第32回

増えないから認知されない「歩車分離式信号」

JAFMate 2017年11月号掲載

編集部:今回は歩行者と車両の信号表示が異なる「歩車分離式信号」の交差点での危険です。横断中の歩行者が右左折してくる車にはねられる悲惨な事故を防止するため、このような信号が導入され始めましたが、全国的にはまだまだ少なくて、知らない人も少なくないですね。

問題写真

結果写真

長山先生:そうですね。歩車分離式信号は、歩行者の安全を最優先に配慮するため、歩行者と車両が交錯しないように制御された信号で、この信号が導入されている交差点では、歩行者事故が大幅に減少していることが実証されています。ただ、2019年3月末では、全国の信号機の約21万基のうち、歩車分離式信号機は約9,385基と、全体の約4.5%にとどまっています。

編集部:ちょっと調べたところ、平成14年に全国100箇所の交差点でモデル運用を実施した結果では、人対車両の事故が7割も減少しているそうです。さらに地域住民の7割以上の人が導入に賛成という結果も出ていて警察庁は導入に積極的であると聞きましたが、あまり増えていませんね。

長山先生:歩車分離式信号を導入すると赤信号での待ち時間が長くなるため、渋滞が発生する可能性が高くなるというデメリットも指摘されているため、導入に消極的になるのかもしれません。歩行者の安全を軽視しているわけではないでしょうけど、交通の流れ、つまり効率を優先しているのでしょうね。

編集部:でも、横断歩行者が多い場合、逆に歩車分離式信号にしたほうが交通の流れがよくなるケースもあると思います。私がよく通る都心の交差点では、左折しようとしても歩行者がなかなか途切れず、1回の信号で数台しか曲がれないこともあって、かなり効率が悪いですね。

長山先生:たしかに、繁華街にある交差点なども歩行者が多いので、そのようなことが起こるかもしれませんね。曜日や時間など、同じ条件で信号の制御方法を変えて調査できれば、正確な比較ができるかと思いますが、一度信号の制御を変えてしまうと、今回のように車の動きにつられて横断してしまう歩行者や、歩行者用信号だけ見て発進してしまう車両も出てくる危険性があるので、なかなか調査するのは難しいのでしょう。

編集部:なるほど。実際に歩車分離式信号を導入するにはデータ的な裏付けが必要になりますが、それを実施するのは難しく、それが歩車分離式信号の普及を妨げているのかもしれませんね。ただ、普及率が低いほど、歩車分離式信号について知る機会も限られ、今回のような車の動きにつられてしまう人も出てくるでしょうね。

長山先生:そのような行動を私は「つられ現象」と呼んでいますが、つられることで事故が起きるケースは少なくありません。

長山泰久(大阪大学名誉教授)

大阪大学名誉教授長山泰久1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAFMATE』危険予知ページの監修を務める。

バックナンバー

JAF Mateパーク

このページを見ている人は、こちらのページも楽しめます

トップに
戻るで