第39回

雨の強さでさまざまな危険要因が発生

JAFMate2018年7月号掲載

編集部:今回は雨の降る夕方、信号のない横断歩道を通過しようとしたところ、右側から横断してきた歩行者を見落としてしまうというケースでした。雨天時は窓の水滴で視界が悪くなるので、より注意が必要ですね。

問題写真

結果写真

長山先生:そうですね。夕方は会社や自宅に戻ろうと急ぐことも多いでしょうし、雨による視界の悪化や路面の滑りやすさなど、運転するのに嫌な条件が重なるので、できるだけ早く運転から解放されたいという落ち着かない気持ちも生まれます。運転に必要な情報の取得、十分な確認がおろそかになるような心の状態でしょう。

編集部:なるほど。単に雨で視界が悪化するだけでなく、心理的にも十分な安全確認ができなくなる危険性があるのですね。

長山先生:そうです。そんな心理に加え、問題の場面はちょうど左右の歩行者が横断歩道を渡り終える瞬間で、自分にとって横断歩道を通過するのに良い条件になりました。良い条件のうちに進んでしまおうという気持ちが先立つと、十分な確認がおろそかになってしまいがちです。

編集部:そんな心理状況ですと、今回のようなワイパーの拭き残し部分にわずかに見える傘には気づきようがないですね。夕方で暗くなり始めているので、さらに見落とす可能性がありますね。

長山先生:おっしゃるとおり、夜間は雨がフロントガラスに乱反射することによって視界が悪くなるうえ、フロントガラスの右端部分はワイパーが拭き取れないので、雨とほこりが残って透視性が悪くなっています。また、右側のAピラー(柱)の死角にも注意しないといけません。

編集部:Aピラーというと、運転席から見たとき、フロントガラスの両側にあるピラーのことですね。

長山先生:そうです。Aピラーは左右に1本ずつありますが、死角の大きさは左右のピラーで異なります。運転席側のピラーのほうが助手席側のピラーに比べて死角が大きく、歩行者などを見落とやすくなります。

編集部:ピラーの太さは同じなので、死角の大きさも同じかと思いますけど、違うのですね。

長山先生:死角の大きさは、ボールペンなどを目の近くに置けばわかります。片目をつぶり、見えるほうの目の前にボールペンを立てた状態で置いてみてください。すぐ目の前にボールペンがあるので、背景はボールペンでかなり隠れるはずです。そのままボールペンを目から遠い位置に離していくと、見える範囲が広くなっていくはずです。

編集部:なるほど。障害物が目の近くにあるほど、視界を覆う量が多くなるので、それだけ死角が大きくなるのですね。

長山先生:そういうことです。右側のピラーの死角というと、交差点を右折する際に気になることが多いですが、右カーブでも気になることがあります。私が住む住宅街に2車線道路の右カーブがあり、そこを走っていると、対向車線の一部がずーっと死角に入った状態で走り続け、いつも不安を感じます。

編集部:実家の近くにも同じようなカーブがあり、道が狭いので、対向車の発見が遅れないように顔を左右に振りながら走っています。雨天時ですと、さらにワイパーの拭き残しで見えづらくなるので危険ですね。

長山先生:ちなみにドイツの教本には、フロントガラスに砂ぼこりや汚れが残っていたり、ワイパーの拭き残りがある場合には、運転する前に必ず清掃しておく点が書かれていましたが、それとともにヘッドライトの清掃の必要性も取り上げられていました。

長山泰久(大阪大学名誉教授)

大阪大学名誉教授長山泰久1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAFMATE』危険予知ページの監修を務める。

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