自動車交通トピックス

国内では約75年ぶりの路面電車が栃木・宇都宮で8月に開業! 併用区間を走る際の交通ルールとは?

そもそもLRT(次世代路面電車システム)ってなに?

2023.06.26

文=津島 孝/写真・イラスト提供=宇都宮市

2023.06.26

文=津島 孝/写真・イラスト提供=宇都宮市

1年点検を受けると、だれにでもチャンス

栃木県宇都宮市は、次世代型路面電車システム「芳賀・宇都宮LRT」を2023年8月26日に開業すると発表した。延伸を除き、完全な新規開業の路面電車としては国内で約75年ぶり。これを機に、普段は路面電車との併用区間を利用することがない人も、路面電車とともに走る交通ルールを再確認しておこう。

LRT(次世代路面電車システム)ってなに?

LRTとは、Light Rail Transit(ライト・レール・トランジット)の略称。道路に敷かれたレールを走るので路面電車に分類されるが、低床車両を使うことで停留所と車両に段差をなくし、高齢者やベビーカー、車椅子の人の乗り降りをスムーズにするなど改善点が多い。走行時の騒音や振動が低く、乗り心地も快適。専用レールを走るので時間に正確で、電動モーターで駆動するため二酸化炭素(CO2)などの排気ガスを出さない。

人にも環境にも優しいことから、ヨーロッパ各国やアメリカ、アラブ首長国連邦、オーストラリア、アルゼンチン、中国など世界各国の都市で運行されている。内外装に高いデザイン性を備えているので、都市のシンボルになることも多い。

芳賀・宇都宮LRT(ライトライン)の運行PRイメージ

国内では約75年ぶりの開業となる「芳賀・宇都宮LRT(ライトライン)」。環境に優しい次世代モビリティとして、新たな都市交通の形態が注目されているほか、地域のシンボルとして観光面での盛り上がりも期待されている。

芳賀・宇都宮LRTの一般道との併用区間は約9.4㎞

芳賀・宇都宮LRTは、JR宇都宮駅東口から芳賀町の工業団地までをつなぐ約14.6㎞を走る。全線が複線で、停留所は19か所。大勢の人が働いている地域や学校を通ることで、平日は約16,300人の利用を見込んでいる。
自動車交通との併用区間は約9.4㎞。併用区間の交通ルールは自動車教習所で教わっているはずだが、路面電車が走っていない地域のドライバーは忘れがちだ。そこで、どんなことに注意すればよいか、改めて確認してみよう。

芳賀・宇都宮LRTの導入ルート図

2023年8月の導入ルートは、JR宇都宮駅東口から芳賀・高根沢工業団地までの14.6㎞。そのうちの約9.4㎞が自動車交通との併用区間となる。

路面電車優先が交通ルールの原則!

まず覚えておきたいのは、路面電車のレールが敷かれている「軌道敷(きどうしき)」は、原則として車が立ち入れないこと。道路交通法の第21条3項には、「路面電車の正常な運行に支障を及ぼさないように車はすみやかに軌道敷外に出るか、路面電車と必要な距離を保たなければならない」とある。通行や通過が許されているのは、危険を避ける場合や工事などで十分な通行スペースがない場合、あるいは横断や右折、転回(Uターン)など、やむを得ない場合に限られる。

導入後の交差点での注意点を示すイメージ図

路面電車の軌道(レール)内は原則として車の走行は不可。右折の際は軌道内に止まらないように注意。

「軌道敷内通行可」の標識がある場合は?

「軌道敷内通行可」の指示標識がある場合は、この標識の先にある軌道敷内は車(原付や軽車両を除く)が通行できることを示している。ただし、軌道敷内通行可の場所であっても、後方から路面電車が近づいたときは軌道敷外に出るか、安全な距離を保たなければならない。

「軌道敷内通行可」の指示標識

軌道敷内通行可の場所でも、後方から路面電車が近づいてきた場合には軌道敷を出るなど、安全な対応が必要。

車の信号表示は変わらないが「黄色矢印」に注意

車の信号表示については、路面電車との併用区間も区間外も変わらない。ただし、併用区間には路面電車専用の「黄色矢印」が設置されている。これは路面電車だけを対象にした信号で、ほかの車両等は赤信号に従わなければならない(道路交通法施行令第2条1項)。車用の青色矢印が同時に点灯することもあるので、間違えないように気をつけよう。

併用区間における信号機表示の一例

併用区間における信号機表示の一例

路面電車との併用区間には、路面電車専用の「黄色矢印」表示が設置されている。車の信号表示は併用区間外と変わらないが、矢印の色を間違えないように注意したい。

後方確認不足の接触事故が多いため要注意

路面電車と車の事故は、車側の後方確認不足による接触事故がほとんどを占める。右左折時はもちろん、車線変更や道路脇の停車車両を追い越す際にも、路面電車が接近していないか、ミラーと目視での確認が必要だ。また、無理な右折や転回によって危険な状況に陥ることもある。右折用の矢印信号がないときは、矢印信号がある交差点まで迂回するなど、交通状況に合わせて適切に対処しよう。

JAF「実写版」危険予知トレーニング 路面電車編その1

停留所付近の歩行者にも注意が必要だ

停留所で乗り降りする人や道路を横断する人がいる場合は、車は電車の後方で待機しなければならない。乗り降りする人がいなければ、路面電車との間に1.5m以上の間隔をあけて、徐行しながら進むことができる。電車の横を通過する場合は、左側を通るのが原則だ。

利用者の安全確保のため、「安全地帯」を設けている場合もある。乗客や歩行者がいる安全地帯のそばを通るときは、周囲の安全を確認しながら徐行しなければならない。停留所や安全地帯の近くでは、歩行者用信号が点滅するなどで、歩行者が道路に飛び出してくることもある。十分な注意が必要だ。

JAF「実写版」危険予知トレーニング 路面電車編その2

交通ルールや危険ポイントを事前に確認しておこう

こうした事故を起こさないためには、交通ルールをきちんと理解しておくことが大切。路面電車が走る地域の自治体は、ホームページやパンフレットで交通ルールや注意点を紹介していることが多いので、観光や出張、転居の際は確認しておこう。

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