2019年09月10日 16:37 掲載

交通安全・防災 あおり運転の対策や対処法、罪状について弁護士に聞いてきた。

常磐道で起きた事件がニュースなどで連日取り上げられ、改めて注目を集める「あおり運転」。あおり運転に遭わないための対策。遭ったときのにどうすればいいか。どのような罪に問われるかなどについて、交通事故を専門に取り扱う弁護士・井上昌哉氏に話を聞いた。

JAFメディアワークス IT Media部 大槻 祐士

あおり運転とは?

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あおり運転のイメージ。車間距離を必要以上に詰めると非常に危険である。© xiaosan- stock.adobe.com

 前方を走る車両との車間距離を極端に詰めたり、無理な追い越しをしたり、クラクションを鳴らして威圧したり、故意に前方に割り込んで急停車したりするなど、他車の通行を阻害する迷惑行為のことを「あおり運転」と呼ぶことが多い。

 2017年6月には、東名高速であおり運転を受けたクルマが追い越し車線上に停車させられ、後続のトラックが追突。4名が死傷する大事故が発生するなど、重大な交通事故につながる悪質で大変危険な行為である。連日、あおり運転に関するニュースが取り上げられるなど、改めて注目が集まっている。

交通事故専門「しまかぜ法律事務所」の代表弁護士・井上昌哉氏

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しまかぜ法律事務所の代表弁護士・井上昌哉氏。

 そんなあおり運転について話を聞いたのは「しまかぜ法律事務所」の代表弁護士・井上昌哉氏。交通事故件数が全国で一番多い愛知県において、年間300件の交通事故案件を受任する経験豊富な弁護士である。もちろん、あおり運転に関係する案件も多数受任しており、テレビや新聞、雑誌などにもたびたび登場するのでご存じの読者もいるだろう。

 今回は、井上氏の事務所で、あおり運転に関するさまざまな疑問について教えてもらった。

あおり運転はどんな罪になる?

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 さっそく、あおり運転はどんな罪になるのか尋ねてみた。

 井上氏「まず、"あおり運転"という言葉は法律用語ではなく、違反条項にもありません。近年では法廷でも使われるほど認知度の高い言葉になっていますが、法律的には道路交通法と刑法、自動車運転死傷行為処罰法で罰せられることになります」

 井上氏によると、あおり運転そのものが罪になるわけではなく、その過程で違反することになる、ひとつひとつの行為に罰則が与えられるのだという。その根拠となる法律が「道路交通法」と「刑法」、「自動車運転死傷行為処罰法」なのだ。それぞれの主な罪状は以下の通り。

【道路交通法】
・車間距離保持義務違反(第26条):前車との車間距離を必要以上に詰める行為。
・安全運転義務違反(第70条):急な割込みや幅寄せをする行為。
・減光等義務違反(第52条):夜間、他の車両を威圧する目的でハイビームを継続する行為。
・警音器使用制限違反(第54条):執拗にクラクションを鳴らす行為。

【刑法】
・暴行罪(第208条):加害者が被害者にケガを負わせる可能性のある行為。殴ろうとして当たらなくても成立。
・傷害罪(第204条):殴る・蹴るなどして被害者にケガを負わせる行為。
・強要罪(第223条):脅迫・暴行を用いて、被害者に義務のないことを行わせる行為。
【自動車運転行為処罰法】
・危険運転致死傷罪(第2条、第3条):故意に危険な運転をして、人を死傷させる行為。

 前方を走るクルマとの車間距離を詰めることは道交法第26条の定める「車間距離保持義務違反」。極端な幅寄せは同法第70条の「安全運転義務違反」となっている。単にあおるという行為でも、その内容によって違う罪にあたるようだ。また、事故によって相手をケガをさせてしまう恐れのある行為は、刑法の「暴行罪」にあたる。この場合、衝突やケガといった結果が伴わなくても暴行罪となり、慰謝料などを請求することができるそうだ。

 井上氏は「加害者が『殺すぞー!』と暴言を吐いたり。クルマをぶつけようとしたり。殴ろうとしただけでも暴行罪が成立します」という。

 また、相手を殴ってケガを負わせた場合は「傷害罪」になる。

 井上氏「ちなみに常磐道の事件では、被害者の進路をふさぐなどの暴行を加え、停止する義務がないのに車を止めさせたとして強要罪が適用されました。加害者の悪質性を重くみて、暴行罪より刑罰が重い強要罪を適用したのでしょう」

 さらに、危険な運転によって人を負傷させたり、死亡させた場合には「危険運転致死傷罪(妨害目的運転)」になるのだという。いずれの場合も、故意にその行為を行ったかどうかが重要で、ドライブレコーダーなどで故意にあおり運転をしている過程が映っていると立証がしやすいそうだ。

