第36回

年をとるほど過信度が低下し、安全運転に?

JAFMate 2018年4月号掲載

長山先生:おっしゃるとおり、危険を予知する感受性を持っていても、「少しくらいの危険ならやってみよう」とする人がいるのに対して、危険だと感じれば、それを止めようとする人もいるものです。前回も触れましたが、前者はリスクを取る人(Risk-taker)ですし、後者はリスクを取らない人(Risk-avoider)なのです。実際にリスクを取るか取らないかは、下記のような具体的な事例を挙げて調べる方法があります。

  • 事例1:私は右折しようとしています。対向車が来ていますが、少し危ないかと思った場合でも行けると思って右折してしまいます。どの程度の危険だと判断すればやりますか?
  • 事例2:カーブを走行中にこの速度では少し危ないかと思っても、速度を落とさないでカーブに入ってしまいます。どの程度の危険だと判断すればやりますか?
  • 事例3:前の車の速度が遅いので対向車との関係が少し危ないかと思っても、追い越せると思って追い越しを実行します。どの程度の危険だと判断すればやりますか?

編集部:なるほど。よくありそうなリスクをともなう状況ですね。でも、どの程度の危険かは、どのように答えさせるのですか?

長山先生:下記のように危険の度合いをパーセントで分けて、そこから選んでもらいました。

  1. 90%程度の危険でもやってのける
  2. 70%程度の危険でもやってのける
  3. 50%程度の危険ならやってのける
  4. 30%程度の危険ならやってのける
  5. 10%程度の危険ならやってのける
  6. 少しでも危険だと思えばやることはない

編集部:危険をパーセントで考えたことがないので判断に迷いそうですが、その人がどの程度のリスクを取るのか大まかに分かりますね。

長山先生:そうです。ちなみに、危険なことを「自分だったらやってのけられる」と判断して実行する場合には、「危険の程度の過小評価(危険を低く判断する)」と「自分の能力の過大評価(自分を過信する)」の二面が関係していますが、危険を過小評価することよりも後者の自分を過大評価するほうが危険な行動をとる際の判断に関係が深いのではないでしょうか。リスクを取るか取らないかの背景には自己過信の心が潜んでいると思われ、自己過信の度合いを測定するのに以下のような質問を多数行って得点化します。

質問例
・どんなスピードを出しても恐ろしいとは思わない
・スピードを出していても、とっさの場合にハンドルとブレーキで逃げる自信がある

編集部:危険度の過小評価と聞くと豪雨や降雪時を思い浮かべたのですが、これまでの経験値から「この程度の雨なら、このスピードでも大丈夫」と思って運転しているような気がします。これも「自分の経験と運転技術なら大丈夫」という自己過信なのですかね?

長山先生:そうだと思います。図1は年齢別・経験年数別過信度得点を示したものです。年齢別は各種波線で示していますが、16~19歳、20~24歳は安全度が低く、年齢とともに安全度は高くなり、40~44歳、45歳以上では経験年数に関わらず過信せず安全度の高い値を示しています。運転経験年数だけで平均点を見ますと、いかにも経験を積むと過信度が低くなって安全度が高くなるように見えますが、実は年齢の高い人の中に経験年数が高い人が多く含まれているからです。すなわち、表面的には経験年数が増えるにつれて過信度が低くなると見えるデータですが、実は過信度の面では年齢が深く安全と関わっていることを示すデータが得られたわけです。

【図1】

長山泰久(大阪大学名誉教授)

大阪大学名誉教授長山泰久1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAFMATE』危険予知ページの監修を務める。

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