次世代技術 路線バスで世界初となる「ドライバー異常時対応システム」を実際に体験! 国産初のハイブリッド連節バス発表会レポート

 いすゞ自動車と日野自動車が、2017年より共同で開発を進めてきた国産初のハイブリッド連節バス。このたび、バス製造会社であるジェイ・バス株式会社の宇都宮工場で報道発表が行われた。異常時の制御システムも備えた最新鋭の路線バスとは。

2019年06月04日 00:04 掲載

JAFメディアワークス IT Media部 大坂 晃典

いすゞ自動車と日野自動車が共同で開発を進めてきたハイブリッド連節バス。すでに街中で走っている連節バスもあるが、それらはいずれも海外製。メンテナンスやパーツの取り寄せなど、海外製ならではの課題もあり国産の製品が求められてきた。

2大メーカーが共同で開発

 いすゞ自動車と日野自動車が共同で発表したのは、環境負荷低減に寄与しながら、安全かつ効率的な大量輸送を実現するハイブリッド連節バス。このバスはハイブリッドというだけでなく、最新の高度運転支援技術・ITS技術が備えられている。具体的には、路線バスで世界初となる「ドライバー異常時対応システム」と、次世代都市交通システムでの活用を想定した「プラットホーム正着制御」といったものだ。このたびの発表会では、この2つの技術が実走にて披露された。

路線バスでは世界初! ドライバー異常時対応システム

 「ドライバー異常時対応システム(EDSS:Emergency Driving Stop System)」とは、ドライバーに急病などの異常が発生した際、乗客や乗務員が非常ブレーキスイッチを押すことでバスが安全に減速し、自動停止するというシステム。路線バスでは世界初搭載とのことで、国土交通省が策定した「ドライバー異常時対応システム」の技術指針に準拠している。路線バスは満車時に立って乗車している人がいることも想定しなければならず、危険を避けるための急ブレーキにもリスクが伴う。そういった点も考慮しつつ、異常時にも車両が円滑に止まるようになっているという。

ドライバー異常時対応システムを体感!

 発表会では、実際にバスに乗車した状態でこのシステムを体感することができた。いずれも非常ブレーキボタンが押されることで作動するのだが、以下の3つのパターンを体験することができた。

1.ドライバーがボタンを押す

運転席の右下にある非常ブレーキボタン。ドライバーが運転席で押すことができるようになっている。

 まずは、ドライバーが非常ブレーキボタンを押すことで緊急停止するデモンストレーションを体験した。時速40kmまでスピードを上げた状態でドライバーにより非常ボタンが押される。すると、車内には非常時を知らせる警報音が鳴り始め、次第にスピードが低下。バスが止まりそうになると、外に向けてクラクションが断続的に鳴って周囲に非常事態を知らせる。

 上記の説明では、いかにも緊急事態といった危機感いっぱいの状況を想定してしまうかもしれないが、大きなGを感じることもなかった。車内の警報音に続いてクラクションが鳴り響くことを除けば、体感的には信号で停止をするのと変わらない感覚だった。

ドライバー異常時対応システムが作動する様子を連節バスの接続部分から撮影。時速40kmまで加速し10秒過ぎのあたりで非常ボタンが押されると、12秒過ぎから車内には警報音が鳴り始め自動停止した。

【音量注意】ドライバー異常時対応システムが作動する様子を外から見た動画。車外に異常を知らせるためにクラクションが鳴り響く。

2.ドライバーの異変を察知した乗客がボタンを押す

非常ブレーキボタンは乗客も押せるようになっており、運転席のすぐ後ろの柱(写真左)と、車両連節部分にそれぞれ設置されている。

 2も非常停止するという意味では1と同じ状況であるため、バスの動きは1と同様であった。

3.間違えて押されたボタンをドライバーがキャンセルする
 ドライバーもしくは乗客が誤作動やいたずらなどで非常ブレーキボタンを押してしまった場合、ドライバーが緊急停止をキャンセルすることができる。

