第18回

日本の高速道路の合流はスムーズ?

JAFMate 2016年6月号掲載

編集部:今回は都市高速道路の右カーブに差し掛かっている状況です。パーキングエリアから合流してくる車によって前車が急減速したため、追突しそうになるケースですが、見通しが悪いカーブで合流してくる車がまったく見えなかったので、予測するのが難しいケースですね。

問題写真

結果写真1

結果写真2

長山先生:たしかにカーブが急で先の様子が見えないので、合流車による危険を予測しづらいのですが、問題の場面をよく見れば、危険を予測できる手がかりが少なくありません。

編集部:「合流交通あり」の警戒標識と「合流注意」の看板のことですね。

長山先生:そうです。このような警戒標識は見過ごされがちですが、都市高速には先の状況が見えない急カーブが多いので、重要な情報としてしっかり確認しておき、「合流車があるかもしれない」と考えておかないといけません。

編集部:警戒標識だけでなく、わざわざ道路の側壁にも目立つように「合流注意」の看板があるのですから、ここでは事故が多いのかもしれませんね。

長山先生:そうだと思います。事故が多発している場所には、道路管理者も事故を減らそうといろいろな対策を考えます。警戒標識に加えて「合流注意」の看板まで設置しているのですから、事故の発生件数も多い場所なのでしょう。今回、前車がミニバンだったので警戒標識も見えましたが、前車がトラックやバスだったら警戒標識が車体に隠れて見えない可能性があるので、前を走る車の種類によって車間距離をより長く取る必要もありますね。

編集部:車間距離というと、つい前車の減速や急停止に備えるためで、前を走る車によって変えることはありませんでしたが、前方の重要な情報を得るためにも状況に応じて調整することが重要なのですね。ところで、合流地点に差し掛かり、合流してくる車があった場合、譲って入れるかどうか迷うことがあります。今回の前車のように、急減速してまで合流車を入れる必要はあるのですか?

長山先生:道交法で「本線車道の優先」が定められているので、急減速してまで合流車を入れる必要はないでしょう。道交法の第75条の6では合流する側の規則として「自動車は、本線車道に入ろうとする場合において、当該本線車道を通行する自動車があるときは、当該自動車の進行妨害をしてはならない」と明確に規定しています。

編集部:でも、合流車と本線を走る車のタイミングが合ってしまい、合流車が強引に入ってくることもありますよね。

長山先生:そうですね。判断が難しいケースが少なくないので、状況に応じて臨機応変に対応する必要がありますね。特に都市高速道路には合流車線(加速車線)が短い所も多いので、合流するドライバーも「加速車線が終わらないうちに」と焦り、無理して合流しがちです。本線を走るドライバーが周囲の安全を確認して問題がなければ、合流車がスムーズに入れるように少し減速してあげることも必要ですね。

編集部:譲り合いの精神ですね。ちなみに、これはあくまでも噂レベルですが、関東より関西のドライバーほうが運転が乱暴で、合流させてくれないケースも多いと聞きます。関西にお住まいの長山先生はどう思われますか?

長山先生:関西と言ってもいろいろな地域がありますし、ドライバー個人の性格も違うので、一概に乱暴と言われるのに抵抗がありますけど、関西人のほうがせっかちな人間が多い気がするので、そのせいでしょうか?  実は私もせっかちなほうで、若い頃は減速してまで合流車に譲ることはなかったかもしれませんね(笑)。ただ、以前オーストリアの交通心理学者であるD.Klebersberg教授を大阪空港で出迎えて阪神高速道路を走行したとき、教授は「日本の高速道路の合流は実にスムーズですね」と感心していました。私はそのような実感を持っていませんでしたが、ドイツ語圏のオーストリアでは優先権が明確で、「減速して入れる」という考え方がないのかもしれません。ドイツのアウトバーンを走った実感でも、本線を走る車に譲ってもらった経験はなく、合流する際には実に神経を使ったものです

編集部:そうでしたか。ドイツ人は規則やルールに厳しいイメージがありますね。初心者ドライバーにはやさしいのかもしれませんが、アウトバーンで「高速教習」はやりたくないですね。日本との比較で思い出しましたが、外国のカーナビも同じかもしれませんが、日本のカーナビは合流地点が近づくと、懇切丁寧に「この先、合流車あり」と教えてくれますね。初めて通る道路や今回のように見通しが悪い場所なら助かりますが、何度も通ったことのある道路では鬱陶しく感じます。特に追越車線を走っていると合流車の影響を受けないので、「自分には関係ないし」と思ってしまいます。

長山先生:それは違います。合流地点が近づくと、走行車線の車が合流車を避けて追越車線に進路変更してくることがあるので、たとえ追越車線を走っていてもナビのアナウンスは重要な情報と言えます。ただ、古いナビの場合、新しくできた合流地点を網羅していないこともあるので、ナビに頼り切るのも危険ですね。

編集部:なるほど。追越車線を走っていても、間接的に自分に危険が及ぶことがあるのですね。ところで、今回の場所は左側からの合流でしたが、首都高などの都市高速には右側から合流してくる場所も多く、慣れないうちは面食らいました。今回のカーブも急でしたが、都市高速には設計基準のようなものはないのですか?

長山泰久(大阪大学名誉教授)

大阪大学名誉教授長山泰久1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAFMATE』危険予知ページの監修を務める。

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