第25回

蒸気、木漏れ日、樹木が見通しを悪化。

JAFMate 2017年2・3月号掲載

編集部:今回は雪が残る郊外の山道を走っている状況です。対向車とすれ違いながら左カーブに入ったところ、2台目の対向車がセンターラインをはみ出してきて衝突しそうになる、というものです。路面から蒸気が立ち上っていて、ちょっと見えづらい状況なので、対向車のはみ出しに気づくのが遅れそうですね。

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長山先生:そうですね。今回は蒸気以外にも前方の視界を悪くする原因がいくつかあるので注意が必要です。

編集部:蒸気以外にもありますか?

長山先生:そうです。路面に立ち上る蒸気は私自身あまり経験がありませんが、写真のように木漏れ日の影響で前方が見えづらくなるケースは少なくありません。

編集部:たしかに日差しが差しているところと日陰が交互に来ると、トンネル前後と同じで、明暗の差が大きく見えにくいですね。今回は木漏れ日という感じではありませんが、道路には燦燦と日が差していて、しかも逆光気味なので、見えづらいことに変わりはありませんね。

長山先生:天気がいいぶん、路面の照り返しはきつくなりますし、直射日光が運転席に差してガラスは反射しますし、景色も白っぽくなって視界が悪化します。景色が白っぽくなり視界が悪化するというと、ドイツの冬を思い出します。

編集部:ドイツの冬ですか?

長山先生:そうです。雪が乾燥していると前を走る車が雪を吹き上げながら走りますから、吹き上げられた雪が視界を遮って前方が見えづらくなるのです。

編集部:乾燥した雪ですか?  日本で言うと新潟などに多い湿った雪ではなく、北海道などのサラサラの雪のことでしょうか。日本でも冷え込みが強く風も吹いていると、根雪にならず路面のサラサラの雪が風や車の通過で舞い上がり、視界が悪化しますけど、それと同じですね。

長山先生:そのとおりです。天気が良いと巻き上がった雪に太陽の光が反射して、さらに見えにくくなるようです。今回は路面の雪はほとんど融けていて、その点は問題ありませんが、カーブの先が崖や樹木で見えなくなっています。落石防護用の金網や岩盤に自生している樹木でカーブ前方の視界が完全に阻害されていて、見える範囲が限られています。もしカーブ直後に車が停止していれば、路面が濡れていて摩擦係数が低いので、追突してしまうでしょう。

編集部:樹木も気になりますが、崖自体がほぼ垂直にそそり立っていて、先がまったく見えませんね。そうすると、ついカーブの先、左側ばかり注意してしまいそうですが、結果は「赤い車のはみ出し」でした。対応が遅れそうですね。

長山先生:おっしゃるとおりで、見通しが悪いカーブだからとそちらばかり意識していると赤い車への対応が遅れます。黄色のセンターラインをはみ出すこと自体、対向車側に問題がありますが、事故防止には相手の間違った行動にも対応できる防衛運転が重要になります。今回の状況には、対向車がはみ出すことが予測できる要素がいくつかあります。

長山泰久(大阪大学名誉教授)

大阪大学名誉教授長山泰久1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAFMATE』危険予知ページの監修を務める。

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