2019年11月13日 09:40 掲載

クルマ 寒いと軽油が凍るって本当?
意外と知らない寒冷地仕様の軽油に迫る。

ディーゼル車の燃料として使われる軽油は、5種類に分類され、季節や地域に合わせて販売されているのをご存知だろうか。都内で満タンにしてから気温の低い駐車場などに停めておくと、タンク内の軽油が冷えてエンジンがかからなくなることもある。ディーゼル車でスキー場へ行く場合などには注意が必要だ。

JAFメディアワークス IT Media部 大坂 晃典

軽油は寒いと凍る? 寒冷地仕様の軽油を知ろう。

そもそもガソリンと軽油の違いって?

 ガソリンは寒冷地でも問題なく使用できるが、軽油を気温の低い場所に放置しておくとシャーベット状に凍結してしまうことがある。両者の違いはどこにあるのだろうか。それを知るためには、まずガソリンと軽油の違いを知っておく必要がある。

 ガソリンも軽油も元々は同じ石油から製造されている。製法も同様で、いずれも原油を加熱して蒸留することで製造される。蒸留とは、原料を加熱、蒸発させ、その蒸発した物質を集めることで製品を製造すること。この蒸留において、ガソリンと軽油の違いは蒸留の温度。ガソリンは原油を熱していった際に、17度から220度の間で採取して作られる。これに対して、軽油は140度から400度で採取される。

軽油が低温に弱いのはなぜ?

 蒸留温度の違いは、石油製品の特性にも表れる。わかりやすく説明すると、低い温度でも蒸発する「ガソリン」は、常温でも火種が近くにあれば引火するという特性がある。これに対して高温で蒸留する「軽油」は、低温では着火しにくいという特性で、その分だけ低温で凍りやすく、氷点下の環境などでは徐々に粘度が増し、次第に固まってしまうのだ。

ガソリンと軽油の違い。最も大きな違いは採取する際の温度。

ガソリンと軽油の違い。最も大きな違いは採取する際の温度で、これによって特性が大きく変わる。

季節ごとに売り分けられている軽油

 軽油は5種類に分けられており、地域・季節に適合した製品が供給されている。冬でも温かい沖縄では年間を通して「特1号」を販売。逆に夏と冬の寒暖差が激しい北海道では、5種類の軽油の中から気温に最も適したものを月ごとに変えて販売しているエリアもある。

軽油の要求品質:軽油は5種類に分けて供給されている。

軽油は「特1号」から「特3号」までの5種類に分けられている。出所:JIS規格(抜粋)

 どの地域でどの種類の軽油が販売されているかは、JIS(日本産業規格)の解説に収録されているガイドラインが基準となっている。このガイドラインを見ると、日本全国を通して真夏には「特1号」が販売され、北海道をはじめとする寒冷地では冬になると「3号」もしくは「特3号」が販売されているのがわかる。

JIS(日本産業規格)によって定められている軽油使用ガイドライン

JISによって定められた軽油使用ガイドラインは、過去の気象データを基に作成されているとのこと。出所:JIS K 2204解説(抜粋)

 寒冷地以外のエリアでは、真冬でも「2号」の軽油が販売されているケースがほとんど。これを知らないで「2号」の軽油を満タンにして出発した後、寒冷地で長時間駐車してしまうとエンジンがかかりにくくなる恐れがある。寒冷地以外のエリアからディーゼル車でスキー場などに向かう場合には、現地に到着するまでに必要な量だけ給油しておいて、寒冷地用の「3号」もしくは「特3号」が販売されているエリアで満タンにした方がいい。

 ここまでで「軽油は寒さに弱いため、寒くなると寒冷地用の軽油が販売されているということはわかった。しかし、いくつかの疑問が湧いてきたので、石油連盟の広報室に話をうかがってきた。

【疑問1】軽油が冷えると具体的にはどうなるの?

 まずは「軽油が凍る」という状態について。「凍る」と言ってしまうと、カチカチに固まってしまうイメージをしがちだが、実際にはタンク内で凍結することはほとんどなく、粘度が高まってドロリとした状態になるというイメージだという。また、軽油にはさまざまな成分が含まれており、中でもパラフィンと呼ばれる蝋の成分が祈出すると燃料フィルターで目詰まりを起こしてしまい、エンジンに燃料が供給されなくなってしまうのだ。

 寒冷地で発売されている軽油は、気温が低い状態でもパラフィンが固まらないよう、添加剤などを加えて固まりにくくしている。また、最も寒い地域で販売される「特3」は、マイナス30度でも軽油自体の流動性が保てるように成分が調整されている。

【疑問2】なぜ寒冷地仕様の軽油があるの?

 ならば季節に関わらず、すべての軽油を固まらない「3号」もしくは「特3」の仕様にして販売すればいいのでは? そうすれば寒冷地以外のユーザーも安心だし、寒くなる前に給油してしばらく動かしていなくても大丈夫そうだ。なぜそうしないのだろうか。だが、こちらに関しての答えは簡単で、製造にかかるコストが主な理由だとのこと。「3号」もしくは「特3」が不要なエリアの分までコストをかけて製造する必然がないため、季節やエリアによって5種類の売り分けを行い、供給価格の上昇を抑えているということだった。

 では、寒冷地仕様の軽油「3号」もしくは「特3」が販売されるのは、全国のどのあたりからなのだろうか? NEXCO3社の協力を得て、全国の高速道路上で「3号」もしくは「特3」が販売されるガソリンスタンドの分布図の最新版を紹介すべく現在、準備を進めている。こちらは、11月下旬には詳細がまとまる予定なので別記事にして紹介していきたい。

【お詫びと訂正】公開時、一部「軽油」の表記と「JIS」の略称に誤りがありましたので、正しい表記に修正いたしました。お詫びして訂正させていただきます。