次世代技術 スーパーカーも軽自動車も! 高剛性ボディの今:ホンダ編【クルマ解体新書】

クルマの構造をわかりやすく解説するシリーズ紹介する【クルマ解体新書】。しっかりとした基本骨格(フレーム)があって初めてエンジンも性能を発揮できるし、操縦安定性も増す。また衝突安全性能においても基本骨格は重要だ。今回はホンダ車の「高剛性ボディ」をお届けする。

2019年06月20日 01:00 掲載

JAFメディアワークス IT Media部 日高 保

ホンダ NSX 基本骨格|honda nsx frame

2代目「NSX」の基本骨格。複数の素材を用いたスペースフレーム構造だ。

 衝突安全性能において基本骨格の役割は、「生存空間の確保」と「乗員のダメージの低減」だ。前者はキャビンの変形を抑制することで乗員が押しつぶされずに守られることを意味し、後者は衝突エネルギーを基本骨格がいかに吸収し、乗員のダメージとならないようにするかを意味する。

 しかしこのふたつは、実は相反する関係だ。生存空間の確保を重視して基本骨格が変形しないようにすると、衝撃を吸収しづらくなるために乗員のダメージを低減できなくなってしまう。逆にダメージを低減させるべく基本骨格を変形しやすくして衝撃を吸収しやすくすると、今度は生存空間の確保が難しくなってくるのである。

 その相反する要素を高次元で両立させるためにホンダが1998年に発表した技術が、衝突時の衝撃(G Force)を制御するというコンセプトの技術「G-CON」だ。キャビンの変形を抑制して生存空間を確保しつつも、乗員への衝撃の伝わり方を緩やかにすることで、傷害値を低減できるようにしたのである。G-CONは常に研究が進められており、発売時期が新しい車種ほどG-CONも進化している。

 またG-CONはホンダの全車種に採用されているわけではなく、現行25車種(※1)のうち、16車種に採用されており、そのラインナップは以下の通りだ。今回は、G-CON搭載車として★のついている車種を、技術の進展がわかるように発売開始時期が古いものから紹介する。

【軽自動車】
●N-BOX★、N-BOX SLASH、N-ONE、N-VAN★、N-WGN、S660

【セダン】
●アコード、グレイス、レジェンド★

【ミニバン】
●オデッセイ★、ステップ ワゴン、フリード★

【ステーションワゴン】
●ジェイド、シャトル

【コンパクトカー】
●フィット★

【SUV】
●ヴェゼル★

※1 現行25車種とは、商用車「アクティ トラック」も加えた車種数(特装車などは含めていない)。「フィット」と「フィット ハイブリッド」などは同一車種とみなしている。

コンパクトカー・3代目「フィット」は補強材で剛性をアップ

ホンダ フィット 3代目 2018年式|honda fit 3rd 2018 model year

2013年9月発売の3代目「フィット」。今回取り上げた「G-CON」採用現行車種の中では、発売して最も時間が経つ。

 初代「フィット」は、ホンダの物作りの根幹をなすM・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想(※2)を徹底させて、同社独自のセンタータンクレイアウトを採用。それにより、コンパクトカーとしては従来にない車内空間を実現した。2001年6月に初代が誕生し、2007年10月の2代目を経て、現行の3代目は2013年9月に登場した。

※2 M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想:ホンダ黎明期からクルマ作りに投影されている基本コンセプト。人のための空間は大きく、メカは小さくという意味。

3代目「フィット」の基本骨格。

 3代目「フィット」では、ハンドリングと乗り心地の質感向上の徹底追求がなされ、ボディの各所に補強材を追加し、ボディ剛性の向上が図られた。

3代目「フィット」の基本骨格における補強部分(青い部分)。基本骨格の各所に補強材(スティフナー)を追加し、ボディ剛性をアップさせている。3代目「フィット」プレスインフォメーションより。

剛性の確保が難しいミニバンで取られた剛性アップの手法とは? 5代目「オデッセイ」(2013年11月発売)

ホンダ オデッセイ 5代目 2018年式|honda odyssey 5th 2018 model year

ホンダの上級ミニバン、5代目「オデッセイ」2018年式。ホンダウェルカムプラザ青山にて撮影。

 ホンダのミニバンを代表する「オデッセイ」。現行車種の5代目は2013年11月の発売で、3代目「フィット」とは数か月違いで誕生した。

5代目「オデッセイ」の基本骨格。「オデッセイ」プレスインフォメーションより。

 ミニバンは車内空間が広いため、剛性を確保するのが難しい車種である。そこでホンダでは、前後のサスペンション、センターピラー、リアサイドパネルなどの周辺の強化を図ることで、大柄な「オデッセイ」の剛性を向上させた。

(左)フロントサスペンション周辺。フロントサブフレームとの結合部周辺が強化され、左右方向の剛性が向上している。(右)センターピラー(Bピラー)周辺。センターピラーとフロアフレームの結合部を強化することで、剛性が向上している。「オデッセイ」プレスインフォメーションより。

(左)リアサスペンション周辺。リアフロアとリアサイドパネルの結合部を強化することで、剛性の向上が図られている。(右)リアサイドパネル周辺。フロアフレームとリアサイドパネルの結合部を中心とした強化が行われ、ねじり剛性が向上している。「オデッセイ」プレスインフォメーションより。

 基本骨格を構成する高張力鋼板(ハイテン材)の種類と割合も注目だ。5代目「オデッセイ」は2013年11月発売のため、1500MPa(メガパスカル)級の引っ張り強度を持つ超高張力鋼板(ホットスタンプ材)が未採用であることがわかる。

5代目「オデッセイ」における、各高張力鋼板の配置イメージ。「オデッセイ」プレスインフォメーションより。

1500MPa級・超高張力鋼板を採用! クロスオーバーSUV・初代「ヴェゼル」(2013年12月発売)

2013年12月発売のクロスオーバーSUV・初代「ヴェゼル」2018年式。ホンダウェルカムプラザ青山にて撮影。

 クロスオーバーSUV「ヴェゼル」の基本骨格の製造で特徴となっているのが、先に基本骨格を組み立ててから、外板パネルを溶接する「インナーフレーム構造(高効率継ぎ手)」を採用していること。同構造の利点は、継ぎ手部分の立体断面を確保したまま溶接することで、高い剛性を確保できるということがひとつ。さらに、補強のためのガセット(補強用部材の一種)やボルトが不要となるため、軽量化も実現できるということもメリットのひとつだ。

赤い点線で囲まれたところが、「ヴェゼル」のインナーフレーム構造を適用した箇所。「ヴェゼル」のプレスインフォメーションより。

 上で紹介した5代目「オデッセイ」は2013年11月1日に発売され、1500MPa級・超高張力鋼板は未採用だった。そして、同年12月20日に発売された「ヴェゼル」では、全体の1%ながら1500MPa級が採用された。およそ1か月半の差なのだが、まさに高剛性ボディに関する日進月歩が見て取れるのである。

基本骨格に採用されている高張力鋼板の種類と割合。左上は基本骨格を上側から、下は下側から見たもの。「ヴェゼル」のプレスインフォメーションより。

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続いては2015年の5代目「レジェンド」と2016年の2代目「フリード」

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