松山東急REIホテル

松山市中心部に立地し、大街道商店街は目の前、松山城も徒歩圏内。ビジネスや観光などさまざまなニーズに応え、利便性重視の旅人におすすめ。朝食ブッフェも人気で、鯛めしやじゃこ天など松山の郷土料理などメニュー充実。

松山市一番町3-3-1
☎︎089-941-0109
https://www.tokyuhotels.co.jp/matsuyama-r/index.html

12.鍋焼うどん アサヒ

松山のソウルフードとして愛される鍋焼うどん(800円)。その発祥の地と言われるのが昭和22年創業のこの店。昔ながらのアルミ鍋で、甘めの出汁に牛肉煮や蒲鉾など具もたっぷり、熱々で供されるのがアサヒ流。サイドメニューのいなりずしも人気。

松山市湊町3-10-11
☎︎089-921-6470

13.THREE FISH COFFEE

スペシャルティコーヒーを中心に世界のコーヒー豆を厳選して提供する自家焙煎コーヒーの店。1階は温かみあるカフェ、2階は焙煎所+クレープ販売も。季節のパスタや玉子サンド、モカソフトなどフードも充実したカフェ好きにとって至福の空間。

松山市千舟町3-2-17
☎︎089-945-7599
https://threefishcoffee.com/

14.カヌレティエ クロリ matsuchika店

表面はカリッ、中はモチッとした食感がたまらない濃厚カヌレの専門店。プレーン、チョコ、いちご、黒みつきな粉といった定番に加え、季節ごとに限定カヌレも登場。彩り鮮やかで贅沢な味わいのカヌレは手土産にもおすすめ。

松山市湊町5-1-1
☎︎089-935-8080(晴れパン朝生田店)
https://coloris.store/

15.みきゃんパーク梅津寺(ばいしんじ)

愛媛特産の柑橘をPRする発信地。ご当地キャラクターの「みきゃん」たちのグッズが勢揃い。1階には物販やジュース加工場、蛇口みかんジュースも! 2階では海と電車を見ながら柑橘をアレンジした可愛いカフェメニューが楽しめる。

松山市梅津寺町1374-1
☎︎089-992-9898
https://www.mican-park.jp/

16.うつぼ屋 本店

松山のお土産といえば、夏目漱石の小説に由来する銘菓「坊っちゃん団子」。抹茶、黄(白餡)、小豆の3色の餡でお餅を包んで串に刺した可愛いひと口サイズ。卵不使用で、なめらかな食感とやさしい甘さが「うつぼ屋」の特長。

松山市平田町230
☎︎089-978-1611
https://utuboya.co.jp/

17.シーパの湯

瀬戸内海に面したロケーションで、オーシャンビューの絶景露天風呂が自慢。海底よりパイプで引き込んだ海水を殺菌・濾過・ナノ水処理した「潮湯」は切り傷やアトピーに効果ありと評判。多様な宿泊プランがあり、日帰り入浴もOK。

松山市北条1180
☎︎089-993-0101
https://seapa.jp/

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