今回は、第22回全日本自動車整備技能競技大会(以下、競技大会)*1に優勝された現役整備士のお二人に、お客様とのエピソードや、自動車整備士としてのやりがい、楽しさ、魅力などについて語っていただきました。

さらに、高級車からファミリーカー、商用車、スポーツカーなど幅広い車種を点検整備する整備士として、豊富な経験に基づいたアドバイスをいただきました。

*1 全日本自動車整備技能競技大会とは
第一線で活躍している自動車整備士の技能評価と整備士相互の連帯交流を強めるとともに、整備業界の発展と自動車の安全確保及び環境保全に寄与することを目的として2年に1回開催されている競技大会です。

  • 神中興業株式会社 池田 誠司 さん 一級小型自動車整備士

    神中興業株式会社 池田 誠司 さん 一級小型自動車整備士

  • 神中興業株式会社 渡辺 優樹 さん 二級ガソリン自動車整備士

    神中興業株式会社 渡辺 優樹 さん 二級ガソリン自動車整備士

お二人が働いている神中興業株式会社お二人が働いている神中興業株式会社

【Episode1】私が整備士を目指した理由

競技大会で優勝したトップ整備士のお二人にも整備士を目指したきっかけがあります。
自動車検査員でもある池田さんは、中学生の時のある出会いがきっかけだったとおっしゃいます。
池田さん:「中学生のころ、近所に車好きのおじさんがいました。その人は整備士ではなかったのですが、毎日のように車をいじっていたんですね。それを見ているうちに整備そのものに興味を持つようになり、整備士を目指して工業高校に進学しました」
高校で3級整備士の資格を取得し、就職後に2級を、さらに講習の受講1年足らずで1級小型自動車整備士の資格を取得されています。点検整備を依頼されるお客様に「当社に頼んでよかった」と思っていただけるようにお客様や車に向き合うことを心掛けて日々整備を続けていらっしゃいます。
渡辺さんはちょっと異色です。高校生のころからバイクをいじるのが好きで、乗り物を直す整備士に興味があったそうです。
渡辺さん:「そんな時に新聞広告で“無資格でも整備士になれる”という募集があり、応募し就職できました。楽しく整備をしながら二級ガソリン自動車整備士の資格も取らせていただきました。ただ、車は日々進化していくので先進技術や新しい知識を自ら学ばなければなりません。知らないことが多いので、資料での勉強はもちろん、先輩方にもいろいろ教えていただいています」
クルマ好きの面目躍如です。

左:渡辺 優樹さん 右:池田 誠司さん左:渡辺 優樹さん 右:池田 誠司さん 男の背中が語る整備士の未来男の背中が語る整備士の未来

【Episode2】「ありがとう」を糧に車に向き合う

お二人とも日ごろから専門誌を読んだり、周りの人の作業を見て参考にしたり、FAINES*2を使って調べたりと勉強に余念がありません。そんなお二人が、大切にする工具。池田さんは最初の給料で買った自前のメガネレンチ。20年間大切に使い続けているそうです。渡辺さんは優勝したときに会社に買ってもらった工具すべて、とおっしゃいましたが、あとで奥様に買ってもらったという大事な工具を内緒で見せていただきました。
池田さんは20年、渡辺さんは8年の実務経験があり、二人に長年整備の仕事をしてきて特にうれしかったことをお聞きすると、お客さまから「ありがとう」と言われることが一番とおっしゃいます。
渡辺さん:「難しい故障の原因究明は長時間悩まされながら、それでいてはまってしまう作業でもあり、いろいろな人に教えてもらいながら解決した時の爽快感はもちろん、直ったときにお客さまから“ありがとう”と言っていただいたときの達成感はすごいですね。何度言っていただいてもうれしいですよ」。
池田さん:「お客様から直接“調子よくなったよ、ありがとう”と言われたときは、整備内容の難易度に関わらずうれしいですね。」
お客さまの応対はほとんどがフロントの業務なのですが、出張修理で直接顔を合わせる機会もあり、お客様に良かったと喜んでいただけるよう車に向き合っているお二人です。

