2019年08月23日 12:10 掲載

旧車 「ギャランGTO」に「ギャランクーペFTO」も!三菱車のイメージを一新させた「コルトギャラン」とその仲間たち


タグ:

神林 良輔

"GTカーとして正式に承認されたクルマ"「ギャランGTO」(1970~1976)

 「コルトギャラン」の発売を年末に控えた1969年の秋、第16回東京モーターショーで三菱重工はあるコンセプトカーを出展する。それは、乗用車市場で高まっていたスペシャリティカー志向の顧客を獲得することを目的とした「ギャランクーペGTX-1」だった。精悍で個性的なスタイリングのスポーツカーは大きな反響を得たことから、市場に投入されることとなる。

 そして翌1970年に三菱重工の自動車部門が独立して誕生した三菱自動車(設立時は三菱重工の全株保有だった)はそのプロジェクトを引き継ぎ、同年11月に「ギャランGTO」として発売。GTOとはイタリア語の「Grande Tourismo Omologare(グラン・ツーリスモ・オモロガーレ)」の略で、"GTカーとして正式に承認されたクルマ"という意味である。グレードは「MI」、「MII」、そして最上位で"ミツビシ・レーシング"を意味する「MR」の3種類が用意された。

三菱 ギャランGTO|mitsubishi galant gto

ケニアオレンジのA53C-GR型「ギャランGTO MR」(年式不明)。全長4125×全幅1580×全高1310mm、ホイールベース2420mm、トレッド前1295/後1285。車重980kg。乗車定員5名。排気量1597cc・水冷直列4気筒DOHCエンジン「4G32型」、最高出力125ps/6800rpm、最大トルク14.5kg・m/5000rpm。サスペンション前・独立懸架式スタビライザー付きダブルサポートストラット/後・車軸固定式4枚リーフ。ブレーキ前ディスク/後リーディングトレーリング。最高速度時速200km、0→400m加速16.3秒。「お台場旧車天国2018」にて撮影。

 「ギャランGTO」最大の特徴は、ボディ、エンジン、内装のすべてを新規に設計したこと。「ギャラン」と名はつくが、「コルトギャラン」とは別物としてもいい車種だったのだ。新規設計の要素の中でも、「ギャランクーペGTX-1」で大きな反響があった通りに、スタイリングは人気の大きな要素となった。スタイリングの特徴としては、空力効果のあるファストバックと尻上がりのダックテール、2シータースポーツカー並みの傾斜角度を持ったフロントウインドー、ブラックマスクのフロントグリルと4灯式ヘッドランプなど、いくつものデザイン的な特徴があった。

 また当時の国産車としては画期的な、曲率50インチのサイドウインドーによるタンブルホーム(※3)を採用したことで、室内は高い居住性を実現。低い居住性が当然だったクーペのイメージを変えてみせることに成功したのである。

※3:キャビンのラインがクルマの最大幅の箇所よりも上側で内側に倒れ込んだデザイン

A53C型 三菱 ギャランGTO MI 1971年式|mitsubishi galant gto m1 a53c type 1971 model year

A53C型「ギャランGTO MI」1971年式。ファストバックとは、クーペボディに採用されるルーフからテールまでがつながったデザインのこと。そしてダックテールとは、トランクリッド後端がスポイラーのよう上に跳ね上がっているデザインを意味した。リアスポイラーのような効果を得られることから、空力特性的にも意味のあるデザインだった。「JCCA ニューイヤーズミーティングFinal(2019)」にて撮影。

 エンジンは、「コルトギャランAII」と同「AIIGS」で採用された1499ccの4G31型をボアアップして1597ccとし、真半球型・MS型燃焼室や吸気温水加熱式インテークマニホールドなど新機構を備えた「ニューサターンAIII」(4G32型)を開発。MIにはノーマルの4G32型(最高出力100馬力/最大トルク14.0kg・m)を、MIIには英SU社製ツインキャブレターを装着した「4G32型GS」(最高出力110馬力/最大トルク14.2kg・m)を搭載した。そしてMRには、4G32型GSエンジンをベースに三菱初のDOHC化を行い、そこに仏ソレックス社製ツインキャブレターを加えた「4G32型DOHC」(最高出力125馬力/最大トルク14.5kg・m)が搭載されたのである。

 しかし、年々厳しくなる排気ガス規制に対応できなくなり、「ギャランGTO」は1代限りで1976年に姿を消すことに。ちなみに1990年に登場した、当時の三菱らしいハイテク装備をあふれるスーパー4WDスポーツカー「GTO」はクルマの系統として直接の関係はないが、その名は「ギャランGTO」にちなんだものである。

C-A57型 三菱 ギャランGTO 2000GSR 1975年式|mitsubishi galant gto 2000 gsr c-a57 type 1975 model year

C-A57型「ギャランGTO 2000 GSR」1975年式。1995cc・水冷直列4気筒SOHCエンジン(ツインキャブレター)の「4G52型」(最高出力115ps/6000rpm、最大トルク16.5kg・m/4000rpm)を搭載した、「ギャランGTO」の最終モデル。スペックは全高が1310mmから1335mmに、トレッド前が1295mmから1315mmに、後は1285mmから1300mmと、「MR」よりも背が若干高く、ワイドになった。そして車重も980kgから1040kgとなり、若干ながら車重も増えた。「オートジャンボリー2019」にて撮影。

"新鮮なクーペスタイルのツーリングカー"「ギャランクーペFTO」(1971~1975)

