第23回

人は明るい所をより注視してしまいがち?

JAFMate 2016年12月号掲載

編集部:今回は雨が降り始めた夜、駅まで車で家族を迎えに行く状況です。郊外の駅ではよく見かける風景ですが、道路が暗めで、横断してくる人が車の黒い窓に溶け込んでいて見えづらく、見落とした人も多いのではないでしょうか?

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長山先生:そうですね。雨が降る夜間で、車が混雑している道路では、車のライトが路面に反射して、視認性を著しく低下させてしまいます。しかも今回の場合、左手前の傘を差した歩行者はよく見えるので、逆にそちらばかり注視してしまいます。

編集部:たしかに左手前の男性にはライトの光が当たっていて、よく見えますね。右側にも傘を差した女性がいるので、手前に意識がいってしまいそうですね。

長山先生:そうです。よく見えるものを注視してしまうと、今回横断してきた歩行者のように、よく見えないものを見落としがちです。明るい所と暗い所では、人の存在に気づく度合いも違います。

編集部:わかります。よく通る道に看板の電飾がやけに明るいパチンコ屋があるのですが、周囲は沈んで見えて、歩行者がいても気づきにくそうです。

長山先生:そのとおりで、パチンコ店以外にもガソリンスタンドやコンビニエンスストアなど、店舗や看板の強烈な明かりを直接見ると、その対比効果で暗い部分はいっそう見えにくくなってしまいます。とくに「照明の谷間」が危険です。

編集部:照明の谷間ですか?  店舗と店舗の間の暗い部分とかですか?

長山先生:そうです。ガソリンスタンドとコンビニの間に脇道があるような場所で、右側の脇道から横断してきて人の発見が遅れて事故になるケースが結構あります。

編集部:歩行者もそんな危険性を知っておいて、ドライバーから見落とされにくい明るい場所で横断することが重要になりますね。

長山先生:おっしゃるとおりで、道路を渡る際は「ドライバーから見落とされていないか?」を常に考えておくことが重要ですね。また、ドライバー側の危険要素には、前方の空きスペースに車を止めようとしていた点もあります。このようなときは、止めることに意識が集中してしまい、手前の状況を十分確認できる心の状態ではありません。

編集部:たしかにそうですね。この位置からは空きスペースのサイズがよく分からないので、前進で駐車ができるのか、バックで縦列駐車しないといけないかなど、とても気になり、横断する歩行者の存在などは、まったく想定外かもしれません。

長山先生:今回は空きスペースを見つけたあとでしたが、空きスペースを探しながら運転するときは、さらにそちらに注意が集中するので、より危険な状態と言えます。また、雨天時は歩行者側の危険要素も多くなりますね。

長山泰久(大阪大学名誉教授)

大阪大学名誉教授長山泰久1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAFMATE』危険予知ページの監修を務める。

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