2018年11月16日 01:00 掲載

ニュース・プラス CO2排出量がゼロに加え、NOx排出量も都市ガスバーナー以下! トヨタ、新開発の「水素バーナー」を本社工場に導入


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今回本社工場の鍛造ラインに導入された新開発の水素バーナーで採用した新機構の1つ。まず少量の水素を酸素と燃焼させる"予燃焼"を行い、酸素濃度を主燃焼させる際の適正値である19%にまで下げるのである。

 トヨタは「トヨタ環境チャレンジ2050」を2015年10月に発表し、その当面の実行計画として第6次「トヨタ環境取組プラン」を策定。2016年から2020年までの5か年計画で取り組んでいる。「トヨタ環境チャレンジ2050」とは、現在の地球が抱える気候変動や資源枯渇などの大きな問題に対し、クルマの持つマイナス要因を限りなくゼロに近づけると同時に、社会にプラスをもたらすことを目指すものだ。「もっといいクルマ」、「もっといいものづくり」、「いい町・いい社会」の3つの領域において、合計6つのチャレンジを行うというものである。

 6つのチャレンジの3つめとして設定されているのが、「工場CO2ゼロチャレンジ」だ。2050年に世界規模で工場のCO2排出量をゼロにするというものである。当面の主な取り組みや目標が5つ掲げられており、その中には新工場と新生産ラインにおいて、クルマの生産1台あたりのCO2排出量を、2001年比で2020年に約半減、2030年に約1/3へ削減というものがある。さらに、再生可能エネルギーと水素の利用により2050年にCO2排出ゼロとする。それに加えて工場での水素利用技術の開発を進め、2020年頃にFCV生産ラインで導入に向けた実証を開始するというものもある。

 これらの目標を実現するため、中外炉工業株式会社の協力を得て今回トヨタが新開発したのが、水素を燃料とするバーナー(以下「新型水素バーナー」)だ。「新型水素バーナー」は、世界初(※1)の工業利用を目的とした汎用バーナーとして、11月8日より本社工場鍛造ラインに導入されたことが発表された。

※1 トヨタの調査による2018年11月8日時点でのもの

新型水素バーナー実用化までの壁

 水素バーナーは、酸素(実際に送り込まれるのは空気)と反応させて水素を燃焼させることで火炎を作り出す。しかし水素が酸素と完全に混合した状態で着火すると、激しく燃焼してしまうことで火炎温度が高温になってしまう。そのため、これまでに開発されてきた水素バーナーでは送り込まれた空気中の窒素と酸素が結びついたNOx(窒素酸化物)が多く生成されてしまうという問題があった。そのため、これまで水素バーナーは実用化が困難とされてきたのである。

 それに対し、新型水素バーナーは2つの新機構を導入することで実用化を達成した。新型水素バーナーはCO2の排出量がゼロなのは当然だが、NOxの排出量は同規模の都市ガスバーナー以下とした(※2)。従来の水素バナーと比較した場合のNOx排出量は約1/5になるという。

※2 具体的な数値は未公表

新型水素バーナーの仕組みを解説したトヨタ公式動画。

火炎温度を下げるために採用された2つの新機構

 激しく燃焼してしまうことで火炎温度が高温になるのを防ぐため、新型水素バーナーでは噴出口の構造を工夫し、水素と酸素が混ざらないようにする構造が採用された。水素と酸素をバーナー内で並行に流すようにし、完全に混合しない状態でゆっくりと燃焼させ、火炎温度を下げるようにしたのである。

 そしてもう1つの新機構が、酸素濃度を下げることで火炎温度を下げるという仕組みだ。バーナー内に水素を供給するパイプの中腹に小さな穴を空け、少量の水素と酸素をあらかじめ燃焼させる"予燃焼"を行う構造としたのである。

 通常、空気中の成分として酸素の割合は約21%である(残りの大部分が窒素)。予燃焼を行って19%という適正な酸素濃度にまで下げた状態で主燃焼を始めるようにし、火炎温度を下げることに成功した。

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従来と新型(右)の水素バーナーの噴出口の構造比較。新型は燃焼しすぎないよう、水素と酸素が混ざらないように噴出させる構造となっている。

全工場1000台以上の都市ガスバーナーから置き換えることは可能

 トヨタ国内工場では現在、都市ガスバーナーが1000台以上導入されている。新型水素バーナーは導入費用に関しては未公表だが、性能的に都市ガスバーナーと何ら差がないため、1000台以上をすべて置き換えることも可能としている。今後は、水素供給のためのインフラが整った工場から、都市ガスバーナーを新型水素バーナーに順次置き換えていく予定だ。さらにはグループ会社内での導入も検討中としている。

2018年11月12日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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