2020年01月07日 10:00 掲載

交通安全・防災 衝突被害軽減ブレーキが義務化へ。1月に国内基準を公布。

国土交通省は、昨年6月に関係閣僚会議でまとめられた「未就学児等及び高齢運転者の交通安全緊急対策」に即した具体的な措置方針を発表した。その方針の1つとして、衝突被害軽減ブレーキの国内基準を1月中に策定。義務付けを2021年11月以降の国産新モデルから段階的に実施するという。

JAFメディアワークス IT Media部 大槻 祐士

衝突被害軽減ブレーキ|国内基準|義務化|衝突事故イメージ

衝突事故のイメージ。©Kadmy - stock.adobe.com

 今回発表された措置方針は、「衝突被害軽減ブレーキの国内基準策定」、「ペダル踏み間違い急発進抑制装置などの性能認定制度の導入」、「既販車への後付け安全運転支援装置の普及」、「新たな先進安全技術の開発促進」の4項目である。それぞれの内容を確認してみよう。

衝突被害軽減ブレーキの国内基準策定は1月中

衝突被害軽減ブレーキ|国内基準|義務化|措置方針の概要とスケジュール

交通安全緊急対策に係る乗用車などの車両安全対策の措置方針。出典:国交省資料

 2019年6月末、国連の自動車基準調和世界フォーラムにおいて、乗用車などの衝突被害軽減ブレーキの国際基準が成立した。国土交通省では、これを受けて国内基準の策定を進めており、1月中に国内基準が公布される見込みだ。

 また、同省では、世界に先駆け(※)2021年11月以降に販売される国産新モデルから段階的に衝突被害軽減ブレーキの装備を義務付けるとしている。義務付けのタイミングは以下の通り。

【衝突被害軽減ブレーキの義務付け時期】
・国産新型車:2021年11月~
・国産継続生産車:2025年12月~(軽トラックは2027年9月~)
・輸入新型車:2024年6月頃~
・輸入継続生産車:2026年6月頃~

 ※欧州は2024年前半以降段階的に義務化する方向

ペダル踏み間違い急発進抑制装置などの性能認定制度の導入方針

 ペダル踏み間違い急発進抑制装置などの性能認定制度の導入では、「衝突被害軽減ブレーキ」と「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」について、それぞれの性能認定要件を示した。また、新しい方式の急発進等抑制装置が商品化された場合には、性能認定要件の対象装置等について見直しを検討するという。

 ちなみに、衝突被害軽減ブレーキの性能認定制度は、前述の国内基準、義務化の件とは別の制度である。試験条件も若干異なり、国内基準は国連基準と同等、性能認定制度は歩行者に対する試験条件が少し緩い等の違いがある。また、これらとは別に、国交省等が新車の安全性能評価を行う「自動車アセスメント」(JNCAP)を行っているが、こちらはより厳しい条件までテストが行われている。この辺、ユーザーには少し分かりづらい仕組みかもしれない。

衝突被害軽減ブレーキの性能認定制度

 衝突被害軽減ブレーキとは、車載レーダーやカメラなどによって前方の車両や歩行者を検知。衝突の可能性がある場合には、運転者に対してはシステムが警報を鳴らし、さらに衝突の可能性が高い場合には、衝突の防止または被害軽減のためにシステムが自動でブレーキを作動させる。

 今回示された要件の対象となるのは、乗用車などのうち、自動車メーカーなどから申請のあったもので、性能認定されるための主な要件は以下の通り。

衝突被害軽減ブレーキ|国内基準|義務化|衝突被害軽減ブレーキの性能認定制度|主な試験

衝突被害軽減ブレーキの性能認定試験のイメージ。出典:国交省資料

【主な要件】
① 静止している前方車両に対して時速50km(軽トラックは時速30km)で接近した際に衝突しない。または衝突時の速度が時速20km以下となること。
② 時速20kmで走行する前方車両に対して、時速50km(軽トラックは時速30km)で接近した際に衝突しないこと。
③ ①および②において、衝突被害軽減ブレーキが作動する少なくとも0.8秒前までに、運転者に衝突回避操作を促すための警報が作動すること。
④ 時速5kmで横断してくる歩行者に対して、時速20kmで接近した際に衝突しないこと。
⑤ ④において、衝突被害軽減ブレーキが作動する時までに、運転者に衝突回避操作を促すための警報が作動すること。


ペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能認定制度

 ペダル踏み間違い急発進抑制装置とは、発進時などのペダル踏み間違いなどにより周辺障害物との衝突可能性がある場合に、衝突防止または被害軽減のために急発進および急加速を抑制する装置で、加速抑制時には警報が作動しなければいけない。

 今回示された要件の対象となるのは、乗用車などのうち、自動車メーカーなどから申請のあったもので、性能認定されるための主な要件は以下の通り。

衝突被害軽減ブレーキ|国内基準|義務化|ペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能認定制度|主な試験

ペダル踏み間違い急発進抑制装置の性能認定のイメージ。 出典:国交省資料

【主な要件】
① 前進、後進時に進行方向の障害物(車両ターゲット)に対してアクセルをフルストロークにした際に衝突しない。または加速を速度変化率(※)0.3以上に抑制すること。
② 加速抑制時に警報が作動すること。

 試験方法を簡単に説明すると、前方に衝突物がある場合とない場合の両方で、停止状態からアクセルをフルに踏み込んだ場合の、衝突物を置いた地点での速度を比較するというものだ。ペダル踏み間違い急発進抑制装置の機能が発揮されれば、当然、衝突物がある場合は速度が下がるはず。その低下率が速度変化率で、装置の性能を示すことになる。速度変化率が0.3以上になるには、たとえば衝突物なしで時速20kmの場合に、衝突物があると時速14km以下に減速できる必要がある。

