JHFCセミナー2006レポート
やめられない、でも先が見えない燃料電池車と水素社会
経済産業省が中心になって進めている水素・燃料電池実証プロジェクト(JHFC)。その一年間の成果を発表する「JHFCセミナー」が3月6日、東京有明で開催された。今回で4回目を迎えるJHFCセミナー。今年は、燃料電池車をはじめとする自動車が環境に与える効果を測定する「総合効率」の発表が世界で初めて行われるとあり、多くの聴衆でにぎわった。しかし、燃料電池車の普及と水素インフラへの移行はいまだ課題山積。今回の発表でも、普及へのビジョンを明確に指し示すことはできなかった。
「総合効率」とは、“Well to Wheel”(油井からホイールまで)と呼ばれる指数で、自動車が1kmあたり走行するにあたって消費するエネルギーの効率(いわゆる燃費)と二酸化炭素排出量を、燃料の原料採掘から消費まで一貫して計算したもの。例えば、電気自動車は走行中の化石燃料消費量はゼロ、二酸化炭素排出量もゼロだが、現実には燃料となる電気を作り出す発電の段階で石油を燃やすことで、その分の燃費と二酸化炭素排出量は計上されることになる。総合効率では、このような一連のプロセスを通して、燃費効率と二酸化炭素排出量という環境負荷を計算し、より環境に優しいクルマを見極めることを目的としている。もちろん、総合効率は変数が多いため、前提条件と計算方法によって様々な解釈が可能だ。とはいえ、今後のクルマ社会のビジョンを指し示すひとつの見方として、自動車業界のみならず、政策担当者にとっても関心のある指数だ。
今回のJHFCセミナーで公表された総合効率は、これまで関係機関が非公式に計算した指数とそれほど大きな差がない結果となった。車種別に見た場合、エネルギー効率では、
電気自動車>燃料電池車(将来)>ディーゼルハイブリッド車>燃料電池車(現状)>ガソリンハイブリッド車...
という結果であり、二酸化炭素排出量では、
電気自動車>燃料電池車(将来)>燃料電池車(現状)>ディーゼルハイブリッド車>ガソリンハイブリッド車...
という結果が示された(詳しくは図表参照)。
この結果から見えてくる最も大きな論点は、ディーゼルハイブリッド車と電気自動車という競合する相手との関係で、このまま将来にわたり、燃料電池車の開発を続けるべきか否かという点だ。この点、発表者の石谷久教授(慶応)がまとめるように、ディーゼルハイブリッド車は排ガスの環境負荷が、電気自動車は航続距離などクルマとしての実用性がそれぞれ燃料電池車に劣っており、その点で燃料電池車は将来のクルマのスタンダートになりうる可能性を持っているという。
しかし、ディーゼルハイブリッド車について言えば、排ガス浄化装置の搭載や性能の向上、電気自動車はバッテリー性能の向上などが必要とはいえ、燃料電池車が直面する水素インフラの整備といった問題に比べると、どっこいどっこいというのが実情だ。将来のエネルギー源を環境の点からも安全保障の点からも脱石油・水素移行に焦点を合わせる以上、水素で走る燃料電池車の開発は「保険」という消極的な視点からも続けて行かざるを得ない、というのが関係者の本音かもしれない。
(2006年3月掲載)