「災害は命のやりとり。
今よりも深く、災害の時のことを考えて」

●山田町「震災語り部タクシー」立花正男さん

津波で被災し、更地になっているJR山田駅前。

津波が16mまで達した小谷鳥地区。波が引いた後、画面中央に見える高い木の上に洗濯機がひっかかっていたという。 (撮影=落合憲弘)

●山田町「新生やまだ商店街協同組合・震災語り部ガイド」

語り部タクシーガイド・立花正男さん

語り部タクシーは一昨年の1月からやっています。

山田町では800人以上が亡くなり、100人以上が行方不明のままです。津波は当日8mの高さまで届きました。山田町には二つの方向から津波が押し寄せ、ぶつかり、さらに盛り上がって襲ってきたんです。

地震の後、5分から10分で波が引けているのが海ぎわの自宅から見えました。私はタクシー会社をやっていたので、まず営業車を移動させて、その後戻って3台車を避難させました。他に営業中の車両が2台いて、お客さんが乗っていましたが、高台に逃げて助かりました。

震災の少し前にも地震があったけど、津波は来なかったんですよ。当日はスピーカーで避難を呼びかけられていたけれど、意外と皆さん逃げてなかった。防波堤で津波が見えなかったんです。避難に対して躊躇がありました。防波堤があることも良し悪しです。

避難した人も、海を見ようとしたけれど、海が見えなかったんですね。一旦逃げた人も、海が見えないからまた戻ってしまった。そして、防波堤の上に登って、船の様子を見に行った漁師さんたちにも犠牲が多かったんです。津波が来てから、みんな「まさか、まさか」と。住宅がプカプカ浮かんで、「今何がおきてるの」「誰か止めてくれないの」そんな感じだったです。

地震だけではたいしたことはなかったんですね。そこに津波が来た。そして、最後に火事が起こったんです。それも痛かった。あちこちでプロパンガスのガスボンベが爆発し、車の燃料が燃え、ボンベが爆発する音は朝まで続きました。消す方法もなくて、2昼夜、火事は続きました。ケガをして動けないでいた人たちも火事で死んでいきました。これはあまり知られていないことです。火事が最後のとどめをさしたんです。震災で町の6割ぐらいがなくなり、生活基盤が全部なくなってしまいました。

小谷鳥地区では津波が16mまで達しました。まさかここまで、というのを体感してもらいたいのでここにもご案内しています。津波が引いた後、高い木の上に洗濯機がひっかかっていました。あそこまできたんですよ。びっくりですよ。

町の人口は以前は1万9200人でしたが、今は公式には1万7000人になっています。でも、スーパーなどの購入データから、実態は1万2000人ではないかと言われています。被災地に新築の家を建てようと思ったら、3000万円以上するんです。でも、岩手の内陸部の中古物件だったら1500万円ぐらいからあります。みんな移住しています。あの山を崩して、住宅地を作ればいいんじゃないかと言うんですが、このあたりの山はちょっと崩すと縄文時代のかけらが出てきて、工事がすぐストップしてしまうんです。そんな事情もあります。

 今、もっとも安全な場所は被災地じゃないかと思いますよ。これだけ痛い目を見たんだからね。この前震度3の地震があったけど、その時お店でお酒を飲んでいた人たちも、みんなで逃げましたよ。躊躇なく避難する、今は意識が変わりましたね。

山田町の震災語り部ガイドでは、生の声で伝えるのが一番のサービスだと思っていますので、マニュアルは作りません。次は別の者が違う話をしますから、何回来ていただいてもいいですよ。

私が一番伝えたいこと、それは日本全国、これからどういう形であれ災害は起こります。災害は命のやりとりなんですよ。甘くみたら命を落とします。山田町の現状を見ていただいて、今よりも深く、災害について考えてほしいです。「想定外」にしないでほしい。

ガイドした中には鹿児島など遠方から来てくれた方や、泣きながら話を聞いてくれた人もいて感激しました。心配してくださっている方がたくさんいることを感じました。たくさん支援もしていただいた。あとは我々が頑張ります。ぜひ、山田にお越しください(談)。

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岩手県山田町では、語り部タクシー(1時間5,100円)のほか、通常の語り部ガイド(3時間3,000円)や「語り部飲食店」(休止の場合あり)などさまざまな形で活動している。問℡0193・77・3732