 「ギャランFTO」は「コルトギャラン」から派生したスペシャリティカーの第2弾で、1971年11月から発売が始まった。「ギャランGTO」の弟分的車種で、ターゲットは若者層も含めたパーソナルユース。ちなみにFTOとはイタリア語で「Fresco Tourismo Omologare(フリスコ・ツーリスモ・オモロガーレ)」の略で、"新鮮なクーペスタイルのツーリングカー"という意味を持たせられている。

 「ギャランGTO」があらゆる部分で新規設計だったのに対し、「ギャランクーペFTO」はエンジン、ドライブトレイン、サスペンションなどの主要コンポーネントやボディの一部を「コルトギャラン」から、ドアは「ギャランGTO」から流用して開発された。ボディの特徴はショートホイールベースとワイドトレッド。全長は4mを切る3765mで、ホイールベースは2300mm。それに対してトレッドは前後共に1285mmと、「ギャランGTO」とほぼ変わらなかったのである。

「ギャランクーペFTO SL5」1974年式。当初、排気量1378ccのネプチューンエンジン「4G41型」でスタートしたが、上画像の「SL5」は1973年のマイナーチェンジで登場したモデル。排気ガス規制対策などの関係で、エンジンを載せ替えたモデルで、排気量は1439cc。そのマイナーチェンジでは、外見の変更などは行われなかった。「オートジャンボリー2019」にて撮影。

 またデザイン的な特徴は、リアのスタイリングにも見られた。「ギャランクーペFTO」は2ドアクーペではあるが、ルーフからテールまでがつながったラインのファストバックと、リアウインドーとトランクルームが分かれたノッチバックを組み合わせた独自の「ファストノッチ」スタイルを採用したのである。ファストバックのデザイン上の弱点とされる後方視界の悪さとトランク開口部の制約を解決すること、そしてテール部分が尻下がりになってしまうイメージを取り除くことが目的だった。

三菱 ギャランクーペFTO SL5 1973年式|mitsubishi galant coupe fto sl5 1973 model year

「ギャランクーペFTO SL5」1974年式のリアビュー。ルーフからテールまでつながったファストバック的なラインである一方、トランクルームが用意されていた(リアゲートはない)。全長3765×全幅1580×全高1330mm、ホイールベース2300mm、トレッド前1285/後1285mm。車重820~835kg。乗車定員5名。排気量1439cc・水冷直列4気筒エンジン、最高出力92ps/6300rpm、最大トルク12.5kg・m/4000rpm。サスペンション前・独立懸架式マクファーソン・ストラット/後・固定ダブルリーフ。ブレーキ前ディスク/後リーディングトレーリング。「オートジャンボリー2019」にて撮影。

 発売当初のグレードである「GI」、「GII」、「GIII」には、新開発のネプチューンエンジン「4G41型」が搭載された。1378ccの直列4気筒エンジンで、GIとGIIにはノーマルタイプ(最高出力86ps/最大トルク11.7kg・m)が、そして最上位のGIIIにはツインキャブレター仕様(最高出力95ps/最大トルク12.3kg・m)が搭載された。0→400m加速は、GIとGIIが18.0秒(ふたり乗車時は16.8秒)、GIIIは17.2秒(ふたり乗車時は16.4秒)という性能だった。この後、排気ガス規制対策などのため、マイナーチェンジを行って排気量1439ccと1597ccのエンジンを搭載したモデルが追加された。

A63型 三菱 ギャランクーペFTO 1973年式|mitsubishi galant coupe fto type a63 1973 model year

A63型「ギャランクーペFTO 1600 GSR」1973年式。1973年に追加されたのが、「ギャランGTO」で開発された排気量1597ccのニューサターンAIIIエンジン「4G32型」を搭載した上画像の「1600GSR」だ。オーバーフェンダーが特徴のひとつで、若者の人気を集めた。画像は大型フォグランプを追加してヘッドランプを4灯にしてあり、ラリー仕様と思われる。「オートジャンボリー2019」にて撮影。

 「ギャランクーペFTO」は、1972年に年間生産台数が2万台を超えるなど好調だったが、その後、第1次オイルショックにより失速してしまう。さらに、オーバーフェンダーで若者に人気のあった「1600 GSR」が、保安基準の改正に対応して廃止されるなどの影響もあり、1975年で生産を終了。スペシャリティカーのポジションは、1973年登場の初代「ランサー」のクーペバージョンという位置づけの「ランサーセレステ」にバトンタッチし、歴史の中に籍を移した。1994年に誕生した「FTO」はクルマとしての直接的なつながりはないが、車名は「ギャランクーペFTO」から取られている。

三菱 ランサー セレステ 1600GT 1978年式|mitsubishi lancer celeste 1600 gt 1978 model year

三菱のスペシャリティカーとしての後継モデルである、「ランサー セレステ」(画像は「1600GT」1975年式)。初代ランサーのクーペモデルという位置づけで登場した。セレステとは、ラテン語で「青空」を意味する。「オートジャンボリー2019」にて撮影。


 1960年代の三菱車の主力だった「コルト」シリーズの弱点とされたスタイリングの問題を解決し、一気にモダナイズした初代「コルトギャラン」。そして、そこから派生したスペシャリティクーペである「ギャランGTO」と「ギャランクーペFTO」を紹介した。発売から40年以上が経ち、中には50年近い車種もある中、今でも多くのオーナーに愛されているのが今回の3車種。それが納得できるたたずまいを持ったクルマたちではないだろうか。

【お詫びと訂正】
公開時、エンジン型式の表記に誤りがありましたので、正しい表記に修正いたしました。お詫びして訂正させていただきます。

三菱の旧車関連の記事