第6回

ここの歩行者は“横断不感症”!?

JAFMate 2015年4月号掲載

編集部:今回の問題は、朝の通勤時に起きた歩行者の飛び出しです。問題の状況で注意すべきポイントはどこでしょうか?

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長山先生:今回の場面では、気になる対象がたくさんありますね。大きく分けて、人、車、信号、道路状態の4つがあります。まず人については、右側の対向車線をこちらに向かって歩いてくる男性、その後ろを急ぎ足で渡り切ろうとしている女性、さらに対向車線を右側に斜め横断する男性が気になります。たった一場面でも、多くの人が好き勝手に道路を歩いているのは、オフィスに近い繁華街ならではです。毎日同じ道を通勤で使う歩行者は、この道路を渡ることに慣れきって道路を横断することに対して不感症になってしまっているようです。

編集部:不感症ですか? たしかに道路を向こう側に横断している男性は特に急いでいる感じではありませんし、対向車線をこちらに向かって歩く男性は、車道を平気で歩いている印象です。でも、なぜ車道を歩いているでしょうか?

長山先生:一見、道路を渡るタイミングを計っているように見えますが、後ろから車が来ていないのに渡る素振りがないので、歩道が歩きづらくてあえて車道を歩いているか、路上に止めた駐車車両に乗り込もうとしているのかもしれません。

編集部:なるほど。ということは、この歩行者は危険な対象ではなさそうですね。他に気になる人はいますか?

長山先生:こちらを見ているようなので危険はなさそうですが、左の駐車車両越しに見える男性も気になりますね。道路を渡ろうと車が途切れるのを確認しているのか、またはタクシーを拾おうとしているのでしょうか? その男性の左側に今回飛び出してきた男性が見えていました。この男性は走っているうえ、顔が見えません。相手がどこを見ているのかまったく分からないので、最も注意しないといけません。

編集部:車や信号についてはどうでしょう?

長山先生:駐車スペースからはみ出して止まっているトラックが気になりますが、荷下ろし中なので動き出す危険性はありませんね。また、先の信号交差点の右に見える黒っぽい車も気になります。後部が突き出た形でバックランプが点いているようにも見えます。信号が黄色から赤に変わるタイミングなので、この車の動きに神経質になる必要はありませんが、信号に意識が行きがちなので注意しましょう。

編集部:それだけいろいろ注意していては、相当速度を抑えていないとダメですね。

長山先生:そうです。これだけ多くの注意する対象があるのですから、そのぶん速度を落とす必要があります。特に先ほど話したように、オフィス街に近い通勤ルートとなると、歩行者の乱横断(らんおうだん)が多くなりますから。

編集部:“らんおうだん”とはなんですか? 

長山先生:横断歩道以外での無理な横断、無謀な横断のことです。通勤ルートで道路を渡ることに慣れてしまうと、信号や横断歩道のない所でも無神経に横断する乱横断が多くなります。時間に余裕がなく急いでいれば、なおさら危険な行為が起こりやすく、信号が赤でも、車が来ていなければ信号を無視して渡ってきたり、車が来ていても、少しでも距離が離れていれば、車の前を無理に渡ることもあるでしょう。ドライバーから見たら無法地帯と言っていいので、横断禁止場所でも歩行者が飛び出してくる危険性を常に予測しておかなくてはいけませんね。

編集部:どこでも横断してくる危険性があるとすると、ドライバーは常に緊張状態で走らないといけなくて、相当疲れますね?

長山先生:そうですね。ただ、道路をよく観察すると、歩行者が出てくる可能性が高い場所はある程度予測できます。道路の左右に狭い路地があるような場所は要注意です。路地がある所には、たいていガードレールや駐車スペースなど、人の横断を遮るものがないので、左の路地から右の路地へ人の動線ができるからです。今回、歩行者が飛び出したのも狭い路地からで、このような路地がある所を通過するときこそ、速度を抑えて人の飛び出しに備えましょう。

編集部:ただ、今回のように道路に駐車車両があると、道路を渡ってくる歩行者が死角に入ってしまい、どうしても発見が遅れますよね。ドライバーだけの注意では事故は防げないように思います。そもそも歩行者が急いで飛び出すことが事故の原因なので、そこを解決する方法はないのでしょうか?

長山泰久(大阪大学名誉教授)

大阪大学名誉教授長山泰久1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAFMATE』危険予知ページの監修を務める。

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