第36回

危険予知の理想は“君子危うきに近寄らず”

JAFMate2018年4月号掲載

編集部:今回は左前方を走っていた自転車が、駐車場からバックしてくる車を避けて車道にはみ出してくるというケースでした。このように前向きで車を止めていて隣にも車が止まっていると、バックで出る際の安全確認はかなり難しくなりますね。

問題写真

結果写真

長山先生:そうですね。バック時は前進時より安全確認が難しいうえ死角も大きいので、左右後方から近づく車両の発見が遅れ、事故が起こりやすくなります。ドイツでも同じような試験問題がありました(下記参照)。

【ドイツの運転免許試験の例】

編集部:路肩に雪が残っていて、バイクで走ること自体が危険な状況ですね。本誌と違い、すでに車道に車が出てきている状況で、このあとの危険を予測させる問題ですね。

長山先生:そうです。危険予知の問題は、子供や自転車など1つの危険対象に気づくことができるかを問う問題が多いですが、これは「バイク(自転車)の行動の危険」、「駐車車両のバックの危険」という2種類の危険があり、それぞれをバラバラに認識するのではなく、2つの危険要因が絡み合って新たな危険を生み出すことを予知しておかなければならない問題です。

編集部:なるほど。これは複合的な問題と言えますね。ボケーっと見ていたのでは、バックしてくる車とバイクや自転車の動きを関連付けて危険を予測できませんね。

長山先生:そのとおりです。間違い探しのように1つの危険を探すだけでは危険を予測できないので、ある意味、高度な問題と言えるかもしれません。また、自動車学校などで行われている危険予測問題では、危険要因を発見することの課題と今一つ対処の方法を述べる課題が課せられます。対処方法としては、ブレーキで止まる、速度を落とす、ハンドルで避ける・逃げる、のいずれかになりますが、危険予知の本来の目的は「直前で危険に気づく」のではなく、「あらかじめ危険を予知する」ことなので、ブレーキやハンドルで対処する方法を教えるのではなく、「あらかじめ危険対象から距離を取ること」「危険対象にこちらを気づかせること」「相手に譲って相手に危険な行動をとらせないようにすること」など、いろいろ高度なレベルの対処方法があることを学ばせる必要もあるでしょう。

編集部:たしかに危険をより早く予測できれば、アクセルを緩めるだけで回避できることも多いので、ブレーキやハンドルの出番はありませんね。“君子危うきに近寄らず”ということわざがありますが、危険予知の目的というか理想はそこなのかもしれませんね。その点から考えると、問題場面の自転車に乗っている人は、まったく危険予知ができてなかったということですね。

長山泰久(大阪大学名誉教授)

大阪大学名誉教授長山泰久1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAFMATE』危険予知ページの監修を務める。

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