 このデモ走行では、ボタンを押された直後に警報音が鳴るものの、動作がキャンセルされるため通常の運転に戻る。乗客としては一瞬だけ警報音が鳴って驚くかもしれないが、わずかな減速の後に通常運転に戻るため、身構えるようなことはなかった。

一度押された非常ブレーキボタンがキャンセルされる様子を撮影。一瞬警告音が鳴るものの、思ったよりも早く音も止んで通常走行に戻った。

プラットホーム正着制御

 もうひとつ、この日に実際に見ることができたのが「プラットホーム正着制御」。次世代都市交通システム(ART:Advanced Rapid Transit)での活用を想定した連節バス用のITS技術だ。具体的には、バス本体が路面上の誘導線をカメラで認識。自動操舵、自動減速により車体をバス停へ誘導することで運転操作を支援する。

道路に点線状にマークされているのが正着制御用の誘導線。このラインに従ってバスが自動的にバス停まで誘導される。

ITS技術を活用したプラットホーム正着制御を外から見たところ。

この日のシミュレーションでは、誘導線がテープで仮に貼られたものだったため、最初のうちはうまく作動をしないトラブルもあったが、最終的には人の操作では難しいほどの的確な位置に停止することに成功した。

停車位置とバス本体はわずか数センチのところまで接している。人の運転操作でここまで細かい位置決めができるようになるには、相当の習熟を要するとのことだ。

その他の特長

大量輸送能力
定員120名という大量輸送能力を備え、乗客の利便性と輸送効率向上に貢献する。※仕様により変更あり

乗降性・バリアフリー
前車室はフルフラットとし後車室もノンステップエリアを広く確保。連節バスとして最適なシートレイアウトにより、乗客の利便性と快適性を実現している。

ハイブリッドシステム
小排気量でありながら十分な高出力・高トルクを発揮するA09Cエンジンを採用。ハイブリッドシステムとAMTの協調制御による変速の最適化を図っている。また、エンジンとモーターの間にクラッチを配置することでエネルギー回生効率が向上。モーターのみによる発進を可能にし、省燃費と環境性能を追求している。

協調型車間距離維持支援システム(CACC)
車車間通信でACCの精度をさらに上げたシステム。自車の加減速情報を周囲のCACC対応車に通信することで、よりリアルタイムな車間制御が可能。たとえば、CACC対応の前走車がブレーキを踏むと、その情報が通信で送られ、前走車の実際の減速挙動より早く自車は車間制御に入ることができる。※自動車専用道路での使用が前提

衝突警報
ミリ波レーダーにより障害物および前走車を検知し、衝突の危険性がある場合はディスプレイ表示や警報音でドライバーに警告する。

路車間通信・車車間通信
バスの走行特性に対応した路車間通信(ITS専用周波数)による安全支援(赤信号注意喚起、赤信号減速支援、右折時注意喚起、信号待ち発進準備案内)。バス優先の信号制御を行う高度化PTPS(公共車両優先システム:Public Transportation Priority System)に対応。車群走行時には、車車間通信も活用し車群の構成や台数を把握し、車群単位での信号通過やバス停発車を支援する機能も備え、輸送力や速達性・定時性の向上に貢献する。 ※高度化PTPSを含む車群走行に対応したシステムは、トヨタ自動車も含めた3社共同開発

視覚支援カメラシステム
車両内外にカメラを設置、ドライバーはモニターで監視できる。車外に設置したカメラは、車両停止時に車両周辺の移動物を検知し、ドライバーにアイコンの点滅と音で警報を行う。

 いすゞと日野の両社はこの発表を踏まえ、翌週の5/27にさっそく連節バスの新製品を発表した。いすゞからは「エルガデュオ」の名称、日野からは「日野ブルーリボン ハイブリッド連節バス」の名称でそれぞれ発売される。今後、街中でこれらの車両に出会う機会もそう遠くはなさそうだ。