2019年12月03日 10:50 掲載

旧車 吉田 匠の
『スポーツ&クラシックカー研究所』
Vol.01
ポルシェ911のご先祖様、「356」の話。

モータージャーナリストの吉田 匠が、古今東西のスポーツカーとクラシックカーについて解説する新連載。第1回は、ポルシェ最初のスポーツカー、ポルシェ356について。

文・吉田 匠

最初のポルシェである356ナンバーワンロードスターは1948年、オーストリアのグミュントという山間の小さな街の外れの小屋から生み出された。中央がそのナンバーワンロードスター、後方の人物は、向かって右がフェルディナント・ポルシェ博士、中央がその長男フェリー・ポルシェ、左がボディ設計主任兼チーフデザイナーのエルヴィン・コメンダ。

最初のポルシェである356ナンバーワンロードスターは1948年、オーストリアのグミュントという山間の小さな街の外れの小屋から生み出された。中央がそのナンバーワンロードスター、後方の人物は、向かって右がフェルディナント・ポルシェ博士、中央がその長男フェリー・ポルシェ、左がボディ設計主任兼チーフデザイナーのエルヴィン・コメンダ。

ポルシェ最初のスポーツカー

 皆さん、はじめまして! モータージャーナリストの吉田 匠(よしだ たくみ)です。幼少の頃からクルマ好きで、お盆をステアリングに見立てて回していた当方、1971年に新卒で自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の編集記者になって、この業界の人間に。つまり今から2年後には業界入り50年を迎えるわけで、トシがバレるけど、ま、いいか。(笑)

 自動車は軽四輪から大型車まで、種類を問わず好きだけれど、なかでも特にスポーツカーが子どもの頃から大好きで、その傾向は今も変わらず。もちろん現代のスポーツカーも素晴らしいけれど、自分が青春時代を過ごした1950~70年代の旧いクルマ、いわゆるヒストリックカー、もしくはクラシックカーがとりわけ気になる、今日この頃。そこで今回は、今やスポーツカーの定番とされるポルシェの歴史について、ちょっと書いてみたい。

ナンバーワンロードスターはミドエンジンの2座オープンで、今日のポルシェでいうとボクスターに相当する。

ナンバーワンロードスターはミドエンジンの2座オープンで、今日のポルシェでいうとボクスターに相当する。

 会社の創始者の名前がブランド名になった自動車メーカーは少なくないが、ポルシェもそのひとつ。最初にポルシェ設計事務所なる会社を設立したのは、20世紀の自動車設計者のなかでも最高の天才の一人といわれる、オーストリア生まれのフェルディナント・ポルシェ博士だった。この人はメルセデスや、アウディの前身たるアウトウニオンの大型車やレーシングカーなどを設計した他、後に世界のベストセラーになる小型車、あのフォルクスワーゲン=VWビートルを、第二次世界大戦勃発直前に設計したことで知られる。

 一方、今日まで続くあの911で有名なスポーツカーのポルシェを生み出したのは、その天才フェルディナント・ポルシェの長男、フェリー・ポルシェだった。フェリーが最初のポルシェを誕生させたのは第二次大戦終結から3年後の1948年のこと、ポルシェ設計事務所の第二次大戦中の疎開先だったオーストリア山間のグミュントという小さな街の外れの木造の小屋で、2台のスポーツカーを造り上げた。ポルシェ356ナンバーワンロードスターと、ポルシェ356/2クーペである。

 後にポルシェ最初のスポーツカーの名前として世界中に知られることになるこの「356」という数字は、ポルシェ設計事務所の作品ナンバー、つまり356番目の作品、という意味。僕はそのグミュントの小屋を二度訪れたけれど、いかにもポルシェの誕生の場に相応しい、心が洗われるような清らかな場所だった。

ロードスターと同じく1948年に製作された356/2クーペ。最初は2座、後に2+2座になるクーペボディの後端に水平対向エンジンを搭載するレイアウトは、今もそのまま911に受け継がれている。

ロードスターと同じく1948年に製作された356/2クーペ。最初は2座、後に2+2座になるクーペボディの後端に水平対向エンジンを搭載するレイアウトとスタイリングの基本は、今もそのまま911に受け継がれている。