交通安全・防災 いつ・どこで降るかはどこまでわかる? 予測サービスの現状に迫る【ゲリラ豪雨について調べてみた(2)】

2019年06月12日 01:00 掲載

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JAFメディアワークス IT Media部 日高 保

約1時間前に90%の予測精度を誇るウェザーニューズ社の「ゲリラ雷雨アラーム」とは?

 2008年にゲリラ豪雨の言葉を広めたことが知られている、民間の気象予報事業者であるウェザーニューズ社。同社のiOS用・Android用無料スマホアプリ「ウェザーニュース」では、毎年7月上旬から9月下旬まで、プッシュ通知機能「ゲリラ雷雨アラーム」を提供している。2019年も同じスケジュールで稼働する予定だ。

 同機能ではゲリラ豪雨を90%の確率で予測し、全国平均で59分前までに通知することができているという。ちなみに同社では、ゲリラ豪雨に加えて雷も扱うことから、「ゲリラ雷雨」という言葉を使用している。

(左)「ゲリラ雷雨アラーム」のプッシュ通知画面の一例。(右)ゲリラ豪雨が発生する可能性の高いエリアがわかる「ゲリラ雷雨危険度マップ」。ウェザーニューズ社プレスリリース(2018年8月2日配信)より。

 「ゲリラ雷雨アラーム」を支える要素のひとつのが、突発的・局地的に発生する積乱雲を監視できる高頻度気象レーダー「WITHレーダー」の存在だ。同レーダーは同社が2009年から設置を進めており、現在では全国80か所に設置されている。従来の雨雲レーダーではとらえることのできない、上空2000m以下の対流圏下層の気象現象を観測でき、まだ発達段階にある小さな積乱雲も観測することが可能だ。しかも、半径50kmの範囲を150mメッシュという高分解能と6秒間隔という高頻度を特徴とする。これにより、雨雲の移動速度、移動の仕方(移動方式)、雨の強さなどを詳細に観測できるのである。

 また、独自開発されたAIも重要だ。高解像度で降水分布を解析・予測する短時間予報解析モデルを2018年2月に導入。地形効果による雲の発達や衰弱や雨の移動速度といった、従来は難しかった変化の予測も機械学習によって実用化したという。

従来の雨雲レーダーとWITHレーダーの比較。「積乱雲の卵」が発生し、まだ発達段階のうちから観測できるのがWITHレーダーの強みだ。ウェザーニューズ社プレスリリース(2018年8月2日配信)より。

人の目も有効活用! 全国のゲリラ雷雨防衛隊員が活躍

 さらに、重要なのは最新技術だけではない。2008年の神戸市での都賀川水難事故をきっかけとして、ゲリラ豪雨での被害を少しでも減らしたいという想いから同社が立ち上げたのが「ゲリラ雷雨防衛隊」だ。毎夏に隊員の募集が行われ、隊員はゲリラ雷雨の前兆をとらえたら報告リポートを防衛隊本部に入れ、それをもとにゲリラ豪雨の前兆をいち早くとらえて予報に活かしているのだ。具体的には、以下の4ステップで行われている。

(1)発生の可能性があるエリアの隊員に同社内の防衛隊本部から雲の監視を依頼する"指令"が発令
(2)"指令"を受けた隊員は雲を監視し、怪しい雲を発見次第、リポートを本部に送信
(3)本部では隊員からのリポートを分析し、WITHレーダーや衛星画像など、各種気象観測データと独自のアルゴリズムを組み合わせて解析
(4)本部がゲリラ豪雨発生の可能性が高まったと判断した場合、「ゲリラ雷雨アラーム」登録者に対してゲリラ豪雨発生を通達

 WITHレーダーやAIだけでは、ゲリラ豪雨を降らす積乱雲が発生する場所や時間は大まかな予想しかできない。「あと1時間以内に東京都新宿区で発生する」といった5~10km単位で1時間後の予測を行うには、急発達する積乱雲をリアルタイムかつ詳細に把握する必要がある。それが、人の目を通すことができれば、「積乱雲の卵」の段階の雲からとらえることができるため、同社では「非常に有効な手段」として隊員を毎年募集、人材活用しているのだ。人的ネットワークを活用した、独創的な仕組みといえるだろう。