 国交省によると、衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い急発進抑制装置に対する性能認定制度は2019年度中に整備。2020年4月から申請受付を開始し、2021年4月に同省WEBサイトにおいて認定結果を公表する予定だ。

 ※ 速度変化率:(V0 - V) / V0 V0:衝突対象物がない場合の速度 V:対象物に衝突したときの速度

既販車への後付け安全運転支援装置普及の方針

衝突被害軽減ブレーキ|国内基準|義務化|後付け急発進抑制装置の性能認定制度|主な試験

既販車への後付け安全運転支援装置普及の方針。 出典:国交省資料

 既販車への後付け安全運転支援装置普及の方針では、後付けの急発進抑制装置の性能認定制度を整備することを示している。

 対象となる装置は、「障害物検知機能付きのペダル踏み間違い急発進抑制装置」と「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」。前者は、障害物検知機能付きなので、障害物との衝突可能性が無ければ加速を抑制しない。後者は、アクセルをフルストロークにした場合、衝突の可能性が無くても加速を抑制する。このどちらの後付け装置に対しても、認定制度が整備される。また、新しい方式の急発進等抑制装置が商品化された場合には、対象装置の拡充を検討するという。

障害物検知機能付きのペダル踏み間違い急発進抑制装置

 障害物検知機能付きのペダル踏み間違い急発進抑制装置とは、発進時などのペダル踏み間違いなどによって周辺障害物との衝突可能性がある場合に、衝突防止または被害軽減のために急発進および急加速を抑制する装置。

 今回示された要件の対象となるのは、自動車メーカー、自動車用品メーカーなどから申請のあったもので、性能認定されるための主な要件は以下の通り。

【主な要件】
① 前進、後進時に進行方向の障害物(車両ターゲット)に対してアクセルをフルストロークにした際に衝突しない。または、加速を速度変化率0.3以上に抑制すること。
② 加速抑制時に警報が作動すること。
③機能停止スイッチなどの装備。使用、故障による急発進・急制動などを招くおそれがないこと。
④使用条件などの適切な説明、取り付けに係る情報の把握、不具合情報などの収集を実施すること。

ペダル踏み間違い急発進抑制装置

 ペダル踏み間違い急発進抑制装置とは、発進時などのペダル踏み間違いなどによる衝突防止。または、被害軽減のために急発進急加速を抑制する装置。

 今回示された要件の対象となるのは、自動車メーカー、自動車用品メーカーなどから申請のあったもので、性能認定されるための主な要件は以下の通り。

【主な要件】
① 前進、後進時にアクセルをフルストロークにした場合に衝突しない。または、加速を速度変化率0.3以上に抑制すること。
② 加速抑制時に警報が作動すること。
③ 機能停止スイッチなどの装備。予期しない加速抑制の排除。使用、故障による急発進・急制動等を招くおそれがないこと。
④ 使用条件などの適切な説明、取り付けに係る情報の把握、不具合情報などの収集を実施すること。

 国交省によると、後付け安全運転支援装置に対する性能認定制度は2019年度中に整備。2020年4月から申請受付を開始し、同省WEBサイトにおいて随時認定結果を公表する予定だ。

新たな先進安全技術の開発促進の方針

 新たな先進安全技術の開発促進の方針では、自動速度制御装置(ISA)のガイドライン概要を示した。

 自動速度制御装置(ISA)とは、走行している道路の制限速度を取得してドライバーに知らせるとともに、制限速度に合わせて速度を制御する運転支援装置。クルマ自体の最高速度を制限するリミッターとは異なるものだ。

 ISAが道路の制限速度を取得する方法は以下のようなものがイメージされている。

衝突被害軽減ブレーキ|国内基準|義務化|自動速度制御装置(ISA)|制限速度情報の取得例

自動速度制御装置(ISA)が制限速度を取得する方法(イメージ)。 出典:国交省資料をもとに再構成

 ・クルマに搭載されたカメラで道路脇の速度標識を認識し、制限速度を取得
 ・カーナビや地図などを利用して制限速度を取得
 ・GPSなどを利用し、通信によって制限速度を取得

 ISAのガイドライン概要は以下の通り。

【自動速度制御装置(ISA)のガイドライン概要】
 ・設定した上限速度を超えないように車速を制御
 ・追い越しや緊急回避のために、ドライバーがISAを一時的に解除することが可能
 ・踏み間違いなどのドライバーが意図しない操作では解除されないように配慮
 ・手動で上限速度の設定が可能
 ・エンジン始動時にON(有効)とするが、エンジン始動中でも操作によって装置をOFF(無効)にすることも可能とする。


 衝突被害軽減装置の普及促進のための方針が示された背景には、昨年、高齢ドライバーによるペダル踏み間違い事故が相次いだことなどがある。前述したペダル踏み間違い急発進抑制装置は一定条件での事故防止効果はあるものの、昨年池袋で発生したような、相当な速度で走行中の踏み間違い事故を防ぐことはできない。ISAの国内基準が策定され装置の搭載が義務付けられれば、こういった事故の防止にも効果があると見込まれる。

 一方で、国交省によると、運転者が「衝突被害軽減ブレーキが作動する」と過信して事故に至ったと疑われるケースの事故が増加しているという。装置には機能の限界があり、故障していなくても状況によっては作動しないこと。そして衝突被害軽減装置の作動の有無にかかわらず、安全運転の責任はドライバー本人にあることは改めて確認しておきたい。装置に期待するのは最後の手段と考え、日ごろから安全運転を心がけて欲しい。

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