第1回

“蒸発現象”による事故はない!?

JAFMate 2014年10月号掲載

編集部:今回のように停止した対向車の前を歩行者が横切る際には、“蒸発現象※”で歩行者が見えにくくなる危険性もありますね。

※対向車のライトと自車のライトが重なる部分に入った歩行者が、蒸発するように一瞬見えなくなる現象。夜間の歩行者事故の原因のひとつと言われる。

長山先生:“蒸発現象”は教習所でも教えられており、夜間の歩行者事故の重大原因であるかのように教育されていますが、私は以前から蒸発現象の存在には疑問を感じています。以前、警察署が主催する講習会で、トンネル内のように暗くした施設で対向車と自車のヘッドライトが交錯する状態で蒸発現象が起こることを体験させてくれましたが、私自身ははっきり理解できませんでした。動画サイトでも片側3車線の道路を使った検証映像がありましたけど、私が見た限り、両者のヘッドライトが交錯する状況は生まれず、その中を通る歩行者が蒸発する現象も認められませんでした。

編集部:でも、実際にライトを点灯している対向車の前を横切る歩行者は見えづらいですよね? 実際に事故原因になっているのではないですか?

長山先生:対向車のライトで眩惑され、見えづらい瞬間はありますが、それは一瞬で、歩行者はライトの光を遮って移動するわけですから、それを見落としてしまう危険性は低いと思われます。実際、私が過去に約4000件の事故事例分析を行いましたが、蒸発現象が原因によるものは1件も見当たらず、今回のように対向車の後ろを渡ってくる歩行者の発見が遅れてはねてしまうという事例が圧倒的に多かったのです。繰り返しになりますが、ドライバーとしては対向車の後ろから道路を渡ってくる歩行者の存在を決して忘れないようにしてください。

長山泰久(大阪大学名誉教授)

大阪大学名誉教授長山泰久1960年大阪大学大学院文学研究科博士課程修了後、旧西ドイツ・ハイデルブルグ大学に留学。追手門学院大学、大阪大学人間科学部教授を歴任。専門は交通心理学。91年より『JAFMATE』危険予知ページの監修を務める。

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