 その他、悪質なあおり運転の常習犯となると、免許停止もしくは免許取り消し処分になることもあるそう。道交法第103条第1項第8号では「自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険生じさせる恐れがある」と判断した者を「危険性帯有者」とし、点数制度における処分に至らない場合でも、最長180日間の免許停止処分になるのだという。

あおり運転に遭わないための対策

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資料を使って丁寧に説明してくれる井上氏。

 つぎに、あおり運転に遭わないためにはどうすればいいか質問すると、以下のような点に気をつけて運転するといいと教えてくれた。

 【あおり運転に遭わないための対策】
 ・追い越し車線を走行する際、追い越しが終わったらすぐに走行車線に戻る。
 ・後方から速いスピードで近づいてくる車がいたら道を譲る。
 ・急ブレーキ、急発進、急な割込みなどで他車を刺激しないように気をつける。
 ・制限速度を大きく下回る速度で運転をしない。

あおり運転に遭ったときの対処法

 しかし、それでも危険な運転をするドライバーに遭遇してしまった場合には以下のような対処をするといいそうだ。

 【あおり運転に遭ったときの対処法】
 ・SA・PAの駐車場など、交通事故に遭わない場所に避難する。
 ・安全な場所に避難したら、警察に通報する。
 ・クルマの窓を閉め、ドアロックをかけて車外に出ない。
 ・携帯電話の録画機能やドライブレコーダーで証拠を録画する。

 井上氏「常磐道の事件のように、相手が車から降りてきた時には、暴行を受けないように絶対に車外に出ないことが重要です。車の中で安全を確保した上で警察に通報して下さい」

あおり運転の立証にはドライブレコーダーが有効

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ドライブレコーダーの動画があると、あおり運転があったことを立証しやすくなるという。

 あおり運転の被害に遭った後は、どこに相談すればいいのだろう。

 井上氏は「まずは警察に相談することが基本です。あおり運転により車同士が衝突したり、加害者から殴られるなどの被害に遭った場合には、警察に相談すればすぐに動いてくれるでしょう。しかし、直接的な被害に遭っていない場合は、警察も動いてくれない可能性があります。その場合は、弁護士に相談することで民事として慰謝料を請求することができます。ただ、どちらの場合でも加害者が否認する可能性があるので、ドライブレコーダーや携帯電話などの動画の証拠が必要です。証拠がないと取り合ってもらえない可能性が高いでしょう」という。

 さらに「クルマ同士が衝突した場合、悪質なあおり運転だという証拠が動画で残っていれば過失割合が10:0になる場合もあります。しかし、動画がなければ被害者側にも責任があると判断される場合もあります」と井上氏。

 どうやら、あおり運転の被害に遭っていながら動画などの証拠がないと、自分に非がないことを認めてもらえない可能性が高いようだ。

 井上氏「ドライブレコーダーの動画は、あおり運転を立証する上でかなり重要な証拠になります。むしろ、動画がないと誰も動いてくれないかもしれません」

求められるドライブレコーダーの機能

 あおり運転の被害にあったとき、証拠としてより良いのはどのようなドライブレコーダーなのだろうか。

 井上氏は「前方だけ録画するタイプのドライブレコーダーでは、後方からハイビームで威圧されたり車間距離を詰めてくる様子を確認することができません。また、加害者が車を降りてきてクルマのボディが損傷するほど蹴り上げてきたり、窓から被害者に暴行を加えるケースでも動画に映っていないと立証するのは難しでしょう。前方・後方、さらには車内まで全方向を録画できるドライブレコーダーが証拠を残すのに適しています」という。

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360°録画できるドライブレコーダー「ドラドラまるっと」の撮影イメージ。写真の上半分が前方で下半分が後方を撮影している。追い越し車線を走行するクルマ、後方を走行するクルマも1台で撮影できる。

 確かに、常磐道の事件でも車内の様子が映っていて、被害者が暴行されている様子を確認することができた。もし、あのドライブレコーダーが前方しか映していなかったら、殴られたことを立証するのは難しかったかもしれない。

 ちなみに、井上氏にあおり運転や事故の相談をする被害者の方でも、ドライブレコーダーを設置していない人が多いそうだ。

 井上氏は「ドライブレコーダーの動画が被害者に不利になることはほとんどありません。むしろ動画がないと証明が難しくなるので、弁護士としても皆さんに設置していただきたいです」と話した。

 どんなに周囲の交通状況に配慮して運転しているつもりでも、何かが誰かの気に触ってあおり運転の被害者になる可能性は十分にある。そんな不測の事態に備えて、今や、ドライブレコーダーを設置して自らの運転に落ち度がなかったことを記録しておくことが必須となっている。

関連外部リンク

しまかぜ法律事務所 WEBサイト

ドライブレコーダー「ドラドラまるっと」

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