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2017/08/02

画期的!
視覚障害者による
ブラシと体験施設

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暗闇の中では目の見えない人が当たり前で、見える人が普通ではないという事態が起こる 

 東京・外苑前にある「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」は、視覚障害者と健常者の立場が逆転する体験型の施設である。

当たり前のことがそうではなくなる

 参加者は、数人のグループで光がまったくない暗闇の世界に入っていく。助けとなるのは、視覚障害者が使う白い杖と、案内役となってくれる視覚障害者の声だけだ。施設の中は屋外の自然を模していて、小川にかかる丸太を渡ったり、様々なシーンを1時間かけて体験する。

 鳥のさえずり、水のせせらぎ、導き人の声の心強さ、足の裏の感覚、仲間の不安な声......。人は目以外の五感を使って人との関係を再認識することで、他人や自分との新たな対話が生まれてくるという。

障害という概念は社会環境が作っている!?

 「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の考案者は、ドイツ人哲学博士アンドレアス・ハイネッケ氏である。彼はラジオ局で働いていた時、事故で失明した若いジャーナリストの教育係に任命された。全盲の同僚を最初はかわいそうという気持ちがあったが、自分の認識が間違っていたことにショックを受ける。
 目が見えないことは、病気でもなく、人より貧しいとか、劣っているということではない。健常者と比べられない世界があり、繊細な感覚など健常者の持っていない可能性を持っていることに気がつく。障害という概念は、社会環境が勝手に作っているものであるということに目が開かれたことが大きいという。

 ハイネッケ氏は、1988年にドイツでDIDの施設を立ち上げた。その後、この社会的プロジェクトは世界に広がり、今では39か国で開催されている。

 「私はこのプログラムを通して目の見えない人や障害者に焦点を当てるだけでなく、世の中に蔓延している不平等なことにスポットを当て、見ないふりや差別、排除と戦い失くしていきたい。それぞれひとりひとりに価値があると信じて、社会の中心にいる人(マジョリティ)とそうでない人(マイノリティ)とのギャップを埋めていきたいのです」。
 ハイネッケ氏はインタビューで述べている。

東京の会場が8月で閉鎖に

 日本ではDIDは東京と大阪の各会場で開催され、今までに19万人のビジターが暗闇の世界を体験した。この施設は、視覚障害者が働く場としても貴重なものとなっている。案内役を勤める視覚障害者の従業員は、この仕事を通してやりがいと自分自身の価値を回復し、生涯の仕事とすることを決めたという。またDIDでは視覚障害者の仕事の幅を広げ、漆塗りの食器やタオルの手触りについてメーカーにアドバイスする仕事もはじめている。

 その東京・外苑前の会場が、8月いっぱいで閉鎖することになった。家主から2倍近くの家賃値上げを受けたことが理由だという。DIDは新たな場所を探しているが、十分な広さや光を遮断することができるなど、現時点で条件を満たす場所は見つかっていない。

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ドイツでの視覚障害者用プロジェクトは?

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