2018年12月27日 01:32 掲載

ライフスタイル マーケティングなんてウンザリだ! 目利きは人生を豊かにする。ヒット商品を生み出すための人生訓とは【魂の技術屋、立花啓毅のウィークリーコラム1】

マツダ ユーノスロードスター(1989)、RX-7(1985)などの開発者として知られる立花啓毅氏。立花氏は、人が豊かに楽しく生活するには、「審美眼」が欠かせないという。その心とは。技術者ならではの魂の叫びをお届けする。

JAFメディアワークス IT Media部 伊東 真一

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写真はイメージです

かつてマツダ(東洋工業時代含む)に、ヒットメーカーと呼ばれる開発者がいた。立花啓毅その人である。本人は「イチ技術屋」といってはばからないが、手がけたクルマには、例えば初代FFファミリアや初代カペラ、ユーノス ロードスター、RX-7などがある。親分肌の立花氏は言う。「クルマは一人で作れるものではないから、いかに関わっている皆の気持ちを揃えるかが開発のキモなんだ」と。自動車ジャーナリストである現在も、知見に富んだ歯に衣着せぬ物言いにファンも多い。開発現場に身を投じてきた氏は、現在のマーケティング主導のモノは限界に来ていると警鐘を鳴らす。自分が信ずるものを作れば、おのずと人の心を打つモノができる。今、モノ作りに何が求められているのか、そもそも人を幸せにするモノとはどんな存在なのかを伝えるべく筆を執る――

 社会が成熟し、また人生100年と言われ、この長い人生を心豊かに暮らすには、何が必要なのだろうか。「それはカネだ!」と言われる方も多いだろう。もちろん、金はあるに越したことはないが、それではあまりに寂しいのではないか。

 だが「モノを見る眼」を養えば、あなたの世界は変わってくる。モノの価値や背景、文化を知る。いわゆる本物を見抜く眼を持ち、心豊かなモノに囲まれて暮らすことだ。本物。ここでいうモノとは、絵画や壷などの美術品や、建築、家具、音楽などの"作品"だけではない。家電品や自動車などの消費財も含んでいる。

 では本物とは何かというと(この表現が難しいのだが)、思うに情緒ある作り手と、情緒ある使い手が呼応し、作り手の意と顧客の満足が、高い理性によって合意されたものだと言える。突き詰めると、国宝を生み出した、江戸時代初期に活躍した画家の俵屋宗達と、当時の依頼主で非常に目利きであった皇族や大名との関係のようになる。

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作り手に求められるもの、使い手に必要なもの