2020年03月10日 08:50 掲載

次世代技術 穴が開いても発火しない! 安全なリチウムイオン系バッテリー【第11回二次電池展】

東京ビッグサイトでスマートエネルギーWEEKが開催された。その中で、環境車の性能に大きくかかわるバッテリー関連の製品や技術が集まるのが二次電池展(バッテリージャパン)だ。第11回となった今回は、クギを貫通させても発火しないという、極めて安全性の高いリチウムイオン系バッテリーが注目を集めた。

神林 良輔

穴が開いても海水に浸しても使えるリン酸鉄系リチウムイオン電池

 リチウムイオン電池(LiB)は使い方を誤ると膨張、発熱、そして最悪の事態では発火を招く危険性がある。たとえどんなに高品質であっても、現在の一般的なLiBは破損したら危険だ。中の有害物質が漏れ出てしまうし、発火する危険性も一気に高まるからだ(リチウムは酸素に触れると発火しやすい)。

画像1。TRC高田のリチウム鉄リン系複合酸化物を用いたリチウムイオン電池。穴を開けた上に、海水に浸しても問題なく使えるという驚異的な性能を有する。

画像1。TRC高田のLiBは穴を開けても海水に浸しても安全面で問題なし、そのまま利用可能。その秘密とは?

 ところが、正極の材料の工夫などによって、安全性は大きく変わるという。今回TRC高田(静岡県)が展示したリン酸鉄系の1種であるリチウム鉄リン系複合酸化物LiBは、LiBの常識を打ち破る安全性の高さなどを備えた製品だった(画像1・2、動画1)。

実際にクギで穴を貫通させて海水に浸した実験動画はこちら

 TRC高田では1年前、同社のバッテリーに対して通電したままの状態で太いクギを突き刺すという実験を実施。穴が貫通しても発火することもなく、しかもそのまま通電しているところを披露した。さらに、穴の開いた状態で海水に浸しても、有害物質の流出もない(単に泡が出てくるだけ)。もちろん海水中への漏電というようなこともなく、引き上げたあとでもまだバッテリーとして利用できるという様子が、動画1には収録されている。

動画1。TRC高田が公開中の、同社製LiBに穴を開けて海水に浸してもまだ普通に使えるという実験動画。再生時間2分36秒。

 今回は、その実験で使用した穴の開いた製品を消防署の許可を得て展示会場に持ち込み、ボタンを押すとライトが点灯するディスプレーを設置。1年前のクギ刺し貫通実験以降充電していないが、ライトは点灯した。破損に対する堅牢性だけ出なく、自己放電率の低さも体験できる仕組みになっていた。

 穴が開いても発火・爆発することもなく、電解液が漏れることもなく通常使用が継続できるのは理由がある。穴が開いたそばから、空気に触れる面に膜ができるからだという。それにより、中から有害物質が出てしまうこともないし(もともと酸化鉄は安全性が高い)、二次電池として機能を保持できるのだ。

リチウム鉄リン系複合酸化物タイプの優れた点とは?

 リチウム鉄リン系複合酸化物は、酸化鉄(いわゆるサビ)を用いるため、分子構造的に安定していることが優れた点としてまず挙げられる。耐熱性が高いなどの安全性や、環境保護規格にも対応しているなども特徴だ。

画像2。TRC高田のリチウム鉄リン系複合酸化物を用いたリチウムイオン電池。高い安全性を証明するためのクギ刺し貫通実験で使用された製品。裏側も穴が開いている。

画像2。穴の開いたLiBの裏側。完全に貫通しているのがわかる。

 そして充電回数(耐久性)は、一般的なLiBが約1200~2000回に対して3000回以上(JIS規格で検証)。自己放電率は一般的なものが1か月で5~10%なのに対し、1年で3%以下という低さである。この自己放電率の低さにより、1年前の実験で使用した穴の開いたバッテリーが、今回の出展時にもまだ通電することを可能としたのである。

 TRC高田では日本や中国、台湾、韓国などで特許を取得し、量産体制を構築中。そして、国内においてリチウム鉄リン系複合酸化物バッテリーを用いた家庭用蓄電池を独自に開発。2020年内の発売に向けて準備しているとした。

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