第12回

渋滞情報がドライバーの注意を奪う

JAFMate 2015年11月号掲載

編集部:今回は都市高速道路の分岐点に差し掛かる状況で、右側を走る車が急な進路変更をしてくるというケースです。このような場所では十分考えられるケースですが、こんなに近い距離で急に進路変更されると追突しかねませんね。

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長山先生:そうですね。特に都市高速に慣れていないドライバーだと、まず自分が走るルートを選び、間違わずに走るのに精一杯なので、周囲の状況まで気を配ることができず、相手の急な進路変更にも対応できないでしょう。

編集部:それに対して、都市高速をよく利用しているドライバーなら余裕があるので、相手のミスにも対応できそうですね。

長山先生:そうですね。慣れているドライバーなら案内標識に目を向ける必要がないので、そのぶん前を走る車など、前方の状況を見たり、左右を走る車の様子にも気を配ることができます。今回のように分岐点の手前で不自然なブレーキを踏む車があれば、早めに気づいて注意することができると思います。

編集部:今回の問題は都市高速ビギナー向けのテーマと言えそうですね。

長山先生:いや、必ずしもそうではありません。実は慣れたドライバーでも事故に陥る落とし穴があるのです。問題の状況をよく見ると、案内標識の上に渋滞情報の表示で出ていますね。すると、渋滞している場所が自分のルートに関係があるのか気になるので、この表示に目を向け、よく見ようとするでしょう。

編集部:たしかに。誰でも渋滞は避けたいですからね。私も渋滞情報が出ていたら、自分が通るルートと関係があるのか、必ずチェックします。

長山先生:そうですね。都市高速に慣れたドライバーほど渋滞情報に注意して、自分が通るルートに渋滞があれば、別のルートを選んで渋滞を回避しようとします。でも、情報板に注意が惹かれると、当然目線も情報板に向けられるので、右側から進路変更してくる車に気づくのが遅れる可能性があるのです。

編集部:なるほど。渋滞区間や距離は文字で書いてあるので、それを読もうとすると、けっこう意識が集中しますからね。

長山先生:そのとおりで、都市高速には今回のような「文字情報板」と、図形で交通状況を示す「図形情報板」があります。図形情報板なら、どこがどの程度渋滞しているのかひと目で分かりますが、文字情報板は読んで理解する必要があるので、そのぶん注視時間もかかるので注意が必要です。それでも、分岐点の手前では車両が進路変更をする可能性が高いことを十分認識しているドライバーなら、情報板ばかりに目を奪われず、周囲の車の危険な動きにも対応できるはずです。

編集部:今回の問題から、情報板などに目が奪われると、周囲の危険の発見が遅れることを知ることができるので、事故の危険性はグッと減るのですね。

長山先生:まさにそのとおりです。危険予知の問題を通して、渋滞情報に目を奪われて、じっと脇見をしてしまうことはなくなるでしょう。ちなみに脇見というのは、チラッと瞬間的に目線を向ける「目線の脇見」ではなく、じーっと見て、どうなっているのか確かめる「心の脇見」なのですが、そのような危険行為も行われなくなるでしょう。これが危険予知を習得することによる最大のメリットなのです。

編集部:なるほど。では、逆の立場で、自分が分岐点の手前で急な進路変更をしないためには、どうすればいいのでしょうか?

長山泰久(大阪大学名誉教授)

大阪大学名誉教授長山泰久1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAFMATE』危険予知ページの監修を務める。

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