ニュース・プラス 海洋のマイクロプラスチック汚染問題、発生原因はやはり人の生活にあり! 東京理科大と愛媛大、調査結果を発表

2018年11月15日 16:29 掲載

181114-01-01.jpg

人々の生活で排出されたマイクロプラスチックが河川を通って海洋を汚染している。マイクロプラスチックの海洋汚染問題に関する大規模な調査が日本でも行われた。※画像はイメージです。

 近年、海洋におけるマイクロプラスチック(以下、MP)汚染が世界的な問題となっている。MPは0.3~5mm程度の微細なプラスチック片のことをいい、海中で有害物質を高濃度に吸着してしまうという特徴を持つ。それを魚介類などが摂取してしまうことによる、海洋生態系の汚染因子として危惧されているのだ。

 有害物質が食物連鎖に取り込まれてしまえば、最終的には汚染された魚介類を人が食べてしまう(食べてしまっている)可能性もある。今のところ、人の健康被害の直接的な証拠はないとされるものの、内分泌攪乱物質(環境ホルモン)など、長い時間をかけて人類にダメージを与える可能性がある有害物質の存在も指摘されている。

 非常に重要な問題であることから、地球規模での対策も始まっている。2018年6月にはカナダ・シャルルボワで開催された先進7か国首脳会議(G7サミット)では、参加国すべてが海洋環境の保全に関する「健全な海洋及び強靱な沿岸部コミュニティのためのシャルルボワ・ブループリント」を承認。「海洋の知識を知識を向上し、持続可能な海洋と漁業を促進し、強靱な沿岸及び沿岸コミュニティを支援し、海洋のプラスチック廃棄物や海洋ごみに対処」するとしている。また、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの5か国とEUは、自国でのプラスチック規制強化を進める「海洋プラスチック憲章」に署名している。しかし米国に加え、日本も同憲章には残念ながら署名していない。

日本近海は「MPのホットスポット」!

 MPに話を戻すと、その汚染状況は地域差が大きい。ゆゆしきことに日本近海はMP汚染濃度が高く、なんと世界平均の約27倍にもなる3.74個/立方m(※1)となっている。高濃度に集積した「MPのホットスポット」といわれる状態だ。

※1 MP濃度:その水域の水量1立方mあたりのMPの個数またはMPの合計質量で表される

181114-01-04.jpg

河川から採取されたMP。我々の生活に身近な素材の多くがMPになっている。生物が分解できないため、現在ではナノスケールのプラスチックもその有毒性が取りざたされている。

 MPは、人々の活動において発生したプラスチックごみが河川を介して海洋に流出することで発生している。しかし、現時点では日本国内の河川におけるMP調査は限定的で、国内河川のMP汚染実態が明確ではなかった。

 そうした中、東京理科大学理工学部土木工学科の二瓶泰雄教授および片岡智哉助教、そして愛媛大学工学部環境建設工学科の日向博文教授らが共同で、日本全国の29河川36地点において世界でも類を見ない大規模調査を実施。その結果が、国際学術雑誌「Environmental Pollution」に10月29日付けで掲載された。

MPが検出されたのは29河川中の26河川!

181114-01-03.jpg

調査河川と地点をプロットした図(a)。(b)は沖縄地方。1か所調査されている。関東地方の(c)と九州地方(d)の拡大図が右。

 まずMPが検出された河川数と地点数だが、26河川31地点(約86%)。今回の調査点におけるMP濃度の平均値は1.6個/立方mだった。日本近海の平均MP濃度の約半分ではあるが、それでも世界平均から見れば遥かに高い値である。最もMP濃度が高かった河川は千葉県の大堀川で、MP濃度12個/立方mだった。

 次に共同研究グループは、調査点によってMP濃度が異なることから、その理由を明らかにするため、調査点より上流の河川流域の情報として人口密度、市街地率(※2)を比較。すると、MP濃度と両者には有意な正の相関関係があることが判明した。さらに、MP調査点近傍で測定された公共水域水質測定結果の年平均値との比較なども行われた。その結果、生物化学的酸素要求量(※3)などと有意な関係があることも判明。

※2 市街地率:MP観測点より上流域における市街地の面積割合
※3 生物化学的酸素要求量:代表的な河川汚濁指標で、BOD(Biochemical oxygen demand)と略語が使われることが多い。河川に生息する微生物が有機物を分解する際に消費する酸素量のことで、数値が高いほど汚濁が進行していることを意味する。別記事『国交省による2017年度河川水質調査で「水質が最も良好な河川」となったのはこの16本。12年連続で評価されたあの有名河川も!』に詳しい。

 これらの結果から、市街地化して人の活動が活発な地域を流れる汚濁河川ほどMP濃度が高くなるという、推測が事実として確認された。人の活動と河川および海洋のMP汚染は確実に関係していることが判明したのである。

181114-01-02.jpg

人の活動が増えれば増えるほど、川の汚濁が進むと同時にMPの量も増えていくことが判明した。

MPの河川や海洋の汚染を防ぐには?

 共同研究グループの見解として、今回の調査結果から海洋のMP汚染問題の解決には、MPおよびプラスチックごみの削減対策をよりいっそう実施していくことが重要としている。

 プラスチックは現代社会を支える非常に便利な素材だが、生物によって分解されないことが問題だ。では、生物分解性の素材に置き換えることができれば、MPの海洋汚染問題を解消できるのだろうか。片岡助教に話を伺ってみた。

 「専門外なので明確なことは回答できませんが、生物分解性の素材が有害な物質を含まず、すべて分解されるのであれば、MP汚染の負荷軽減に一定の効果があるのではないでしょうか。ただし、普及させるにしても、まずは現状のMP汚染の状況を踏まえた環境影響評価が必要だと思います」という回答を得た。

 また日本近海のMP汚染濃度が世界平均の27倍という状況に対し、日本国内に原因があるのかということも質問してみた。

 「国内起源と他国起源のどちらのMPの影響が大きいのかは現状では不明です。今後、国内河川からのMP輸送量(※4)を明らかにすることで、国内起源の影響を明らかにしていきたいと思っています」とのことだった。ちなみに2010年の推計で陸上から海洋に流出したプラスチックごみの発生量は、日本は世界で30位の年間6万トンだ(※5)。

※4 MP輸送量:河川によって一定の時間あたりに運ばれるMP数、またはMP質量のこと
※5 出典は、 Jambeckらによる「Plastic waste inputs from land into the ocean, Science (2015) 」。それを基に環境省が2018年7月に発表した「海洋プラスチック問題について」に記載されたランキングを参考にした。同ランキングの上位は、1位が353万トンの中国、2位は129万トンのインドネシア、3位は75万トンのフィリピン、4位は73万トンベトナムとアジア勢が占める。

 片岡助教らは、国内河川から海洋に流出するMP輸送量を明らかにするための調査をすでに開始している。河川の洪水時におけるMP濃度の計測と、河川横断面におけるMP濃度の分布計測を行っているという。片岡助教によれば、国内河川での観測をさらに進めて、来年度末までに結果を発表したいとしている。

2018年11月15日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

河川環境に関する関連記事