*2 FAINES(ファイネス)とは インターネットを活用した整備情報提供システム。整備マニュアル情報をはじめ、故障整備事例、新型車・新機構の紹介、回路図、点検基準値、標準作業点数など、プロに不可欠な情報を掲載。

グリーンのツールキャビネット大事な工具満載ですグリーンのツールキャビネット
大事な工具満載です
12mmと14mmのメガネレンチは20年使い続けています12mmと14mmのメガネレンチは
20年使い続けています

【Episode3】優勝しても日々精進

お二人は職場では上司と部下の関係ですが、まるで仲の良い友達のような雰囲気が漂います。そうした息の合った関係だからこそ、全日本自動車整備技能競技大会での優勝を勝ち得たのだと思います。
「競技中の緊張はすごかったんですが、常に指導していただいていた上司と一緒だったので落ち着いて競技に取り組めた」と渡辺さんは語り、後に続く未来の整備士たちには「負けん気が大事」とエールを送られました。そして「今回の結果に恥じないように、そして満足しないように日々努力していきたい」と繋げました。

大会優勝の垂れ幕大会優勝の垂れ幕

池田さんは「『目指せ入賞!』を目標にしたものの練習を重ねるごとにハードルの高さを感じてしまい、不安な毎日でしたが、競技中は大きなトラブルもなく練習通りにできたので、「ギリギリ入賞かなぁ」くらいの手ごたえでした。今でも優勝の実感はありませんし、すべての車を知り尽くしてはいないので、これからも新しい技術をしっかりと勉強していきたいと思っています」と謙虚に話されます。
また、整備士になって、「家族や友人から車のことで相談され、整備したり疑問を解決できたりすると『整備士だったんだ』といまさらのように感謝される」と渡辺さん。整備中にさまざまな「なんで?」にぶつかったときには、そのままにしないでとことん探求するとか。その探求心がさらなる向上につながっているのでしょう。
優勝後、池田さんは周りの人から「おめでとう!」と言ってもらえることが増えたと話し、渡辺さんは奥様から「あなたならやると思っていた」と言われ、お子様からは「パパ優勝かっこよかったよ」と家族が喜んでくれたのが一番うれしかったと話してくださいました。

優勝カップ、表彰状、優勝旗とともに優勝カップ、表彰状、優勝旗とともに

【Episode4】えっ?事故!?未然に防ぐコツは

資格を取ることにチャレンジしてきたことが自身にとって大きなプラスになったとおっしゃる池田さんは、子どもの自転車を修理してあげたらお子様から「スゲー!」と言われたと満面の笑みで話してくださいました。あと1年ほどで1級の資格取得の要件を満たす渡辺さんは、入社して1、2年のころに馴染みのお客様から整備中に「お前に工賃を払うのか」と言われたことがショックで、それをきっかけに努力を重ね、今では信頼をいただきすべてを任されているそうです。お二人とも整備が仕事なだけに、常にお客様はもちろん家族や友人から相談されたり、修理を依頼されたりするのは整備士ならではといったところでしょう。
その整備士のお二人が口をそろえて話されるのが点検・整備の重要性です。池田さんは「点検・整備で入庫される車の中には、故障寸前といった車も見受けられます。故障する前に入庫してくださると、整備にかかる時間も費用もずいぶん抑えることができます」と予防整備の必要性に触れてくださいました。渡辺さんも「ブレーキが故障すると大事故につながりかねない大切なパーツなので、定期的に点検することで事故を未然に防ぐことができると思います。その意味からも1年点検はとっても重要ですね」とおっしゃいます。
「工場にふらっと立ち寄って、なんでも気軽に相談していただけたらと思いますね。」と最後にお二人は話してくださいました。

検査員の仕事でパソコンと向き合うことも検査員の仕事でパソコンと向き合うことも 真剣なまなざしで整備に向き合う真剣なまなざしで整備に向き合う