第34回

夜行便のドライバーは眩しさに強い?

JAFMate2018年1月号掲載

編集部:今回は高速道路を走行中に逆光で前方が見えづらくなるというケースでした。西に向かって走っているような場合、トンネルなどを出た瞬間に西日が目に入って視界が利かなくなることはありますね。

問題写真

結果写真

長山先生:そうですね。そもそも冬期は太陽が低いので、日差しが目に入りやすくなります。トンネル内ではサングラスは使いづらいですが、トンネルを出る前にサンバイザーを下げておくなど、対策をしておくことが大切ですね。

編集部:神奈川県にある首都高速湾岸線の下りには、西日で有名な所があります。海底トンネルの出口なのですが、南西方向に向いていて、しかも上り坂なので、季節や時間帯によって出口で強烈な西日が目に入ってきます。眩しくて減速してしまう車も多いのか、トンネルの出口には「西日に注意」という電光掲示板があるほどです。

長山先生:それは危険ですね。「明順応」といって暗い所から急に明るい所に出た場合、目が明るさに順応して十分見えるまでに少し時間がかかります。トンネルが長かったり、トンネル内と外の明るさに差があるほど、視機能が回復するまでに時間がかかるので注意が必要です。ちなみに、太陽の直射日光が直接目に当たって視界内の対象把握が不可能となることを「不能グレア(Blinding glare)」と呼びます。今回の場面が不能グレアに該当するかどうかは不明ですが、少なくとも視界内の対象が見えにくい「減能グレア(Disability glare)」が生じていると考えることができるでしょう。

編集部:Blindingは「目を眩ます、目が眩むような」で、glareは「眩しい光、ギラギラする光」という意味なので、直訳すると「目を眩ますような眩しい光」という意味になりそうですが、「不能グレア」になるのですか?

長山先生:Blindingには「目が眩んで見えなくなる」という意味もあるからです。不能グレアは、夜間自動車のヘッドライトが直接目に当たった場合にも、瞬間的に生じます。特に目が暗順応している場合にはヘッドライトの光の影響は強く、周囲の対象が見えなくなってしまいます。対向車のヘッドライトが上向き(ハイビーム)になっている場合には、その可能性が高くなります。

編集部:わかります。たまにハイビームになっていることに気づかないのか、ロービームの光軸がずれているのか、ライトがやたら眩しい車がいますけど、直視すると周囲がまったく見えなくなりますね。それで事故を起こす危険性もあるので、本当に迷惑です。

長山先生:そうですね。ただし、そのような状況でも視力がすぐに回復することが求められる人もいます。昭和37年頃のことですが、ある運送会社で運転手の運転適性検査の研究をしていた時代がありました。長距離運送会社の運転手は夜間運転が主体になることが多く、ヘッドライトの照射を受けて見えなくなっても、すぐに視力が回復する能力、耐眩惑性能を持っている必要があり、夜間視力とともにその検査を行っていました。

編集部:そんな能力が求められるのですか!? でも、どんな方法で計測するのですか?

長山先生:検査は暗室で行い、二輪車のヘッドライトを光源として使用し、光源を数秒直視し、それを消して薄暗い視力計のブルドン指標を見せて、正しく見えるまでの回復時間をストップウォッチで測定するのです。

編集部:バイクのヘッドライトを直視するなんて、目が悪くなりそうな過酷なテスト方法ですね。

長山先生:たしかにそうですが、人によって非常に差があり、視力回復にかなり時間がかかる人があるものだと驚いたものでした。耐眩惑性能の低い人は夜間運転での適性が低いとされ、昼間の運転に回されたと記憶しています。現在でも、バス、トラック、タクシーなどの運転手の適性診断を実施している、独立行政法人の自動車事故対策機構では、近代的な夜間視力計を導入して夜間の明順応後の回復時間測定なども診断に採用しているようです。

編集部:テスト方法は違っても、同じようなテストは行っているのですね。人の命を預かる職業ドライバーには必要なことかと思いますが、たいへんですね。でも、眩惑されやすいかどうかより、暗い所でも人や自転車をしっかり確認できたほうがいいような気がします。鳥目(夜盲症)のほうが危険だと思いますから。

長山泰久(大阪大学名誉教授)

大阪大学名誉教授長山泰久1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAFMATE』危険予知ページの監修を務める。

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