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2018/10/09

人気の「ワンペダル運転」は酔いやすい? 同乗者を車酔いさせないための運転術とは?

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 助手席や後席に乗車した人が、EV(ピュアEV以外も含む)では酔いやすくなっていると、私は考えている。なぜか。

 現在、多くの方が運転している普通の車のAT車では、積極的に高いギヤへ変速し、コースティング(空走)状態に近づけることで、車が惰性で遠くまで走るようなセッティングになっている。つまりエンジンブレーキがほとんど効かない状態で走っていることが多いわけだ。さらに、最近のATには、Dレンジでアクセルオフにすると、コースティングまたはセーリングと呼ばれるモードになる車種も出てきた。これは、アクセルオフになるとエンジンとギアを分離してアイドリングにし、クルマは完全に惰性で走る状態になるというものだ。そのまま長い距離を走れるから結果的に燃費が良くなるのだ。この場合はエンジンブレーキがまったく効かない状態で走っていることになる。

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 一方でEVはどうか。EVには回生ブレーキが備わっている。これは、制動時のエネルギーを電気に変えてバッテリーに戻すことで、航続距離の向上につなげている。回生ブレーキはアクセルを戻すと作動するので、コースティングがほとんどない。それが従来のAT車と比べてどうなのかという話だ。

 例えばだ。EVのBMW「i3」(写真上)は、アクセルを踏んで加速する。戻してくると一定になる。もっと戻すと回生ブレーキになる。つまりブレーキペダルを踏まなくても走れる「ワンペダルドライビング」ということができる。新しい日産「リーフ」も、「e-Pedal(イーペダル)」(写真下)ボタンを押すと同様のワンペダルドライビングができるのだ。

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EVへの乗り換え時に注意

 普通のAT車の特性に慣れたドライバーがEVでワンペダル運転をするとどうなるか。アクセルペダルを踏んだときに加速するのは同じだが、アクセルペダルを全部戻すと、さながらブレーキペダルを踏んでいるかのような減速感がある。回生ブレーキが作動しているから当たり前なのだが、これはドライバーにとっては、速度調整の自在感が強く、運転が楽しく、そして上手になったように感じる。だが、これが同乗者を酔わせる原因になる。

 この酔わせる要因を、ドライバーの運転動作から考えてみよう。AT車に乗り慣れたドライバーがこのワンペダルモードで走ると、発進して速度が乗ったところでポンとアクセルを離す癖がついているため、必要以上に減速してしまう。そして、その減速のしすぎを取り戻すために再度アクセルを踏み込んで再加速する。ドライバー自身は、自分の運転操作なので気にならないか、むしろ運転が楽しいと感じるかもしれない。しかし、この頻繁な加減速が同乗者にとっては非常に不快に感じ、場合によっては酔ってしまう。走行中は常に加速か減速しかしておらず、しかもいつ加速するか減速するかも分からない状態で乗せられているわけで、これでは普段は車酔いなどしない人でも酔ってしまう可能性が非常に高くなる。

どんな運転をすれば同乗者が車酔いしない?

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 運転において、特に巡航時は速度に波がない「一定走行」がよい。一定走行は乗り心地にも安全にも燃費にも好影響を及ぼすからだ。逆に、速度に波がある「波状運転」は悪影響しかない。これまでAT車のドライバーは多少ルーズな運転をして波状運転になっても、車の「滑走感」に助けられてきた。そのため波状運転をしていてもあまり気にならなかった。しかしEVが増えると予想される今後は、波状運転をしていなかったドライバーでも、波状運転になってしまう可能性が高い。その結果、多くの人が車に酔い、ドライブが嫌いになってしまうのではないかと危惧している。

 ではEVの、特にワンペダルモードを運転する場合、ドライバーはどのように運転したらよいのか。まず、加減速が頻繁な運転になっていることを意識すること。そして、アクセルペダルを戻すときに、じわっとゆっくり戻し、一定スピードで走る練習をすればよい。本来、これはどんな車に乗っても正しい運転方法だ。EVに乗った場合でも、正しい運転にすれば誰も酔わない幸せなEVライフが送れることだろう。

2018年10月9日(モータージャーナリスト 菰田潔)


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菰田潔(こもだきよし):モータージャーナリスト。1950年生まれ。タイヤテストドライバーなどを経て、1984年から現職。日本自動車ジャーナリスト協会会長 / 一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)交通安全・環境委員会 委員 / 警察庁 運転免許課懇談会委員 / 国土交通省 道路局環境安全課 検討会 委員 / BMW Driving Experienceチーフインストラクター /NPO法人 JAPAN SMART DRIVER機構 理事長/ 運送会社など企業向けの実践的なエコドライブ講習、安全運転講習、教習所の教官の教育なども行う。

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