2019年07月22日 12:57 掲載

次世代技術 自動運転はなぜ必要? その理由
新連載「いま、自動車業界でなにが起きているのか」(第1回)


文・大谷達也

自動運転がタクシー会社を救う!?

 現在、タクシー会社、バス会社、運送会社はどこも人手不足にあえいでいます。足りない人手を補うために人件費がかさみ、なかなか利益が確保できないとも聞きます。特別な資格を持たないドライバーがタクシーに似た業務を請け負うウーバーというサービスをご存知でしょうか? 欧米では安くて使い勝手がいいためにすでに広く普及していますが、ウーバーを運営する企業自体は人件費がかさんで赤字だそうです。つまり、ドライバー不足、もしくはその大きな人件費の負担に、世界中のタクシー会社、バス会社、運送会社などは苦しんでいるのです。

 では、ドライバーレスが実現できたらどうでしょう? その車両がどのくらいの価格になるかにもよりますが、タクシー会社、バス会社、運送会社などが抱える問題を一気に解消する可能性を秘めています。そして、それを販売する自動車会社にしてみれば、巨大な市場が誕生するかもしれないのです。

2018年末にアメリカ・アリゾナ州の一部地域限定でウェイモがサービスをスタートさせた自動運転タクシーの紹介動画。

 いま、世界中で自動車離れが叫ばれています。現時点では自動車の世界的な販売台数は伸びていますが、自動車がどこまでも増え続ければ環境問題をさらに深刻化させ、資源問題にも発展しかねません。いつまでも今のような販売台数を継続できるとは限らないのです。そこで自動車メーカーの多くは次世代の市場、それもできれば価格が高く、1台でより大きな儲けの得られる製品の開発に取り組んでいます。ドライバーレスは、まさにその象徴といえるでしょう。

 それだけに、他業種からの参入が相次ぐとも予想されています。しかも、ドライバーレスの実現に欠かせないコンピューターやソフトウェア開発などを担ってきたIT産業は、スマホを見てもわかるとおり、1年に1回のペースで新製品を投入できる開発スピードを持っています。これは、6〜7年に一度フルモデルチェンジを行う自動車産業とは大きく異なるもので、自動車産業界は彼らを一面で脅威と捉えています。

 それゆえに、自動運転に関するさまざまなノウハウを有しているウェイモと独占契約を結び、その事業化に向けた検討を行おうとルノーならびに日産自動車は考えたのでしょう。

 さらに自動運転は電動化技術やネット接続技術などとも関連していくのですが、そういったお話しは次回以降でご紹介することにしましょう。

大谷達也(TATSUYA OTANI)
大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2019-2020 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。